細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『窯焚/KAMATAKI』の情熱も煙にまかれたか。

2007年12月06日 | Weblog
●12月5日(水)13-00 有楽町<東映第二試写室>
M-148 『窯焚/KAMATAKI』(2005)カナダ/日
監督/クロード・ガニオン 主演/マット・スマイリー ★★★☆
22歳のカナダ人青年は、父親の突然の死のショックで、自失し精神異常となり自殺を謀る。
母親の遠い親戚で、東北の山奥で制作している、窯焚作家の藤竜也の工房に身柄をあずけることにした。
異文化による精神改造であろう。
素朴で厳格な山の自然にように、環境の変化は、青年の心を癒していく。
監督は親日家のカナダ人で、『KEIKO』という合作ラブ・ストーリーもあった。
全編その山奥で撮影され、三日三晩も火を絶やさない工法は、ユニークな作業体験となる。
しかし、その感情のスケッチに過程で、青年に大きな変化のないままにドラマが進行するので、外人からは面白いであろう、日本人の生活習慣が、あまり面白くない。
誰か日本人監督のアドバイスがあって欲しかった。まさに煙にのまれた映画である。

●2月下旬より、新宿バルト9にてロードショー

●『エリザベス/ゴールデン・エイジ』は激動で孤高の女性映画。

2007年12月05日 | Weblog
●12月3日(月)13-00 半蔵門<東宝東和試写室>
M-147 『エリザベス/ゴールデン・エイジ』Elizabeth-The Golde Age (2007) universal UCJ
監督・シェカール・カプール 主演・ケイト・ブランシェット ★★★☆☆☆
1587年。
25歳でイングランドの女王になったエリザベスの、パート・2ともいえる大作だ。
前作では「わたしはイングランドと結婚した」とラストで宣言した女王の青春。
恋はままならず、スペインの無敵艦隊がロンドンに迫った。
これは「ゴールデン・エイジ」ではなく、むしろ「デンジャラス・エイジ」。
恋に破れたが戦争に勝ったクイーン・エリザベスの波乱の日々が鮮明に描かれている。
ケイトはこの演技で、オスカーの雪辱を果たすだろうか。
凄まじい名演がシャープで新鮮だ。
歴史ものの、古色蒼然さはない。

2008年2月、日比谷スカラ座でロードショウ

●『フランク・シナトラ・ソサエティ・BIG BIG BIG PARTY』

2007年12月04日 | Weblog
●12月1日(土)13-00 天王洲<クリスタル・ヨット・クラブ>
『第六回フランク・シナトラ・ソサエティ・クリスマスパーティ』
The 6th Annual Frank Sinatra Society Big Big Big Party in Tokyo

恒例のシナトラ・ファンによるパーティも6回目。
昨年に続いて新装成った天王洲の「クリスタル・ヨット・クラブ」は、小春日和の好天に恵まれ、正午の開場と同時にメンバーや、そうではないジャズ・ヴォーカルのファンが、それぞれにお好きなドリンクを手に、ウッド・デッキで乾杯だ。
湾の水面には、対岸の高層ビルが陽光に反射して、ちょいとしたニューヨーク気分。
テーブルに満載したヴァイキング料理を食べて、3杯目のワインの頃からイベントが開始した。
今年はハリウッドから、ベテラン女性ヴォーカリストのダイアン・ハブカさんを迎えて、ピアノ・トリオのバックで、「カム・フライ・ウィズ・ミー」「ナイス・ン・イージー」などのシナトラ・ナンバーがスタート。
軽い透明感のあるダイアンの唄も、シナトラのように歌詞が明快で気持ちいい。
クライマックスには、2曲のクリスマス・ソングで盛り上がった。
サイン会や歓談があり、ダイアンとはハリウッド映画のジャズソングについて話を直接聞いたが、なにしろ彼女は「ダイアン・ゴーズ・ムービーズ」というCDアルバムの中で『悪人と美女』『ロング・グッドバイ』『アガサ』など、誰も過去にレコーディングしていない曲をピックアップした。
その理由は『昔の映画にはいい曲がいっぱいあるから、自分で探し出して唄うのが趣味』だという。
さすがは、ハリウッド伝統の、ソング・ディテクティブのようだ。
第二部では、1985年のシナトラ武道館公演の完全版を、大音響で再現。これには時間を忘れてしまう。
テラスのカーテンが上がると、もうウォーターフロントもサンセット・アワー。
上等なパーティでした。早くも来年が楽しみだ。
★ダイアンは12月5日(水)夜には、渋谷センチュリアン・ホテルのジャズ・クラブで唄うそうだ。

