細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『パガニーニ・愛と狂気のヴァイオリニスト』のホンモノのテクニックは唸る。

2014年05月10日 | Weblog

5月7日(水)13-00 六本木<シネマートB3試写室>

M-046『パガニーニ/愛と狂気のヴァイオリニスト』Paganini / The Devil's Violinist (2013) beta cinemas / summer storm entertainment 独

監督・バーナード・ローズ 主演・デイヴィッド・ギャレット <122分> 配給・アルバトロス・フィルム ★★★☆☆

パガニーニのことは、よく知らなかったが、名前はラフマニノフの曲で知っていた。という浅い知識で見たので面白かった。

サブ・タイトルの<愛と狂気>というのは、ほとんどのクラシック音楽のミュージシャンに共通しているので困ったものだが、たしかにパガニーニもかなりキレていた。

これをもし普通のドラマ俳優が演じたらウンザリするだろうが、ご本人もかなりのヴァイオリニストであり、人気と実績のうえに、なかなかのイケメン俳優なことも成功要因。

しかもご本人のデイヴィッド・ギャレットが、企画を提案してプロデュースもしているのだから、海老蔵の歌舞伎映画のように、これは<ホンモノ>の保証書つきなのだ。

愛人との間にできた長男に、音楽を伝授している善きパパだが、酒や麻薬やギャンブルに明け暮れるパガニーニは札付きの放蕩楽士。しかし、その音楽テクニックは凄腕。

1830年のイタリアで絶頂期だった彼のスキャンダラスな日々は、さすがに濃厚な当時のブルジョアの時代考証で、文句なしの伝統と風格を見せて飽きさせない。

若いオペラ歌手との共演から、片思いの恋の地獄におちるが、ともかくその共演のステージ・シーンは、ギャレットのさすがの実演も光って素晴らしい。

ま、事実に忠実にこだわったのだろうから、堅実なバーナード・ローズの演出に文句をつける気はないし、このての伝記映画としては上等の作品になっている。

とくにギャレットのヴァイオリンのテクニックは素晴らしく、おそらくパガニーニ自身も、このような華麗な演奏で、若い女性たちを失神させていたのだろうことは伺える。

ただ、もし、ヴィスコンティのマーラーを描いた「ベニスに死す」ほどの、詩的な洞察と美学があったなら、もっともっと上質な作品になれたろう。その素材はあった。

それでも恐らくヴァイオリニストの方々がご覧になっても、このギャレットの演奏には魅了されるだろう。ホンモノの威信が、そこには光っていた。

 

■自信の初球狙いは完璧な左中間へのツーベース。

●7月11日より、日比谷シャンテ他でロードショー 


●キレたウィドマーク、車で密航機に激突。4月の傑作座ベスト。

2014年05月08日 | Weblog

4月の二子玉川サンセット傑作座(自宅)上映ベストテン

 

1・『拳銃の罠』59(ノーマン・パナマ)リチャード・ウィドマーク<VHS>★★★★

  国外逃亡の組織ボスのガードしていた弁護士は、立ち寄った故郷で保安官の父親が殺された事に逆上して、逃走機にパトカーで体当たりをする。

 

2・『キャット・ピープル』42(ジャック・ターナー)ミシェル・シモン<LD>★★★☆☆☆

  セビリア出身の新妻は、先祖に猫科の血統と霊が入っていると思い込み、夫の愛を拒み、少しずつその性格も変化していくニューロティック・ノワール。

 

3・『破局』50・(マイケル・カーティス)ジョン・ガーフィールド<DVD>★★★☆☆

  マイアミの貸し船のオーナーが犯罪者たちの密航を夜間搬送。ヘミングウェイの「脱出」を、より原作に忠実に再映画化したガーフィルドの代表傑作。

 

4・『パリ横断』56(クロード・オータン・ララ)ジャン・ギャバン<VHS>★★★☆☆

  ナチスのパリ占領下に、食肉を偽装して深夜の街を運搬した二人の男が、数十年後にパリの北駅で偶然に再会したときの感動と皮肉。ギャバンの苦笑。

 

