細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『ファイティング・ファミリー』はアメリカの地方巡業の<喧嘩家族>ホームドラマ。

2019年09月28日 | Weblog

9月20日(金)13-00 半蔵門<東宝東和映画試写室>

M-073『ファイティング・ファミリー』”Fighting with My Family" (2019) Metro-Goldwyn-Mayer Pictures inc. WWE Studios  

監督・脚本・スティーヴン・マーチャント 主演・フローレンス・ピュー、ヴィンス・ヴォーン <108分・シネマスコープ> 配給・パルコ

あのミュージカルの名作を量産していた時代もあった、<MGM>映画は、ライオンのマークが吠えるタイトルで、随分と大昔からお世話になった。

そのトレイドマークを信じて試写を見たのだが・・・、これが、本当に伝統の大メジャー、あのメトロ・ゴールドウィン会社の作品かと、溜め息がでた。

別に、それほど失望すろような失敗作ではないのだが、これはまさにタイトルのままに、<万引き家族>に負けない、アメリカの<喧嘩家族>の話しなのであった。

しかも、試写状には、あの<ドウェイン・ジョンソン>が正面にデンと立っているので、これは彼の主演作品かと楽しみにして見たのだが、彼は<ワンカット>。

それも何やらプロレスをバックアップしている宣伝マンの役で、作品は・・・アメリカでは評判のような、家族ぐるみでプロレスの試合を演じて行く、という異色。

ま、むかし、あのデミル監督の「地上最大のショウ」という、サーカス一家の巡業映画があったのだが、・・・。これはその<プロレス一家>の巡業風景映画。

つまり、あちらでは、この<ファイティング・ファミリー>という、一家で、プロレス巡業をアメリカの田舎町で演じて行くという、ホームドラマなのだった。

だから、ドウェインは、アタマでチョイと出て来るだけで、ストーリーは鉄火娘のフローレンスが、プロレスラーを演じて巡業していくという、女性根性映画。

という視点で見て行けば、これも今のアメリカの、非常にティピカルなポイントのホームドラマということになるのだが、どうも、そのギミックには笑えない。

 

■当たりはいいが、ピッチャーフライ。 ★★☆

●11月29日より、全国公開。


●『ベル・カント*とらわれのアリア』ペルーでの日本大使館占拠事件の再現。

2019年09月25日 | Weblog

9月20日(金)10-00 六本木<KINOフィルム試写室>

M-072『ベル・カント*とらわれのアリア』"Bel Canto" (2018) Priority Pictures / A Line Pictures / Depth of Field

監督・ポール・ワイツ 主演・ジュリアン・ムーア、渡辺 謙、加瀬 亮 <シネマスコープ・101分> 配給・キノ・フィルムズ

1996年12月16日、南米ペルーの日本大使公邸で起きた、現地ゲリラ組織MRTAのコマンド14人によって突発した襲撃事件の再現ドラマ。

不覚にも忘れてしまっていたが、翌年の4月22日までの間、何と127日間も公邸は占拠されて、当夜はナショナル・デー・レセプションで、多くの参列者がいた。

ゲリラ・グループは当時のフジモリ政権のもとで、革命派の多くの逮捕者の即時解放を要求して、パーティの各国出席者たちを拘束していたが、解放交渉は長引いた。

その政治的な背景は描かれないが、映画は当夜会場にいた多くの各国要人たちの混乱と、たまたま会場のイベントで唄う予定の歌手と、公邸に同席していた日本人が主役。

ソプラノ歌手を「めぐりあう時間たち」や「アリスのままで」などで好演していたジュリアン・ムーアが演じていて、今や国際スターの渡辺謙が彼女をガードする。

困った事に、つい先日、インドで起こった「ホテル・ムンバイ」の映画化作品を見たばかりなので、どうしても似たようなハイジャック設定で、イメージが混乱。

しかも、こちらのペルーの事件は、政府の対応がうまく行かずに半年もかかり、その間に日本大使館の機能は、その事件よりも多くの人質の健康対応に追われがち。

いきなり数百人の人質を大使館内に抱えて、その食料やベッド対応、それに病人も出て来るという現実に、おそらく当時も動揺の混乱は、これ以上だったろう。

その緊迫した空気を和らげようと、ゲストのオペラ歌手ジュリアンが唄い、そのサポートで渡辺謙が奔走するのはいいが、どうも作品にはサスペンスが薄いのだ。

これは、実際の交渉が長引いたことと、ゲリラ側と人質との交流の温度を描くのに時間がかかり、あのムンバイの事件のような歯切れの良さは見られずにタイクツ。

 

