細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『霧の中の少女』の行方不明捜査のように、見ている方も霧の中・・・。

2020年01月30日 | Weblog
●1月24日(金)12-30 六本木<キノフィルム試写室>
M-006『霧の中の少女』"The Girl in the Fog" (2017) Colorado Film, Medusa Film Productions, 
監督・原作・ドナート・カリシ 主演・トニー・セルヴィロ、ジャン・レノ <128分・シネマスコープ>配給・キノフィルム
この作品のカリシ監督は、大学時代に犯罪学と行動科学を研究していたというだけに、ただの犯罪映画ではなくて、その迷宮入りして行く謎を心理的に究明していく。
北イタリアの寒村アヴェショーで、クリスマス・シーズンに起きた少女失踪事件は、最近、わが国でも起きた少女失踪事件のように、捜査は混迷し長期化の様相。
果たして事件に巻き込まれた少女は、何者かに誘拐されたのか、それとも自分の意思で失踪して行方不明になったのか、何の手がかりもないままに先が見えない。
大昔に名匠ウィリアム・ワイラー監督の「コレクター」という異色作があったが、この作品でも「追憶のローマ」のセルヴィロ警部が消えた少女の行方を探るのだ。
しかしこの警部は、記憶喪失の前歴があり、この事件の捜査も混迷していくという始末で、よくある失踪少女の捜索ミステリーよりは複雑な展開になっていく。
そこで精神科医師のジャン・レノが、捜査への協力を要請されて事件究明に加わって来るのだが、警部が過去に記憶喪失の病歴があり、事件はよりミステリアス。
つまり、少女失踪の事件よりも、その捜査に加わって行く警部が、自身の記憶喪失の障害があるために、事件そのものの捜査の方までが中座してしまう気配なのだ。
おそらくストーリーを考案したカリシ監督が、自身のシナリオのなかでセルヴィロ警部の二重人格気味の複雑な心理を練り込んだのだろうが、どうも歯切れが悪い。
おまけにジャン・レノが事件のミステリーに複雑に絡んで来るので、謎めいたアレッシオ・ボーニ扮する教授の存在と言動が、よりミステリを複雑にしていくのだ。
この3人の似たような中年男たちの言動に惑わされなければ、かなり突っ込んだミステリーなのだろうが、当方のアタマは混乱したままに終わってしまった。

■セカンドゴロをファンブルしている間にエラー。 ★★★
●2月28日より、キノシネマ立川などでロードショー。
 

●『スターウォーズ*スカイウォーカーの夜明け』で、シリーズの歴史には敬服だ。

2020年01月26日 | Weblog
●1月21日(火)10-20 二子玉川<109シネマズ・❶スクリーン>
M-005『スターウォーズ*スカイウォーカーの夜明け』"Star Wars: The Rise of Skywalker" (2019) IRM & Lucas Films Ltd.
監督・脚本・J・J・エイブラムス 主演・デイジー・リドリー、アンソニー・ダニエルズ <158分・シネマスコープ>配給・ウォルト・ディズニー・ジャパン
なにしろ、これが最期の「スターウォーズ」シリーズだし、最初から見ている証人としては、とくにファンではないが、見ておかないと、示しがつかない。
というワケで、いきなり昨年の暮れから<お正月映画>として公開されているので、<義理と人情>の同世代生息者としては、これも必見の一作なのだろう。
ま、おなじみのジョン・ウィリアムズのテーマ音楽で、イントロのメッセージが銀河系の彼方に消えて行くプロローグから、あの70年代の興奮が思い起こされる。
最初に見たのは、1977年だったか、あのハリウッドのチャイニーズ・シアターで見た時は、最初のファンファーレとタイトルロールが星くずに消えて行く・・。
あのシーンで場内は大拍手で、まさにロック・コンサートのような観客の熱狂ぶりに、度肝を抜かれたショックだったのを、まだ去年のことのように鮮明に憶えている。
しかし、こうして広大なスペースでドンパチやっている画面には、もうアレック・ギネスもいないし、マーク・ハミルも、ビリー・Dもいないし、時代がかわった実感だ。
あのハリソン・フォードだって、もう白髪の老人で、別の新作では犬と冒険をしている様子だが、ここでも老嬢となったキャリー・フィッシャーがクラス会のように顔を見せている。
そういう意味では、これも一種の<クラス会>映画で、この作品で一応は終了とするようだが、「スターウォーズ」ストーリーは、まだ残っている筈だ。
それを老ジョージ・ルーカスのプロダクションが、どのように締めくくるのかは、この作品の長過ぎるエンディング・クレジットを眺めながら歳月の早すぎる無情を感じてしまった。

