細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『永遠と一日』は、人生の貴重な時間を、一日にまとめて見せる。

2021年06月28日 | Weblog
●6月27日(日)21-30 ニコタマ・サンセット傑作座
OV-122 『永遠と一日』"Mia Eoniotita Ke Mia Mera (1998) Theo Angelopoulos Greek Film Centre, Greek Paradis Films, La Sept Cinema
製作・監督・脚本・テオ・アンゲロプロス 主演・ブルーノ・ガンツ、イザベル・ルノー、アキレアス・スケヴィス <ビスタサイズ・133分>
冬の港町の早朝、ギリシャのテサロニキで、明日は入院を控えている作家のブルーノは、重い病気で今日が人生の最期の外出日だということは、自覚していた。 
肌寒い海辺をひとりで歩いていると、幸福だった自分の人生の思い出が、走馬灯のように脳裏をよぎっていくが、寂れた工場の跡で不良グループが摘発されていた。
偶然ひとりの少年を匿ったブルーノは、自分の子供だと言って警察の摘発を逃れてから、そのアルバニアからの難民少年を不憫に思い、その日を一緒に過ごしたのだ。
カフェで少しの食事を与えて、電車で国境の近くの駅まで少年を送っていくうちに、まるで、自分の子供のような情感が湧いて、久しぶりに心が温まった。
その国境への旅のあいだに、彼は若くして他界した妻との、つつましく、ささやかな時間を思い出し、ひとを愛することの幸福を久しぶりに味わって、ときを忘れていた。
映画のほとんどの時間は、その貧しい難民少年との、まさに<逃亡者>のような時間だったが、その間にも、ささやかながら妻との幸福だった時間が逆流したのだ。
たった一日の間に、彼は自分の人生の重要な時間を、その難民少年を救済することで、まさに再体験をして、多難で障害の多かった人生にも意義深いものを感じていた。
高原の寒い風の吹く国境で、その一日を過ごした少年との別れは、まさに自分の人生の中でも、もっとも有意義で光輝くものであったことに、一生の意味も自覚した。
どこかあの「ハリーとトント」を思い出させる、ひとりの老人の最期の時間は、高尚で裕福だった自分の生涯以上に、充実した一日だったことに、本来の幸福を知ったのだ。
雨の降る帰りのバスから見ると、マントを着て傘をさして走り行く自転車の数人とスレ違うが、その不思議にユーモラスなシーンに、人生を讃える監督のユーモアがあった。
まさに人生の流れを、たった一日の異国の少年との時間で描いた幸福と意義は、1998年の、カンヌ国際映画祭で、最高賞のパルムドール大賞を受賞した。

■滞空時間の長い、フルカウントからのホームラン。 ★★★★★
●フランス映画社、日本ビクター・DVD
●6月27日(日)21-30 ニコタマ・サンセット傑作座
OV-122 『永遠と一日』"Mia Eoniotita Ke Mia Mera (1998) Theo Angelopoulos Greek Film Centre, Greek Paradis Films, La Sept Cinema
製作・監督・脚本・テオ・アンゲロプロス 主演・ブルーノ・ガンツ、イザベル・ルノー、アキレアス・スケヴィス <ビスタサイズ・133分>
冬の港町の早朝、ギリシャのテサロニキで、明日は入院を控えている作家のブルーノは、重い病気で今日が人生の最期の外出日だということは、自覚していた。 
肌寒い海辺をひとりで歩いていると、幸福だった自分の人生の思い出が、走馬灯のように脳裏をよぎっていくが、寂れた工場の跡で不良グループが摘発されていた。
偶然ひとりの少年を匿ったブルーノは、自分の子供だと言って警察の摘発を逃れてから、そのアルバニアからの難民少年を不憫に思い、その日を一緒に過ごしたのだ。
カフェで少しの食事を与えて、電車で国境の近くの駅まで少年を送っていくうちに、まるで、自分の子供のような情感が湧いて、久しぶりに心が温まった。
その国境への旅のあいだに、彼は若くして他界した妻との、つつましく、ささやかな時間を思い出し、ひとを愛することの幸福を久しぶりに味わって、ときを忘れていた。
映画のほとんどの時間は、その貧しい難民少年との、まさに<逃亡者>のような時間だったが、その間にも、ささやかながら妻との幸福だった時間が逆流したのだ。
たった一日の間に、彼は自分の人生の重要な時間を、その難民少年を救済することで、まさに再体験をして、多難で障害の多かった人生にも意義深いものを感じていた。
高原の寒い風の吹く国境で、その一日を過ごした少年との別れは、まさに自分の人生の中でも、もっとも有意義で光輝くものであったことに、一生の意味も自覚した。
どこかあの「ハリーとトント」を思い出させる、ひとりの老人の最期の時間は、高尚で裕福だった自分の生涯以上に、充実した一日だったことに、本来の幸福を知ったのだ。
雨の降る帰りのバスから見ると、マントを着て傘をさして走り行く自転車の数人とスレ違うが、その不思議にユーモラスなシーンに、人生を讃える監督のユーモアがあった。
まさに人生の流れを、たった一日の異国の少年との時間で描いた幸福と意義は、1998年の、カンヌ国際映画祭で、最高賞のパルムドール大賞を受賞した。

