超極私的2011年邦画ベストテン
1/『マイ・バック・ページ』監督/山下敦弘 主演/妻夫木聡
2/『毎日かあさん』監督/小林聖太郎 主演/小泉今日子
3/『まほろ駅前/多田便利軒』監督/大森立嗣
4/『探偵はBARにいる』監督/橋本 一 主演/大泉 洋
5/『八日目の蝉』監督/成島 出
6/『RAILWAYS』監督/蔵方政俊
7/『ハード・ロマンチッカー』監督/グ・スーヨン
8/『一命』監督/三池宗史 主演/市川海老蔵
9/『奇跡』監督/是枝裕和 主演/前田航基
10『アントキノイノチ』監督/瀬々敬久
☆試写のスケジュールが重なると、どうしても話題性の多い洋画に足が向いてしまい、ことしも多くの邦画を見逃しました。
残念には思いますが、得体の知れない喜劇が多いので、個人的には食傷気味なのです。すみません。
早く高倉健さんの新作が見たいです。来年もよろしく。
●超極私的な2011年洋画ベストテン
(年内国内公開済作品のみ)
1/『ソーシャル・ネットワーク』監督/デヴィッド・フィンチャー 主演/ジェシー・アイゼンバーグ
ボストンの大学生が失恋の腹いせで「フェイスブック」を立ち上げて成功するが、恋は成就できなかった。
2/『ゴーストライター』監督/ロマン・ポランスキー 主演/ユアン・マクレガー
引退したイギリスの元首相の評伝を書くために雇われた貧乏ライターは、思わぬ過去と現実の迫害に襲われる。
3/『ツリー・オブ・ライフ』監督/テレンス・マリック 主演/ブラッド・ピット
アメリカン・ドリームを生きた家族の過去と、確執のイメージをジオグラフィックな映像も絡めた壮大な叙情詩。
4/『家族の庭』監督/マイク・リー 主演/ジム・’ブロードベント
ロンドン郊外でつつましく老後を迎えようとする夫婦を訪れる、友人たちや家族の四季の相克を静かに見つめる。
5/『リメンバー・ミー』監督/アレン・コールター 主演/ロバート・パティソン
長い確執から、やっと父親との接点を見つけた息子は、その日の朝から貿易センタービルのオフィスにいた。
6/『マネーボール』監督/ベネット・ミラー 主演/ブラッド・ピット
7/『英国王のスピーチ』監督/トム・フーバー 主演/コリン・ファース
8/『キラー・インサイド・ミー』監督/マイケル・ウィンターボトム 主演/ケイシー・アフレック
9/『ゴモラ』監督/マッテオ・ガッローネ 主演/トニ・セルヴィッロ
10/『ランゴ』監督/ゴア・ヴァーヴィンスキー 主演/ジョニー・デップ
★以下、「ブラック・スワン」、「ゲット・ラウド」、「ラブ&ドラッグ」、『ヒア・アフター」、「サラの鍵」などでした。
日本映画のベストは明日公表します。
●12月に見た新作試写ベスト3
1/『ヒミズ』監督/園 子温 主演/染谷将太 ★★★★☆
被災地跡で貸しボート屋に住む中学生の、居所のない心の漂流と、彼を慕う同級生の流浪と暴力の日々から芽生える更正の勇気。
2/『ドライヴ』監督/ニコラス・ウィンティング・レブン 主演/ライアン・ゴズリング ★★★★
ハリウッドのスタント・ドライバーが手伝った強盗事件から派生していく泥沼の世界を、クールで新しい感覚で見せた会心のノワール。
3/『J・エドガー』監督/クリント・イーストウッド 主演/レオナルド・ディカプリオ ★★★☆☆☆
初代FBI長官のエドガー・フーバーが闘い抜いた現代アメリカ犯罪史と、彼を支えた母親との深い愛情関係を、またも入念に描いた監督の力量。
3/『戦火の馬』監督/スティーブン・スピルバーグ 主演/馬 ★★★☆☆☆
第一次世界大戦のイギリスで、戦地に移送された馬とそれを飼育した青年が、激戦の砲弾の下で巡り会うまでの壮大な友情の大河ドラマ。
