細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『T2 トレインスポッティング』20年ぶりの、再会の懐かしさと失意と。

2017年03月11日 | Weblog

3月2日(木)13-00 神谷町<ソニー・ピクチャーズ試写室>

M-027『T2・トレインスポッティング』" T2 Trainspotting " (2016) Tristar Pictures / Film 4 .英

監督・ダニー・ボイル、主演・ユアン・マクレガー、ロバート・カーライル <117分・ビスタサイズ>R15+ 配給・ソニー・ピクチャーズ

あれから21年。あの90年代を駆け抜けた青春のヒット作「トレインスポッティング」の<パート2>だが、4人の不良グループの再会の<クラス会>の趣きだ。

普通でマジに成人して、まともな結婚をしていれば、子供も2人ほどいて、仕事も順調な、会社ならば部長補佐という年回りなのだが、奴らは相変わらずの出来損ない。

最近でも「スティーブ・ジョブズ」を作って好調のダニー・ボイル監督は、2008年には「スラムドッグ・ミリオネア」でアカデミー監督賞を受賞したベテランだ。

その彼が発案したかどうかは知らないが、あの1996年のヒット作を、同じあの4人の不良グループの、その後の現在の状況で再会させてみよう、という発想は嬉しい。

むかし、50年代のジーン・ケリー主演の傑作ミュージカルに「いつも上天気」という作品があって、3人の戦友たちが、やはり20年ぶりにニューヨークのバーで再会するが・・・という話。

あの作品では、出世した会社の重役と、相変わらずの平社員と、ギャングのお抱えディーラーになっているヤクザが、それぞれに再会に失望したが、当時の友情を再確認するまでの感動作品だった。

が、この出来損ないのスコットランド、エジンバラの不良4人は、20年経っても、相変わらずのドジな生活をしていて、そこには<感動の再会>なんてものはありっこない。

俳優としてのユアン・マクレガーはご存知のように「スターウォーズ」シリーズで大活躍して、秀作「ゴーストライター」から、最近では「美女と野獣」にも出演してのトップスター。

ところが、007にも顔を出していたロバート・カーライルはともかく、あとのジョニー・リー・ミラーも、ユエン・ブレムナーもローカル・テレビ映画にはチョロチョロ出ている程度らしい。

それぞれに、もう中年の<オジン>なのだから、腹は出てくるし腰はグラツイているし、アタマはかなり薄くなるし、白髪もチラホラの冴えない風采になっているのは、我々同様。

その4人が、とにかくあの若い時代の確執はともかく、20年ぶりの再会を機にして、またも悪事を計画するという、まるであの時代と同じような<不良少年>に戻る・・というのだ。

思いつきの企画そのものは面白く、主演の4人も、監督までもが同一スタッフなのだから、よくあるリメイクものとは基本的に違った懐かしさはあるのだが、やはり哀しみも滲んで来る。

ま、そこは作品の狙いだろうから、シナトラの「オーシャンと11人の仲間」のような不良再会のような男気は感じるものの、作品のキレは、さすがに老化しているのは、仕様がない。

ジャック・レモンとウォルター・マソウの「おかしな二人」の老人版ほどのズレはないが、この<相変わらず>らしさ「無理を承知の、この渡世・・」が、妙に哀しい。

 

■強打のわりにはボテボテのショートゴロがイレギュラーしてヒット。 ★★★☆

●4月8日より、丸の内ピカデリーなどでロードショー 


●『SING*シング』のアグレッシブな歌手根性にはウルウルしてしまう。

2017年03月09日 | Weblog

3月2日(木)10-00 半蔵門<東宝東和試写室>

M-026『SING/シング』(2016) Universal Studios / Illumination Presents 

監督・脚本・ガース・ジェニングス 声・マシュー・マコノヒー、スカーレット・ヨハンソン <108分・ビスタサイズ>配給・東宝東和

「ミニオンズ」や「怪盗グルー」などのシリーズ・アニメの人気で、あのディズニー・スタジオとは、まったく別のアングルで人気のある<イルミネーション>の新作。

時代の流れで、とうとう倒産してビルも解体の悲運の劇場主が、ラスト・ショーとして、近所に住む人々<みんな動物>の賞金つき素人のど自慢大会を企画した。 

もともとはシャイな連中なのだが、近所に住む住人たちが、この賞金狙いのショウにでることになったのも、間違って高額な賞金額をプリントしたチラシをバラまいたためだ。

それぞれにワケありで出場することになった連中は、度胸だけはやけっぱちなコアラのマシュー・マコノヒーが司会する<ぶっつけ本番>のコンテストに出場することになったのが、騒動のはじまり。