■滞空時間の長い、フルカウントからのホームラン。 ★★★★★
●フランス映画社、日本ビクター・DVD
●6月27日(日)21-30 ニコタマ・サンセット傑作座
OV-122 『永遠と一日』"Mia Eoniotita Ke Mia Mera (1998) Theo Angelopoulos Greek Film Centre, Greek Paradis Films, La Sept Cinema
製作・監督・脚本・テオ・アンゲロプロス 主演・ブルーノ・ガンツ、イザベル・ルノー、アキレアス・スケヴィス <ビスタサイズ・133分>
冬の港町の早朝、ギリシャのテサロニキで、明日は入院を控えている作家のブルーノは、重い病気で今日が人生の最期の外出日だということは、自覚していた。 
肌寒い海辺をひとりで歩いていると、幸福だった自分の人生の思い出が、走馬灯のように脳裏をよぎっていくが、寂れた工場の跡で不良グループが摘発されていた。
偶然ひとりの少年を匿ったブルーノは、自分の子供だと言って警察の摘発を逃れてから、そのアルバニアからの難民少年を不憫に思い、その日を一緒に過ごしたのだ。
カフェで少しの食事を与えて、電車で国境の近くの駅まで少年を送っていくうちに、まるで、自分の子供のような情感が湧いて、久しぶりに心が温まった。
その国境への旅のあいだに、彼は若くして他界した妻との、つつましく、ささやかな時間を思い出し、ひとを愛することの幸福を久しぶりに味わって、ときを忘れていた。
映画のほとんどの時間は、その貧しい難民少年との、まさに<逃亡者>のような時間だったが、その間にも、ささやかながら妻との幸福だった時間が逆流したのだ。
たった一日の間に、彼は自分の人生の重要な時間を、その難民少年を救済することで、まさに再体験をして、多難で障害の多かった人生にも意義深いものを感じていた。
高原の寒い風の吹く国境で、その一日を過ごした少年との別れは、まさに自分の人生の中でも、もっとも有意義で光輝くものであったことに、一生の意味も自覚した。
どこかあの「ハリーとトント」を思い出させる、ひとりの老人の最期の時間は、高尚で裕福だった自分の生涯以上に、充実した一日だったことに、本来の幸福を知ったのだ。
雨の降る帰りのバスから見ると、マントを着て傘をさして走り行く自転車の数人とスレ違うが、その不思議にユーモラスなシーンに、人生を讃える監督のユーモアがあった。
まさに人生の流れを、たった一日の異国の少年との時間で描いた幸福と意義は、1998年の、カンヌ国際映画祭で、最高賞のパルムドール大賞を受賞した。

