細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『フールズ・ゴールド』猫に小判。濡れ手に泡のトレジャーハント

2008年04月29日 | Weblog
●4月28日(月)13-00 日比谷<ワーナー・ブラザース試写室>
M-048 『フールズ・ゴールド』Fool's Gold (2008)warner brothers 米
監督/アンディ・テナント 主演/マシュー・マコノヒー ★★★
あの『ナショナル・トレジャーズ』のヒットに刺激されたのか、こちらは、またしてもカリブ海に沈むといわれる、18世紀のスペイン艦隊の秘宝を探す。アメリカではまたしてもヒットしたらしい。
トレジャーハント・ラブストーリーの傑作『ザ・ディープ』と違うのは、あのときのカップルは新婚旅行だったが、こちらのマシューとケイト・ハドソンのカップルは離婚係争中。そして徹底的にB級志向なのが憎めない。
すべてがコメディ・タッチで『フールズ・ゴールド』とは『おバカの黄金』という程度の意味なのだろうか。
カリブ海もどきのオーストラリア海岸の観光気分で、ボーっと楽しむ分には他愛ない作品。

●5月31日より、銀座シネパトスなどで公開。

●『アウェイ・フロム・ハー/君を想う』わたしが壊れ、夫が消える。

2008年04月26日 | Weblog
●4月25日(金)13-00 築地<松竹試写室>
M-047 『アウェイ・フロム・ハー/君を想う』Away From Her (2006)film farm カナダ
監督/サラ・ポーリー 主演/ジュリー・クリスティ ★★★★
アルツハイマー病に冒された妻を、老後介護施設におくる夫の心境を描いた作品。
カナダ、オンタリオ地方の雪の世界。そこに老後の生活をおくる夫婦にも静かに試練が訪れる。
美しい雪も春の暖かさで、少しずつ消えて行く。フライパンを冷蔵庫に入れてしまう妻。
ジュリー・クリスティはこの老妻の演技で、ことしのアカデミー主演女優賞にノミネートされた。
ごく自然に淡々とした生活だが、確実に彼女の記憶も雪のように消え出した。黄色い花を見ても色彩がわからない。
サラ・ポーリー監督は『死ぬまでにしたい10のこと』などに出演した若い女優だが、この新作ではカナダのベテラン先輩陣のバックアップもあって、非常に繊細な人間ドラマに仕上げている。
誰もが迎える老後の変化。
避けられない現実だが、人間の知性は、どうしたら感情や記憶をコントロールできるのか。
この作品の凄さは、人間への最後の原罪として、その人生の過去の償いを清算しようと迫るところだ。
介護しようとした夫の愛を拒む妻。ストイックだが、ベルイマン映画の厳しさも見受けられた。

●初夏、銀座テアトルシネマなどでロードショウ

●『ラスべガスをぶっつぶせ』はオーシャンズ・21かな。

2008年04月25日 | Weblog
●4月24日(木)13-00 神谷町<ソニーピクチャーズ試写室>
M-046 『ラスべガスをぶっつぶせ』"21" (08) columbia 米
監督/ロバート・ルケティック 主演/ジム・スタージェス ★★★☆☆
ボストンのマサチューセッツ工科大学は、アメリカでも秀才の集まる有名校。
そこであった実際の事件を娯楽的に映画化している。
数式の順列に天才的な記憶力のあるジムは、母子家族の苦学生で、将来はハーバード大学の医学部に進学したいために、街のメンズ・ブティックでアルバイトをしていた。
数学担当のケビン・スペイシー教授は数人の秀才を誘って、"21"というトランプの、ブラックジャック賭博の攻略チームを作っていたが、ジムをそのグループに誘う。そして休暇期間を利用してラスベガスに乗り込み、一丁稼ぐという作戦だ。
青年の知的賭博犯罪の映画としてはマット・デイモンの『ラウンダース』が面白かったが、この作品でも、ジムの学生としての好感度をうまく利用したギャンブル・エンターテイメントとして、あの『オーシャンズ・11」のチームワーク遊びの痛快さを持っている。しかも実際のカジノでのロケが効果的だ。
ベテランのケビンが、今回はプロデュースも兼ねて脇役に徹したのがいい。
通算で17回も賭場荒らしをしたという、その実績には恐れ入るが、これもひとつの「アメリカン・ドリーム」なのだろう。
ま、一応は犯罪に触れていないというが、危ない勝負である。
新人ジム・スタージェスの好感度が、作品の誠実さを支えていた。