エントリーしたのは、ギャングの一人息子の小心ゴリラがサム・スミスの唄を唄い、失恋したヤマアラシのブスな娘はカーリー・レイ・ジェブセンのパンクロックを熱唱。

主婦のブタはテイラー・スウィフトを唄い、小心なブタの娘はレディ・ガガの<バッド・ロマンス>を唄うという、そのキャラと選曲が愉快で、唄うパフォーマンスも実に素晴らしい。

圧巻は小心で人前にも出られないゾウの娘が、突然、発狂したようにスティービー・ワンダーの<ドント・ウォーリー・バウト・ミー>を絶唱するシーンで、これには不思議な感動をしてしまった。

唄と歌詞と、彼らの生活状況のピンチもあるが、やはりマイナーな動物たちが、ここで発揮する想定外のパフォーマンスは、まさにアニメーションだからこそ可能な意外性だろう。

マイケル・ジャクソン、ビートルズ、エルトン・ジョン、デヴィッド・ボウイ、ビヨンセ、アリアナ・グランデ・・・などすごいメンバーながら、当方はシナトラの「マイ・ウェイ」に満逸。

よけいなドラマ性は裏話にして、とにかく豪華なスーパー・タレントの唄を、フルコーラスで聞かせたという、その企画力と度胸には、ある種、音楽ファンには感動ものなのだ。

「モアナ」のディズニーのいいが、この「ミニオンズ」根性のイルミネーション・グループの発想と表現力には、もともとマイナーな逆転発想力とテクニックがあり、この傑作に結集させた。

昔から、よくある「劇場復活」のストーリーも、あのジム・キャリーの傑作「マジェスティック」の流れだが、これだけの個性的な動物たちの熱唱を見ていると、拍手せずにはいられない。

 

■左中間の当たりが、意外にのびてスタンドイン。 ★★★★+

●3月17日より、東宝洋画系ロードショー 


●運の悪い男たちの転落ロマン、2月のサンセット傑作座ベスト衆。

2017年03月07日 | Weblog

2月の<ニコタマ・サンセット傑作座>上映ベストテン

 

*1・『過去のない男』02<監督・アキ・カウリスマキ>マルク・ペルトラ VHS ★★★★

   深夜の公園ベンチで暴漢に殴られて記憶を失った中年男は、港湾地区の浮浪者や、救世軍の女性の助けで少しずつ記憶を戻して、復讐を遂げる感動ドラマ。

 

*2・『ハバナの男』60<監督・キャロル・リード>アレック・ギネス VHS ★★★★

   ハバナの下町の電気屋アレックは、売れない電気掃除機のデッサンをしたところ、捜査官に新型ロケットと勘違いされるコメディで、モーリン・オハラ追悼。

 

*3・『アメリカから来た男』91<監督・アレクサンドロ・ダラトーリ>バート・ヤング VHS ★★★☆☆☆

   イタリアの田舎町に嫁さん探しでやって来た中年のアメリカ人は、親切にアテンドしてくれた青年と仲良くなるが、実はマフィアの殺し屋だった、というコメディ。

 

・・・と、ここまで書いていて気がついたが、みんな<男>の映画だったのは、まったくの偶然。

 

*4・『ゴーストタウンの決闘』58<監督・ジョン・スタージェス>リチャード・ウィドマーク VHS ★★★☆☆

   いまはシェリフをしている男には、銀行強盗をして得た大金を隠した秘密があり、当時の仲間たちがその報復のために妻を誘拐して決着をつけようと迫る秀作。

 

