細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『西の魔女が死んだ』の語らざるウィッチ・セラピー。

2008年04月05日 | Weblog
●4月4日(金)13-00 六本木<アスミック・エース試写室>
M-038 『西の魔女が死んだ』The Witch of the West is Dead (2008)アスミック・エース/日
監督/長崎俊一 主演/サチ・パーカー ★★★☆
登校拒否をした少女は、山荘にひとり住む祖母に預けられた。
梨木香歩の原作を『8月のクリスマス』などの長崎俊一監督が映画化。
初夏の山梨の山奥で、心の迷いをイギリス人の祖母が、言葉少なに癒して行く。
魔女と自称する老嬢だが、言うことは静かで、真実でストレート。しかしとにかく寡黙である。
生と死。魂と体。自然との融和。とことん、ネイティブ・ライフ。
人間の本質を静かに諭す魔女は、まったく呪文も言わないし、まじないもしない。祈りもしない。
名優シャーリー・マクレーンの実娘のサチ・パーカーは、長く日本で生活していたので、この魔女役は適役だ。
ただ、ひたすらに清楚で朴訥とした映画は、とくにドラマティックなシーンは見せようとしない。
心の病も、人間の死も、自然の中では、ごく些細なことなのだよ、と、映画は言っているのだろう。
しかし、それにしても寡黙な作品だった。

●初夏にロードショウ

●『パリ、恋人たちの2日間』のお疲れスケッチ。

2008年04月04日 | Weblog
●4月3日(木)13-00 京橋<映画美学校/第一試写室>
M-037 『パリ、恋人たちの2日間』2 Days in Paris (2007)仏
監督/製作/脚本/音楽/主演/ジュリー・デルピー ★★☆☆☆
多彩なデルピーとしては『ビフォア・サンセット』のような映画なら、わたしにも作れます、と思って作ったような作品。
ベニス帰りの二人が、彼女のパリの実家で起こすトラブルを描いている。
経費節約でか、ジュリーのご両親までが登場する、いわばファミリー・ピクチャーだ。
自宅で、家族で楽しむのは勝手だが、劇場用に作るなら、もっとシナリオを練る必要があったろう。
思いつきのような会話の連発は『恋人たちの距離』と同様だが、彼らのストレスや逆ギレが単純すぎて疲れてしまう。
所詮、そのレベルの異文化コミニケーションで、会話のズレから喧嘩するのはいいが、見ている方は困ってしまった。
せっかくの自作自演なのだから、美意識や「間」の感覚が見たかった。

●5月、恵比寿ガーデンシネマなどでロードショー。

●『あの日の指輪を待つきみに』埋もれた婚約指輪の追憶。

2008年04月03日 | Weblog
●4月2日(水)13-00 築地<松竹試写室>
M-036 『あの日の指輪を待つきみに』Closing the Ring (2007)scion film 英
監督/リチャード・アッテンボロー 主演/シャーリー・マクレーン ★★★★
第二次大戦のアイルランドで、初恋のフィアンセが、戦地で墜死。
50年の年月の果てに、かつての戦場ベルファーストで土の下から婚約指輪が発見された。
これは事実がベースになったラブストーリー。
その後結婚して家庭を持った夫の葬儀も終わり、指輪を受け取ったシャーリー・マクレーンは、その発見現場に赴く。
自分の人生の起点というよりは、彼女にとっての恋の終わった場所への旅である。
非常に繊細で遠大なテーマを、アッテンボロー巨匠は入念に描いていて、久しぶりにスケールの大きな人間ドラマを見た。
『哀愁』と同じような背景は、たしかに胸に迫る。
残念なのは、若い時代の人間たちの演技に深みが伺えないのだが、ま、そこはマクレーンと、クリストファー・プラマーの好演が補っていて申し分ない感動は残った。所詮は高齢者の感傷ドラマなのだ。
それでも古典的で、重厚、雄弁なドラマに好感が持てた。
ラストで瀕死の兵隊の手を握る老嬢の姿が、無情な時間の隔たりを見せつけて印象的だった。
それにしても困ったのは、この難しく長い邦題だ。
ひとに奨めようにも、このタイトルでは憶えられない。
もっと原題に近いシンプルな題名が、ある筈なのに、残念だ。

