細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『ナミヤ雑貨店の奇跡』で逃亡青年たちの現実は救われるのだろうか?

2017年07月30日 | Weblog

7月24日(月)10-00 築地<松竹本社3F試写室>

M-083『ナミヤ雑貨店の奇跡』" The Miracles of the Namiya General Store " (2017) 角川大映スタジオ、本編製作委員会

監督・廣木隆一 主演・山田涼介 西田敏行 <122分・シネマスコープ> 配給・KADOKAWA :松竹

ちょっと2005年の、あの「ALWAYS三丁目の夕日」の郷愁を思い出させるような、懐かしい<昭和>を想起する作品かと、勝手に期待して見たのだが、それは当方の早とちり。

東野圭吾の原作による小説は、かなりの大ヒット作品らしいが、たしかに幻想ミステリー小説としての骨格に、32年も前の昭和の温もりも漂わせる、一種の人情メロドラマだ。

地方都市の広場に面した一戸建ての寂れた木造二階建て雑貨店は住む人もなく、いまでは廃墟のようになっていたが、何かヤバいことをしでかした山田青年ら3人は、逃走の果てに、その店舗に忍び込んだ。

夜中になると、その店舗の正面シャッターの郵便受けから手紙が投げ込まれたが、その短い文面には、恐らくこの雑貨店の店主だった西田に宛てた、それぞれの人生相談のような文面だった。

いまではとうに店も閉めて、その店主もどこに行ったのかもワカラナイのだが、手紙を投函したひとは、恐らく相談する相手もなく、ましてや新聞やテレビの人生相談に投稿する勇気もない人達らしい。

映画は不良少年たちの夜間逃亡の現実と、この雑貨店がまだ営業中だった1980年代の頃の、店主の西田がいろいろな客たちの人生相談に耳を貸していた時代が、交互に展開していくという寸法。

あの0・ヘンリーの原作「人生模様」のエピソードのように、その相談内容の過去の日常と現実の逃亡者たちのヤバい状況とがフラッシュバックされていくのだが、どうも編集に切れ味が不足だ。

というのも、この逃亡者たちの現実と、過去の人生相談の時代がオーバーラップしているという原作のアイデアはあるらしいのだが、この作品では、肝心の時代差が無造作に往来してしまうからヤヤコしい。

三人の不良少年たちが、この廃墟のような雑貨店のスペースで、ついに時空を越えた体験をしていくというのは、たしかに小説題材としては面白いのだが、映画となると傑作「幽霊と未亡人」のようにはいかない。

つまり、店のシャッターを境にして、現実と過去が去来するというのは、小説の上では想像しやすいが、こうして映画となると、どうも描写のウェイトが陳腐で、創造力がフォローしきれなくなる。

32年間の間に、予測されたことと、現実に起きてしまったことには、当然の誤差が生じるわけで、原作小説ではともかく、こうして映画になると「野菊の如き君なりき」のような郷愁は難しい。

 

■センターへのヒットだが、セカンドを欲張ってアウト。 ★★☆☆☆

●9月23日より、新宿ピカデリーなどでロードショー 


●『50年後のボクたちは』きっといい人生を駆け抜けるだろう、という夢。

2017年07月28日 | Weblog

7月21日(金)13-00 京橋<テアトル試写室>

M-082『50年後のぼくたちは』" Tschick " ( 2016 ) Studio Canal / Lago Films / Rundfank Berlin /

監督・共同脚本・ファティ・アキン 主演・トリスタン・ゲーベル、メルセデス・ミューラー <93分・ビスタサイズ> 配給・ビターズエンド

邦題が気になって、とても50年後には生きてないだろうし、と、試写室に駆けつけてみたら、何だ、原題は「チック」という、ヘンテコなロシアから移住の大柄転校生少年の名前。

ドイツでは220万部も売れたという、ヴォルフガング・ヘルンドルフの原作の映画化で、ラスト近くで、二人の少年が「・・・50年後のオレら、どうなってるかな」という会話を邦題にした。

たしかに、ただの「チック」では興味ないだろうし、「スタンド・バイ・ミー」のドイツ版、といっても大して興味は持たれないだろう・・という苦心の邦題による悪ガキ映画だ。