■センター・オーバーの飛球だが、セカンドを狙ってタッチ・セーフか。 ★★★☆☆+
●全国で公開中

●『レ・ミゼラブル』のニューヴァージョンはパリ郊外の貧民街が、地獄だ。

2020年01月22日 | Weblog
●1月16日(木)13-00 築地<松竹本社3F試写室>
M-004『レ・ミゼラブル』"Les Miserables" (2019) Srab Films Lyly Films Rectangle Productions. France
監督・脚本・ラジ・リ 主演・ダミアン・ボナール、アレクシス・マネンティ <104分・シネマスコープ>配給・東北新社、スターチャンネル
1957年に、あの名優ジャン・ギャバンの主演で,ヴィクトル・ユーゴ原作で知られる「レ・ミゼラブル」が映画化されて、大評判になったことがあった。
わたしも当時見たが、<ああ無情>というサブタイトルの印象で、牢獄のような世界に閉じ込められたギャバンの苦痛の熱演だけが印象に残って、作品のことは忘れていた。
そのギャバンの苦汁の好演が印象としてあるだけで、ほとんど忘れていたテーマで、たしかにユーゴーの原作のパリ郊外、犯罪多発地区のモンフェルメイユが舞台になっている。
しかし今回の「レ・ミゼ」は、そのタイトルだけが活かされているが、内容と印象は、マシュ・カソヴィッツ監督の『憎しみ』の再現で、より大衆化されカラー作品。
伝統的に優雅な建造物の多いパリは、観光の名所で世界的にも人気があるが、この郊外団地の地区は、あの作品でもリアルに描写された郊外の壮大な貧民住宅団地。
あの「憎しみ」でも描かれていたように、ほとんど決まった仕事もないヨーロッパ各地から流れ込んだ難移民たちは、殺人事件と同居しながらの絶望的な日々を生活している。
その団地地区の犯罪防止班に赴任したダミアンは、同僚警官の挑発的な取り締まりに危機感を持ち乍らも、まさに爆発寸前の蜂の巣のような絶望的な団地に入り込んで行く。
例えは古いが、わが黒澤明監督の「野良犬」も、たしか若い刑事が戦後の貧困の絶望的な繁華街の犯罪に翻弄されたような記憶があるが、その危機感がいまのパリ郊外にもある。
だから信じられないような犯罪の異臭のなかで、いまでも生活している若い移民者たちの日常は、これがいまのパリ郊外の団地なのか、という信じられない絶望感がある。
映画はその環境の中で、まさに探訪ドキュメンタリーのようなリアル感で、警官と不審グループとの摩擦を見つめて行くので、とてもドラマとは思えない不快感がリアル。

