細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●第78回・アカデミー賞受賞予想

2006年02月12日 | Weblog
●2月12日(日)
2006年・第78回アカデミー賞・予想
9日に「キネマ旬報」誌恒例のアカデミー賞予想座談会が開催されました。
いつものメンバー、渡辺祥子さん、襟川クロさんとの8回目の取材で、20日発売の誌面にその模様は詳しく掲載されます。
そこで、わたしの予想を早めに紹介しますが、結果は3月6日の朝、WOWOWでハリウッド同時中継されます。

★作品賞 「ブロックバック・マウンテン」
★主演男優賞 フィリップ・シーモア・ホフマン(「カポーティ」)
★主演女優賞 リース・ウィザスプーン(「ウォーク・ザ・ライン」)
★助演男優賞 ジョージ・クルーニー(「シリアナ」)
★助演女優賞 レイチェル・ワイズ(「コンスタント・ガーディナー」)
★監督賞 アン・リー(「ブロックバック・マウンテン」)
詳しくは「キネマ旬報」2月20日発売号をご覧ください。

「THE WINDS OF GOD」の神風魂。

2006年02月12日 | Weblog
●2月11日(土)14-00 池袋<シアター・グリーン>
The Winds of God
演出・奈良橋陽子 主演・山田将之
あまりステージを見ないのは、試写を優先している映画評論家のわがままです。
奈良橋さんからのメールを頂いたので、祭日の池袋に出かけました。
ミニ・シアターは予想通りの超満員で、2時間は冬を忘れる熱気に圧倒されて、この芝居のロング・ラン人気の理由が分かりました。ニートだ、フリーターだという若者たちには、神風特攻隊の存在すら知られていなかったでしょう。
一方で「男たちの大和」がヒットしている現代で、こうしたファンタジーで人間の勇気と使命を考えるのも、貴重な時間でしょう。若い男優の方々の熱気に圧倒されながら考え、池袋の雑踏をさまようのは不思議な時間でした。
こちらもしばらくタイム・スリップしていたのかも。・・・。

●「ブロークバック・マウンテン」さまよえる男たちの心

2006年02月10日 | Weblog
●2月9日(木)15-30 京橋<メディアボックス試写室>
M-018 「ブロークバック・マウンテン」Brokeback Mountain (2005) Focus 米
監督・アン・リー 主演・ヒース・レジャー ★★★★☆
ことしのアカデミー作品賞最有力の作品だけに、試写室は開映30分前に満席。
しかし作品は、その熱気を打ち消すように淡白な男たちの心の徘徊を見つめる。
ワイオミング州の山奥で放牧している羊たちが、熊やコヨーテに襲われないようにガードをするカウボーイ。
孤独で単調な日々で、ひたりの青年は体を暖め合う。
そして季節は流れ、彼らはそれぞれの人生を歩む。しかし結婚生活は挫折と破綻を重ねる。
むかしの西部劇のカウボーイたちにも、このような友情や相愛関係はあったのだろうか。
たとえばブッチとサンダンスはどうだったのだろう。
そんな人間たちの深層感情をチラリと見せていくアン・リーの演出は、かつてのウェスターンではない。
ゴールデン・グローブ授賞式で監督はクリント・イーストウッドから受賞した感激を語っていた。
しかし、クリントはこの映画をどう見たのだろう。いろいろの思いが過る人間のドラマ。
昨夜、「キネマ旬報」のアカデミー賞の予想座談会があり、渡辺祥子さん、襟川クロさんもこの作品を推した。
わたしも同感だが、またこれで映画が少し変貌していくな、と感じていた。

●「グッドナイト&グッドラック」はグッドフィルム。

2006年02月08日 | Weblog
●2月8日(水)13-00 渋谷<東芝試写室>
M-017 「グッドナイト&グッドラック」Good Night , and Good Luck (2005) Section Eight 米
監督・ジョージ・クルーニー 主演・デビッド・ストラザーン ★★★★
50年代のマッカーシー議員による赤狩りは、ハリウッドにも脅威であって、多くの映画がテーマにした。
しかしジョージ・クルーニーが監督したこの作品は、CBSテレビの政治キャスターが不当なレッド・バーシを弾圧した、当時のテレビ局を舞台に、実に真摯な演出で描いたエド・マローと番組チームのハードボイルドな奮闘記だ。
やたらタバコの紫煙がノスタルジックな50年代を再現し、モノクロームのシンプルなトーンも懐かしい。
一発の銃声もないのに、緊張感の張り巡らされた93分は、オスカー・ノミネートに価する。
クルーニーが「父へのラブレター」と語る作品の資質と品格は充実していて、彼が「未知への飛行」をテレビでリメイクしたのも、マジだったのかと、いまさらながら感服。
でも、アカデミー作品賞にしてはノスタルジーに酔いすぎたようだ。
「真実を語れないテレビは、ただの電気仕掛けの箱だ」というメッセージは印象に残った。グッドラック、グッドワーク。