14歳のトリスタンは内向偏屈な性格か、クラスのはみ出しもので、級友からも敬遠されて、まともな友人もいなかったが、ある日、ロシアのど田舎で中国系のマスクをした不良が転入してきて、口きくようになった。

その不良のような東洋系な大柄少年の名前が、タイトルの<チック>で、その転入してきた変人と、トリスタンは<はみだしもの>同士で気があい、話をするうちに行動を共にするようになる。

父親の浮気外泊の末に分裂家族となった果てに、昼夜酔っぱらいの母親の面倒の末に、母は入院となり、少年も夏休みとなり、憧れの少女にもそっぽを向かれていいところない青春だったので、チックとつきあう。

という、ま、サイテーな青春の流れで・・・よくある不良少年映画の経緯なのだが、このモンゴル系の顔をして不良の「チック」が、なかなかの図太い存在感で、映画を引っ張って行く。

ドラマは名作「おもいでの夏」の不良版、という感じで、このブチ切れな不良少年二人の、まさに出たとこ勝負のような日常の行動が、夜の街や野原のキャンプという迷走ぶりがスケッチされる。

この避雷針のない夏休みの放浪が、多くの青春映画のテーマとなったように、とうとうオンボロ・カーでのドライブ放浪野宿無銭旅行となり、トリスタンは夏休みで最高の思い出に。

映画はそのドタバタな二人の少年の夏休みで珍道中で、このドラマは終るが、どの青春映画にも、自分の無様な夏休みと共通しているように、ホロ苦い印象で終わり、新学期を向かえていく・・ああ、青春。・・・。

法律とか、モラルとかルールとか常識とか・・大人になるには、誰でもこのような手錠のない夏休みの思い出があったわけで、この作品もまた、あの苦い味を思い出させてくれるが、いかにも小品。

 

■ボテボテのサードゴロを、ワンテンポ遅れた送球で一塁セーフ。  ★★★☆

●9月16日より、新宿シネマカリテなどでロードショー  


●『三度目の殺人』の変貌する殺人犯の供述には騙されないように・・。

2017年07月25日 | Weblog

7月21日(金)10-00 日比谷<東宝本社11F試写室>

M-081『三度目の殺人』(東宝映画、フジテレビジョン、アミューズ、GAGA、阪急阪神東宝グループ)

監督・是枝裕和 主演・福山雅治、役所広司 <シネマスコープ・125分> 配給・東宝、GAGA

弁護士というのは因果な商売だなーーと、いつも映画を見ると思うのだが、私感はさておき逮捕された容疑者の罪状をなるべく軽くするために、その犯行の弁護をするのが本業だ。

本人の心情はともかくとして、犯罪者の弁護を引き受けた以上、とにかく裁判では検察側や警察の追求を交わしつつ、とにかく犯人とされる容疑者の代弁者として刑の軽減のために奮闘する。

多くの映画では、絶対に不利とされた裁判での、弁護士の殊勲で逆転無罪のハッピーエンドなんていう、いかにもドラマティックな美談が多く映画化されたが、この映画はチト違う。

前作「そして父になる」で、なかなか味のあるホームドラマを作ったマルチタレントの人気者、福山雅治と是枝監督の再度タグを組んだ新作は、監督の原案、脚本、編集による裁判映画だ。

といっても、ワイルダーの名作「情婦」や、あの「告発」「評決」などの法廷サスペンスの名作とは違って、この作品の場合は、逮捕されている殺人犯人の供述が、コロコロと変わるので実にフラジルな内容。

冒頭で殺人容疑で逮捕されている役所広司の、淡々とした供述があるので、担当弁護士の福山もやりやすい裁判の筈だったのだが、その供述はかなり曖昧であって、ポイントがつかめない。

この殺人犯は、実は30年前にも強盗殺人で服役経験のある前科者で、今回の犯罪も不当に解雇された食品加工工場の社長を、深夜の多摩川河原に呼び出して背後から撲殺し、財布を奪って死体に火をつけた。