☆今月は他にも「汽車はふたたび故郷へ」「おとなのけんか」「マイウェイ」など、特に印象的でした。
結局、ことしは試写で見たのが、164本。例年のペースですが、選択ミスで見逃した作品も多々ありました。
来年も、このペースで、いい作品をジャスト・ミートして見たいと思います。
また、来年も、細越麟太郎の試写室速報のページを、お楽しみに。
よいお年を、どうぞお迎え下さい。
●12月27日(火)13−00 築地<松竹試写室>
M−164『アンネの追憶』Memories of Anne Frank (2009) focus films italy
監督/アルベルト・ネグリン 主演/ロザベル・ラウレンティ・セラーズ <99分> ★★★
「もうひとつのアンネの日記」というアリソン・レスリー・ゴールドの原作をベースにして、父親の回想で語られる戦争の悲劇。
とくにアンネの親友ハネリの視線で、アンネの悲劇を再現。
あの名作で描かれた内容と、さほど新しい真実は見当たらず、またナチスの残虐な暴挙が展開する。
たしかに舞台劇や、50年代のミリー・パーキンスの映画は、隠れ家の密室ドラマだったが、今回はアウシュヴィッツまでの行程を再現。
しかし、どうしてまた、今になって、あの悲劇を描くのかは、結局は判らない。
戦争の悲劇を忘れないため、というのなら、もっと新しいアングルで見たかった。
すべてが英語で語られるのも不自然だが、ナチスの兵隊が全員達者な英語を話すのも、どうも嘘っぽい。
単に、このフィルムが英語版なのかもしれない。
イタリア映画というのも妙だが、おそらく世界各地の公開を狙ったのだろう。
かなり一方的に誇張されたナチスの残酷さも、今さら時代がかって、困ってしまう。
ま、「アンネの日記」を知らない世代には、恐るべき歴史の悲劇かも知れないが・・・・・。
■平凡なセンターフライ
●来年4月、有楽町スバル座でロードショー
●12月26日(月)13−00 神谷町<ソニー・ピクチャーズ試写室>
M−163『おとなのけんか』Carnage (2011) sony pictures classics
監督/ロマン・ポランスキー 主演/ジョディ・フォスター <79分> ★★★☆☆☆
原題は「大虐殺」というらしいが、これは冗談。
少年がブルックリンの公園で仲間と喧嘩して、前歯を折る怪我をした。
加害者の夫婦が、お詫びに被害者のアパートにやって来て謝罪をした。
当然、治療費も負担するし、良識のある中年都会人として、訪問は実に友好的だった。
ところが持てなしのつもりで出したケーキで、加害者夫人のケイト・ウィンスレットが嘔吐。
テーブルにあった大切な美術本を汚してしまったことがきっかけで口論となる。
些細なことから、とうとう両方の夫婦は一触即発の交戦状態になった。
しかし加害者の夫のクリストフ・ヴァルツの弁護士には、再三ケータイが入るので口論は中断。
ま、ウディ・アレンの得意とするニューヨーカーの他愛ないシーンだが、こちらは79分の長い喧嘩。
よく練られたシナリオと、オスカー受賞の名優たちの芝居で、まるで上質な舞台劇のような面白さだ。
まさに「バージニアウルフなんか怖くない」の都会コメディ。ご夫婦で一緒に見ると愉快な作品。
この達者な演技者4人は、おそらくアカデミー賞にノミネートされるだろうが、誰が主演か助演かで、また口論になりそうだ。
■左中間の凡フライだが、両者が譲り合って落球の間にツーベース。
●2月18日より、日比谷シャンテシネなどでロードショー
●12月26日(月)<12月12日鑑賞済み>ウォルト・ディズニー試写室
