●11月26日(月)13−00 築地<松竹映画本社試写室>
M−140『レッド・ライト』Red Lights (2012) parlay films / nostromo pictures
監督/ロドリゴ・コルテス 主演/キリアン・マーフィー <114分> プレシディオ配給 ★★★
超能力者で、霊媒師のトリッキーな悪徳事業を究明すべく、物理学者のシガニー・ウィーバーは、助手のキリアンと共に儀式を体験する。
もともとは手品師の巧みなトリックを、心霊という超自然な強制的な体感テクニックで金を巻き上げる。
いま盛んに取り沙汰されている「振り込め詐欺」にも似た偽装手段は巧妙で、あの「スパニッシュ・プリズナー」も手を焼いた。
不況と病魔と貧困は、つねにいつの世の中にもあって、多くのカルト集団を生んだ。
その謎めいた手段は、ノーマルな生活をしている我々には、とても測り知れない。
人気の霊媒師ロバート・デ・ニーロが、久しぶりに公開の降霊術を披露するので、大きな劇場も満席だ。
物理学者は、彼が何かの巧妙なトリックで、外部のアシスタントから情報を得ていると推察。
短波の周波数を探ったり、視覚的な手品の手法をビデオカメラで究明しようとする。
しかしボディガードの殺し屋たちに、その捜査は妨害されて、シガニーは自然死させられた。
人間は、とかく自分の視覚で見たものしか信用しない。そこが彼らの狙いなのだ。
異色のシチュエーション・スリラー「リミット」の監督の最新作。
毎度お騒がせなデ・ニーロが、今回は白濁の義眼で、この怪人超能力者を怪演している。
ハンニバル・レクターのような特異なキャラを、またしても悪どく演じてみせるのが、最大の見所だ。
たしかに映画だって、スクリーンに写っている映像しか見えていない。謎はとても深すぎてワカラナイのだ。
■フルカウントで、いきなりドラッグバントを試みるがキャッチャーフライ。
●2013年2月15日より、全国ロードショー予定
●11月22日(木)13−00 六本木<FOX映画試写室>
M−139『ルビー・スパークス』Ruby Sparks (2012) 20th century fox-searchlight
監督/ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス 主演/脚本/ゾーイ・カザン 提供/ミラクルヴォイス ★★★☆☆
天才は隔世遺伝するものらしい。
あの「エデンの東」や「波止場」の名監督エリア・カザンの孫娘のゾーイがシナリオを書き主演した。
いちどベストセラーを書いた若い作家ポールは、そのプレッシャーで第2作が書けない。
夜な夜な悩みすぎて、幻覚で理想の女性が現れるようになった。
おかしなことに彼女は、タイプライターの文章で、何と創作通りの行動をとる。
そして理想の女性は、作家の彼女として、友人たちも認める仲となったが、やはり感情のもつれが出て来るのだった。
アイデアは、ウディ・アレンの「ボギー、俺も男だ!」に共通しているが、心理的には「アニー・ホール」に近い。
監督は「リトル・ミス・サンシャイン」で評判になったコンビだけに、テンポは上々。
ウェスト・ハリウッドの高台に瀟酒な住まいを持つ作家は、またも理想の女性ルビーの暴走に悩むのだ。
所詮、理想の女性といっても、男性の思うようにはいかない。
イメージの人形だった筈のクリーチャーが自我を持ち、彼の心を翻弄する。これが生きた女性の本来の姿。
そして彼は文章の最終稿で、ルビーと別れることにして、それが、やっとまたベストセラーになる。
現実の悲惨から生まれた、恋の物語には、これから意外にスマートなエンディングが待っていた。
そうそう、むかし、リタ・ヘイワース主演「ヴィーナスの接吻」という傑作があったのを思い出した。あれにそっくりだ。
ノーラ・エフロンや、エレイン・メイのような奔放な女性作家のようなラブストーリーだが、モダーンで案外面白い。
それは現実と、理想の狭間をきっちりと線引きして描いたゾーイのシナリオの聡明さだ。