●5月31日より、有楽座などでロードショウ

●『長い長い殺人』それぞれの財布の軽さ。

2008年04月24日 | Weblog
●4月23日(水)13-00 神谷町<ソニーピクチャーズ試写室>
M-045 『長い長い殺人』(2008)シネマート/SPO/WOWOW 日
監督/麻生 学 主演/長塚京三 ★★★☆
宮部みゆき原作小説の映画化。
保険金目当ての殺人事件と思われた一件が、奇妙な連鎖的事件を引き起こす。
それぞれに微妙な関係のある事件の、それぞれの関係者の財布が、オムニバス形式で語っていく。
アイデアは面白いストーリーだが、この分断された映画展開が、どうも連続テレビドラマの軽さとなってしまう。
病気持ちのデカ長を演じる長塚警部も、無愛想な私立探偵の仲村トオルも、そのせいか存在感が軽いのだ。
加えて関係する女性たちも、一様に似たようなタイプで個性が不明。
殺意の見えない最近の都会犯罪の異常性は、たとえば『ゾディアック』や『犯人に告ぐ』のようなシャープな切り口で見たかったが、どうしてもテレビ局製作の簡便さが、全体をコンビニ気分に仕上げてしまっているようで残念だ。

●5月31日より、シネマート六本木などで公開

●『ぐるりのこと』で見る平成初期東京庶民生活の様子。

2008年04月19日 | Weblog
●4月18日(金)12-30 渋谷<ショウゲート試写室>
M-044 『ぐるりのこと』(2008)bitters end 日
監督/橋口亮輔 主演/木村多江 ★★★☆☆
試写室が超満員になる人気は、このドラマに共感したい人が多いからだろう。
法廷画家という特殊な仕事から、平成初期に起こった凶悪犯罪の裁判がスケッチされる。
その事件の異常性が、時代に生きる庶民の感情を逆なでするようだ。
木村多江とリリー・フランキーの夫婦にも、日常的にそうした危機がある。
流産、転職、家族離散、引っ越し、失業、そして生活苦からの妻の「うつ」などなど。
それでも、何とか平穏に生きて行く夫婦の姿を監督は繊細に描く。
これは、ごくありふれた夫婦のドキュメンタリーでもある。
とくにヒューマン・ドラマっぽい感動もないし、とくにハッピーでもない。
それでも生きるという、人間の生命力はある。これを鏡として自分の実態を見直すための映画かもしれない。

●初夏、渋谷シネマライズなどでロードショウ

●『ミスト』の評価も霧のなか。

2008年04月17日 | Weblog
●4月16日(水)13-00 京橋<テアトル試写室>
M-043 『ミスト』The Mist (2007)MGM presents 米
監督/フランク・ダラボン 主演/トーマス・ジェーン ★★★?
あの『ショーシャンクの空に』や『グリーンマイル』のスティーブン・キング原作、フランク・ダラボン監督の新作なので、霧の中の有害成分がドラマの決め手かと思って見たら、まったく違った。
これは『ドリーム・キャッチャー』の傾向のディザスター・サスペンス。
だからこれ以上は、ルールで書くまい。いや、書けない。
問題はB級の俳優を揃えた、B級娯楽映画の展開の筈が、ダラボンのA級志向のせいか、霧で方向を誤ったのだろうか。
技術的には申し分ないのだが、どうも宗教的なお説教が多すぎて、せっかくの興味も霧のなか。
所詮、ヒッチコックの『鳥』と同じテーマなのだから、問答無用。もっとシンプルに仕上げて欲しかった。
だからラストの決着にも、不満が残る。むしろサイレント映画で、音響だけにした方が怖かったろうに。

●5月10日より、有楽町スバル座などでロードショー

●『庭から昇ったロケット雲』のアメリカン・ファンタジー夢ものがたり。

2008年04月16日 | Weblog
●4月15日(火)13-00 渋谷<ショウゲート試写室>
M-042 『庭から昇ったロケット雲』The Astronaut Farmer (2006)warner brothers 米
監督/マイケル・ポーリッシュ 主演/ビリー・ボブ・ソーントン ★★★☆☆
宇宙飛行士になれなかったテキサスの農夫が、資材を投げ売って、自分の納屋に手製のロケットを作って夢の実現をトライする。家族も従順に全面協力。嘘のような単純なアメリカン・ドリームである。
まるで『フィールド・オブ・ドリーム』のような夢追い男のファンタジーだが、どこかクリント・イーストウッドの『スペース・カウボーイ』のような現実逃避したコメディ感覚もある。
そう、これは初老の男が見た白日夢なのだ。
あまりにも途方もない夢なので、リアリティを求めると置いてきぼりになる。
ゲストで出るブルース・ウィリスも、あの佳作『キッド』で赤い双発機に乗る夢を見ていたが、この夢は宇宙規模だから、こちらのイマジネーションと感性を問われてくる。
わたしなら、一回目の失敗で入院した時に、ビリーがベッドで遠い記憶で見た夢として解釈したい。