M−155『戦火の馬』War Horse (2011) dreamworks/ amblin / touchstone
監督/スティーブン・スピルバーグ 主演/ジェレミー・アーヴァイン <147分> ★★★☆☆☆
イギリスの貧しい農家で育てられた一頭の馬が、第一次世界大戦に戦争馬としてかり出される。
飼育していた少年は、年齢を偽って戦場に赴き、強烈な砲火の中で愛馬を探す。愛馬と少年の愛情物語だ。
この奇跡的な少年と愛馬の、壮大な大河ドラマを、とうとうスピルバーグ本人が演出した。
もともとはロンドンの舞台劇だったという原作。馬の感情をどう表現したのだろうか。
時代設定の忠実さもあって、多くの過去の名画へのオマージュが感じられる作品。
しかし、若い観客には、多少はセンチメンタルなノスタルジーもあろうが、充実した感動大作だ。
いくつかの愛馬との交流シーンは、ラストシーンにも活かされていて、ついホロリ。
馬の演技も、もちろん調教の苦労もあったろうが、恐らくはエモーショナル・キャプチャーの特殊作業だろう。
とくに激戦の砲弾の飛び交う荒れ地を、走り抜ける馬の勇姿は、実写では不可能だろう。
前半の冗漫さは困ったが、この驚くべき戦場映像の迫力だけでも、さすがはハリウッド重鎮の技量の凄さは見て取れる。圧巻だ。
またも今年のオスカーダービーで、かなりの好位置を疾走するに違いない巨編である。
■豪快に左中間を破った長打で、一気にサードまでの疾走。
●3月2日より、全国ロードショー
●映画とジャズのFMサウンド・カフェ●
『シネマッド・ジャズ・カフェ』CINEMAD JAZZ CAFE(FMたちかわ/84−4mhz)
今夜の放送/ Vol.077『ハッピー・クリスマス・ナイト』Happy Christmas Night
司会/鵜飼一嘉+選曲・解説/細越麟太郎
★12月25日(日)午後8時ー9時放送
●好評につき、毎翌週金曜日の午後7時からも再放送されています。
★曲目メニュー紹介
1/『ハッピー・ホリデイズ』唄/マンハッタン・トランスファー
2/『クリスマス・ソング』演奏/アーサー・ブライス
3/『ロンリー・ウィザウト・ユー・イン・クリスマス』唄/ミック・ジャガー<映画『アルフィー』より>
4/『ウィンター・ワンダーランド』唄/デイブ・コーズ
5/『ディセンバー・ソング』唄/カトー・カズヒコ
6/『ベイビー・ジャスト・ライク・ユー』唄/フランク・シナトラ
7/『ホールド・オン・アイム・カミング』演奏/ハービー・マン
★今週の映画紹介/『ニュー・イヤーズ・イブ』主演/ハル・ベリー
●<FMたちかわ>のホームページから、サイマル放送で検索すれば、パソコンでも聞こえます。
★次回のこの番組は、新年第一弾として1月8日(日)「ハッピー・ニュー・イヤー・ジャズ」と題して、元気のでる新年らしいジャズを。
どうぞ、ご期待ください。よいお年をお迎えください。
●12月22日(木)15−30 六本木<アスミック・エース試写室>
M−162『しあわせのパン』(2011)@ムービー、二十CUE/日
監督/三島有紀子 主演/原田知世 <114分> ★★☆☆
ま、こーゆー映画もある。という意味では不思議な作品。
例のオフ・ビートな「プール」や「トイレット」のようなスノッブな味もない。
まるで焼きたてのパンのように、ただのパンのような、それだけのトッピングのない作品だ。
おとなの漫画。人畜無害な少女コミックのような。時空が停止したような空白の時間が狙いだったのだろう。
都会を捨てた夫婦が北海道の洞爺湖を見下ろす丘で、オーベルジュのようなパン屋をしている。