●初夏にテアトル系でロードショウ予定

●3月の二子玉川サンセット傑作座上映ベスト/10

2008年04月02日 | Weblog
●3月に見た二子玉川サンセット傑作座(自宅)ベスト/10

●1/『雨に唄えば』(監督/スタンリー・ドネン)52 DVD ★★★★★☆☆
  恐らくこれまでに50回は見ているであろう生涯名作。見るたびに味わいもまた深みを増す健康維持名作だ。

●2/『拳銃の罠』(監督/ノーマン・パナマ)59VHS ★★★★☆
  亡くなったリチャード・ウィドマークの大ファンだったので、彼の最高傑作を告別上映。ああ冥福を祈るのみ。

●3/『抱擁』(監督/チャールズ・ヴィドア)57 VHS ★★★★☆
  声帯を切られた歌手シナトラが、ぼろぼろの人生を這い上がる。彼のベスト映画であることが身に沁み入る傑作。

●4/『殺意の瞬間』(監督/ジュリアン・デュヴィヴィエ)55 DVD ★★★★
  別れた前妻の娘がシェフのジャン・ギャバンに接近する。繊細な感情のズレを巨匠が上質フレンチの味に調理する。

●5/『らせん階段』(監督/ロバート・シオドマーク)45 DVD ★★★☆☆☆
  言語障害のドロシー・マグワイアは犯人を知っているが話せない。ゴシック・ノワールの最高傑作は未だに鮮烈。

●6/『ファーゴ』(監督/ジョエル&イーサン・コーエン)96 LDS ★★★☆☆☆
  秀作『ノーカントリー』の原点を確認したが、やはりまだ兄弟の若さが、コミック風味にこだわり過ぎていた。

●7/『スカーレット・ストリート』(監督/フリッツ・ラング)45 VHS ★★★☆☆
  あの『飾窓の女』のスタッフによる同形の人生転落サスペンス。洒落気ではちょいと堕ちるが、それでも鯛は鯛だ。

●8/『クライ・ベンジェンス(復讐のとき)』(監督/主演)マーク・スティーブンス)54 VHS ★★★☆☆
  出獄したマークは復讐に燃えてアラスカに飛んだが、真犯人は別人だった。非常に無駄のないサスペンス傑作。

●9/『裸の拍車』(監督/アンソニー・マン)53 VHS ★★★☆☆
  ジェームズ・スチュワートは正義のためにバウンティ・ハンターをしているが、その間違いに気がつく人情西部劇。

●10/『プレッジ』(監督/ショーン・ペン) 01 DVD ★★★☆☆
  定年退職したジャック・ニコルソン刑事は、迷宮事件のミスに気付いて独自の捜査を始めたが・・・・。渋い傑作。

☆他に見た傑作は『イグアナの夜』64 リチャード・バートン
 『夜叉』85 高倉 健
 『ザ・セルアウト』84 リチャード・ウィドマーク
 『ディフェンスレス/密会』90 サム・シェパード
 『グレイスランド』98 ブリジット・フォンダ
 『果てしなき夢』59 ディーン・マーティン
 『ハンキー・パンキー』 82 リチャード・ウィドマーク
 『ブラックダリア』06 ジョシュ・ハートネット などでした。 

●3月に見た新作試写ベスト/3

2008年04月01日 | Weblog
●3月に見た新作試写ベスト・3

●1/『JUNO/ジュノ』juno/(2007)fox 監督/ジェイソン・ライトマン 主演/エレン・ペイジ ★★★★☆
   アカデミー作品賞にノミネートされた傑作コメディ。16歳の少女が61歳よりも立派な人間性を育む快感。

●2/『フィクサー』Michael Clayton (2007)米 監督/トニー・ギルロイ 主演/ジョージ・クルーニー ★★★★
   1月に最初に見た時よりも評価が上がったのは、ギルロイのシナリオの細部にやっと感性が反応できたからかな。

●3/『モンゴル』Mongol(2007)ロシア 監督/セルゲイ・ボドロフ 主演/浅野忠信 ★★★☆☆☆
   英雄チンギス・ハーンの栄光よりも、そのダークサイドも見せた。ひとりの男の非常に骨太なドラマとして立派だ。 

●その他には若松孝二監督の『実録/連合赤軍』と、スサンネ・ビア監督『悲しみが乾くまで』が印象的だった。