5・『容疑者』44(ロバート・シオドマーク)チャールズ・ロートン<DVD>★★★☆☆

  善良な実業家は、性悪な妻を殺して完全犯罪を装うことに成功したが、少しの疑惑を捨てきれない老刑事は執拗に容疑の糸口を掴んで行くサスペンスの妙味。

 

6・『暗黒街の弾痕』37(フリッツ・ラング)ヘンリー・フォンダ悪役<LD>

7・『13号桟橋の女』51(ロバート・スティーブンス)ロバート・ライアン疑惑の赤狩り<VHS>

8・『夜ごとの美女』52(ルネ・クレール)ジェラール・フィリップ画家の夢想<VHS>

9・『昭和残侠伝・人斬り唐獅子』59(山下耕作)高倉健必殺のドス<DVD>

10・『暗闇に響く銃声』51(ジョン・スタージェス)スペンサー・トレイシー殺害さる<DVD>

 

★その他に見た傑作は・・・・

『酒とバラの日々』62・ジャック・レモン

『四月のパリ』52・ドリス・デイ

『アーカディン・秘密調査報告書』55・オーソン・ウェルズ

『愚かなり我が心』50・スーザン・ヘイワード

『恋のロンドン狂騒曲』10・ウディ・アレン

『拳銃の報酬』59・ロバート・ライアン

『遅れて来た死神』81・リノ・ヴァンチュラ

『仮面の情事』91・トム・ベレンジャー

『黄金の首飾り』47・レイ・ミランド・・・・・などなど。 


●1953年のエベレスト初登頂を3D映像で再現した偉業が4月の試写ベスト。

2014年05月06日 | Weblog

4月に見た新作試写ベスト3

 

1・『ビヨンド・ザ・エッジ』監督・リアン・プーリー 主演・チャド・モフィット ★★★★

   1953年にイギリスの登山家ヒラリーとシェルパが、世界最高峰のエベレスト登頂に成功するまでの日々を、忠実に堅実に3D映像で再現した勇気と感動。

 

2・『人生はマラソンだ!』監督・ディーデリック・コーパル 主演・ステーファン・デ・ワレ ★★★☆☆☆

   倒産寸前の中古車修理工場のオヤジたちが、それぞれのトラブルを抱えつつ、マラソン完走の分配金のために人生最後の勝負に出るという汗と涙と感傷。

 

3・『私の男』監督・熊切一嘉 主演・浅野忠信 ★★★☆☆

   オホーツクの流氷を背景にした男と、娘のように年齢の離れた女との情欲の日々に、事件性を嗅ぎつけた刑事が殺された。桜庭一樹の情欲小説の映像化。

 