●初夏、シャンテシネなどでロードショウ

●『クライマーズ・ハイ』が描いた日航機墜落事故の報道戦争と波紋。

2008年04月11日 | Weblog
●4月10日(木)13-00 六本木ミッドタウン<GAGA試写室>
M-041 『クライマーズ・ハイ』Climber's High (2008)東映/日
監督/原田眞人 主演/堤 真一 ★★★☆☆☆
あの1985年8月12日夕刻。
日航ジャンボ機が524人の乗員乗客を乗せて消えた。
横山秀夫のベストセラー小説の映画化だが、当日の事故現場に近い前橋市。北関東新聞の社内報道デスクの混乱を描いている。
地方新聞社がどれだけ中央の大手全国紙に対して、闘争心を抱いているか。その怒りと焦りのようなガッツが集団男性ドラマとして、迫力があり、テンションも充満している。
主人公の堤は、小さい時にビリー・ワイルダー監督『地獄の英雄』を見て、地方新聞記者の勇気に憧れた。
独自の情報で、全国紙の意表をつく。あの映画では落盤で地中に閉じ込められた男を取材して、そのニュースが人気となったが、人道的な判断がラストで記者に問われた。
この映画のタイトルは、極限の緊張状態が過ぎた時の恐怖感の恐ろしさを意味している。
未曾有の大惨事の真実を、どこまで読者に伝えるのが記者の使命なのか。遺族への配慮を最優先にすべきだが、真相はあまりにも残酷だ。
その問題を男たちはとことん口論する。だから事故現場や世間の混乱事模様は極力配慮して、もっぱら記者たちのデスクの職場戦場を見せて行くのだ。
これだけの俳優たちの個性豊かな好演をまとめた原田監督の力量は凄い。
ただ主人公の個人的な登山のシーンとか後日談は、もっと整理した方がドラマのテンションは上がっただろう。
145分の長尺を一気に見せる事件記者映画として、かなり熱い作品だ。

●7月5日より、東映系でロードショウ

●『幻影師アイゼンハイム』が挑んだ恋のイリュージョン。

2008年04月09日 | Weblog
●4月8日(火)13-00 京橋<映画美学校/第一試写室>
M-040 『幻影師アイゼンハイム』The Illusionist (2006) 米、チェコ
監督/ニール・バーガー 主演/エドワード・ノートン ★★★★
イリュージョンというのは、あまり個人的に面白いとは思わない。
だから試写は遠慮していたのだが、あの英才エドワード・ノートンが出ているからには、何かある。
それが気になって見に行った。
さすがである。
これはイリュージョンの魅力を見事に逆手に使った上質なラブ・ストーリー。
19世紀末のウィーン。人気ものの若き幻影師は、幼なじみのジェシカ・ビールが独裁皇帝の妻にされそうなピンチを、自分の姿もイリュージョンに使って、意外な恋の奪還を試みる。
ま、ほんとかね、とは思っても、そこがこの映画のみりょく。あくなき必死なロマンティシズムには拍手を贈りたい。
時代考察と丁寧なカメラワークが、われわれにも見事なイリュージョンを仕掛けている。
久々に見た恋の快作だ。

●5月下旬、日比谷シャンテシネなどでロードショー

●『幸せになるための27のドレス』のブライド・メイトの復讐。

2008年04月08日 | Weblog
●4月7日(月)13-00 六本木<FOX試写室>
M-039 『幸せになるための27のドレス』27Dresses (2008)fox 米
監督/アン・フレッチャー 主演/キャサリン・ハイグル ★★★☆☆
またしてもウェディング・プランナーの結婚コメディ。
キャサリンはブライド・メイトという、花嫁のエスコートが仕事で、クローゼットには過去に仕事で着た27着のドレスがある。
ところが、妹が、自分の片思いの恋人と血痕することになって、そのブライド・メイトを勤めることになってキレてしまった。
ポスト・メグ・ライアンともいえるキャサリンは、快活でダンスも出来てチャーミング。
役どころとしては無理があるが、無難な映画デビュだ。

●5月31日、日比谷みゆき座でロードショー