女性版ウディ・アレンの登場はいいが、映画のラストのように、今後に期待したい。
■狙いすました左中間へのクリーンヒットは見事にツーベース。
●12月15日より、渋谷シネクイントでロードショー
●11月21日(水)13−00 銀座<TCC試写室>
M−138『明日の空の向こうに』Jutro Bedzie Lepiej (2010) kid films ポーランド
監督/ドロタ・ケンジェジャフスカ 主演/オレグ・ルイヴァ <118分> パイオニア/シナジー配給 ★★★☆☆☆
旧ソ連の荒廃しきった小さな街。
駅のベンチの下で寝泊まりして、捨てられたパンを食べて餓えをしのいでいる3人の少年。
まだ6歳のオレグは、無邪気にシケモクを吸っている。
戦後の混乱で家族を失ったホームレスの子供たちは、ヨーロッパ各地にいるが、ここの貧困も地獄だ。
極度の不況で、職も宿もない現実だが、オレグの兄とその悪友3人組の子供たちはすこぶる陽気で元気だ。
その現実から脱出すべく、彼らは夜の闇のなかを国境の先のポーランドへの脱出をこころみる。
決死の国境脱出は成功したが、そこには、もっと厳しい現実が待っていた。
よくスパイ映画などで見る迫真のサスペンスだが、少年たちはドジなので、いたってユーモラス。
演出は先年「木洩れ日の家で」で好評の、ポーランドの女性監督。
さすがに繊細な視線で、少年たちの無垢な表情を追う。
しかし、ほとんど台詞にない映画だけに、この作品の製作、撮影、編集をしたアルトゥル・ラインハルトの力量が光る。
多くの過去の<戦争と子供>を扱った名作のように、この作品でも、少年たちの目が美しい。
「スタンド・バイ・ミー」のような深みはないが、ただ生きようとする彼らの勇気には心が動く。
試写室で隣の席にいた女性は、ほぼ全編涙を流していたが、これは彼女の母性が刺激されたからだろう。
いまだに世界のどこかで、このような極貧に生きて行く子供たちがいる。ユニセフは全面推薦すべき作品だろう。
でも、あくまで、これは反政治映画ではなくて、少年たちの夢を描いた作品、と理解したい。
■渋い当たりのショート後方に堕ちたポテンヒット。
●2013年1月26日より、新宿シネマカリテほかでロードショー
●11月21日(水)10−00 六本木<シネマート3F試写室>
M−137『バチェロレッテ/あの子が結婚するなんて!』Bachelorette (2012) strategic motion ventures llc
監督/レスリー・ヘッドランド 主演/キルスティン・ダンスト <88分> ギャガ配給 ★★★☆
タイトルは「独身女子」のこと。しかも賞味期限ギリギリの女子。
マンハッタンのセレブグループで、一番デブでドジでブスな女子が、一番先に結婚することになった。
しかも相手はイケメンなトップ・エリート・ビジネスマン。
「そりゃないでしょー!!!」と顔面蒼白で怒ったのが、同僚の美女グループだ。
ブライドメイツのプライドが怒りと羨望と愚痴に変わる。
それも、まあ、言いたい放題の暴言炸裂。
まさに「ベストフレンズ・ウェディング」の悪夢再来。しかも仲良しグループの崩壊寸前の不祥事なのだ。
これは「ハングオーバー」の女子版であって、あの「ブライズメイツ」の団体ブロードウェイ版。
女子優位の、まさに女子大エリートの更衣室のような、男性禁止用語の爆発。
当然、原作、脚本、監督のレスリーはオフ・ブロードウェイの出身だから、巧みにキワドいセックス用語が飛び交う。
女子だけの飲み会のノリなので、門外漢のわたしはニヤニヤと傍観したのみで、開口不言。
「セックス・アンド・ザ・シティ」のように、女性専用のバーゲンセールのような賑わいは、当然、女子には受けるだろう。
いまや女性パワーが社会を先導する。その恐怖の最前線の迫力を見た思いだ。
ふと、なぜか、これって、もしかしたらゾンビ映画じゃなかろーーーか、と思った次第。
■パワー打法でショートの股間を抜くイレギュラーヒット。