■痛烈な左中間のゴロだが、セカンドで滑り込み噴死。 ★★★
●2月28日より、新宿武蔵野館などでロードショー

●『フォードVSフェラーリ』の透明感のある友情とスピード人生。

2020年01月18日 | Weblog
●1月11日(土)11-20 二子玉川<109シネマズ・1スクリーン>
M-003『フォードVSフェラーリ』"Ford v Ferrari " (2019) Twenties Century Fox Film Corporations.
監督・ジェームズ・マンゴールド 主演・マット・デイモン、クリスチャン・ベール<シネマスコープ・153分>20世紀フォックス作品
大して試写もしていなかった上に、突如お正月公開になったのだから、まったく予備知識なしに近所のシネコンに飛び込んだら、ほぼ満席の状態だ。
まるで、自動車会社のPR映画のようなタイトルなので、まさかハリウッドのビッグ・マネーメイカーの二人が共演していることも、直前に知ったという恥ずかしさ。
でも、本来、映画鑑賞というのは、このように、あまり予備知識や先入感などはない方がいいワケで、この作品などは、その点では未知の新作だったのがいい。
全米のサーキットでも、カーレースというのは人気で、「グランプリ」とか「レーサー」「栄光のル・マン」などの傑作が印象に残っている。
とくに個人的に、このようなスピード・カー・レースには興味はないのだが、以前、テレビCMの仕事をしていた時代に、鈴鹿サーキットでレースは見たことがある。
愛車は日産の<フェアレディZ>だったのに、あまりスピードカーレースには興味はなく、ただ一度だけ鈴鹿で実物を見た時の衝撃は忘れられない。
スピードよりも、あの凄まじいサウンドの通過で、たしかに映画では決して味わうことの出来ない世界で、その体感は忘れる事はないほど、他には体感できない世界。
だからカーレースの映画を見る事はあっても、その時間だけの興奮で、作品として印象に残っているのは「レーサー」のデイブ・グルーシンの音楽だけ、というお粗末。
この作品にも、フェラーリ優先のカーレースの世界で、フォードのメカニック、マットと、テストレーサーのクリスチャンの友情がサラリとした味つけになっている。
あまり個人的な生活感もなく、ただサーキットに生きる男達と、そのあまりにも呆気ない死を、遥かな硝煙の俯瞰で終わらせる、その覚めた感覚には感動した。

■左中間を抜くライナーがフェンスを転々・・。 ★★★★☆
●全国で公開中。

●『ハスラーズ』は、あのビリヤードじゃなく、キャバレー遊び。

2020年01月15日 | Weblog
●1月9日(木)13-00 渋谷<ショウゲート試写室>
M-002『ハスラーズ』"Hustlers" (2019) FTX Financing llc. All Right Reserved. <110分・シネマスコープ>
製作・監督・脚本・ローリーン・スカファリア 主演・コンスタンス・ウー、ジェニファー・ロペス 配給・リージェンス・ハピネット
2015年に発表された<ニューヨーク・マガジン>誌の記事は、マンハッタンを拠点にあったストリップ・クラブの実態を暴露して話題になった、という。
わが国でも、新宿歌舞伎町などで荒稼ぎしていた違法スレスレの美女クラブは、数十年前に摘発されてから、いまでは鳴りを潜めているようだ。
俗にいう、風俗営業のキャバレーの実態なのだが、わが国では80年代あたりからの取り締まり強化で、いまでは地下に潜航したのか、鳴りを潜めている。
という次第なので、この風俗荒稼ぎの背景は、いまさら大して驚かないが、ここではジェニファー・ロペスの肝いりの商売気で、あの熱気を再現するのだが・・。
マンハッタンの金融街ウォール・ストリートのホワイトカラー・エグゼクティブ達は、あまり夜のお遊びが慣れていないのか・・実に単純に罠にかかって行くのだ。
まるで、あの<チャーリーズ・エンジェル>のように、美女軍団が、マンハッタンのエグゼクティブの<色目>を巧妙な媚態と微笑でモノにしていく。
しかしわれわれ東洋人には、中国系のコンスタンス・ウーの微笑には、それほど触手が動かないので、女傑アネゴのジェニファーの強引な色気作戦が強すぎるのだ。
とはいえ、年齢には関係なく<女遊び>の好きな御仁はどこにでもいるので、その趣味の殿方にはすこぶる興味深い<キャバレー遊び>の実態映画なのだろう。