■滞空時間の長い、フルカウントからのホームラン。 ★★★★★
●フランス映画社、日本ビクター・DVD

●『蜃気楼』も、夜のマンハッタンのネオンにかすむ。

2021年06月25日 | Weblog
●6月24日(木)21-30 ニコタマ・サンセット傑作座
OV-120-49『蜃気楼』"Mirarge" (1965) Universal International Studio,
製作・監督・エドワード・ドミトリク 音楽・クインシー・ジョーンズ 主演・グレゴリー・ペック、ウォルター・マソウ<108分>モノクロ・ビスタサイズ
ちょうど、映画がテレビの普及に対抗して、やたらワイドや立体3D映画が連発されていた時代に、実にクラシックなタイプの、サイコロジカル・スリラーだ。
しかも直前に公開されていたヒッチコックの「サイコ」とは違った異常心理もので、当時流行の<ノイローゼ>のような心理を突いた一種の大都会ミステリー。
マンハッタンの高層ビル上階にオフィスを持っているビジネスマンのペックは、新規に開発していた製品のデータを討議中に、その企画書をめぐって上司ともめた。
ロサンゼルス郊外の研究所で、その研究材料をまとめたペックは、上司と意見が対立して、用紙を、開いた窓から捨てたが、それを拒んだ上司は転落して死亡したのだ。
自分にも、その事故には責任を感じた彼は、警察や記者が混乱している最中に、非常階段を駆け下りるが・・・途中で、その階数がわからなくなり、地下に出てしまう。
突然の同僚であり友人の事故死に、ショックを受けたペックは、バーに入ってビールを飲むが、アタマの中は現実と、過去とで、上司と交わした会話で混乱した。
マンハッタンの喧噪と、パトカーのサイレンと、バーやクラブの目映いネオンで、自分の行動と異常な現実、そして上司の死で、まるで現実は<ミラージュ>のようだ。
発想は、いかにも60年代に流行していた<サイケデリック>な事件なのだが、あのヒッチコックの「めまい」とは、まったく別なサラリーマンの受難の夜。
困惑しているペックは、私立探偵のウォルター・マソウに事件の経緯を説明したが、彼も捜査中に背景に絡んでいる組織に殺されてしまい、ペックは孤立してしまう。
まさに、あのヒッチコックの「白い恐怖」の、夜のパターンなのだが、探偵や事件の関係者が次々に殺されて、ペックにとっては「黒い恐怖」となっていく。
あの「恐怖の岬」は、フロリダの沼地が怖かったが、これは摩天楼の黒い高層の恐怖なのだが、関係者の描写がお粗末で、まるでペックの<ワンマン・テラー>の凡作。

■レフト線に抜けた痛打だが、セカンドで憤死。 ★★★☆
●MCAビデオテープ

●『ヒノマルソウル=舞台裏の英雄たち』は、まさに陰のヒーローたちの尽力ドラマ。

2021年06月23日 | Weblog
●6月22日(火)11-00 109シネマズ二子玉川・シアター9スクリーン
M-014『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち』(2021)東宝映画
監督・飯塚 健 主演・田中 圭、土屋太鳳、小坂葉緒、落合モトキ・・<ワイド・121分>
あの1998年2月の冬期長野オリンピックが、正式に開催されるかどうかは、ラージヒルでのジャンプ競技が可能かどうか、が危惧されていた時期の裏話だが、
若いテストジャンパーたちが、悪天候の最中にも、晴れ間や滑走スロープの状態をみて、試験的に滑走を試みる・・・という、実にユニークなテーマの青春映画だ。
もう20年以上も前のことなので、あの当時の活気は、もう忘れたが、たしかに地方都市の長野のスキー場での国際競技大会の開催は<大事件>でもあった。
もちろん、あのオリンピックの実際のスキー・ジャンプ競技開催を再現するテーマではなくて、あくまで、<テスト・ジャンパー>たちの挑戦を描いている。
たしか、実際の大会でも多くの金メダルを受賞した競技大会だったが、その国際大会の開催への準備を支えた若者たちの、決定までの尽力はドラマチックでもあった。
という、いわば、タイムリミットな青春サスペンスもの、とも見えるテーマだが、作品はあくまで、その開催への舞台裏を支えた若者ジャンパーたちの情熱である。
だからこれは国際競技の開催への道筋を、懸命に開発した、その下積みの原動力を支えた、その青春のパワーを描いたという実にユニークな<青春映画>なのであろう。
冬期国際オリンピックという、その大会のメイン・イベントともいえる<ラージヒル・ジャンプ競技>の成功を支えて、可能にした若者たちの<覇気>の息づかいが伝わる。
という視点で見ると、わが国での上映よりも、むしろ世界各国での劇場上映が、多くの感動を生むかもしれない、実に異色なスポーツ映画かもしれない。

■左中間へのゴロのイレギュラー・ヒット ★★★☆☆
●全国の東宝系劇場で公開中。

●『サン・フィアクル殺人事件』は、メグレ刑事の初恋の女性が殺された!!

