細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『僕のワンダフル・ジャーニー』には、犬がいろいろ出て来て、ワン、ワン、ドラマも混沌。

2019年08月06日 | Weblog

7月31日(水)13-00 半蔵門<東和映画試写室>

M-057『僕のワンダフル・ジャーニー』" A Dog's Journey " (2019) Universal Pictures /Amblin Entertainment, Wallden Media, Reliance Entertainment

監督・ゲイル・マンキューソ 主演・ジョシュ・ギャッド、デニス・クエイド <109分・シネマスコープ>配給・東宝東和 

2年ほど前にあった「僕のワンダフル・ライフ」は、主演のデニス・クエイドが、愛犬との友情で暖かい生活をおくるという、ハートウォーミング。

まだ傑作の印象が残っていたので、またスピルバーグのアンブリン作品だし、一応はデニスも出ているし、監督だったラッセ・ハルストレムもバックアップ。

と、試写状に明記されていたので、犬の大好きな当方としては、旧友にでも会うような気分で試写室に行ったのだが、・・これはかなりのトーン・ダウン。

ただでさえ、犬というのは一匹の印象が強く残って友情関係も生まれるのだが、この作品は監督も未知の新人で、とにかく犬も沢山出て来るのだ。

ま、犬を見るだけなら、近所のドッグズ・ショップに行けば、いくらでも犬に会えるのだが、この新作では沢山の犬がドラマを駆け回るので閉口してしまった。

というのも、前作で友情関係の濃かったデニス・クエイドと愛犬のベイリーが、世代交代で犬はどんどん別の犬になり、デニスも老人となってボケている。

たしかに犬の寿命は、人間ほど長くはないが、このわたしだって学生時代に実家の盛岡市の屋敷で、トータルで4匹の犬を飼い、4匹とそれぞれに友情を築いた。

でも、それは個人の心の問題であって、それぞれに多くの飼い犬とのドラマを一本の筋の通った作品にするのは、これはかなりシナリオ化が難しいだろう。

という難問を気にもしないで、この作品は愛犬がどんどんと入れ替わり、しかも犬種のタイプも変わって行くので、もうストーリーはフォローできない。

どうやら老人になったデニス・クエイドのところに、当時の愛犬の子孫が会いに現れるのが感動的なラストのポイントらしいのだが、それまでにはこちらも困惑。

 

■サードゴロを野手が弾いてボールはファールゾーンをコロコロ。 ★★??