■ボテボテのサードゴロを大遠投でのギリギリ・アウト。 ★★☆☆
●2月7日より、TOHOシネマズ日比谷他で全国ロードショー

『スキャンダル』で描かれるニュース・キャスターの女権パワー。

2020年01月11日 | Weblog
●1月7日(火)13-00 外苑前<GAGA試写室>
M-001『スキャンダル』"Bombshell" (2019) Lions Gate Entertainment Inc. Bron Productions.Denver + Delilah.
監督・ジェイ・ローチ 主演・シャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン <109分・シネマスコープ>配給・GAGA
つい5年前に起こった、あのFOXニュースの全米スキャンダルの背景を再現した作品だが、もう事件は集結してしまっているので、興味は半減。
しかしそのネタを、いまやピークのシャーリーズ・セロンと、ちょっと古参のニコール・キッドマンに、まだフレッシュなマーゴット・ロビーで彩る。
3大美人の現代劇となると、あのマリリン・モンローの「百万長者と結婚する方法」を思い出すというのは、ちょっと古すぎで失礼だが、ご勘弁願いたい。
あの「ネットワーク」も、たしかテレビ業界のトラブルを描いていたが、これは人気美人キャスターとスタジオのCEOとのセクハラ問題を再現している。
とはいえ、実際のCEOは他界しているので、そこの汚点には突っ込まないで、3美人によるテレビ業界での汚点を再現しているので、たしかにホットなテーマ。
このところ主演だけでなく、ここではプロデューサーも兼任しているシャーリーズ・セロンは、これで一気にオスカー・ダービーも制しようという意気込みだ。
以前に、東京のホテルで、シャーリーズ・セロンにインタヴューしたことがあるが、会見が終わって別れたのに、またエレヴェーターで戻って来たことがあった。
もう少し「言いたい事がある・・・」というので、こちらもスタッフを解散していたので困ったことがあったが、シャーリーズは立ち話で、言いたい事を追加したのだ。
それほど自分の主張には熱心な彼女だからこそ、このテーマに入れ込んだのだろうが、あのフェイ・ダナウェイの「ネットワーク」とは熱気の違うような業界摘発。
おそらく、今年のオスカー・ダービーでも話題を作るだろうが、悪役のCEOのジョン・リスゴーが、ちょっと臭い芝居で食い下がるので、印象はちょっとムサクルしい。

■ツーベース・ヒットだが、オーバーラン気味でキワドい判定。 ★★★☆
●2月21日より、全国ロードショー

●2019年、細越麟太郎・洋画ベストテン

2020年01月08日 | Weblog
★2019年度に見た洋画、独断偏見ベストテン。

*1・『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』D/クエンチィン・タランティーノ <ブラッド・ピット> 

*2・『グリーンブック』D/ピーター・ファレリー <ヴィゴ・モーテンセン>

*3・『ラスト・ムービースター』D・アダム・リフキン <バート・レイノルズ>

*4・『荒野の誓い』D・スコット・クーパー <クリスチャン・ベール>

*5・『運び屋』D・クリント・イーストウッド <ブラッドリー・クーパー>

*6・『帰れない二人』D・ジャ・ジャンクー <チャオ・タオ>

*7・『ドッグマン』D・マッティオ・ガローネ <マルチェロ・フォンテ>

*8・『記者たち』D・ロブ・ライナー <ウディ・ハレルソン>

*9・『男と女*人生最良の日々』D・クロード・ルルーシュ <ジャン=ルイ・トランティニアン>

*10『さらば愛しきアウトロー』D・デヴィッド・ロウリー <ロバート・レッドフォード>

***『ビル・エヴァンス:タイム・リメンバード』<ブルース・スピーゲル>

●ニコタマ・サンセット座・12月はノエル・シネマ・ラッシュ。

2020年01月06日 | Weblog

★ニコタマ・サンセット座・12月上映ベスト

 

★1・『ダディ・ノスタルジー』89<ベルトラン・タベルニエ>ジェーン・バーキン・LD・老父と娘の、南仏の別荘ヴィラでの枯れた真情。

★2・『埋もれた青春』54<ジュリアン・デュヴィヴィエ>ダニエル・ジェラン・LD・誤認裁判で,青春を牢獄で過ごした男の決断。

★3・『離愁』73<ピエール・G・ラフェレ>ジャン=ルイ・トランティニアン・VHS・ナチス侵攻から逃れる列車で会った避難男と、ドイツ女性。

★4・『レイト・ショー』77<ロバート・ベントン>アート・カーニー・VHS・ウェスト・ハリウッドの安アパートに住む、映画に捨てられた人々。

★5・『マイクス・マーダー』84<ジェームズ・ブリッジス>デブラ・ウィンガー・DVD・ロスの安アパートで起きた殺人事件で浮かび上がった美女。

★6・『イギリスから来た男』99<スティーブン・ソダーバーグ>テレンス・スタンプ・DVD・ハリウッドで失踪した娘を探してイギリスから来た父親の復讐。

★7・『幸福への招待』56<アンリ・ヴェルヌイユ>フランソワーズ・アルヌール・VHS・イヴの夜に身分を偽ってゴージャスな時間と、真実の朝。

★8・『ノックは無用』52<ロイ・ベイカー>リチャード・ウィドマーク・DVD・ホテルのベビーシッターになったマリリン・モンローは情緒不安定な女性だった。

★9・『気まぐれ天使』47<ヘンリー・コスター>ケイリー・グラント・DVD・イヴの夜に、ベビーシッターや小間使いに現れた紳士は、天使だった。

★10『グランド・フィナーレ』16<パオロ・ソレンティーノ>マイケル・ケイン・DVD・スイスの養老院で静養している指揮者は、イギリス女王のオファーを蹴る。

 

