細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『主人公は僕だった」の曖昧な顛末。

2007年01月30日 | Weblog
●1月29日(月)13-00 新橋<ヤクルト・ホール>
M-010 「主人公は僕だった」Stranger Than Fiction (2006)sony
監督・マーク・フォースター 主演・ウィル・フェレル ★★★☆
統合性失調症気味のアメリカ国税庁役人が主人公。
12年間も、まったく同じ勤務パターンで過ごして来た独身男が、ある朝、女性の声を聞く。
アタマの中に響くその声は、彼の寿命のないことを告げたのだ。
彼は、精神科医師のところに行くが、生活パターンを変えるか、休暇が必要だ、と告げた。
アンジェリーナ・ジョリー主演の「ブロンド・ライフ」と似たような設定だが、あまりオモシロクならない。
それは、ストーリーを書いてる女流小説家のエマ・トンプソンが、天使なのか実在なのかが曖昧で、ストーリーを変えてしまったりするからだろう。
運命論のコメディならば、「ダニー・ケイの天国と地獄」のような斬新なアイデアが感じられない。
せっかくダスティン・ホフマンが出てるのに、ウィル・フェレルの個性では支えきれなかった。
マーク・フォースター監督としては、凡作。

●「バベル」が描こうとした枯れ往く愛の再生。

2007年01月27日 | Weblog
●1月26日(金)15-30 六本木<GAGA試写室>
M-009 「バベル」BABEL (2006) メキシコ
監督・アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ 主演・ブラッド・ピット ★★★★☆☆
試写を見るのに整理券が出て、開映30分前に満席になる人気はさすがだ。
メキシコ、モロッコ、東京の違った地域で、ほぼ同時に起こった家族の悲劇には、ひとつの銃が絡んでいた。
面白いアイデアの、アンサンブル・ドラマで、ジム・ジャームッシュの「ミッドナイト・イン・プラネット」を思い出す。しかし、この新作のテーマは、愛の喪失と、その再生を描こうとしている。
多くを語る必要のない秀作だ。
黙って見れば、その意味の深さを理解出来る筈だ。
この謙虚で誠実な画法は、監督の「21グラム」からは想像出来なかった。
四つの優れた楽章からなる、新しい映像交響楽である。

●『ブラッド・ダイヤモンド」はディカプリオの原石

2007年01月26日 | Weblog
●1月25日(木)12-30 日比谷<ワーナー・ブラザース試写室>
M-008 「ブラッド・ダイヤモンド」Blood Diamond (2006) warner brothers
監督・エドワード・ズウィック 主演・レオナルド・ディカプリオ ★★★★
アフリカ紛争の映画が多いが、これも西アフリカのダイヤモンド戦争。
原石がロンドンなどで高額な取引で現金化できることから、現住の過激なテロ集団が、集落を襲い男手を酷使して武器調達のためにダイヤモンドの原石を探している。
家族を拉致されたジャイモンは、発見した原石を隠したが、原石仲買の密売犯ディカプリオの協力で、家族の奪還を計る。
オール現地ロケの緊張感のなか、オスカーにノミネートされたディカプリオは捨て身の演技を見せる。
たしかに「アビエイタ-」よりも進化しているし、「ディパーテッド」よりも巧い。
演技に抑揚が出て来たし、リアクションが素晴らしい。そして目の光がダイヤモンドそのもの。
多くの俳優は汚れ役でオスカーをゲットしているが、このレオさまの汚れたテンションの高さは立派。
今回は、どうか受賞して欲しいと、応援したくなった。
ズウイックの豪放な演出とカメラ・アイも相変わらず素晴らしい。
140分を駆け抜ける文句なしのサスペンスだ。

●「蒼き狼/地果て海尽きるまで」の疲労感

2007年01月25日 | Weblog
●1月24日(水)12-30 東銀座<松竹試写室>
M-007 「蒼き狼/地果て海尽きるまで」2006 角川・松竹
監督・澤井信一郎 主演・反町隆史 ★★★☆
広大なモンゴルの大草原。
その広すぎる大自然の好天のもと、数千の人馬が戦うシーンを見ていると、いかに歴史絵巻といえども、虚しい思いがする。
チンギス・ハーンの半生と、人間としての栄光と矛盾を描いているが、どうも周囲の風景に呑まれてしまっていて、人間味が伝わらない。
それは、その広さに圧倒されて大声を出して演じる俳優たちの感性に似て、所詮、人間は小粒なのだ、と思ってしまう。
せめて悪天候でも、人間の魅力の方を引き出す工夫が見たかった。

●「ナイト・ミュージアム」は世界史アミューズメント・パークだ。

2007年01月23日 | Weblog
●1月22日(月)13-00 六本木<FOX試写室>
M-006 「ナイト・ミュージアム」Night at the Musium (2006) fox
監督・ショーン・レヴィ 主演・ベン・スティーラー ★★★
全米クリスマス・シーズンの「モンスター・ハウス」を凌ぐヒット作だから、子連れ家族向きの娯楽作品。
休日のシネコンに、5.6才の男の子供を連れて見るように作られた遊園地アドベンチャーだから、それ以上ではない。
リストラされバツイチのベンは「幸せのちから」のウィル・スミスほどアタマがよくない。
歴史博物館の夜警の仕事を貰い、渋々やったものの、最初の夜から怪獣の化石に追い回され、大いにパニくる。
アイデアは、「ジュマンジ」のミュージアム騒動で、すべての展示品が勝手に暴れるアミューズメント・パニックだ。
お子様と遊園地に出かけるよりは安くつくだろう。
ベン・スティーラーでなく、マジな役者が演じた方が意外性があったろうに・・・。

