細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『ミレニアム/ドラゴン・タトゥーの女』は痛快な北欧サスペンスの秀作だ。

2009年11月06日 | Weblog
●11月5日(木)13-00 六本木<シネマート六本木3F>
M-117 『ミレニアム/ドラゴン・タトゥーの女』Millennium (2009) yellow bird/スウェーデン
監督/ニールス・アルデン・オプレヴ 主演/マイケル・ニクヴィスト ★★★★☆
スティーグ・ラーソンの大ベストセラー<ミレニアム/3部作>の映画化。
原作を読んでいないので、かなり宗教的な偏見を持っていたのだが、これは実に面白い犯罪サスペンス映画になっていて、心配だった153分はアッという間。
スウェーデンの孤島。罠にはめられた記者のところに交換条件で、その島に住む富豪一族の女性が40年前から行方不明になっていて、その消息の調査を依頼された。
記者は様々な資料から、この事件は一族内部の犯罪だろうと睨むが、彼の調査パソコンに潜入した不思議な若い女性が、ドラマを横付けしてくる。
つまりふたりのそれぞれのストーリーが次第に一本の話になってくるところが、実に巧妙な構成で飽きさせない。
そしてその奇妙なハッカー女性が、これまたパンクでユニークなキャラクター。
知的なおじさんと、まったく対照的なズレた女性を演じるノオミ・ラパスが出色で、今後のシリーズでの活躍が楽しみだ。
ベルイマンの国から出現した、一級サスペンスの登場に大拍手だ。

●2010年1月下旬、シネマライズなどでロードショー 

●『フローズン・リバー』の凍てつく河を越えるふたりの勇気。

2009年11月05日 | Weblog
●11月4日(水)13-00 京橋<映画美学校第二試写室>
M-116 『フローズン・リバー』Frozen River (2008) 米/カナダ
監督/コートニー・ハント 主演/メリッサ・レオ ★★★☆☆☆
アメリカ国境の映画は、ほとんどが南部のメキシコとの問題がテーマになるが、これは珍しく北部のカナダとの国境が舞台。
夫が生活資金をギャンブルに持ち出して蒸発したために、ふたりの子供を抱えた妻は、パートの仕事だけでは生活ができない。しかも厳寒の国境地帯は仕事もないのだ。
そこに居住区を持つ原住民モホーク族の女性も夫に死なれて、赤子も親族に奪われた。
偶然に知り合ったふたりの女性は、凍てついた国境の河を車で渡って、中国やパキスタンの密入国者たちをアメリカに移送する闇の仕事で、生活費を稼ぐことにした。
たしかに凍った大河を密入国の手段にするという発想は、ありそうなことで、サスペンスも伴う。
しかし監督は、ただの国際犯罪問題をテーマの軸にしないで、あくまで普通の生活を望む女性の映画としてのスタンスを崩さない。そこが新鮮でもあり『テルマ&ルイーズ』に共通したドラマ性が温かいのだ。
主演のメリッサは、この好演でアカデミー賞にもノミネートされたが、モホーク族の女性を演じたミスティ・アップハムの無表情な演技にこそ、この極貧で過疎な地域に住む女性の強さを感じた。
まさに意表を突いた佳作である。

●2010年1月、シネマライズでロードショー

●キネマ旬報/書評<スター発見!>ジェーン・ジェンキンス著

2009年11月04日 | Weblog

 スター原石を見つけ出す方法
     『スター発見!/ A Star is Found !』
      ジャネット•ハーシェンソン&ジェーン•ジェンキンス著 

「えっ、ジュリア•ロバーツの車がエンコしてオーディションに来れないの?」
「宇宙船に乗れなかったジョージ•クルーニーは難破船に乗ることになったわ」
「ブラッド•ピットが消防士になれなかった訳」
「トム・クルーズやジョン・キューサックは高校を抜け出してオーディションに来たの」
「ダスティン•ホフマンが『ホリデイ』にワンカット顔を出したのは?」
「007のシナリオはトップシークレットで読めないから、ダニエル•クレイグのボンド
役決定もまさにスパイ映画並みに極秘作戦だったわ」
「つまり・・・あなたが見た映画には、必ずそれ以前にビッグトラブルがあったのよ」
 10年ほど前に本誌のインタヴューで知り合って以来、ジェーン•ジェンキンスとは
それ以来のメル友だが、その彼女がアソシエイトのジャネット•ハーシェンソンと一緒に
上梓した著書が翻訳されたのを機会に、久しぶりに来日して再会した。
 <キャスティング•ディレクター>という職種が、その映画の配役を決めるということは、
もうかなり前から知られるようになったが、単に有名スターを選ぶということではなくて、
その映画の制作意図に合致して、他の出演俳優たちとうまく融合バランスがとれるかどうかを
迅速に予測し、尚もバジェットを維持しなくてはならない。という責務は苦労が多い。
 つまりは作品の決定的な価値までを左右しかねない重要な選択眼が要求されるのだ。
 そしてその選択によって、作品そのものの商業性や芸術性までが決定される。
 「キャスティングとはスターを選ぶことだけではなくて、作品組織の栄養バランスとして、
どのような配役がベストな化学反応を生み出すかを、予測して決めることで、まるで探偵稼業
のようでもあり、世界中の食材を選ぶ調理師のようなものかもね・・・」
 この本は、フランシス•F•コッポラの推薦で独立し、ハリウッド映画を30年ほどで
恐らく100本近い作品のキャスティングしてきたふたりによって記された、告白的な
初めての実体験著書として、とてもスリリングで興味深いものがある。
 このふたりの推挙なくして、いまのスーパースターたちは存在しなかった、かも知れない。
つまり『スター誕生』でなく、『スター発見!』なのである。
 監修は彼女の朋友の奈良橋陽子さんだ。
 


