●12月21日(水)10-00 渋谷<ショウゲート試写室>
M-164『雨の日は会えない、晴れた日は君を思う』" Demolition " ( 2015) Twentieth Century Fox Film Corporation , TSG Film Entertainment
監督・ジャン=マルク・ヴァレ 主演・ジェイク・ギレンホール、ナオミ・ワッツ <101分・シネマスコープ> 配給・ファントム・フィルム
通勤のためにマンハッタンに向かうジェイクは、妻の運転する車で日常会話をしていたが、突然、交差点から飛び出して来た車と衝突し、妻は即死してしまった。
とくに充実した夫婦生活ではなかったが、突然の事故で妻を失った彼は、その後の警察との聴取やら、葬儀のことで親族と相談したりして、悲しむ暇などないのだ。
しかし、やっと埋葬後に独り身になってから、彼は妻をそれほどは愛していなかった・・・という自覚に戸惑ったが、義理の父のクリス・クーパーは、その彼に不満を持った。
先日見たばかりの、「誰のせいでもない」や「エリザのために」もそうだったが、家族や妻を急に失ったり、家族のトラブルに突然遭遇すると、誰でもショックで放心してしまう。
この映画の長ったらしい邦題には閉口するが、これは妻が残していたメモの走り書きであって、原題の<デモリション>は、単純に<破壊>のことだという。
現実の生活が突然に<破壊>された場合、普通なら<修復>するのだろが、この映画のテーマは、過去の価値観をすべて<破壊>してしまうしか、心は修復できない・・・というのだ。
映画はその心理障害のジェイクの心情を淡々と描いて行くが、病院の自動販売機でトラブルが起きたときに、彼はキレてしまって自販機に打ち当たり、処理担当のナオミ・ワッツにクレームを言う。
彼女は彼女で、離婚と子育てと貧困などで、やはり情緒が不安定だが、もともと陽気な性格なので、ジェイクとは精神的な打撲傷をいたわりつつ親しい時間を持つ様になる。
そのことで面白くない上司で義理の父のクリスとは口論してばかりで、ついにジェイクは未払いの実家の家具や家電を徹底的にぶちこわし、とうとう家の壁やドアをも破壊してしまう。
つまり、映画の原名の<デモリション>とは、この暴力的な破壊行為のことで、このことで、<過去の幸福>とは訣別して、新しい価値観を作らなくては・・・幸福などない。ということらしい。
監督は前作の「ダラス・バイヤーズクラブ」でも、思い切った演出でアカデミー賞にノミネートされて、主演のマシュ・マコノヒーは見事にオスカー受賞したが、ここでも想定外な突発型演出。
前作「サウスポー」で、ボクサーの体型を作ったジェイクは、ここでもマッチョな体力で家具や家財や、壁や窓などもひとりで破壊してしまうキレた暴力漢を演じてみせる。
とかく、都会人はとかく疲労過多で<キレやすい>と言われるが、このように犯罪にならない<自己破壊>というのは、たしかに自己の価値観を替えるには、いい手段かもしれないが、ま、これは映画のはなし。
■強引な強打でサードのグラブを弾いて、ツーベース ★★★☆☆
●2月18日より、渋谷シネパレスなどでロードショー