このシーンは映画の冒頭にあるので、この犯行事実には疑問もなく、依頼されて担当弁護士となった福山としても、罪状を死刑から無期懲役に持って行くのは、ちょっとヤッカイな仕事となる。

ところが、裁判間近になって、犯人の真情を聞き取っているうちに、「オレはやってないすよ」と言い出したものだから、さあ、困ってしまった福山担当弁護士は、何が真実やら・・・???となる。

ま、映画を見ているわれわれは、冒頭のシーンの犯行現場を見ているので、これはまた殺人犯が司法を嘲笑する、あの「羊たちの沈黙」のハンニバル・レクター教授を気取ったのか・・と気をまわす。

そんなヤバい展開の中でも、被害者の娘が苦情を訴えて、実は元妻の共犯者がいたという情報をほのめかしたために、単独犯だと信じられていた役所は「おれ、やってないスよ」と言い出したのだ。

これは映画のレトリックであり、ネタバレにもなるので、これ以上は書く訳にはいかないが、それならば、なぜ社長は夜中の多摩川河川敷に同行したのか・・・という単純な疑問もでてくる。

作品は当代人気と実力の二大スターの共演作品なので、ま、彼らの演技格闘を愉しめばいいのだが、わたしとしては、ミステリー映画としては曖昧なシーンが多かったのが、残念だった。

 

■左中間に抜けたツーベースだが、オーバーランしてタッチアウト。 ★★★☆?

●9月9日より、全国東宝系でロードショー 


●『ワンダーウーマン』の颯爽の登場で、豪快にウーマン・パワー炸裂だ!!

2017年07月22日 | Weblog

7月18日(火)13-00 内幸町<ワーナー・ブラザース映画試写室>

M-080 『ワンダーウーマン』"Wonder Woman " (2017) Warner Brothers/TM& DC Comics / Cruel and Unusual Films 

製作・ザック・スナイダー 監督・パティ・ジェンキンス 主演・ガル・ガドット <141分・シネマスコープ> アイマックス・3D公開

「スーパーマン」「バットマン」「スパイダーマン」「アイアンマン」・・・と、アメリカン・コミック発祥のメンズ連中にはラチがあかないーー、と登場したのが、この「ワンダー・ウーマン」。

ちょっと<アマゾネス>のような、ヒステリックな女傑がついに登場・・と危惧して、試写を遠慮していたら、映画の友人たちが、みな絶賛しているので、勇気を持って、ついに試写を見た。

たしかに1941年に登場したという女傑コミックの映画化なので、まるで「キングコング」の棲む絶海の女性だけの孤島に、空中戦の戦闘で撃墜された戦闘機がいきなり不時着。

その事故機にはアメリカの飛行パイロットのクリス・パインが乗っていたが、たまたま海岸にいた女性戦闘士のガルに救われて、その日から女性だけの島で介抱されることになった。

時代は世界大戦中で、クリスは実はアメリカのスパイで、ドイツの重要な軍事機密を隠し持っていたが、それを本部に届けるという任務の最中で、その危機を知ったガルは一緒に島を出ることにした。

あとはヒッチコックの「第三逃亡者」や「海外特派員」のような展開で、ちょっとフリッツ・ラングの「外套と短剣」のようなストーリー展開による、スパイ・アクションの世界。

ところが、異色の傑作「モンスター」でもシャーリーズ・セロンを大スターにした実績のあるパティ・ジェンキンス監督は、強力なスタッフのバックアップで、まさに女傑監督の力量を発揮する。

たしかにコミックの映画化なので、エピソードにはそれぞれの見せ場を作っているが、次の見せ場になると、まったく別の映画のような力強い演出を見せて、この長尺活劇をぐいぐい引っ張る。

その演出とテンポの素早さは、さすがは女性ならではの入念な計算としぶとさを見せて、ぐいぐいと引き込む演出のアイデアは「ワイルド・スピード」の端役だったガルの魅力を前面に強調する。

ま、お話は「ミッション・インポッシブル」のようだが、そこは主演が空を駈ける古代の女傑「ワンダー・ウーマン」の大活躍で、久しぶりにワクワク感の持続する面白い作品になっている。