●『クリスマス・キャロル』スクルージじいさんの空飛ぶ悪夢。

2009年11月03日 | Weblog
●11月2日(月)13-00 六本木<ウォルト・ディズニー試写室>
M-115 『クリスマス・キャロル』Christmas Carol (2009) walt disney pro.
監督/ロバート・ゼメキス 主演/ジム・キャリー ★★★
ディッケンズの名作の3Dによるパーフォーマンスス・キャプチャーで再三の映画化だが、ほとんどハリー・ポッター感覚のCGアドヴェンチャーだから、テーマの崇高さや厳粛さなどは関係ない。
しかもゲイリー・オールドマン、ロビン・ライト・ペンらの名優たちを起用しながらも、まったく本人の顔や姿も最新技術で変えてしまっていて、誰が出ていたのかすら、日本語の吹き替え版ではわからない。
要するにファミリー動画の立体ものだから、家族で見ればいいのだが、それにしてはスクルージ老人の見るナイトメアは恐ろしい。音が派手なのも、いかにもハリウッド公害なのだ。
たった一晩の悪夢で、あの悪態ジジイが会心するというのも他愛ないが、ま、これはクリスマスの定番メニューなのだから、少々ハロウィーンが被っても仕方ないだろう。
ゼメキス監督としては『ポーラー・エクスプレス』の方が好感が持てたなーーー。
それにしても3Dは目が疲れるのだ。

●11月14日より、全国ロードショー

●10月の二子玉川サンセット傑作座ベスト10

2009年11月01日 | Weblog
●10月の二子玉川サンセット傑作座<自宅>ベストテン

1/『めまい』58(アルフレッド・ヒッチコック)ジェームズ・スチュワート DVD ★★★★★
   知人の妻の徘徊癖を依頼されて調査していた元刑事は、謎めいた恋の迷路に迷いこんでしまった。

2/『強迫(コンパルション』59(リチャード・フライシャー)オーソン・ウェルズ VHS ★★★★☆
   エリート学生ふたりは、戯れに少年を殺害してしまったが、弁護士は極刑を避けようとする。

3/『秋刀魚の味』62(小津安二郎)笠 智衆 DVD ★★★★☆
   父ひとりで育てたひとり娘がやっと嫁に行った。歓びと寂しさが交錯する父の孤独な心境を見る。

4/『シーソーのふたり』62(ロバート・ワイズ)ロバート・ミッチャム LD ★★★★
   結婚に挫折した中年男は、都会に逃げて孤独な女性と知り合うが、恋にまた疑問を感じる。

5/『セブンイヤーズ・イン・チベット』97(ジャン=ジャック・アノー)ブラッド・ピットDVD ★★★☆☆
   オーストリアの登山家はナチスの侵攻を逃れてチベットに行くが、ダライ・ラマも中国の侵攻に遇う。

6/『殺人幻想曲』48(プレストン・スタージェス)レックス・ハリスン VHS ★★★☆☆
   妻の浮気を懸念したオーケストラの指揮者は、コンサートで曲の演奏中にいろいろな殺害方法に悩む。

7/『アメリカン・プレジデント』95(ロブ・ライナー)マイケル・ダグラス DVD ★★★☆☆
   妻をガンで亡くした大統領は、選挙運動の女性と交際していることを野党頭首から批判追求された。

8/『ファイナル・デイズ』01(パティ・アビンス)マリリン・モンロー DVD ★★★☆
   62年のマリリン・モンロー変死の数週間のドキュメントと、遺作を修復再現した貴重な映像の真実。

9/『空中ぶらんこ』56(キャロル・リード)バート・ランカスター VHS ★★★
   サーカスのぶらんこで脚を怪我した中年の曲芸師は、若い相棒に一流の舞台を誘われたが、断る。

10/『ジャック・ルビー』92(ジョン・マッケンジー)ダニー・アイエロ LD ★★★
   JFKの暗殺に深く関っていたナイトクラブのオーナーは、オズワルドを殺さねばならない理由があった。

●その他に見た傑作
『夕陽特急』36/ウィリアム・パウエル VHS
『拾った女』53/リチャード・ウィドマーク VHS
『軍法会議』55/ゲイリー・クーパー LD
『黄金の七人』65/ロッサナ・ポデスタ DVD
『男の魂』55/ジョン・ウェイン DVD
『ブレーキダウン』97/カート・ラッセル DVD
『バラの肌着』57/グレゴリー・ペック LD
『マジックタウン』47/ジェームズ・スチュワート LD
『ザ・ファン』81/ローレン・バコール LD などでした。