*5・『火山のもとで』84<監督・ジョン・ヒューストン>アルバート・フィニー LD ★★★☆

   メキシコの田舎町で隠遁生活をしていた酔っぱらいのところに、別居中の女房がやってきて更生を促すが、運命は足を引っ張るヒューストン監督の、自白的な傑作。

 

*6・『私書版』96<監督・ベルナルド・ラップ>テレンス・スタンプ VHS

*7・『トワイライト』98<監督・ロバート・ベントン>ポール・ニューマン DVD

*8・『悪徳警官』54<監督・ロイ・ローランド>ロバート・テイラー VHS

*9・『湖中に消える』06<監督・ロバート・ハーモン>トム・セレック DVD

*10『殺し屋は放たれた』56<監督・バッド・ボイティーチャー>ジョセフ・コットン VHS・・・・といったラインナップでした。

 

●結局は、どうも出来の悪い男達の転落ぶりに共感していた2月の傑作たちでした。 


●『ムーンライト』弱者の人間ドラマとしての完成度が2月の試写ベスト。

2017年03月06日 | Weblog

2月に見た新作試写ベスト5

 

*1・『ムーンライト』監督・脚本・バリー・ジェンキンス 主演・トレヴァンテ・ローズ ★★★★☆☆☆

   今年のアカデミー作品賞・脚本賞受賞の秀作で、トランス・ジェンダーの少年が、青年期までの3つの時代を描いたハート直撃のヒューマン・ドラマの秀作。

 

*2・『ELLE・エル<原題>』監督・ポール・ヴァーホーヴェン 主演・イザベル・ユペール ★★★★

   パリのゲーム会社でCEOを務める中年女性が自宅でレイプ暴漢によって襲われたが、警察の捜査は難航するなか、独自の行動をとるユペールの圧巻熱演が鳥肌。

 

*3・『ライオン・25年目のただいま』監督・ガース・デイビス 主演・デヴ・パテル ★★★☆☆☆

   インドの田舎町で貨物列車で遊んでいた少年が、遠くはなれた土地で不明のままオーストラリアに養子となり、25年もしてネットで帰郷した奇跡的な実話ドラマ。

 

*4・『午後8時の訪問者』監督・リュック・ダルデンヌ兄弟 主演・アデル・エネル ★★★☆☆ 

   若い開業女医のアデルは、午後8時すぎの電話中に、玄関のベルに出られず、その訪問者は暴漢に殺され、責任を感じた彼女は単独で犯人を捜索していく。

 

*5・『ジャッキー』監督・パブロ・ラライン 主演・ナタリー・ポートマン ★★★☆☆

   JFKがダラスで暗殺されたあと、ホワイトハウスを退去する妻のジャッキーは、あの日の悪夢を記者に回想して語るナタリーの、アカデミー・ノミネートの熱演。

 

*その他に見た試写で、印象的だった作品は、

●『3月のライオン・前項篇』監督・大友啓史

●『汚れたミルク』監督・ダニス・タノヴィッチ 

●『無限の住人』監督・三池順史

●『ハードコア』監督・イリア・ナイシュラー・・・・・というところでした。 


●『ハードコア』では、あなたがロボット目線で、外敵と戦わなくてはならない。

2017年03月05日 | Weblog

2月27日(月)13-00 六本木<アスミック・エース試写室>

M-025『ハードコア』" Hardcore Henry " ( 2016) STX Entertainment / Huayi Brothers Pictures / Timur Bekmambetov Presents・ロシア

監督・脚本・イリア・ナイシュラー 主演・シャールト・コープリー、ティム・ロス <96分・ビスタサイズ> 配給・クロックワークス 

どうやらイリア監督は、自身の持つロックバンドの<ファースト・パーソン・シューティング>、つまり一人称の撮影によるミュージック・ビデオを発信したところ大ブレイク。

それを見た多くのファンのツイートに共感したプロデューサーは、Facebookを通じて監督と連絡をとり、密会を重ねて、そのネタを映画化しようというプロジェクトを立ち上げた。

話は単純で、改造された最新のサイボーグが、人間社会の強欲さにキレて、反抗するという、あの「2001年、宇宙の旅」のスーパー・コンピュータの<ハル>が肉体を持ったという発想。