●「ホリデイ」の失恋ストレス解消法。

2007年01月19日 | Weblog
●1月18日(木)13-00 東銀座<U.I.P.試写室>
M-005 「ホリデイ」The Holiday (2006) universal/columbia
監督・ナンシー・マイヤーズ 主演・キャメロン・ディアス ★★★☆☆☆
失恋によるストレスで、女性は老化が加速する。
だから早くその病状から逃れるには、薬やアルコールやドラッグよりも現実逃避がいい。
クリスマス・シーズンの新年ホリデイ直前に失恋したキャメロンは、ネットで家ごと2週間交換できる相手を探した。
ロンドン郊外に住むケイト・ウィンスレットも同じ失恋で、交渉が成立。
ふたりはロサンゼルスとロンドンの家を交換する。
で、また大事件が連発する。
ウィリアム・ハートの「カウチ・イン・マンハッタン」と同じ設定だが、今回の方が面白い。
まるで、60年代のドリス・デイのコメデイを見ているように、ドラマは小気味よく展開。
ナンシー・マイヤーズ監督も、女性らしいデリケイトながら大胆な演出で、今回はかなりいい。
キャスティングのジェーン・ジェンキンスとはメル友だが、当初はヒュー・グラントが出る筈だったのが、キャメロン・ディアスとの相性のためか降板。急遽ジュード・ロウが代役となったが、それが良かったようだ。
久しぶりに、ハリウッド・コミックの成功作に酔わされた。

●「ブラックブック」はクラシックな連続活劇

2007年01月18日 | Weblog
●1月17日(水)13-00 渋谷<東芝試写室>
M-004 「ブラックブック」Black Book (2006) オランダ
監督・ポール・バーホーベン 主演・カリス・ファン・ハウテン ★★★☆☆
第二次大戦末期ドイツ占領下のオランダ。
地下抵抗組織に加わった戦災被害の若い女性歌手が、「マタハリ」さながらのスパイ活動をする。
久しぶりに故郷に戻ったバーホーベン監督は、前半はヒッチコック・タッチでサスペンスを繋げるものの、後半になると、ハリウッド映画の悪影響なのか、ストーリーをいじくりすぎて、ペースが乱れる。
主演の女優も、いまいち。
たとえば「ボン・ボヤージュ」のような洗練された感覚でも見られれば、もうすこしは上等になっただろう労作。
140分の連続活劇はとにかく疲れるのだ。

●「ボビー」は「グランド・ホテル」1968年版だ。

2007年01月16日 | Weblog
●1月15日(月)13-00 銀座<シネマート銀座試写室>
M-003 「ボビー」BOBBY(2006) MGM
監督・エミリオ・エステベス 主演・ロバート・ケネディ、アンソニー・ホプキンス他 ★★★★
1968年6月5日。
ロサンゼルスのアンバサダー・ホテルで起こった、あの上院議員で次期大統領候補だった、ロバート・ケネディ暗殺の日。
あのホテルにいた22人の偶然の縮図をアンサンブル・キャストで描いている。
シナリオのアイデアが素晴らしい。
それぞれに破綻したり転落したり、失望している人生のスケッチの日。
ラストの襲撃の瞬間に、そこに居合わせた運命の皮肉を、ドラマティックに、しかしさらりと描いた佳作だ。
とくにその日のドジャースのゲームのチケットを持っていた、厨房のヒスパニック青年や、落ち目の歌手デミ・ムーアのヘアメイクをする、これまたダメ亭主の浮気に悩むシャロン・ストーンのエピソードなど、なかなかに泣けるのだ。
たしかにボビー暗殺の悲劇を描いているものの、その事件ではなくて、当時の40年前の風俗と、倒壊しかかっているアメリカ人の個人生活を集約して見せた凡優エミリオ・エステベスの監督としてのセンスは非凡だった。

●「恋愛睡眠のすすめ」は、あまり効果なし

2007年01月13日 | Weblog
●1月12日(金)15-30 六本木<アスミック・エース試写室>
M-002 「恋愛睡眠のすすめ」The Science of Sleep (2005) 仏
監督・ミシェル・ゴンドリー 主演・ガエル・ガルシア・ベルナル ★★☆
夢の中で恋をした青年が、現実との食い違いに悩むのは、よくあること。
ハッピーな分裂症のコメディだが、イメージが可愛らしすぎて、どうも漫画的。
お好きな向きにはいいだろうが、わたしには効き目のないセラピーだった。
ダニー・ケイの「虹を掴む男」が懐かしい。ああ。

●「約束の旅路」も栄光への脱出なのか。

2007年01月11日 | Weblog
●1月10日(水)12-30 東銀座<松竹試写室>
M-001 「約束の旅路』Va, vis et deviens (2005) 仏
監督・ラデュ・ミヘイレアニュ 主演・ヤエル・アベカシス ★★★☆☆
今年初めての試写だ。
またもアフリカ混迷のテーマだ。
スーダンの9才の少年が、難民としてイスラエルに移送され、養子として育てられたが、長引くアラブの紛争で、青春はズタズタにされる。
それでも生きる夢を捨てず医師としての資格をパリで取り、スーダンにいる難民救助医療チームをして母を探す。
話は「十戒」から「栄光への脱出」にも描かれたイスラエルのユダヤ人の果てのない迷走を、まさに少年期から青年に成長していく感動の大河ドラマとなっている。
ドラマとしてはよく出来ているが、このような実話ものが多い中では、平凡な展開だし、140分は長い。