2021年06月20日 | Weblog
●6月19日(土)21-30 <ニコタマ・サンセット傑作座>
0V-118-48『メグレ警視*サン・フィアクル殺人事件』"Maigret: L' Affaire Saint-Fiacre" (1959) Filmsonor/ Intermondia Film
原作・ジョルジュ・シムノン 監督・ジャン・ドラノワ 主演・ジャン・ギャバン、ロベール・イルシュ <102分・モノクロ・スタンダード>配給アートデイズ
たしか昨年も見て、このブログにアップした筈だが、なぜか昔の学校の先生にでも会えるような気分で、このシリーズは、再三のように見てしまう。
たまたま入手していた<メグレ警視シリーズ>は、たったの2作品だが、フランスでは、あの<刑事コロンボ>シリーズのように、かなり製作された筈だ。
ま、コロンボは短編のテレビ番組だったので、かなり量産されたが、このメグレは、ちゃんとした劇場用の長編フィルムなので、味わいは段違いに深い。
おまけに、フランス希代の名優ジャン・ギャバンが演じているので、その味わいは上質なリキュールやチーズのように、見るたびに濃くなってくるようだ。
しかもこの作品は、おそらくは彼の少年時代の初恋のガールフレンドが、初老の未亡人になってからの、遺産相続のトラブルなので、メグレも放ってはおけない。
列車に乗って、久しぶりの生まれ故郷に帰り、駅前のカフェの奥のシートで、かつての初恋の老嬢に会い、その殺人事件に遭遇するなんて、とんだ<心の旅路>なのだ。
この老刑事の役は、ジャン・ギャバンだからこそ、実に味わいの深いシリーズであって、他の俳優では到底考えられないハマり役なので、できればもっと見たかった。
事件が解決して、ひとりまた列車で帰るメグレ刑事の孤独官は、かつての初恋の恋人の喪失以上に、人生の過酷な過酷な孤独を、あの「冬の猿」と同様に沁みる。
やはり彼は、南仏の明るいモンテカルロでの事件よりは、この北フランスの田舎町での、追憶の事件の冷たい空気の方が似合っていて、深みがあるのだ。
老嬢のヴァランティーヌ・テシエが、いかにも往年の「舞踏会の手帖」のマリー・ベルのような風情でいいが、若いミシェル・オークレールも懐かしい。

■NHKエンタープライズ・VHS・モノクローム・スタンダードサイズ・102分・
●古くて忘れていたワインのような、酸化した味わいがシブい。 ★★★☆☆☆

●『サタンバグ』で、コロナ感染を、すでに予言していたとは・・。

2021年06月16日 | Weblog
●6月15日(火)21-40 ニコタマサンセット傑作座
OV-114-48『サタンバグ』The Satan Bug ( Metro-Goldwyn Mayer Studio-1964) Color Cinemascope Size/114min.
監督・ジョン・スタージェス 主演・ジョージ・マハリス、リチャード・ベイスハート <シネマスコープ・サイズ>
昨今の<コロナ騒動>で思い出して見たが、なにしろ、監督が、あの「OK牧場の決闘』や「老人と海」などの娯楽作品ではハリウッドの超一流。
公開当時は、渋谷の東急会館にあったロードショウ劇場<渋谷東急>で見たが、一種のSFサスペンスのうえに、スターバリューがなくて、広い場内はガラガラ。
まだ西部劇が主流の時代で、スタージェス監督は人気があり、スペンサー・トレイシー主演の現代ウェスターン「日本人の勲章」も評判が良かった時代だ。
その監督が、連続テレビ映画の人気者のジョージ・マハリスを主演にして、アクション・サスペンスの新作というフレコミだったので、かなり期待して見たのだが。
感染力の非常に強い、猛毒の病原菌の細菌が、アリゾナ州の砂漠の中にあるアメリカ陸軍の細菌研究所で保管されていたが、当直の研究員によって持ち出された。
当時はまだ、原子爆弾の実験などが、ネヴァダ砂漠で行われるので、近くのラスヴェガスなどの歓楽地も、その爆破前後には道路も封鎖されて、異常事態だったのだ。
研究所には、数人の研究員がいて、小動物などを実験にして、アトミック・ボムの小規模な実験を繰り返していたが、当然、機密は完璧に砦のなかで管理されていた・・。
数人の研究員が、乗用車で出入りするだけで、とくに砂漠での実験のない時期は、普通の研究所のような管理体制の日常で、不審な状況などはまったくない閑静な研究所。
マハリスは政府の調査警備員で、とくにトラブルの起こりえない日常なので、ガールフレンドのアン・フランシスと、近くのラスヴェガスなどに遊びに出ていた。
しかし、初老の研究員のベイスハートは、ある日の夕方に、退社のときに研究していた<サタンバグ>という猛毒の入った小瓶を持ち出してしまったのだ。
もしこの猛毒が、ロサンゼルスの上空で散布されたら、ほとんどの動物は全員死滅する、という劇薬なので、FBIや軍隊は、挙動不審な研究員の行方を捜索するのだが・・。
懸命の捜索で、マハリス刑事は、猛毒をロスの上空で散布するという直前に、飛行するヘリコプターの機上で犯人と格闘し、ボトルは市中に落とさずに、かろうじて奪回。
まさか、あれから半世紀もして、世界中がコロナ<サタンバグ>で、緊急事態になってしまうとは・・、あの名手ジョン・スタージェス監督も予測できなかったろう・・。