■レフトが返球をもたつく間にセカンド狙いアウト。 ★★☆☆

●11月15日より、全国ロードショー


●『クロール〜凶暴領域』は巨大ワニが家の地下に棲みついたディザスター!!

2019年09月21日 | Weblog

9月5日(木)13-00 半蔵門<東宝東和映画試写室>

M-071『クロール<凶暴領域>』"Crawl " (2019) Paramount Pictures All Rights Reserved. 

脚本・サム・ライミ 監督・アレクサンドル・アジャ 主演・バリー・ペッパー <88分・シネマスコープ>配給・東宝東和

あの「ジョーズ」が現れたのは、もうかれこれ半世紀に近い過去のフロリダ近海だったと思うが、これまた同じエリアに登場した凶暴ワニの軍団。

サメは海の中だけで生息しているが、同じような大きさのワニは水中はもちろん、陸上でもその凶暴さを振るう悪役で、あの<ターザン>の宿敵だった。

そのフロリダ海域は、多くの別荘やホテルが立ち並ぶ、アメリカの楽園なのだが、中南米にも隣接しているので、密航者やメキシコの悪徳犯罪組織やマフィアの拠点。

例年のように、ハリケーンもお祭りのように襲来する地域なので、あの「ハリケーン」という映画や「ジョーズ」などでもお騒がせの<危険な楽園>だ。

わたしも一度、マイアミのホテルが林立するビーチサイドを、ヘリコプターで旋回したことがあるが、海岸線のホテル街はまるで<ビルとプールの白い楽園>だった。

しかし、その西側やキューバに近い南西の運河に囲まれたエリアは、まるで模型の平屋住宅のような安価な建て売り住宅が、定年退職者家族の最期の居住地。

名作『真夜中のカーボーイ』は、それでもマイアミに憧れ、あのフランク・キャプラ監督、シナトラ主演「波も涙も暖かい」では、まるで<天国>に見えた。

そのマイアミには夏祭りのように、凶暴なハリケーンもやって来るが、その超巨大なハリケーンで、郊外の運河添いの住宅地は巨大津波と嵐に襲われたのだ。

しかし住宅の風水害も毎度のことだが、この幸福な家族に襲ったハリケーンで、地下の車庫兼食材保存スペースには、嵐で巨大なワニが数匹来訪していた、という恐怖。

ま、「ジョーズ」の<自宅・地下車庫編>と思えばいいが、とにかく凶暴醜悪なワニが数匹流れ込んだという災害は、もうハリケーンの被害どころではない、恐怖なのだ。

まるでユニヴァーサル映画のご自慢のテーマを、おしゃれな<パラマウント映画>が製作している、というのも、昨今のハリウッドのご時世のようで、コワい。

 