どうしてもコミックとなると、ロボットやトランスフォーマーや、空飛ぶ男達の映像世界になっていたが、この作品では古代アマゾネスの生まれ変わりのような、美女が野郎たちをぶっ飛ばす。

会社での苦労をひとりで苦にして抱え込むことのないように、ぜひ、あの大広告代理店などの女子社員のように、下働きの苦労などは、この作品を見て奮起して欲しいものだ・・と思ってしまう。

ラストシーンで、ワンダー・ウーマンは電話をかけていたが・・「すみませんが・・ブルース・ウェインさんはいますか・・?」と言っていたので、次作ではバットマンと共演するのだろうか???

 

■前身守備のセンター頭上を大きく越えるライナーのツーベース。★★★☆☆+

●8月25日より、新宿ピカデリーなどで全国ロードショー 


●『トランスフォーマー*最後の騎士王』の全編激闘にテンションも夏バテ疲労。

2017年07月19日 | Weblog

7月12日(水)11-00 新宿・歌舞伎町<東宝シネマ5F・IMAXシアター特別披露試写>

M-079『トランスフォーマー・最後の騎士王<3D/アイマックス>』"Transformers/ The Last Knight " (2017) Paramount Pictures / Haspro.

製作・監督・マイケル・ベイ 主演・マーク・ウォールバーグ、アンソニー・ホプキンス <149分・IMAX・ビスタサイズ> 配給・東宝東和

もう、この種の<変身玩具>発想の大音響バトル映画には、さすがに興味はないが、あの新宿歌舞伎町のコマ劇場の後に出来たアイマックス・シアターとなると入ってみたい。

前夜にあった試写は気が引いてしまったが、たしか大学受験で上京して、初めてトッド・AOシステムによる70ミリ・ミュージカル『オクラホマ1』を見たのが、新宿コマ劇場だった。

その跡地に昨今オープンした複合シアターなので、ちょっと青春の名残りもあったのだが、場内はもう、あのコマ劇場の広さはなく、わが二子玉川にあるシネコンのIMAXシアターと同じ。

ま、これはただの映画青年の、初めての巨大シアターの体感を、また60年もして味わってみようという、安っぽいセンチメントなのだよ、と自覚しながら<変身映画>を体感した。

いきなり「キング・アーサー」で見たばかりの、あの「円卓の騎士」の時代の壮絶な中世戦争があり、武装甲冑をまとった騎士たちが派手な戦闘を展開していて、騎士たちは軍馬と共に駆け巡る。

これは先日見た映画の再上映かと眠くなったが、しばしの激戦のあとに現代のロンドンのシーンとなり、老バートン卿というアンソニー・ホプキンスが、その古来の騎士たちの戦いを話すのだ。

それによると、過去の1000年も前からの大戦には、いつもトランスフォーマーが実は戦闘に絡んでいて、キング・アーサーなども、実はその変身騎士たちの強力なバックアップもあった、というのだ。

しかし、その人類の守護神だったオプティマス・プライムという守護神は、異星人たちによって幽閉されていて、荒廃している現代の都会を滅ぼす使命をもって、この地球に帰還するというのだ。

ま、この映画プレスの解説を読んでいても、わたしなどの変身玩具の歴史もありがた味も、価値観も、ましてやゲーム作戦のルールも知らない人間にとっては、何が何だかわからない展開が続く。

いまやトム・クルーズに代わって、このアクション・ヒーローを演じざるをえないポジションを任されたマークは、「バーニング・オーシャン」や「パトリオット・デイ」に続いての受難となるのだ。

この作品でも製作総指揮をしているスティーブン・スピルバーグは、もともとこのシリーズのプロデュースには関わってきただけに、もう体力的な現地製作はマイケル・ベイに一任しての、自宅指示のようだ。

それだけに、あの「スターウォーズ」のシリーズを駆逐すろような巨大ロボットの大変身戦闘も、ここでは最新の特殊映像効果を駆使して、スピードとサウンドのお祭り大会は最大級の横絶さを見せつける。

だから多くのテレビゲームで戦闘経験の豊富な平成人種には、これは最高のバトル映画かもしれないが、その実戦体験のないロートル・ジーサンズには、これは異次元の映像体験のようだった。

 

■左中間のフェンスに突き刺さる豪快なライナーで、ボールも変形。 ★★★☆?