●2013年2月22日より、TOHOシネマズ六本木ヒルズなどでロードショー
●11月19日(月)13−00 目黒<ウォルト・ディズニー映画試写室>
M−136『フランケンウィニー』Frankenweenie (2012) モノクローム3D作品/walt disney production
監督/ティム・バートン (声)マーティン・ショート <字幕スーパー版/97分> ★★★☆☆
まさにティム・バートンならではの、懐かしくも怪奇なアニメーション・ダーク・コメディだ。
50年代の新興住宅地。アメリカン・ドリームを絵にしたような「シザーハンズ」の世界。
内気な少年ヴィクターは、学校から帰ると、すぐに愛犬スパーキーと天井裏の自分の研究スペースで遊ぶのが日課。
まさにビンセント・プライスそっくり先生の科学の実験で、蛙の死骸に電流を通すと、一時的に生命が甦生することを知る。
ある日、校庭で野球の試合中に、ヴィクターの打った打球を、スパーキーが追っていき、車にはねられて死んでしまった。
深い悲しみの彼は、雷雨の夜に天窓を開けて、避雷針の電極を用意して、墓から掘り出した愛犬の死骸に結び、落雷を待った。
案の上、激しい落雷で、継ぎはぎだらけの愛犬ウィニーは生き返ったのだ。
そう。あのフランケンシュタインのように。
さあ大変。それを知った悪友たちは、それぞれに亡くなったペットやコウモリを、避雷針に結んで落雷を待った。
すべてのシーンの、すべてのアイデアは、むかしのフランケンシュタイン映画からの借用だが、もちろんバートン流。
モノクロームのストップモーション技術による特殊映像は、まさに彼の怪奇趣味ファンタジーだ。
しかも3Dの立体効果なので、おそらく幼い子供さんが見たら、恐怖ショックがトラウマになるであろう、すごい迫力。
これが、ティム・バートンのクレイジーで魅力的なブラック・ファンタジーの集大成なのだ。
■高く上がったフライがドーム球場の天井のライトに当たり照明が消えたツーベース。
●12月15日より、全国お正月ロードショー
●11月15日(木)13−00 六本木<シネマートB1試写室>
M−135『カラカラ』Kara Kara (2012) telefilm canada, mongrel media / カナダ+日本
監督/クロード・ガ二オン 主演/ガブリエル・アルカン <104分> ビターズ・エンド ★★★☆
カナダの映画プロダクションが、全編を沖縄でロケしたロード・ムービー。
モントリオールで大学教授をリタイアした独身のガブリエルは、親友の死のショックを忘れようと沖縄に来た。
気功のレッスンを受け、那覇の街で迷っていたところを、離婚係争中の工藤夕貴と知り合う。
沖縄の織物、芭蕉布の魅力に惹かれたガブリエルは、心の拠り所を求めて産地の伊兵屋島にわたることにした。
傷心のひとり旅に、トラブルをかかえた女性が、ガイドに加わった。
お互いの心の傷みを話つつ、ふたりは意気投合して関係を持つ。
ま、センチメンタルな心の旅路。あの「旅愁」のように、旅はそれぞれの心を癒すのだ。
タイトルの「カラカラ」とは、地元の泡盛を飲むための<とっくり>で、空になって振ると音がする。
そのカラカラという音と、からっぽになった心の放浪を表している。
今年のモントリオール国際映画祭で、世界に開かれた視点にあたえる賞と、観客賞をダブル受賞。
ときどきフランス語と、壮年の旅人の唄うシャンソンが、妙に「男と女」のように、気分をそそるのだ。
仕事と家庭と友人を失った孤独な男の旅は、第二の人生のヒントにはなるだろうか。
心に孤独な障害のある男には、こうしたひとり旅はいいが、これほど巧くはいかないだろう。
■出したバットにボールが当たり、ショート前で失速した、まぐれ内野安打。
●2013年、1月19日より、新宿ピカデリーなどでロードショー
●11月13日(火)13−00 京橋<テアトル映画試写室>
M−134『フリーランサー/NY捜査線』Free Lancer (2011) lionsgate, / grindstone entertainment