■痛烈なセンター・ライナーを野手がもたつく間に、ツーベース。

●10月11日より、全国シネコン急襲。


●『楽園』の分かれ道からの真相は、原作本を読んだ方が解明するだろうか。

2019年09月17日 | Weblog

9月3日(火)13-00 飯田橋<角川映画試写室>

M-070『楽園』(2019)角川大映スタジオ、<楽園>製作委員会

原作・吉田修一 監督・瀬々敬久 主演・綾野 剛、佐藤浩市 <ビスタサイズ・120分> 配給・KADOKAWA

むかしは、といっても、つい最近の<昭和>では、日本の風景を映画で見るのは、小津安二郎の描く<家族>や、木下恵介の<人情>だった。

そして山田洋次監督の<男はつらいよ>のシリーズが、いかにも質素で人情豊かな<和風>という時代の、善良でつつましい家族の姿をスケッチした。

<平成>から<令和>となって、基本的に日本の姿は変わっていないにしても、その背後で起こっている事件や悲劇は、どこかしら変質化してきているようだ。

この作品の事件も、信州の片田舎で起こった少女の失踪事件と,その後の住民生活の不安とか、低迷を描いて、ちょっとあの「砂の器」の画質を思い出す。

事件は連日、現実の多くの悲劇を生み、それはテレビや新聞の記事として一瞬は表面化したものの、あとは<迷宮入り>となって葬られるケースも多いだろう。

信州の村はずれの山道のY路地で、少女が行方不明になり、それによって混乱していく家族や周辺住民の動揺を描いて、そこには警察の捜査はとくに描かれていかない。

われわれの見慣れた都会での犯罪映画などでは、名探偵や警察が登場して、いかに複雑な犯罪でも推理と追跡で、最終的には犯人を逮捕や殺害で解決する・・・が。

多くの都会犯罪映画、とくにメグレ探偵のパリや、マーロウ探偵のロサンゼルスでは、巧妙な推理と銃撃で、悪漢は最終的にやっつけてしまうのがパターン。

しかし、黒澤明の「野良犬」や、野村芳太郎の「砂の器」では、もっと泥臭い日本人の体臭を感じさせる犯罪の湿度を描いて見せて、多くの名作が残っている。

この作品でも、その日本人の体質のような犯罪の湿度を見せて行くが、綾野剛の追求される前半と、佐藤浩市を見つめる後半の視線が、どうも分離して見えた。

おそらくこれは<映画>という視覚作品の多重構造のせいなのだろうが、「64-ロクヨン」のようなシンプル=ストレートなミステリーには見えなかった。

 

■高く上がった左中間のフライを野手が譲り合って、ポテン。 ★★★

●10月18日より、全国公開


●8月のニコタマ・サンセット傑作座は、やはりクールな絶品ノワール大会。

2019年09月13日 | Weblog

8月のニコタマ・サンセット傑作座・上映ベスト。

 

*1・『過去を逃れて』47(ジャック・ターナー)ロバート・ミッチャム・DVD

   過失のトラブルを避けて、田舎のスタンドで仕事をしていた男に、またしても執拗にあの時の組織が、清算の重圧を架けて来るノワール秀作。

 

*2・『ミルドレッド』96(ニック・カサベテス)ジナ・ローランズ・DVD

   田舎で暮らす未亡人に、健気な息子夫婦がサンフランシスコの高層マンションを用意するが、老嬢はひとりで海外に旅に出て行く・・感動作。

 

*3・『42番街』33(ロイド・ベイコン)ディック・パウエル・LD

   最近ブロードウェイで再演されたステージが、記録映画として公開されるが、やはりオリジナル・ミュージカルのパワーとイメージの斬新さに驚く。

 

*4・『明日の記憶』06(堤 幸彦)渡辺 謙・TV映画VHS

   一流企業で管理職で日々奮迅している中年サラリーマンが、ちょっとしたド忘れから、自分がボケの急性健忘症になっていく恐怖で、遠のく日常。

 

*5・『最高の人生の見つけ方』07(ロブ・ライナー)ジャック・ニコルソン・DVD

   不治の大病で入院していた白人重役が、黒人老人との同部屋のベッドとなるが意気投合して、世界の冒険アドヴェンチャーに挑戦して終焉を飾る。

 

*その他には、ナイター観戦に飽きてしまって、『地獄の埠頭』『消された証人』『吹き荒ぶ風』『仕組まれた罠』『ギルダ』『国務省の密使』『危険な場所で』など、・・・やっぱり、ノワールだ。


●8月に見た新作では、タランティーノがダントツの力量発揮。

2019年09月12日 | Weblog

★8月に見た新作の超個人的ベスト・5

 