●8月4日より、全国東宝系でロードショー 


●『ライフ』は地球帰還ロケット内の想定外サスペンス。

2017年07月17日 | Weblog

7月11日(火)9-50 二子玉川・109シネコン・シアター10スクリーン

M-078『ライフ』" LIFE " (2016) Columbia Pictures / Skydance Productions / Sony Pictures 

監督・ダニエル・エスピノーサ 主演・ジェイク・ギレンホール、ライアン・レイノルズ <104分・シネマスコープ>配給・ソニー・ピクチャーズ

どうも試写状のニュアンスでは、作品の実態が予測できないし、なぜか他の作品と毎度バッティングして見逃していた作品だが、気になっていたのでご近所シネコンの早朝に飛び込んで見た。

あの異色ケッサク「デッドプール」のスタッフが作った新作なので、まさかコメディではないだろうが、タイトルの意味も曖昧だし、SF映画ということ意外は、さっぱり内容がわからない。

ちょっと見分けのつかないルックスのジェイクとライアンなので、同じ宇宙服を着ていては<地球人>だろうということぐらいしか区別が着かず、わが真田広之が搭乗しているのも不思議。

とにかくナゾだらけのSF新作なのだが、このドラマは火星観測ロケットが、その星態監査の任務を終えて帰還してくる船内からドラマは始まり、女性船長レベッカ・ファーガスン以下7人程度が搭乗。

地球への順調な帰路の機内では、ごく和やかにそれぞれの搭乗員が研究の整理をしているが、火星で採取した小さなミミズのような微生物を、試験管から移す作業のときに、部品を損傷した。

その研究者は、すぐに寄生虫のような幼虫を採取して観察していたが、みるみるその微生物は拡大して、係の研究家が興味を持って他のフラスコに移そうとしたときに、取り逃がしてしまう。

その幼虫のような生物は、まるでイカの足のようにクネクネと動き乍ら見る見る成長して、その捕獲に手こずっている研究者の宇宙服の中に入り込み、あっという間に、その技師の命を奪ったのだ。

狭い船内では、それほど隠れる場所はないのだが、その物体はどんどんと体型をヒトデのように変化させて浸食を繰り返して、音も出さずに他のロケット内の科学者たちも襲い出す。

生物を採取した科学者は最初の犠牲者になったのだが、そのエイリアンは見る見る大きな脚だけのタコのように成長して音もなくロケット船内を見え隠れしては搭乗員を襲うので、それぞれに身を守る。

しかし俊敏な動きを素早い動きで成長していくバケモノは、まさに獰猛な軟体動物と化して行動して、ひとり、またひとり、と、隊員の命を奪うので、それぞれに隔離スペースに身を隠す。

という異常事態が発生している間にも、ジェイクもライアンも、真田広之までが犠牲となり、宇宙船は地球に向けての高度を下げているのだが、とうとう女性船長は単身ロケットに乗って脱出を試みる。

さすがに、あの「デッドプール」という奇妙なスーパー・ヒーロー映画を作ったスタッフなので、この作品も予想以上のサスペンスで地球への急降下を進めて行く。

ま、たしかに「エイリアン」の外聞のような面白い展開だが、やっとベトナム辺りの海上に落下した宇宙船の帰還用ポッドには、まさに想定外のエンディングが待っていたのには、恐れ入った。

 

■センター・オーバーのライナーの大飛球で、セカンドにスライディング、写真判定。 ★★★☆☆☆

●全国で公開中 


●『ザ・マミー*呪われた砂漠の王女』古墳からの豹変復讐にトムはまたも悪戦苦闘だ。

2017年07月15日 | Weblog

7月7日(金)13-00 半蔵門<東宝東和映画試写室>

M-077『ザ・マミー*呪われた砂漠の王女』" The Mummy " (2017) Universal International Studio / Secret Hideout Production.