★その他に見た傑作は、「犯罪河岸」「サタンバグ」「人生模様」「私家版」「犯罪都市」「第ニの機会」などでしたが、さすがは年末傑作ラッシュ。


●12月に見た試写では、さすが老練クリントの新作がベスト1!

2020年01月04日 | Weblog

12月に見た試写ベスト・3

 

*1・『リチャード・ジュエル』監督・クリント・イーストウッド 主演・ポール・ウォルター・ハウザー ★★★★☆

   1996年、アトランタ・オリンピック開催中に警備員のポールは爆発物が置かれているのを発見したが、なぜか彼が容疑者として逮捕された。

 

*2・『シェークスピアの庭』監督・主演・ケネス・ブラナー 共演・ジュディ・デンチ ★★★☆☆☆

   晩年の作家シェークスピアが、自作戯曲の公演中にロンドンの劇場が事故で消失して、それを期に作家は故郷で晩年をすごした最期の日々。

 

*3・『影裏』監督・大友啓史 主演・綾野 剛 ★★★☆☆

   芥川賞受賞の沼田真佑の原作を、故郷の盛岡を舞台にして描いた友人の失踪ミステリーで、盛岡市出身の大友監督が地の利を活かした傑作にした。

 

*その他に試写で見た傑作は、ビル・コンドン監督の「GOOD LIER・偽りのゲーム」、とか、ライアン・ジョンソン監督「ナイブス・アウト」がマズマズ。 


あけましておめでとう。今年もよろしく。●『ナイブス・アウト』は古典的な犯人当て群像ミステリーで苦笑。

2020年01月02日 | Weblog

12月26日(木)14-00 汐留<FSホール特別披露試写>

M-105『ナイブス・アウト』"Knives Out " (2019) Lionsgate, MRC-T Street Productions, Motion Pictures Artwork 

監督・脚本・ライアン・ジョンソン 主演・ダニエル・クレイグ、クリストファー・プラマー<131分・ビスタサイズ>配給・ロングライド

まさにあのアガサ・クリスティ原作のミステリーのように、古い英国のお屋敷で起きた密室殺人事件の、犯人当ての舞台劇のような、実に古風な作品。

イギリスの郊外にある古い城のようなお屋敷に住む高齢な85歳のクリストファーは、世界的なミステリー小説の作家だが、誕生日の翌朝に死体で発見された。

誕生日のパーティに招待されていた客の中に殺人犯はいるに違いない・・・という想定で、宿泊客が尋問されるが、アガサの「そして誰もいなくなった」のような設定。

事件のあとに、宿泊客はそれぞれにアリバイの尋問を受ける事になったが、匿名の依頼をうけて駆けつけたのは名探偵のダニエル・クレイグ、007だ。

尋問を受けるのは、その夜に城に宿泊していた一家の長老の母親や、二人の息子やその妻とか、その子供達や弁護士、家政婦などなど十数人が一応は容疑者となる。

その殺人事件を担当する、担当巡査や警部補などが次々に登場するので、かなり疑惑の関係者も多くて、地区の担当刑事や、外来の名探偵とその助手など・・・。

困るのは、演出が平板なのか、わざとそうしたのか、その尋問を受ける関係者が、みな一様に似たような容疑で尋問を受けて冷静な反応をするので、面白味がない。

しかもジェームズ・ボンド氏が、シャーロック・ホームズ気取りで、いかにも<したり顔>の名探偵のふりをするので、映画というよりも、舞台劇のようなタイクツさ。

この手の御家騒動の後継者財産争いの定番のような、意味深なドラマがダラダラと続くので、後半はもう犯人も判って来ているので、かなりダレた御家騒動で終わった。

 

■高く上がりすぎた平凡なレフトフライ。 ★★★

●1月31日より、TOHOシネマズ日比谷他でロードショー