●1・『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』監督・クエンティン・タランティーノ 主演・レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット

   60年代後期のハリウッドの低迷期に仕事探しに奔走する三流役者と、そのスタンドインの友情と事件に巻き込まれた、あの時代。★★★★☆☆

 

●2・『ドッグマン』監督・マッテオ・ガローネ 主演・マルチェロ・フォンテ 

   イタリア東海岸の寂れたビーチタウンで、ドッグショップを経営している中年男が、悪友の犯罪事件に巻き込まれて哀しくも滑稽な日々を嘲笑する。★★★☆☆

 

●3・『閉鎖病棟・それぞれの朝』監督・平山秀幸 主演・笑福亭鶴瓶 

   犯罪者でも軽度の知的な障害の、過疎地にある隔離病棟を舞台に、殺人事件未遂の中年の車椅子男と、彼に好意を持っている青年の微妙な友情。★★★☆☆

 

●4・『ホテル・ムンバイ』監督・アンソニー・マラス 主演・デヴ・パテル 

   インドのムンバイにある有名ホテルで起きた多重殺人テロのリアル再現ドラマで、たまたま宿泊していたゲストの悲劇と、ホテルマンの活躍。 ★★★☆

 

●5・『Tー34・レジェンド・オブ・ウォー』監督・アレクセイ・シドロフ 主演・アレクサンドル・ペトロフ

   第二次世界大戦のロシア最前線で活躍した重戦車が主演の、迫力のある陸上戦線の、実際の戦車と火気戦力を駆使した珍しい男性戦場映画の迫力。 ★★★☆

 

☆その他に8月に見た新作ではギャスパー・ノエ監督の「クライマックス」が、超バカ切れの異色作品。


●『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』あの甘い60年代末期の狂気に魅せられる。

2019年09月10日 | Weblog

8月30日(金)11-30 二子玉川<109シネマズ・10スクリーン>

M-069『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』"Once Upon A Time in Hollywood" (2018) Sony Pictures/ Columbia Pictures,Bona Films

監督・クウェンティン・タランティーノ 主演・レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット <ビスタサイズ・161分>配給・ソニー・ピクチャーズ

何しろ3時間に近い長尺で、しかも緊急公開なので、とにかく早く見たいし、見た方が良い・・と判断して、公開初日の第一回目の上映に駆けつけた。

しかし、やはり、<物好き>なシネマ・フリークは何処にでもいるもので、上映1時間前にフロントに行ったものの、ほぼ満席で前から3列目。

やめよーーーかな、と思ったものの、金曜日の朝なのにこの状態では、週末は予約で満席だというので、エイヤー・・いいや、いま見るしかない・と入場。

さて、時は1969年2月8日のこと、落ち目のB級娯楽映画のスター、ディカプリオはいい歳をしてキャリアーの下り坂で、またプロヂューサーのアル・パチーノから依頼。

それはメジャーではなくて、テレビ映画の小品マカロニ・ウェスターン「賞金稼ぎの掟」という、まさにマカロニ・ウェスターンのゲテものプログラム。

断ろうか・・とスタントマンで親友のブラッド・ピットに相談しても、「仕事がないよりは受けるしかネーーだろう」ということで、その役を受ける事にした。

とにかく、もうハリウッドのメジャー作品は下火の時代で、50年代のように、大作やミュージカルの製作はなく、クリント・イーストウッドだってイタリア出張。

そんな栄光の時代が去ってしまったサンセット大通りの雰囲気のよくでたスケッチは、自身もスタジオで雑用をしていたタランティーノにとっては苦節の時代だった。

わたしも初めてハリウッド大通りを散歩したのは、その時代だったものだから、あの路地に捨てられたポップコーンのカップが風に舞う風景は思い出深い。

その彼らの家のあったハリウッドヒルズの荒れた高台の隣には、ポーランド映画監督のロマン・ポランスキー夫婦が越して来て・・・、あの事件が起こってしまった。

かなりダレたムードの当時のハリウッド・ヒルズの風景を再現した、これはあの殺人事件に落ちる迄の、時代と映画界の凋落ぶりが、かなりの苦いショックで終わる。

 

■レフトのポールを巻いた高いフライで、ビデオ判定の末、ホームラン。 ★★★★☆☆

●全国で公開中。


●『ホテル・ムンバイ』での10年前のテロ急襲事件のリアル再現サスペンス!!