原案・製作・監督・アレックス・カーツマン 主演・トム・クルーズ、ラッセル・クロウ <110分・シネマスコープ> 配給・東宝東和

ユニヴァーサル映画スタジオは、昔からハリウッドのメジャー・スタジオでは、アカデミー賞を狙うような高尚な作品には背を向けて、ひたすらにB級怪奇娯楽映画を作って来た。

たまにはスピルバーグ監督のファンタジー風の作品もあったが、もともとは怪しげなパルプ・マガジンの映像化のような、おっかなびっくりなテーマの映画ばかり量産してきたのだ。

亡くなられた映画評論家の石上三登志さんは、同じCMの仕事をしていた関係で、よく一緒にハリウッドに行ったりしては、ユニヴァーサル映画の話ばかりしていたものだが・・。

そのユニヴァーサル映画が、この作品を皮切りにして、過去のB級怪奇映画を<ダーク・ユニバース>と題して、これから数十本の過去の作品をリメイク・リニューアルして製作公開するという。

ま、この企画は天国の、いや、地獄の石上さんも狂喜していると思うが、ドラキュラから、フランケンシュタイン、狼男、透明人間、アマゾンの半魚人までが、ゾロゾロと再出現リメイクされる。

この企画にはスティーブン・スピルバーグも中心になっていて、ジョニー・デップの「透明人間」と続き・・ま、これからしばらくは<ダーク・ユニバース>の作品が製作公開されるということになった。

だからこの作品も、いきなりユニヴァーサルの、あのいつものイルミネーションの輝く地球のクレジットではなく、電気の消えた真っ暗な地球の上に、あのユニバーサル・マークが回転する。

中東イラクの戦場の瓦礫の地下から、古代エジプトの古い棺が見つかり、軍の関係者のトムは女性考古学者のアナベラ・ウォーリスと共に、その古代の棺<ザ・マミー>を研究の為に発掘。

銃弾と飛び交う危険な戦場から、その棺を軍用機でロンドンに空輸するが、郊外で突然にエンジン・トラブルで機は墜落して大破に、瀕死のトムはなぜか遺体安置所で記憶が甦る。

しかしこの事故には、封印されていた古墳に眠っていたエジプト王女の復讐が絡んでいて、ふたつの瞳孔を目にした悪魔のような美女は、現代人への怨念を込めた恐怖の映像が展開していくという寸法。

例によって、この受難の墓参につき合ってしまったトム・クルーズは、もう50歳を過ぎたというのに、インディ・ジョーンズ博士のように、古代の怨霊たちと大アクションを展開するからご苦労様。

ロンドンの古代研究博士のラッセル・クロウは、またしてもこの難事件に絡んで来て、この邪悪な王女<ザ・マミー>のナゾを解き明かし、ここで「ジキル博士とハイド氏」の豹変ぶりを見せる、という仕掛け。

随所に、この復活ユニバーサルB級映画リメイク大会の楽屋落ちが出てくるので、オールド・ファンには懐かしくも、また悪夢の再来につきあうという、不思議な体験となるのだった・・。ああ、石上さん、助けて。

 

■右中間を抜けたゴロがフェンスで消えて、エンタイトル・ツーベース。 ★★★☆+☆

●7月28日より、東宝シネマズ日劇他でロードショー 


●『ロスト・イン・パリ』トボケた二人の、おしゃれなパリの珍迷走コメディ。

2017年07月13日 | Weblog

7月4日(火)13-00 渋谷<映画美学校・B-1試写室>

M-076『ロスト・イン・パリ』" Paris Pieds Nus " (2016) CNC Nouvrlles Technologies en Productions, CANAL+ Cine+ 仏

製作・監督、脚本・主演・ドミニク・アベル、フィオナ・ゴードン 共演・エマニュエル・リヴァ <83分・ビスタサイズ> 配給・サンリス

むかし、フランスにジャック・タチというパントマイムを演じる映像監督がいて、「ぼくの伯父さん」など、不思議な魅力の映画があったが、これは、何と・・そのタイプ。

試写状のデザインでは、ダンスする男女のカップルのポーズが魅力的で、てっきり「ラ・ラ・ランド」のようなミュージカルかと思って見てたら、これはパントマイム映画。

カナダの北部の奥地で、いきなり、すさまじい暴風雪がドアから吹き込む家に、パリの老婆から、「ヘルプ」の手紙が届き、とにかく赤の、でかいバッグパックを背負い、彼女はパリに行った。