●9月13日より、全国ロードショー


●『ボーダー*二つの世界』の女性検察官の異様なダブル・ライフに惑う。

2019年08月03日 | Weblog

7月25日(木)12-30 六本木<キノ・フィルム試写室>

M-056『ボーダー*二つの世界』" Grans/(The Border)" <2018> @Mata/Spark & Karn Films/AB 

監督・脚本・アリ・アッバシ 主演・エヴァ・メランデル エーロ・ミロノフ<110分・シネマスコープ>配給・キノフィルムズ

<ボーダー>とは、普通は国境線のことで、これまでにも、とくにアメリカとメキシコの国境線などがテーマになって、多くの傑作を生んでいる。

というのも、このボーダーラインによって、国は変わるが、そこに住む人種や文化や歴史までも大きく異なっているから、我々のような島国人種とは当然異なる。

北欧のスウェーデンとデンマークも、隣接した国で、とくに政治的な大きなトラブルなどはないようだが、そのスウェーデンの税関に勤務しているエヴァが主人公。

とても美人とは言えない容姿だが、彼女は国境税関の係員をしていて、国境から入国する異邦人の検査官をしているが、パスポートを特にチェックしない。

通関の通路を通るのは一人ずつの旅行者だが、彼女はその異邦人の表情を見て、不審な人間の手荷物だけをチェックしているが、違法な薬物などはすぐに摘発する。

よく通関ではシェパード犬などが、その特殊な嗅覚を活かして取り締まりをしているのだが、小柄でブスな彼女は鋭い嗅覚と視線で、違反者を検挙するのだ。

こうした特殊な技能を持っている人物のテーマというのは、それだけでも面白いのだが、映画はその彼女の特異な私生活を次第に覗いて行く・・というサスペンス。

おそらくヒッチコックが見たらニヤニヤと喜んだであろう・・・と思うようなストーリー展開だが、その彼女が純粋ながらもユニークな情愛の世界にいるから、異様。

といっても犯罪に関連したような悪人の生活ではないのだが、特異な体質から見えて来る彼女の私生活が、これまた常識の<ボーダー>ラインを越えて行く。

カンヌ国際映画祭で「ある視点」部門でグランプリを受賞しただけに、ちょっと人間離れをした臭覚と獣性をもった女性がテーマのミステリーとして、絶品だ。

ごく知的でノーマルな生活をしている人間の心に潜む野獣性、その臭覚の鋭さを描いた異様なサスペンスとして、ちょっと前例のない傑作で、とても説明不可能。

 

■鋭いゴロがセンターの股間を抜けて、あっという間のスリーベース ★★★☆☆☆+

●10月11日より、<ヒューマントラストシネマ有楽町>他でロードショー


●『荒野の誓い』で再現された本格ウェスターンの荒涼なプライド。

2019年08月01日 | Weblog

7月22日(月)12-30 築地<松竹映画本社3F試写室>

M-055『荒野の誓い』"Hostiles" (2018) Waypoint Entertainment, Bloom a le Grisbi Productions

製作・監督・脚本・スコット・クーパー 主演・クリスチャン・ベール,ロザムンド・パイク <135分・シネマスコープ>配給・クロックワークス

実に夢に見るような、まさに白日夢のような本格的な<西部劇>であって、少年時代にウェスターン映画で育った当方にとっては、往年の旧友に会う気分。

あのクリント・イーストウッドは、イタリア製の<マカロニ・ウェスターン>で育ったキャリアなのだから、本格西部劇というのは、実に70年ぶりか・・・。

と、半信半疑で見始めたのだが、30分もすると、この若きスコット・クーパー監督も、かなりの<西部魂>を持っている血統のキレものなのが判って来る。

話しは1892年という西部が本格的に開拓しせ白人社会が軌道に乗った始めの頃、捕虜にしていたシャイアン族の長老がガンの末期となり、故郷に戻すことになった。

軍人のクリスチャンは、インディアンと戦った武勲の大尉なのだが、北部モンタナ州のシャイアン族の保護区まで、この病気の老酋長と一族を護送することになった。

まだ凶暴なインディアン達が、少人数ながらゲリラとなって襲撃するという危険な旅路のなかで、襲撃に遭った開拓者家族の離散したロザムンドなどを同行。

かなり危険な状況で移動するという、これはまさに<マジ西部劇>であって、こうして危険な西部の荒野を旅する状況の映画を見るのも50年ぶりぐらいだろうか。

もちろん、当時の多くの傑作はDVDでコレクションしているオールド・ファンなのだが、やはり大きなスクリーンで<ウェスターン>を見る快感は涙も出てしまう感動。

そのノスタルジックなスクリーンの景色も、かなり人種感情を考慮しきったスコット・クーパー監督の演出は、あの傑作「クレイジー・ハート」をクリアしていくのだ。

ニヤリともしないで過酷な使命を続けるクリスチャンの軍人も、あの西部魂を匂わせて、あの砂埃のザラついた感触まで思い出させるような砂塵を感じさせる。

はからずも、久しぶりの本格西部劇の眩しさには、ついホロリとしてしまった、これは懐かしくも逞しいウェスターンの再登場、心から<おみごと>と言いたい。

 

■文句なしの左中間スタンド中段へのホームラン。 ★★★★★+*

●9月6日より、全国ロードショー