細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●友情も嫉妬も忘却の日々『旅路の果て』が、ニコタマ・サンセット座1月ベスト!!!

2017年02月09日 | Weblog

1月のニコタマ・サンセット傑作座<自宅>上映ベストテン

 

*1・『旅路の果て』39・監督・ジュリアン・デュヴィヴィエ 主演・ルイ・ジューヴェ DVD ★★★★☆☆☆

   老齢な俳優たちのホームに、かつて舞台のライバルだった名優が顔を会わせるが、恋人を奪われたヴィクトールはルイに真相を問うが、彼はそのことも忘れていた。

 

*2・『野望の系列』61・監督・オットー・プレミンジャー 主演・チャールズ・ロートン VHS ★★★★☆☆

   上院議員選挙に出馬の若手議員は、過去に兵役時代に犯したゲイの関係をチクられて、その些細な汚点のために自殺まで追いやられる、アメリカ議会の裏を暴く秀作。

 

*3・『フリック・ストーリー』75・監督・ジャック・ドレー 主演・アラン・ドロン VHS ★★★★☆

   脱獄した凶悪犯のジャン・ルイ・トランティニアンは、腕利きの刑事の追求をかわして逃走するが、田舎のレストランでバッタリと出くわした二人の対決が圧巻のサスペンス。

 

*4・『悪徳』55・監督・ロバート・アルドリッチ 主演・ジャック・パランス DVD ★★★★

   人気俳優のジャックは、かつて犯した轢き逃げ事件の事実を隠していたが、新作の撮影に向けたプロデューサーや監督たちの圧力に逃げ場を失って行くハリウッドの地獄。

 

*5・『運命の銃爪』91・監督・カール・フランクリン 主演・ビリー・ボブ・ソーントン DVD ★★★☆☆☆

   ロスで強盗をした凶悪犯のビリーは、仲間と逃走を続けるが、厳しい警察の追跡から逃れて、アラバマの田舎でノーテンキな警察官に銃撃の末に果てるまでの皮肉なドラマ。

 

*6・『殺人幻想曲』48監督・プレストン・スタージェス VHS 主演レックス・ハリスン VHS

 

*7・『愛情の瞬間』52監督・ジャン・ドラノワ DVD 主演・ジャン・ギャバン DVD @ミシェル・モルガン追悼

 

*8・『殺人者』46監督・ロバート・シオドマーク 主演・バート・ランカスター VHS 

 

*9・『ナイスガイ・ニューヨーク』63監督・バッド・ヨーキン 主演・フランク・シナトラ VHS

 

*10『エンジェル・フェイス』53監督・オットー・プレミンジャー 主演・ロバート・ミッチャム DVD

 

☆お隣の109シネコンの豪華お正月番組に対抗しての、毎度クラシック名画シリーズ。

『運命は残酷・大会』<悪いことをした勝手な女と男達の最期>のシリーズ公開。 


●ラララ、1月に見た試写ベストはやっぱり『ラ・ラ・ランド』!!!ラララ。

2017年02月07日 | Weblog

1月に見た新作試写のベスト❸

 

*1・『ラ・ラ・ランド』(監督・デイミアン・チャゼル)ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン ★★★★☆☆

   ハリウッドを舞台にしたミュージカルで、オスカー本命だろうが、プロのダンサーでも歌手でもない主演が自信なげで、あの「シェルブールの雨傘」と似たストーリーが弱い、が、

助演に天下のジョン・レジェンドが出ていたし、今時に貴重なミュージカルなので、セコい文句は言うまい。

 

*2・『マリアンヌ』(監督・ロバート・ゼメキス)ブラッド・ピット、マリオン・コティアール ★★★★☆

   設定も40年代のカサブランカから始まる戦火のロマンスが懐かしく、いかにも古典的な展開のストーリーに、ダブル・スパイ疑惑のマリオンとの恋にブラピが悩むが、

いかにもハリウッド全盛当時のクラシックな娯楽映画感覚が懐かしくて、嬉しい。

 

*3・『ハクソー・リッジ<原題>』(監督・メル・ギブスン)アンドリュー・ガーフィールド ★★★★

   沖縄での太平洋戦争末期の決戦を、実在した看護兵の視線を通じて、かなり強烈な視聴覚体感で強烈に戦争の残酷さを抉る、あのマッド・マックスのメガホン裁きの力量はさすがに圧巻だが、・・・。

 

*その他見た新作では・・・

『沈黙・サイレンス』監督・マーティン・スコセッシ

『ボヤージ・オブ・タイム』監督・テレンス・マリック

『アイヒマンの後継者』監督・マイケル・アルメレイダ

『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』監督・モーガン・ネヴィル

『わすれな草』監督・ダーヴィッド・ジーヴェキング・・・・・といったところでした。 


●『ハクソー・リッジ(原題)』の壮絶な激戦でも<老兵監督は死せず>。

2017年02月05日 | Weblog

1月31日(火)18-00 五反田<イマジカ第2試写室>

M-013『ハクソー・リッジ(原題)』"Hacksaw Ridge " (2016) Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd / Lions Gate