その上に赤いカナダの国旗をつけたメガネの年増女性フィオナが、パリをウロウロと歩いて老婆のアパートを探したが不在らしく、彼女は路頭に迷ってセーヌ河畔に出てしまう。

エッフェル塔の写真を撮ろうとして足を踏み外した彼女はセーヌに転落し、どうにか岸に這い上がったが、バックパックを失い、その中のパスポートや現金もすべて失ったのだ。

カナダ大使館に災難を報告したが、当局は、のんびりとした対応で、とりあえずの食券だけを手渡し、フィオナはまさにパリの浮浪者になってしまった。

ところが、セーヌ河畔でホームレスのドミニクは、偶然に浮いて来たフィオナのバッグを発見して、さっそく船上レストランで食事をするが、そこで途方に暮れたフィオナと会った。

という導入から、どうもワンポイントも抜けたような演出と演技は、どうやらパントマイム芸人の、このふたりの運命的な出会いを見つめる「パリのめぐり逢い」的なコメディになっていく。

あまり会話はなく、それでも片言のフランス語で通じる二人のパントマイムは、さすがに面白いリアクションで笑わせてくれて、この作品のユニークな魅力に馴染ませてくれるのだ。

二人は行方不明の老婆の姿を探して、パリの街を歩くのだが、これがまたなかなかにおしゃれな、あのウィリアム・パウエルとマーナ・ロイの夫婦探偵のようで、パントマイム演技で和ませてくれる。

とはいえ「影なき男」の夫婦探偵とは違って、このカナダからの旅行オバさんと、ホームレスのおっさんのコンビは、実にトボケたいい味なので、ついついその迷子探偵につき合ってしまう。

ま、おしゃれなエンディングはネタバレになるので書かないが、この手のヘンテコで巧妙なインテレクチュアルなコメディは最近見ていないので、実に懐かしくも嬉しくなった。

 

■サードとショートの間のゴロを野手が譲り合っている間にツーベース。 ★★★☆☆+

●8月5日より、渋谷ユーロスペースほかでロードショー 


●『怪盗グルーのミニオン大脱走』では、またミニオンズが大暴れ!!!だ。

2017年07月11日 | Weblog

7月4日(火)10-00 半蔵門<東宝東和試写室>

M-075『怪盗グルーのミニオン大脱走』" Despicable Me 3 " ( 2017) Universal International Pictures / Illumination Studios

監督・ピエール・コフィン、カイル・バルダ 声:スティーブ・カレル、ジュリー・アンドリュース <90分・シネマスコープ> 配給・東宝東和

ユニヴァーサル映画スタジオというのは、ハリウッドでも大昔からB級でオバカな怪奇映画や、悪党たちの抗争ギャング映画ばかり作ってきたというアウトローな製作個性が自慢。

とうとうトム・クルーズまで主演に巻き込んで、サイレント映画時代から量産してきたB級怪奇ミイラ映画などを公開、次はマジにジョニー・デップ主演で透明人間をリメイクしていくという方針を発表した。

このヘンテコな怪盗や悪党たちのコミックなアニメーション・シリーズは、だからして、健全な善良思考を貫くウォルト・ディズニー・スタジオとは対極にある・・と自負しているようだ。

「ペット」や「SING」に続いて公開される、この「怪盗グルー」のシリーズも気がつくと回を重ねておなじみとなり、とうとう<ミニオンズ>というキミョウな薬状の体と奇声の小悪党で人気。

かくして、この不思議なミニオンズの連中は、主役の怪盗グルーとは別のキャラクター群像で人気が出て来てしまい、正直、わたしも大ファンなので、この連中見たさに試写室に向かった。

今回も一応はグルーが主役なのだが、家族第一主義に改心したハゲオヤジに対抗して、今回は80年代には天才子役として人気のあったバルタザール青年が不良なギタープレイヤーとして活躍。