監督/ジェシー・テレロ 主演/カーティス・50セント・ジャクソン <96分> ハピネット+フリーマン・オフィス ★★★☆
あの名作「トレーニング・デイ」のニューヨーク版。
しかも、今回は大都会の司政と裏組織と警察機構の腐敗が、かなり悪化しているという最悪のパターン。
父親の不審な死因を追求すべく、警察学校に入学した黒人青年カーティスは、いきなり指導員から麻薬を強要される。
その刑事のフォレスト・ウィテカーも、白昼堂々とドラッグをやる始末。
しかも他の刑事たちも、警察をリタイアしたロバート・デ・ニーロらが、暗黒組織の金集めをしている実態を知る。
ドロまみれになりながら、青年は腐敗しきった泥沼な日常から、父の堕ちた罠を突き詰めて行く。
ほとんど全員悪者の「アウトレイジ」ニューヨーク版。
それをアカデミー受賞で監督経験のある、ふたりの名優の支えで作られたノワール・アクションはハンパじゃない。
とにかく薄暗い夜の路地裏の世界なので、見ていても落ち込むが、これが作品の狙いだろう。
久しぶりにキレまくるデ・ニーロと、ウィテカーのやりたい放題の暴れっぷり。
エッジの効いたカットワークを見せるテレロの演出もいい。
インサートで見せるマンハッタンの夜景も、この作品では地獄の炎のようだ。
スタンリー・クラークのラップの効いたロックが、実にファンキーな気分に落とし込む。
非常に辛口な、ハードボイルド悪徳刑事映画。
■強烈なゴロがセカンドベースを蹴ってセンターに抜けるヒット。
●明年1月12日より、シネマート新宿などでロードショー
●11月12日(月)13−00 内幸町<ワーナー・ブラザース映画試写室>
M−Ⅱ 『人生の特等席』Trouble with the Curve (2012) warner brothers / malpaso company
監督/ロバート・ロレンツ 主演/クリント・イーストウッド <111分> ★★★☆☆☆
最初は9月26日に見たのだが、また二度目の試写室鑑賞。こんなことはめったにない。
理由は、この作品がひどく好きなのだが、最初に見た日には、前後に用事があってバタバタしていて、落ち着きがなかった。
そこで今回は、この映画のように、のんびりした気分で味わったのだ。
係の女性にも、「またいらっしゃると思っていました」と言われたので、ニヤリ。
試写室も混んでいたので「今日は人生の外野席で見るよ」と、一番奥のテーブル席で見ることにした。
この席の方が、のんびり映画を傍観できるのと、ワーナー映画の試写室はスクリーンがデカイので、ここが実はお気に入りの「外野席」。
やはり、じつにゆったりとしたシニア向きの作品で、50年代のハリウッド映画のような気分。
これが最近の作品にはない懐かしさ。ハートビートが同調するのが、気分を和ませる。
やはり一番に泣かせるのは、クリントが30年前に亡くなった奥さんの墓参りをするシーン。
青天白日の墓地で、「ユー・アー・マイ・サンシャイン」を呟くようにクリントが唄う、その緩いタイミング。
久しぶりに、俳優としてのイーストウッドの巧さを魅せられた。
メジャーリーグのスカウトマンの話というよりは、ただの老人の人生の「終焉の美学」を見た思いだ。
やたら幸せな時間だった。
★軽いスイングが意外に伸びて左中間のフェンスへ。
●11月23日より、丸の内ピカデリーほかで全国ロードショー
<PS> 帰宅して夕刊を見てびっくりした。
朋友の石上三登志こと、今村 昭さんが6日に亡くなったという。
五反田のイマジカの試写室でお会いしたが、お元気だったのに。
一緒にハリウッドに行ったり、わが家で深夜まで飲んだ思い出がこみ上げる。
楽しみにしていた「007/スカイフォール」は、あちらで見て下さい。
ご冥福を、心からお祈りします。
●11月10日(土)13−00 赤坂<ジャズクラブ・バードランド>
SSJ『フランク・シナトラ・ソサエティ・ビッグ・ビッグ・ビッグ・パーティ』