☆『パークランド・ケネディ暗殺、真実の4日間』監督・ピーター・ランデズマン・・・・・あの日のダラスの病院での混乱を描いたアメリカの悲劇。

その他に見た試写では、

★『トランセンデンス』ジョニー・デップ主演

★『ラストべガス』ロバート・デ・ニーロ主演

★『複製された男』ジェイク・ギレンホール主演・・・が、おもしろかった。デス。 


●『オー!・ファーザー』の受難だらけな伊坂インシデント。

2014年05月03日 | Weblog

4月30日(水)13-00 内幸町<ワーナー・ブラザース映画試写室>

M-045『オー!ファーザー』Oh! Father (2014) yosimoto creative agency / warner brothers

監督・藤井道人 主演・岡田将生 <103分> 配給・ワーナー・ブラザース映画 ★★☆☆☆

伊坂幸太郎の原作映画化では「重力ピエロ」と「フィッシュ・ストーリー」が非常に面白くて好きだった。

日常的な状況なのに、かなりアンバランスでクレイジーな状況がミックスされた不自然さが、いかにもリディキュラスな空気を作っていた。

この作品では、なぜか4人の父親と生活している高校生の災難を描いているが、先日見たばかりの韓国のノワールもどき映画「ファイ」と同じだ。

ま、発想はアレクサンドル・デュマの「四銃士」のもじりなのか、ただ、麻雀仲間が居座ったのか、さっぱりワケが判らない生活状況から事件となる。

これも「伊坂ワールド」の設定の不自然さからの発想なので、問題の「妻」という女性が終始不在なので、これって「白雪姫」の小人たちなんだ。と勘ぐる。

コーエン兄弟の「オー・ブラザー!」とは、もちろん、関係ない。でも、4人のオヤジがいて、どうしてタイトルは「ファーザーズ」にならないのか。変。

レンジャーズのダルビッシュ投手にそっくりな岡田青年は、不登校の友人の消息を探ったことから、とんでもない拉致事件に巻き込まれて行くという設定は定番。

ただし、この作品は、ワーナーは配給だけで、制作は「吉本興業」なので、結局はテレビのバラエティ番組の流れの軽さが、終始平板でお茶の間騒ぎなのが残念。

テレビ会社が制作した映画には、その番組の個性を、強引に映画館で拡大上映する傾向があって、映画ファンには、どうも違和感が伴うのがマジ、甘い。

だから、テレビの連続番組を自宅で見るだけの気軽さであれば、これはこれでもいいのかも。

ユニークな「伊坂ブランド」を、久しぶりに期待したのが、甘すぎた。

 

■ヒットエンドランの狙いが、セカンド正面のゴロ。

●5月24日より、角川シネマ新宿ほかでロードショー 


●『トランセンデンス』の発想はフランケンシュタインの再現だが。

2014年05月01日 | Weblog

4月28日(月)13-00 築地<松竹映画本社3F試写室>

M-044『トランセンデンス』Transcendence (2014) alcon entertainment / summit /  lions gate

監督・ウォーリー・フィスター 主演・ジョニー・デップ <119分> 配給・ポニー・キャニオン ★★★☆

こうしてブログに勝手に試写で見た映画のことをメモをして10年になるが、その間に、2台のパソコンがウィールスのせいで殉死した。

その間に、多くのデータやメモリーが消えてしまったし、自分も年齢的に、最近は忘れ去ってしまう記憶も多い、が、こうしてブログは残る。

毎日のようにパソコンに接しているが、このマシーンの記憶装置が、本当にどんな仕掛けがあって、どこにデータが記憶されているのかは、知らない。

もし、このデータの記録が、自意識を持ち、ハートと決定権を持ったらどうなるか。・・・。そうなったら、わたしはパソコンをやめるだろう。

この映画のタイトルは、「超越」という意味らしいが、もしこのマシーンが意志的に人間の知性を越えて別の知性を持つとしたら・・・という仮説のハナシ。

もし、スティーブ・ジョブやアインシュタインの頭脳が、そのまま生存していたら・・・という発想は面白い仮説なのだが。

ジョニー・デップは、こうしたPCなどの人工知性の科学者だが、大学での講演のあとに、テロリストの放射線の銃撃を受けて死亡した。

しかし妻の科学者は、デップの知能を保存して、尚もその知性との対話を試みて、インストールしてあった「知覚」とのコンタクトに成功する。

「2001年宇宙の旅」のスーパー・コンピュータ「ハル」は、人間を遥かに越える知性を持っていた、しかも自分の意志でオーナーの人間を裏切った。

同じように、ここでもデップの知性は、たしかに交信できたが、当然のように、別の意志を持って人間に指令や警告を出すようになる。それ見ろ。だ。

何となく「フランケンシュタインの逆襲」のリメイクのようだが、このトランセンデンスは、妻に対しても、あまり情愛のようなヒューマンな感覚は持たない。

クリストファー・ノーランが制作指揮をしているので、多少期待したのだが、後半になってイメージやテンションも拡散してしまって、テーマも消滅。

フランケンハイマーの「セコンド」のように、やはり、「人間性」そのものの正体に迫って欲しかったが、これでは「知性ゾンビ」という印象に終わった。

 

■当たりは左中間への鋭いライナーに見えたが、後半で失速。

●6月28日より、新宿ピカデリーなどで全国ロードショー