監督・メル・ギブソン 主演・アンドリュー・ガーフィールド、サム・ワーシントン <139分・シネマスコープ> 配給・キノフィルムズ

今年もまたアカデミー賞のシーズンになって、例年高齢の「キネマ旬報」誌上での19年目の受賞予想座談会がある関係で、ノミネート作品は優先的に見なくては・・・という次第。

あの「ブレイブハート」で受賞経験のあるメル・ギブソン監督作品は、作品賞、主演男優賞などの主要6部門にノミネートされているので、とにかく百聞は一見にしかず・・。

お久しぶりのメルは、2002年にベトナム戦争でのもっとも苦戦だったというイア・ドランでの3日間の死闘を描いた「ワンス&フォーエバー」で主演して以来の戦争映画。

さすがに今回は完全に監督に徹していて、太平洋戦争でも最悪に熾烈だった、沖縄での<前田断崖(ハクソー・リッジ)>での日米の攻防戦を描いている。

主演のアンドリュー・ガーフィールドは「沈黙・サイレンス」での布教クリスチャンに似てか、絶対に他人には銃を向けないという信念を持った頑固な青年を演じて、戦場で苦戦する。

というのも、彼が志願したのは<衛生兵>で、戦場で負傷した兵士を緊急治療して専門医師のいるテントまで運ぶという難役で、戦争映画の主役としては珍しいが、これも実話だ。

前半では、その頑固な青年が太平洋戦争に志願するまでの日々と、恋人との恋を描いて、あの戦争異色作「愛欲と戦場」のような展開だが、とにかく衛生兵は敵にも狙われやすい。

それで彼は赤十字の腕章はしないで、銃弾の行き交う塹壕から負傷兵を運び、激戦地の100メートルもある断崖絶壁を負傷兵を担いで下りる、という苦難の大役を演じている。

さすがに「マッドマックス」出身のメル監督は、後半の実戦シーンはド派手な戦闘シーンを展開して、爆弾は炸裂して兵士はぶっ飛び、銃撃のサウンドは頭上をかすめるリアリティが凄まじい。

恐らくは、過去のすべての戦争映画を圧倒するような実戦が2日間も続いて、とうとう崖を占拠したアメリカ軍は、地下に無数の塹壕司令部を掘った日本軍の司令部まで戦闘を展開する。

この後半の激戦のリアリティは、さすがにハリウッドの映像とサウンドの最新デジタル技術で、もう何も考える余裕もないほどに目と耳を圧倒していくのは、さすがメル監督の男気な、ど根性。

武器を持たない兵士として、終戦後にアメリカ大統領から名誉勲章を授与された、という実話だから、この無謀ともいえる戦闘シーンは熾烈すぎるが、ま、とにかく凄まじい映像と音響だ。

アカデミー録音賞と音響編集賞は、おそらく当確だろうが、容赦なしの激戦シーンの熾烈さは、見ていて、やはり、かなりに視聴覚にはヘビーだったのも、実感だ。

 

■右中間を破る痛打で,一気にサードを狙いタッチをかわす走塁。★★★☆☆+

●夏には全国でロードショー予定  


●『わすれな草』で記憶しようとする母の生きたラストシーン。

2017年02月03日 | Weblog

1月31日(火)15-30 渋谷<映画美学校B-1試写室>

M-012『わすれな草』" Forget Me Not ( Vergiss Mein Nicht ) " ( 2013) Lichtblick Media GmbH / Film und Medienstifung NRW ドイツ

製作・マルティン・ハイスラー 監督・脚本・ダーウィット・ジーヴェキング <88分・ビスタサイズ> 配給・ノーム・東京ドイツ文化センター

40才に近い監督のダーウィットの母が、最近かなりの認知症を患っていて、この作品は同じく高齢ながら学者の父親の協力で、その母の病気の生態と進行と、生命の末期を見つめた作品。

フランクフルトの近郊に住む監督の母グレーテルは、かつてはナチス侵攻の時代に教育者として従軍させられたが抵抗し、戦後はドルトムントの工場で働きつつ、言語学を学んだというキャリア・ウーマン。

彼女は知的な美人でもあって、テレビ番組の司会者などをして1966年に、数学者のマルテと結婚して、ダーウィットを生み、保育園を設立しながらもスイス左翼系の活動もしていた。

そんな過去の活動的な映像を見せつつ、まだ77才の若さで認知症を患ってしまった母は、こうして息子がドキュメンタリー映画を撮影していることも、ほとんどは認知できないような痴呆なのだ。

