細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●「氷の微笑・2」はシュリンクがターゲット

2006年09月28日 | Weblog
●9月27日(水)13-00 新橋<スペースF.S.汐留ホール>
M-117 「氷の微笑・2」Basic Instinct 2 (2006) MGM
監督・マイケル・ケイトン=ジョーンズ 主演・シャロン・ストーン ★★★☆☆
あれから14年。あのキャサリン・トラメルが帰って来た。
ロンドンで相変わらず推理作家として活躍しているキャサリンが、自動車事故を起こし、同乗のサッカー選手が死亡。
不審な点が多いので、警察は容疑の深い彼女を、精神医師に診てもらうことにした。
しかし、別の事件が続発して、被害者はみな医師の関係者なのだ。
前作のムードを損なうことなく、テンポよく見せる演出は、手堅くスマートだ。
相変わらずのシャロン・ストーンも、それなりの美貌と視線の鋭さを維持していて、<パート2>ものとしてはいい。
それはロンドンのロケの深みと、ジェリー・ゴールドスミスのオリジナル・スコアを使った旨味である。
ほぼ一方的にキャサリンのペースで事件が描かれているので、ラストの逆転に無理はあるものの、推理小説では許される範囲の展開として善意に解釈しよう。
意外に楽しめたパート2だった。

●「アンノウン」かつてない犯罪映画のプロセス。

2006年09月26日 | Weblog
●9月25日(月)13-00 東銀座<シネマート試写室>
M-116 「アンノウン」Unknown (2006) 米
監督・サイモン・ブランド 主演・ジム・カヴィーゼル ★★★☆☆☆
またしても新しいクライム・サスペンスの傑作登場。
5人の男が、廃棄工場の密室で記憶から覚める。
廃棄された化学薬品の噴出で、全員が数分の間失神して、一時的に記憶も失っていた。
みなそれぞれに争った傷跡があるが、誰が敵なのか味方なのか見当もつかない。
電話が鳴り、どうやら誘拐の身代金が払われて、その首謀者が帰ってくるという。
ということは、この5人のうち、誰かが誘拐された男で、ほかはその誘拐犯の仲間ということになる。
「SAW」や『CUBE」のような発想だが、展開はもっと面白い。
外の誘拐首謀者や警察の捜査官の動きも立体的に描かれるシナリオが上等だ。
監督の映像センスもよく、また犯罪サスペンスに、新しい才能が進出してきた。
共演者でもグレッグ・キニアやバリー・ペッパーが、曲者ぶりを発揮していて、大いに楽しめた。

●「人生は、奇跡の詩」でも人生は、多難の連続。

2006年09月22日 | Weblog
●9月21日(木)13-00 東銀座<シネマート試写室>
M-115 「人生は、奇跡の詩」La Tigre e la Neve (2005)伊
監督・ロベルト・ベニーニ 共演・ジャン・レノ ★★★☆☆
ローマで教壇に立つ詩人のベニーニは、別居中の妻がバグダッドで戦渦にまみれ、重傷で意識不明だと親友でアラブ人のジャン・レノから聞いて、単身、戦場に向かう。
まるでハリウッド映画のような展開だが、相変わらずのベニーニ・ワンマン・ショウだから、次第に飽きてくる。
こんな悲劇の最中に、ひとりで大騒ぎしているベニーニ。
彼のファンならいいが、少々騒ぎ過ぎだ。しかもまだ戦闘中のイラクは笑えない。
もしチャップリンやウディ・アレンなら、ここまではやらないだろう。
ジャン・レノの存在が、作品に味を加えていたが、・・・・。

●「華麗なる恋の舞台で」壮絶なリベンジが始まった。

2006年09月21日 | Weblog
●9月20日(水)13-00 新橋<スペースF.S.汐留ホール>
M-114 「華麗なる恋の舞台で」Being Julia (2004) 英
監督・イシュトヴァン・サボー 主演・アネット・ベニング ★★★★☆
ピークを過ぎた大舞台女優アネット・ベニングは、夫で興行主のジェレミー・アイアンズに休暇を申し出るが曖昧な返事。
その反動か、息子のように年下の美男青年と恋におちる。
ところがその青年はガール・フレンドを、次作のオーディションを受けさせてくれという。
若い女優の卵はしたたかに夫とも浮気をしているのを知ったアネットは冷静沈着にリベンジにでる。
サマセット・モームの原作「舞台」を、実に上質なコメディに仕上げたイシュトヴァンの演出は軽妙で、ひさしぶりに愉しいおとなの作品に出逢えた。
初日の舞台で復讐を果たした彼女が、パーティをすっぽかして、ひとりバーでビールのジョッキをがぶ飲み。
感動のあまり、わたしも直後に、新橋のカフェでビールで乾杯した。
ああ、幸せな快作だ。