●「ミュンヘン」はエンターテイメントなのか。

2006年02月06日 | Weblog
●2月6日(月)13-00 渋谷<シネパレス>R.S.
M-016 「ミュンヘン」Munich (2005)Dreamworks 米
監督・スティーブン・スピルバーグ 主演・エリック・バナ ★★★★
試写で見なかったのは、どうも「宇宙戦争」の娯楽色が濃厚に残っていたせいだ。
でも、アカデミー作品賞にノミネートされたからには商売柄見なくてはいけない。
公開3日目だが、まずまずの盛況。
作品も「ミッション・インポッシブル」のリベンジ篇のようで、やたら殺戮のドンパチが多く、娯楽映画のようだ。
もちろんミュンヘン・オリンピックでの悲劇がベースになったストーリーは、リアリティな報復バイオレンスが強烈。
でも、どうも情報収集とその信憑性が薄いので、後半はダレてくる。
平和な家庭人のバナがジェームズ・ボンドのような必殺仕掛人になるストレスが、どうも重そうで、そのために逆ギレのテロ活動が暗い印象になる。
さすがにスピルバーグは迫力の演出アイデアは見るべきところが多いが、平和を願うための報復というのは理解に苦しむ。
だから、オスカーは難しいだろうな。

●「ジャケット」を着せられると未来が見える。

2006年02月04日 | Weblog
●2月3日(金)14-00 新橋<スペースFS汐留ホール>
M-015 「ジャケット」The Jacket (2004) マンダレイ・ピクチャーズ・米
監督・ジョン・メイブリー 主演・エイドリアン・ブロディ ★★★☆☆
戦場で頭部に銃弾を受けたエイドリアンは、時々意識が点滅するので精神病院に入れられる。
そこで拘束ジャケットを着せられて薬物を注射され遺体格納ケースに監禁された。
その異常な療法のためか、過去のトラウマや近未来の自分を見るようになる。
スチィーブン・ソダーバーグとジョージ・クルーニーが制作したサイコ・ファンタジーだから、アイデアは面白い。
しかし英国の監督ジョン・メイブリーの映像感覚が、やたらフラッシュ効果を連発するので、せっかくのお話も混乱を招く。
M・ナイト・シャマラン風の謎解きは判り易いのだが、ちょいと全体にダークでシリアスなのがマイナス要因だ。
アカデミー賞ノミネートのキーラ・ナイトリーも元気なく不調。


●「パパラッチ」というより強盗ストーカーだ。

2006年02月02日 | Weblog
●2月1日(水)13-00 東銀座<松竹試写室>
M-014 「パパラッチ」Paparazzi (2004) Fox-Icon 米
監督・ポール・アバスカル 主演・コール・ハウザー ★★★☆
メル・ギブソンがプロデュースした作品なので楽しみだったが、これはハリウッド・セレブを狙ったストーカー・アクション。
人気スターと家族が乗った車が、夜の市街道路でパパラッチ集団の車に襲われて事故を起こす。
子供が意識不明で入院した衝撃で、コールはキレた。
しかし唯のリベンジ映画でなく、パパラッチを陽動作戦でクールにひとりずつ犯罪ギリギリの手段で始末していく。
まるで西部劇のバウンティー・キラーのような、あのクリント・イーストウッドの「アウトロー」のような話。
刑事のデニス・ファリーナは、その手口に気がついているが、気持ちは判る。
だから、コールが犯行に使った車の存在も無視したのだろう。
テレビ映画の上出来なアクションものの気分で見るには手頃だろう。

●1月の試写ベスト&ワースト

2006年02月01日 | Weblog
●1月に見た試写の中のベスト・3
☆「ヒストリー・オブ・バイオレンス」
監督・デビッド・クローネンバーグ 主演・ヴィゴ・モーテンセン ★★★★☆
シンプルな構成の中で、人間と暴力の関係とその哀しい悲劇性を見事に収縮して見せた傑作だ。

☆「うつせみ」
監督・キム・ギドク 主演・イ・スンヨン ★★★★
他人の留守宅を転々と押し入って生活する青年の不思議な純愛ものがたり。ウソのような真実が見え隠れする。

☆「プロデューサーズ」
監督・スーザン・ストローマン 主演・ネイサン・レイン
噂のブロードウェイ大ヒット・ミュージカルの振動が伝わるような、本場の楽しさは懐かしくも心地いい。

その他の傑作は「リバティ-ン」「かもめ食堂」「春が来れば」「スタンド・アップ」など・・・。

■1月の試写ワースト
□「The Myth 神話」
監督・スタンリー・トン 主演・ジャッキー・チェン ★★☆
ジャッキーの映画だと思えば、これでもいいのかも知れないが、それにしても困ったものだ。