日常的なことは、周囲の家人のヘルプで生活は出来ているものの、「お宅はどなたですか?」という質問を息子にするほど、その日常は朦朧とした恍惚の彼方を彷徨っているのだ。

つい最近も、「92才のパリジェンヌ」のように、自分の死期を決めて葬式の用意をしてから自死していく立派な老母の作品があったが、こちらの人生は、そんなにかっこ良くないのだ。

高齢化社会になって、老人ホームや施設が激増していく世界で、たしかに自分の死期までを自分の意志でコントロールするというのは、絶対に誰でもできることではないのが現状だろう。

ドラマとしては「ベニスに死す」やジョン・ウェインの「ラスト・シューティスト」のように、そして秀作「グランド・フィナーレ」のように、自分の意志でラストを演出できるひとは恵まれている。

個人的には、あのサム・ペキンパ監督の秀作「昼下がりの決闘」のような最期がかっこいいなー・・・とは思っているものの、こればかりは最悪のケースの自殺以外には演出できない。

という意味でも、このダーウィット監督の発想と勇気はユニークで、自分の母親のラストシーンを映像に記録するのはともかく、こうして一本の映画作品として完成させる勇気は計り知れない。

あの「イングリッド・バーグマン・愛に生きた女優」は、娘がまとめた女優の美しすぎた生涯映像だったが、<死期>までのドキュメンタリーというのは、また別の<記憶>映画なのだろうか。

 

■ボテボテの三遊間のゴロを、深追いしないでヒット。 ★★★☆

●4月15日より、渋谷ユーロスペース他でロードショー 


●『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』の音楽的なリラクゼーション。

2017年02月01日 | Weblog

1月31日(火)13-00 渋谷<映画美学校・B-1試写室>

M-011『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』" The Music of Strangers " (2015) Silk Road Project Inc./ Participant Media / National Entertainment

監督・モーガン・ネヴィル 主演・ヨーヨー・マ、ジョン・ウィリアムズ <95分・ビスタサイズ> 配給・コムストック

いまや世界的なチェロの名手と知られるヨーヨー・マは、ニューヨークを拠点にして演奏活動をしている中国人だが、まさに今や無国籍コスモポリタン・ミュージシャンだ。

その彼が友人音楽家のグループを率いて<シルクロード・プロジェクト>というボランティア運動として、シルクロードに添って演奏したドキュメント・フィルム。

 あの「バックコーラスの歌姫たち」という、名もない合唱グループの活動を描いた傑作ドキュメンタリー映画の監督モーガン・ネヴィルが着眼したのが、この新作だ。

もともと1981年に、奈良の正倉院で<シルクロード文物>に出会ったヨーヨー・マは、それから平和的な共通意志を共にするミュージシャンたちとグループ活動を始めた、という。

コンサート会場もなく、ごく路上ミュージシャンとして始めたグループには、志に共鳴したイランや、シリアや、ケルトなどの治安の不安定で音楽演奏のできないアーティスト達が集結。

それぞれの民族楽器を演奏して、少しずつメンバーが増えていって、このような<シルクロード・アンサンブル>のようなスタイルにまとまり、2000年に<音の文化遺産>として活動。

ミュージシャンたちの祖国には、それぞれの音楽的な土壌と個性があるが、政治的な不安定から祖国を脱出してニューヨークで、まさに、国際連合音楽グループとしてスタートしたという。

だから、これはヨーヨー・マの音楽映画ではなくて、その苦境のミュージシャンたちが集まって、それぞれの音楽性を寄せ集めた異文化ミクスチュア演奏活動を追いかけた記録映画だ。

とくにヒット曲とか、レコーディング活動はなく、自然発生的に共鳴した演奏家たちがプレイする音楽は、それぞれの楽器のもつ音楽的特性と、演奏者の国状や音楽ルーツがリードしていく。

その偶発的な音楽性の魅力を、「スターウォーズ」などのジョン・ウィリアムズが絶賛して語り、バッハやサン=サーンス、オリヴィア・メシアンなどの曲が演奏されるサウンドは豊かだ。

ほとんどのミュージック・グループは営利や名声を意図したマネージメントで活動しているが、ここに集まったメンバーたちは、まさに<平和学校>の学生たちのように溌剌として演奏する。

そこに本来の<音楽>が生まれた様に、このメンバーたちがシルクロードを旅しながら演奏する音楽には、どうやら<音楽>そのものの古典的な発想起点があるようで、妙な感動がある。

ヨーヨー・マの息子が『子供の頃は、毎日のように旅に出る父の仕事は、きっとエアポート関係の仕事をしている、と思っていた・・・」という言葉には試写室爆笑だった。

 

■左中間をゴロで抜ける当たりがフェンスを転々する間に、足のツーベース。 ★★★☆☆

●3月4日より、Bunkamuraル・シネマ他でロードショー