2019年09月08日 | Weblog

8月28日(水)13-00 外苑前<GAGA試写室>

M-068『ホテル・ムンバイ』" Hotel Munbai " (2019) Bleecker Street and Shivhans Pictures , Screen Australia 

監督・脚本・アンソニー・マラス、主演・デヴ・パテル、アーミー・ハマー <123分・シネマスコープ> 配給・ギャガGAGA

ホテルというのは、観光であろうが、業務であろうが、結婚式であろうが、当然ながら世界のいろいろな国の人々が泊まり交流する世界の社交場。

だから、いろいろな映画の傑作も生まれ、わたしは「ホテル・カリフォルニア」がおかしかったが、フランスの「北ホテル」や「幸福への招待」が好きだった。 

この<ホテル・ムンバイ>は、インドの「タジマハール・ホテル」で、ムンバイにある豪華ホテルだが、10年前の2008年11月26日にテロ事件が起こったのだ。

むかしから、インドを舞台にした名作も多いが、この作品はインド山岳地帯の過激な民族の若者達がCST駅を襲撃した時の再現ドラマで、タジマハール・ホテルにも侵攻。

無差別に宿泊客などを襲撃して、銃殺するというパニックになって、アメリカ人の建築家家族なども襲われたが、ホテルの料理長のデヴが、急遽な逃亡をリードする。

監督やスタッフは、『ボーダーライン』でも、リアルなロケーションで、迫真のサスペンスをした、あの手慣れたタッチで、無駄のない<実話>の再現は息が抜けない。

この事件で、インド警察では手に負えないので、軍隊の出動になり、多くの死傷者が出るという大事件になったのだが、政治的な作品ではなく、無差別サスペンスだ。

わたし自身も、現役のアドマンだったころには、チュニジアのジェルバ島やメキシコのメリダとか、スペインのマルベーヤなどに旅に行き、いろいろなホテルに泊まったものだ。

だから、この種の事件には鳥肌ものなのだが、映画はまるでドキュメンタリーのように、観光映画ではなくて、ほとんどがホテル内部での<かくれんぼ・サスペンス>。

主演のホテル従業員で料理長をしている現地のインド人デヴは、突然の事態に、宿泊客の救出をするために、この迷路のような廊下を駆け巡りテロリストを翻弄。

とにかく銃器を持ったテロリスト集団の急襲には、ひとりでも多くのホテル客を救出しようと、とにかくこの作品の2時間を奔走するという体力サスペンスなのだ。

当然、実話なので、いかにドラマとはいえ、余計なアクション・シーンは控えているが、見ているこちらも軍隊の救援が来る迄は息を潜めての2時間は、ちょいとシンドイ。

 

■センターへの強いゴロを野手が処理するまでに、セカンド奪取。 ★★★☆☆

●9月27日より、全国ロードショー


●『最高の人生の見つけ方』10年ぶりの和製女性版リメイクの苦笑。

2019年09月05日 | Weblog

8月28日(水)10-00 内幸町<ワーナー・ブラザース映画試写室>

M-067『最高の人生の見つけ方』(2019) 製作・プロダクション・キノ、シネバザール、ワーナー・ブラザース映画ジャパン。

監督・犬童一心 主演・吉永小百合、天海祐希 <118分>ビスタサイズ 配給・ワーナー・ブラザース・ジャパン。

ほぼ10年前の2007年に、ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマン主演で、同じタイトルのワーナー映画があった。