しかも、全編が<ヘンリー>という人造のバケモノの視線での、一人称映画なので、見ているこちらは、そのアンドロイドの視覚で、目の前に展開していく人間たちの争いを見て行くことになる。

昨年見た「エクス・マキナ」も、人造の美女ロボットの話だが、むかしのロジェ・ヴァディム監督の「バーバレラ」の世界が、またしても強靭なるハードボイルド・ヒーローとして現れる。

ところが映画は、まったくの一人称ビジョンなので、映画的に広がる視野はなくて、あくまで人造再生ロボット・ヘンリーの視線なので、自分のカメラ目線で行動するように近視メガネのような錯覚。

全編をロシアの都市やモスクワ近郊で撮影したという都会感は、何となくハリウッド映画とは違った別世界で、それがSFアクションっぽいのだが、どうしてもイメージの転換がないので窮屈な映像が続く。

大昔に、たしかにレイモンド・チャンドラ原作のミステリー小説「湖中の女」を、フィリップ・マーロウ探偵の視線で、ロバート・モンゴメリーが監督主演で作ったが、やはり一人称映画というのは窮屈だ。

このサイバー人間<ヘンリー>は、自身の自覚に目覚めていって殺人マシーンになっていく「ロボコップ」のようなバケモノなのだが、その記憶装置のなかで幼少のときの父、ティム・ロスが登場。

という次第で、もともとは「心の旅路」やアキ・カウリスマキの「過去のない男」のような精神構造なのだが、とてもセンチになる繊細な感情もなく、ただ現実の暴力地獄の中で暴走していくしかない。

コミックのロボット・アクションや、コンピュータ・ゲームのスクリーンで、むやみに外敵を殺して行く映像に慣れたひとには、かなり面白いゲーム・ヴィジョンだろうが、わたしはフォローできなかった。

 

■当たりは強いがショートの正面。 ★★★

●4月1日より、新宿ピカデリーなどでロードショー 


●『ムーンライト』で浮き上がる淡いトランス・ジェンダーの恋。

2017年03月03日 | Weblog

2月24日(金)13-00 六本木<アスミック・エース試写室>

M-024『ムーンライト』"Moonlight " (2016) A24 and Plan B Entertainment / Pastel 

製作・ブラッド・ピット 監督・脚本・バリー・ジェンキンス 主演・トレヴァンテ・ローズ、アンドレ・ホーランド<111分・シネマスコープ>配給・ファントム・フィルム

先日のアカデミー授賞式で、一旦は「ラ・ラ・ランド」の作品賞が決まったあとに、発表ミスが発覚して、1分後にこの作品が逆転受賞したという珍事は、アカデミー史上初めての事。

わたし自身も、キネマ旬報の誌上では「ラ・ラ・ランド」の受賞を予想していたのだが、やっとこの2月24日に作品が見れた瞬間、これはまた早とちりしたな・・・と正直実感した。

あくまで<予想>だが、見てもいない時点での予想は、実はフェアーじゃないのだが、これは字幕を日本語翻訳してからスーパーインポーズをする作業がある関係で致し方ない。

だから「ことしのアカデミー賞予想も盲撃ち・・」と言い訳したのも、こうしたズレがあるからで、今年の場合は、とくにひどくて、ノミネート10作品のうち、事前に見れたのは3本のみ。

ま、そんな個人的な些細な愚痴はともかく、結果的にこの「ムーンライト」が受賞したことには、正直、納得するし、絶賛したいし、とても嬉しかったのも事実だ。

<トランス・ジェンダー>のテーマが映画になるのは、とくに最近のことでもないが、その性的な精神疾患を、ごくノーマルな視線で暖かく描いているという、この作品はパワーフルだ。

とくに黒人の、それもごく中流のマイアミの少年の学校での<オカマ>呼ばわりと暴行、いじめの日々、それが高校生になって、同性の男性と<ムーンライト>の海で結ばれる。

3つの世代での同性関係を描くので、俳優も世代交代していくが、その母親を演じているナオミ・ハリスだけは、息子の3つの世代の変化に応じて、次第に老け込んで行くジャンキーを好演。