●「待合室」には誰も来ない。

2006年09月20日 | Weblog
●9月19日(火)13-00 京橋<メディア・ボックス試写室>
M-113 「待合室」Notebokk of Life (2006) 日
監督・板倉真琴 主演・富司純子 ★★★
故郷の岩手が舞台なので見に行った。
盛岡から北に行った在来線の急行通過駅「小繋」。
無人駅だが、いつもストーブに火が入りお茶が沸いている。
厳寒のステーション。あの「駅・ステーション」や「鉄道員」の景色が雪に浮かぶ。
静かなピアノのバック・ミュージックで、ムードはいい。
駅前の雑貨屋のおかみの富司純子さんは、ひとりで駅の待合室の掃除をしたりしているが、誰かが置いたノートに、いろいろな旅人が、心の迷いを書き残して行く。
それはいい話だ。
しかしストーリーはほとんどが彼女の回想と、毎日の平板な生活なので、さっぱり盛り上がらない。
誰も訪れない鈍行の駅なので、それでいいのだろうが、それにしても映画のテンポには退屈した。

●「16ブロック」もひとつのトレーニング・デイだ。

2006年09月16日 | Weblog
●9月15日(金)13-00 新富町<ソニー・ピクチャーズ試写室>
M-112 「16ブロック」16 Blocks (2006) sony pictures 米
監督・リチャード・ドナー 主演・ブルース・ウィリス ★★★☆☆☆
この監督でこの主演だから、よくあるアクションものかと思ったら大違い。
これは久々に予想外の拾い物のポリス・アクション。
しかもあの秀作「トレーニング・デイ」を彷彿とさせる、悪徳警官の更生もので、おっとっとの感動もの。
裁判の証人を留置所から、ほんの16ブロック護送するだけの話。
エルモア・レナードの「決断の3時10分」のようなことが、警察内部のグループが武力で阻止しようとする。
徹夜勤務明けのブルースは、はじめうんざりしているが、ことはどうも大事らしい。
とうとうキレた彼は、自分のぐうたら人生を返上して、決死の逃避を決行する。
リアルタイムで進行するテンポが快調で、ドナー監督もすっかり若返ったようだ。
文句なく、ブルース・ウィリスの代表作と言っていい。

●「麦の穂をゆらす風」はアイルランドのブラザーフッド

2006年09月14日 | Weblog
●9月14日(木)13-00 新橋<スペースF.S.汐留ホール>
M-111 「麦の穂をゆらす風」The Wind That Shakes The Barley (2006)英国
監督・ケン・ローチ 主演・キリアン・マーフィー ★★★☆☆
アイルランド分裂の内戦を1920年の原点に戻って描いたケン・ローチの新作。
いまだに問題のあるIRAの、その基本的な国民感情のズレを見つめていて、これはすべての戦争の発端かもしれない問題点を提起している。
それで今年のカンヌでパルムドールを受賞した。
それはそれでいい。立派な作品だし、受賞はおめでたい。
でも結局は、家族や兄弟が国家の思想の亀裂の犠牲になるパターン。
あの「ブラザーフッド」を思い出したが、さて、爽やかなタッチのケン・ローチらしさはどうしちゃったのさ。
こんな厳しい戦争映画の、しかも男同士の殺し合いなどは、多くの映画でウンザリしている。
それなのに、アイルランドの問題を、またこうして感情的に作られても、こちらは真実当惑するのみだ。
その問題点が見えているだけに、疲れてしまう。
まさに、「戦渦にまみれた麦の穂」である。かなしいなーーー・

●「ヘイブン」は非常に危険な天国だ。

2006年09月11日 | Weblog
●9月11日(月)13-00 京橋<メディア・ボックス試写室>
M-110 「ヘイブン・堕ちた楽園」Haven(2006)米
監督・フランク・E・フラワーズ 主演・オーランド・ブルーム ★★★☆☆☆
「ヘブン」はケイト・ブランシェットが主演した傑作だったが、こちらは『Haven」。
天国ではなくて、「逃避地」という意味がある。
カリブ海のケイマン諸島は、ジョン・グリシャムの小説「ザ・ファーム/法律事務所」などで急速に知られたのは、そこが無税の島だからだ。
多くの金融機関が支店を置き、世界中の資産家がそこの銀行に口座を持っている。
この映画は、そのケイマン島を舞台に、マイアミで金融詐欺でFBIに追われるビル・パクストン親娘と、島でやくざ抗争に巻き込まれたオーランド・ブルームの、ふたつの事件が、微妙に交錯するサスペンスで、まるで文庫本を読むような面白さがある。
編集に時間差をかけて複雑にした監督の作戦は、一応は知的に終結している。
その新人監督がケイマンの出身というだけにロケーション効果もあり、オーランドがプロデュースした小品として、よくまとまっていて楽しめた。

●「暗いところで待ち合わせ」の曖昧な沈黙の時間。

2006年09月09日 | Weblog
●9月8日(金)13-00 渋谷<東芝試写室>
M-109 「暗いところで待ち合わせ」Waiting in the Dark (2006) 日
監督・天願大介 主演・田中麗奈 ★★★
乙一の原作は、視力のない女性と、追われる青年の孤独な沈黙をひとつの家の中に凝縮しているので、その沈黙も深い孤独感として表現できたのだろう。
しかし映画ではすべての視界が見えているので、まったく別のストーリーに見えてしまう。
前半の奇妙な時間はいいとして、登場人物が増えて、その事件が解明されだした途端に、ただのテレビ・ドラマのサスペンス劇場のように陳腐な印象になってしまった。
たしかに映画化するには無理の多い話であろうが。。。