special guest GARY WILLIAMS show<ゲイリー・ウィリアムズ・シングス・シナトラ>
★★★★☆
シナトラ生誕97年記念の、例年のパーティが赤坂の「バードランド」で開催された。
しかし、12時の開場と同時に満席の盛況で、10分遅れで入場したら座席はなく、唖然。
どうにかステージ左横奥の、ピアニストの後ろにスツール席を用意してもらい、さっそくビールとピザなどでランチ。
初来日のゲイリー・ウィリアムズは、現在、もっともシナトライズされた歌手で、CDも好評。
いきなり15人編成のビッグバンドをバックに「オール・オブ・ミー」から盛り上がり、一気に23曲ほど。
ほぼネルソン・リドルとビリー・メイのアレンジなので、バンドの切れ味も最高の気分だ。
スイングとバラード、それに「ブラジル」や「イパネマの娘」のようなラテンもアクセントにして飽きさせない。
「カム・ダンス・ウィズ・ミー」と「カム・フライ・ウィズ・ミー」のメドレーには大喝采だ。
わたしの席からゲイリーは、2メートルほどの至近距離だが、ほとんど背中を見ていて、バンド・メンバー気分。
それでも、時々振り向いては、ウィンクをくれる気遣いを見せて、なかなかのショウマンぶりだ。
アンコールでは「ソフトリー・アズ・アイ・リーブ・ユー」のソロには、自信のほどが伺えた。
次回の再来日を約束してのステージは、久しぶりにスイング感充満の至福だった。
終了後、スツールのすぐそばにいた美人ピアニストの田中奈緒子さんとアドレス交換。
混雑したが、これもご利益だ。いいこともある。
●二次会では、シナトラ初来日の1962年6月の日比谷公園野外ステージの実況映像が90分。
何と50年ぶり。当日のわたしの姿を客席に発見して、突然のタイムスリップ。まさかガムを噛みながらのシナトラ見物とは。
うれしくて、つい当日の記憶をステージでスピーチしてしまった。失礼しました。
●11月9日(金)13−00 渋谷<ショウゲート試写室>
M−133『ドリーム・ハウス』Dream House (2011) universal studios/ morgan creek pictures
監督/ジム・シェリダン 主演/ダニエル・クレイグ <92分>アルシネテラン、ショウゲート配給 ★★★☆☆
またしても、ジェームズ・ボンド氏、最悪のトラブル。しかも、ここでは時空も越える悪夢だ。
先日見たばかりの「ボディ・ハント」も、訳ありの家に住んだためにトラブルに巻き込まれるスリラーだったが、これも大変。
マンハッタンでの職を辞して、コネチカットの新居に家族と住むことにした作家志望のダニエルは気分一新。
しかし、この家も家族も、どうも変なのだ。ドリームとは<夢>でなく、<悪夢>の方。
一体全体、何で5年前に殺人事件のあったという家を、わざわざどうして彼は買ったのだろう。
しかも実は、家は古いし、妻やふたりの娘も、隣人の凝視も、どうも他人行儀でおかしいのだ。
前半は、この違和感も、ドラマの不具合も、何かあるのかなーーと見ていると、後半はガラリと仰天展開する。
ミステリーなので、ここでネタばらしは無礼なので、ルールとしてできないが、実はかなり大胆で面白い。
メジャーなユニヴァーサルと、モーガン・クリークが大スターを起用しての新作。
しかし作品の質が、非常にマニアックなので、日本配給の東和映画が投げ出したという心配も判る。
いつも、かなり知的でエモーショナルな傑作を作る監督だから、たしかにドラマは入念。
そうか、5年前の事件と現在とは、まったく別のドラマなのか、と気がつくと、このミステリー、なかなかの曲者なのだ。
でなかったら、多忙なボンド氏や、ナオミ・ワッツ、レイチェル・ワイズなどが、一緒に出る筈もない。
映画や小説の専門的な推理レトリックに興味のアル学生さんや、専門家は必見の異色作だ。
終わってからの謎解きには、映写時間よりも時間がいる難物だ。
■サード強襲の当たりがファールグラウンドへ、それを慌ててセカンドに暴投。
●11月23日より、シネマサンシャイン池袋などでロードショー