そこに訪れる客のエピソードが、四季に分けられて語られるオムニバス。美しい季節の風景が無為に美味しい。
しかし、人間のドラマとしては、隔世の感のある「絵空事」だ。虚空のようだ。
ほわーっとして、息抜きの気分で見るにはいいかもしれないが、メルヘンとも違い、退屈な時間だった。
まるで無印良品のブレッド・カフェのような、無色な気分。
それでも、こんな夢に憧れる女性の気持ちも判るが、もっとリアルな味つけの工夫が見たかった。
■ほわっと上がったファーストのファールフライ。
●1月28日より、全国ロードショー
●12月22日(木)13−00 六本木<シネマート試写室3F>
M−161『ヒミズ』(2011)studio three / GAGA 日
監督/園 子温 主演/染谷将太 <129分> ★★★★☆
非常にパワフルな青春映画だ。
震災と津波で被災した地域に住む少年染谷は中学生。
両親は被災を期に援助金を持って蒸発。沼地にあった祖末なボートハウスに住む家の周囲には家を流された人々がテントで暮らしている。
父親が残した600万円の借金を取りに土地のヤクザが脅しに来る。
ボコボコにされながらも、少年は立ち上がる。
地獄のような青春だが、人生は一度。彼には二階堂ふみのガールフレンドがいる。
酔って戻って来た父は「お前などは津波で死んでしまえばよかった」とホザく。
キレた染谷は、瓦礫のブロックで父を殴り殺して沼地に埋めた。
古谷実の原作は10年前のコミックだというが、監督は見事に被災した現代に脚色。
その凄惨な視覚が、よけい粗あらしくドラマを締めつける。見事な設定だ。
「ヒミズ」とは、地中に生息するモグラのような生きものらしいが、少年は津波で起こされたのだ。
不条理な現実に、ストレートな若さをぶつける主演のふたりが、とにかく素晴らしい。
その危なげな生き方にも、純粋なハートは生きている。それが力強い。
ラストシーンの「住田、がんばれ!!」の声が、まだ耳に残る。声援を送りたい傑作だ。
■レフトスタンドに突き刺さる会心のホームラン
●1月14日より、新宿バルト9ほか全国ロードショー
●12月21日(水)13−00 築地<松竹本社試写室>
M−160『最高の人生をあなたと』Late Bloomers (2011) gaumont / canal+ 仏/英
監督/ジュリー・ガヴラス 主演/イザベラ・ロッセリーニ <90分> ★★☆☆
タイトルに惹かれて見たが、原題は(遅咲きの人々)というのか、「大失態」という意味もあるらしい。
要するに、人生の終盤を迎えつつある夫婦だが、気分の切り替えができないでいる二人の話。
誰だって実年齢よりは、自分は若いと思っている。
ところが実は体はかなり疲れている。それは病気になって実感する。
しかし元気であると、ついつい自分の年齢を忘れて、バカなこともしてしまう。
この認識の誤差を描いた夫婦の映画。人生の峠は過ぎているのに、まだ気分は落ち着きがないのだ。
建築家のウィリアム・ハートは、老人ホームの設計よりも新しい都市開発に興味がある。
妻のイサベラも勝ち気だが、時々記憶が途切れる。
そんな時、元気だった祖母が急死した。
傑作「家族の庭」のような夫婦年齢設定だが、こちらはシナリオが平板なうえに、演出も力がない。
従って、ただ時間に流されるような、抑揚のないドラマでかなり退屈した。
どこの家族だって、これ以上のドラマは抱えている筈。でもこれでは癒しにもなるまい。
母上のイングリッド・バーグマンの「秋のソナタ」には遠く及ばないイザベラだった。
■平凡なファーストゴロ。
●1月中旬、BUNKAMURAル・シネマでロードショー