●11月の二子玉川サンセット傑作座公開ベストテン

2007年12月03日 | Weblog
●11月に自宅/二子玉川サンセット座で見た傑作映画10本

1/『影の軍隊』69(ジャン=ピエール・メルビル/主演・リノ・ヴァンチュラ)DVD
★★★★☆ 非常にストイックに描かれた戦時下レジスタンス。これぞノワールの美学。

2/『ラベンダーヒル・モッブ』51(チャールズ・クライトン/主演・アレック・ギネス)DVD
★★★★ 真面目な銀行員が、とんでもないアイデアで金塊をすり替える。ギネスの泥棒ぶりに、またも感服。

3/『バタフィールド8』60(ダニエル・マン/主演・エリザベス・テイラー)DVD
★★★★ 通俗メロドラマだと軽視していたが、ダグラス・サーク的な悲劇パターンと思えば意外な傑作。

4/『宗方姉妹』50(小津安二郎/主演・田中絹代)DVD
★★★☆☆☆ 小津映画には珍しい夫婦の崩壊と悲劇が、淡々とした映像で、ばっさりと切り捨てる。

5/『野郎どもと女たち』55(ジョセフ・L・マンキウィッツ/主演・マーロン・ブランド)DVD
★★★☆☆☆ 自宅ではなく、久しぶりに大きなスクリーンで見れたことに、もう感激してしまった。

●以下は省略
6/『ザ・ラケット/抗争』51(ジョン・クロムウェル/主演・ロバート・ミッチャム)VHS ★★★☆☆
7/『レイジング・ブレット』96(ジョン・シュレシンジャー/主演・サリー・フィールド)DVD ★★★☆☆
8/『危険な場所で』51(ニコラス・レイ/主演・ロバート・ライアン)LD ★★★☆☆
9/『ブロードウェイのバークレイ夫妻』49(チャールズ・ウィルタース/主演・フレッド・アステア)LD ★★★☆
10/『リバティ・バランスを撃った男』62(ジョン・フォード/主演・ジョン・ウェイン)DVD ★★★☆
ほかには『地獄への道』
『姫君と海賊』
『折れた矢』
『コルドラへの道』などを見ました。

●11月の試写ベスト3

2007年12月02日 | Weblog
●11月に見た新作試写ベスト3

●1/『アメリカン・ギャングスター』監督・リドリー・スコット
★★★★ アメリカ社会の発展によって派生した悪の構造を分かりやすく描いた『汚れた顔の天使』新版。

●2/『4ヶ月、3週と2日』監督・クリスティャン・ムンジウ
★★★★ 貧困のルーマニアで、人口中絶手術に挑む若い女性の勇気と誇りに、グサリと刺さる迫力が美しい。

●3/『迷子の警察音楽隊』監督・エラン・コリリン
★★★★ イスラエルの荒野で迷子になったエジプト警察音楽隊の、珍妙で暖かい「田舎に泊まろう」のおかしさ。


●『4ヶ月、3週と2日』が人生の運命を変える日。

2007年12月01日 | Weblog
●11月30日(金)13-00 新橋<スペースFSホール汐留>
M-146 『4ヶ月、3週と2日』4 lini,3saptamini si 2 zile (2006)ルーマニア
監督・クリスティアン・ムンジウ 主演・アナマリア・マリンカ ★★★★
ルームメイトの中絶手術に立ち会った、ひとりの女学生の一日。
20年前のルーマニアは、都市部も極端な貧困の時代だった。
ホテルの部屋をリザーブするのにも、かなりの出費をしなくてはならない。
そこにモグリの堕胎医師らしい男を呼び、手術に及ぶまでの苦労が、淡々とドキュメンタリーな視覚で見せる。
非常に斬新なアイデアのストーリーだ。
人ごととは思えないサスペンスが持続する。
タイトルは、中絶手術を決行した日のことだが、それが非常に危険であったことは、女性でなくても分かる。
しかも重大な違法犯罪行為なのだ。
見事に知的な映像で見せた監督は、この作品で今年のカンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞。
女性であることの重さを強く感じさせられた愛の秀作といえる。

●2008年、3月公開予定。