ドラマとしては成人してからの、その問題児青年の演技が素晴らしく、とくに別れていた恋人役のアンドレを、場末のレストランに訪ねて行き、料理をテーブルにサービスされるシーンは秀逸だ。

3人の黒人が、それぞれの世代を演じているが、その成長を優しく見つめるマハラーシャ・アリの力強く、すごいやさしさを演じた好演ぶりが、さすがにアカデミー助演男優賞を受賞。

わたしは演出のバリー・ジェンキンスの力量をオスカー受賞予想したのだが、とにかく3世代の成長と心の悩みを書き込んで、見事に脚本賞を受賞しただけでも、とくに嬉しかった。

時代的には、さほど異常視されなくなった<トランス・ジェンダー>の心の変化を、やさしく美しく、しかも暖かく強い理解の視線で見つめた人間ドラマの秀作として、絶賛したい。

 

■前進守備のレフト頭上を軽々と越えてスタンドイン。 ★★★★☆☆☆

●4月中旬、TOHOシネマズ・シャンテなどでロードショー 


●『バーフバリ・伝説誕生』のごった煮インド・エンタメに対応できるか!!?

2017年03月01日 | Weblog

2月22日(水)12-30 六本木<アスミック・エース試写室>

M-023『バーフバリ*伝説誕生』" Baahubali : The Beginning " ( 2015 ) Arka Media works Property / India

監督・脚本・S.S.ラージャマウリ 主演・プラバース、ラーナー・ダッグバーチィ <138分・シネマスコープ> 配給・ツイン

異文化映像体験という意味では、世界最高の観客動員数を誇っているという噂の<ボリウッド>製インド映画だが、かなり荒唐無稽で奇妙奇天烈。

話は<ジンギスカン>のような、伝説の戦闘士の、祖父、父、そして息子という三代にもわたる壮大な歴史大作であって、ま、どこの国にもあった伝説だ。

まるで昨年公開されて好評だった「ジャングルブック」のように、敵兵たちに滝に追いつめられた母親が、胸に抱いていた少年だけは奇跡的に生き延びて、村人に育てられるという導入。

まさに「ターザン」のように、幼児は野性の少年となり、逞しい青年は屈強な戦闘士へと成長していくが、その成長ドラマ展開はミュージカルから大掛かりな戦闘大作へと変貌していく。

あまりインド映画というのは見るチャンスがないが、とにかくホームドラマからラブスーリーとなり、アクションとミュージカルが混沌とした五目チャーハン状態になるのは毎度同様だ。

「マッキー」や最近公開された「PK」の世界的なヒットを凌いで、この作品は3年の歳月をかけて作られた2部作となる戦闘大河ドラマなのだが、インドの歴代最大のヒット作だという。

主演のプラバースも、「グラディエイター」のラッセル・クロウのように、ムキムキな不死身の筋肉マンを演じていて、まあ・・・よくぞ暴れ回る。

ま、見ていて歴史大作の「ベン・ハー」や「クレオパトラ」のようなCG処理による壮大な人海によるモブシーンは凄まじいが、その途中にも唄や踊りのミュージカル・シーンがカットインしてくる。

それはインド人の国民的な趣向であるらしく、われわれのように文化生活の様式として整然とした家屋や食事の趣味性とかスタイルはおかまいなしの、まさに<ごった煮>のような感覚には閉口する。

というか、インド映画を見るには、あの「スラムドッグ・ミリオネア」のような、まさに大学の学園祭感覚の雑居趣向にどっぷりと浸らないと面白くはない、というクレイジー感性が問われるのだ。

従って、後半の戦闘シーンのハチャメチャさは、あの秀作「マッドマックス・怒りのデスロード」の後半の追撃シーンのように、リアリティーなどは糞食らえ的なお祭り感覚で暴走する。

それを覚悟で愉しまないと、このインド映画のドンチャンお祭り騒ぎは面白くはなるまい。    

 

■でかいファールフライだが、ライトがフェンスギリギリでキャッチ。 ★★★

●4月8日より、新宿ピカデリーなどでロードショー