タイトルは「バケット・リスト」といって、死後の棺桶の中に入れて、天国まで持参したいもののリストを、末期の重病患者が遺族に託する、というアチラの話。

棺桶のまま墓に土葬するのなら、その発想は判るのだが,わが国のように、ほとんどが火葬されて、遺骨だけが墓の中に埋葬されるという条件では、ちと具合が悪い。

重病患者の病人が相部屋で、ベッドを並べるという設定で、前作のように大金持ちの白人と、つつましい黒人老人の相部屋ならではの、発想はユニークだった。

ま、それと同様の発想での日本再映画化の話しは、ハリウッド本社もOーKしていて、はじめは高倉健の主演を発案していたらしいが、急遽、予定変更。

それでこの日本女優ふたりでのリメイクが承認されたというが、それにしてもお元気な、このおふたりでは、とても末期の重病患者には見えないのだ。

しかもオリジナルのように、海外旅行でエジプトに行ったり、セスナからスカイダイビングをしたり,アイドル・コンサートのステージに上がる・・という展開。

おそらくは、リメイクなので、ハリウッドのワーナー本社のオーケーを取る為に、まったく似たような設定で苦心したと思われるが、見ていて、かなりモドカしい。

重病患者や末期ガン高齢者とか、人生の終焉を飾るという設定の作品は多いが、どうもこのケースの両女優iha、その人生の重みや後悔も感じられず、照れくさい。

多くの老人ホームや、末期の重病患者たちに勇気を与える・・という発想は悪くないが、あの黒澤さんの「生きる」のような真摯なスタンスが欲しかったなーー。

 

■初球狙いはいいが、高く上がったセカンドフライ。 ★★☆☆

●10月11日より、全国ロードショー


●『クライマックス』で、美女の立ちションを見たい方は・・どうぞ。

2019年09月04日 | Weblog

●8月22日(木)12-30 六本木<キノ・フィルム試写室>

M-066『クライマックス』"Climax" (2018) Rectangle Productions / Wild Bunch, Les Cinemas De La Zone 

監督・脚本・ギャスパー・ノエ 主演・ソフィア・ブテラ、ロマン・ギレルミク <97分・シネマスコープ> 配給・キノフィルムズ

多くのタレントと、多額の製作資金をもとに撮影されて、カンヌ国際映画祭にも出品されて、監督週間の芸術映画賞を受賞している作品だから、愚問は無駄。

いつも不思議で不可解でふしだらな映画を撮る事で存在感のあるギャスパー監督の新作なので、それなりに覚悟は決めて見たのだが・・・いやはや。

1996年というから、20年以上も前の設定なのが、どうゆう意味なのかは判らないが、とにかく作品の設定は、その時代の、フランスのある夜のことらしい。

アメリカへの出張公演を控えた22人のダンサーたちが、山奥にあるらしいスタジオで最後のリハーサルのあと、打ち上げのパーティが始まった、という設定。

作品は、それからの97分の間、そのスタジオでのパーティの様子をドキュメンタリー風にスケッチしていくが、飲み出したワインの中にはドラッグが混入されていたらしい。

はじめはそれぞれに踊ったり談笑しているダンサーたちは、酔いが廻り出してからは自覚を失い、所謂、野放図なる乱痴気パーティとなり、まさに地獄図となっていく。

全編に当時の人気ロックサウンドが流れていて、これはそのパーティのディスクジョッキーが背後でコントロールしているらしいのだが、踊っている若者たちは乱痴気となる。

ま、ギャスパー・ノエの作品だから、「カルネ」や「カノン」「エンター・ザ・ボイド」同様に、少しずつ狂気の世界となり、映画はラストまで狂騒していくのだ。

フロアでは同性愛でセックスしたり、女性なのに立ちションしたり、派手な殴り合いのケンカの末に殺人をしたり、・・・とにかくロックの轟音の中は狂乱地獄となる。

これも<ヌーヴェル・ムービー>と評価するのは勝手だが、わたしはヴィンセント・ミネリの「バンドワゴン」のダンサーたちの解散パーティの方が居心地が良い。

 

■強烈なピッチャー・ライナーが弾かれてファースト・アウト。 ★★☆

●11月1日より、ヒューマントラストシネマ渋谷などでロードショー