怪盗だったグルーの改心に嘆いたのか、その義兄弟の悪党が登場してミニオンズを引き連れての、刑務所内からの大騒動となり、見ているこちらも、その家族関係には???なのだが、ま、それは横目で見る。

やはり、この映画でも登場シーンが多くなって来たミニオンズたちの、あの奇声と動きが魅力で、困った事に、まるで主役のバルタザールを<喰う>ような異様な存在感となって増殖を続けるのだ。

この傾向は、健全なファミリー・アニメーションのポジションを維持していく、名門ディズニー・スタジオに対抗してのスタンスだろうが、わたしはますます<ミニオンズ>のファンになってしまった。

家族騒動から、別の怪盗の登場でパリの美術館からダイヤモンドが盗まれて、そのゴタゴタ騒動でミニオンズまでが投獄されるが、とにかくこのシリーズの悪党談義は例によって支離滅裂。

果たして、このテーマが子供達のアタマに影響上いいか、どうか、なんて、泥臭い老婆心は横にして、この悪党映画の面白さは、まさに<バッド・ジョーク>の悪ノリ感覚なので、ご用心だが・・・。

とにかく、またしても、黄色い怪物ミニオンズたちの大脱線ぶりには嬉しくなってしまった。おそらく主演になれないという、この群衆感覚が痛快なのだろうが、また会いたい連中だ。

 

■セカンドゴロを野手が弾いてモタモタしている間に、スチールだ。 ★★★☆☆+

●7月21日より、全国夏休み大脱走!!! 


●宇宙ロケットも補修が大変『スペース・カウボーイ』が6月サンセット傑作座ベスト。

2017年07月09日 | Weblog

6月のニコタマ・サンセット傑作座<自宅>上映ベストテン

 

*1・『スペース・カウボーイ』00(監督・主演・クリント・イーストウッド)DVD ★★★★☆☆

    初期のアポロ計画で打ち上げた観測衛星にトラブルが発生して、リタイアしていた当時の老齢パイロット達が、また老眼鏡を頼りに宇宙に飛ぶ壮大なミッション。

 

*2・『スリーパーズ』92(監督・バリー・レビンソン)ブラッド・ピット DVD ★★★★☆

    60年代後期のマンハッタンで、非行で投獄された少年たちが看守たちに受けた性的な虐待を、後年に摘発する法的なサスペンスで、デ・ニーロや、ダスティンも好演。

 

*3・『キッスで殺せ!』55(監督・ロバート・アルドリッチ)ラルフ・ミーカー LD ★★★★

    探偵が深夜の路上で乗せた女は、取り調べの最中に殺害されたために、なぜか探偵も拉致監禁されて暴行を受けたが、裏には巨大な秘密エネルギーの隠蔽組織があったバイオレンス。

 

*4・『魅せられて』49(監督・マックス・オフュルス)ジェームズ・メイスン DVD ★★★☆☆☆

    悪徳な富豪ロバート・ライアンと、魅せられて結婚してしまった看護婦は、その悪魔の本性に悩まされて、豪邸を脱出して自活しようとするが、夫の手下が追いかけて来るノワール。

 

*5・『シーホーク』40(監督・マイケル・カーティス)エロール・フリン DVD ★★★☆☆

    パイレーツ・オブ・カリビアンのご先祖のような、痛快海賊活劇の最高傑作で、やはり海賊はフェンシングがうまくないとかっこ良くないのだよ、とジョニー・デップに言いたい。

 

*6・『影なき男』34(監督・ディック・ヴァン・ダイク)ウィリアム・パウエル VHS

*7・『侠客列伝』68(監督・マキノ雅弘)高倉 健 DVD

*8・『女性N0・1』47(監督・ジョージ・スティーブンス)キャサリン・ヘプバーン VHS

*9・『スニーカーズ』92(監督・バリー・レビンソン)ロバート・レッドフォード DVD

*10『夜に生きる』48(監督・ニコラス・レイ)ファーリー・グレンジャー VHS・・・・・という、プロ野球ナイター観戦の影響で、鑑賞本数が貧弱。???