●在庫VHSテープでの鑑賞

●『レミー・コーション=毒の影』の、50年代フレンチ・ノワールのリキュール味

2021年06月14日 | Weblog
●6月13日(日)20-30 ニコタマ・サンセット傑作座
OV-113『レミ・コーション=毒の影』"La Mome Vert de Gris (1953) French Film Productions. Cosmic Publishings
監督・ベルナード・ボルトリー 主演・エディ・コンスタンチーヌ、ドミニク・ウィルムス <93分・モノクロ・スタンダード>
1953年の頃というのは、ワイドスクリーンや3D立体映画などが登場して、家庭用のテレビ番組に対抗してか、やたら劇場映画も趣向をこらした動きが活発。
フランス映画もハリウッドに負けられない、と思ったのか、セクシーなキャバレーや、フレンチ・カンカンのラインダンスを売り物にした作品が連発された。
しかし、伝統的には、大御所のジャン・ギャバン主演の悪党ギャング映画や、美男のジェラール・フィリップを主演にした文芸ものも人気を集めてハリウッドに対抗。
そのギャバンの「望郷」は、ギャングものながら、異境の地で服役脱獄した悪漢の、心の故郷への郷愁をベースにした、センチメンタルな秀作として、大いに人気を集めた。
戦争の背景もあったが、イタリアン・マフィアの台頭などで、戦地からの帰路に人生の正道をはずして、つい、悪の道へと脱落していった男達も多く、B級映画になった。
この作品も、テレビ時代を向かえつつあった50年代に、量産されたギャング映画で、まさに当時の二本立て興行の、添え物として扱われたようなギャング映画。
しかもあの名作「カサブランカ」から流れたダテ男のエディは、フレンチと英語のバイリンガルで、イヴ・モンタンのように,キザなシャンソンも唄うというアウトロー。
当時人気だった、<ピーターガン>のように、恐らくは連続テレビ映画のシリーズの一端なのだろうが、とにかく悪党どもを相手に夜な夜な派手な銃撃をくりかえすのだ。
だから、まさにコミック・ヒーローの<のり>であって、この<レミ・コーション>の恋と悪事のアクションは、50年代の代表的な極道メンズ・ファッション活劇。
エディは、いかにも都会の裏道の似合う、<メンズ・ファッション>のモデルのようで、いつも美女を相手に、ニヤニヤとして強がっているのが、あの時代っぽい。

■平凡なレフト・ライナーだが、なぜか角度の変化でイレギュラー。 ★★★
●DVDムック「フィルム・ノワール*暗黒街の男たち」より
           

●『インソムニア(2002)』で、アル・パチーノ刑事は霧の中で発砲した。

2021年06月10日 | Weblog
●6月10日(木)15-30 ニコタマ・サンセット傑作座
OV-112 『インソムニア』"Insomnia" (2002) Summit Entertainment. Alcon Pictures. Herald Films.
監督・クリストファー・ノーラン 主演・アル・パチーノ、ロビン・ウィリアムズ <118分・シネマスコープ> 配給・日本ヘラルド映画
つい先日見たばかりの、オリジナル版のノルウェイ映画でエリク・スクジョルベアルグ監督の異色サスペンス「インソムニア」(’97)は世界的に大ヒットしたが、
この再映画化権利を買った、俳優のジョージ・クルーニーと監督スチィーブン・ソダーバーグは、「ゴッドファーザー」シリーズの名優アル・パチーノを主演の古参刑事に起用。
どうせなら、このご両人で映画化する方が、製作はスムーズになったろうが、クルーニーはイタリアを舞台にした「ラスト・ターゲット」の準備と撮影に入っていたので出資のみ。
オリジナル前作が北欧ノルウェイの設定を、カナダの極地になるアラスカの、いかにも前作に似たような風土と、気象条件のロケ地に設定して、必殺のミステリーにリメイク。
白夜で、夜通し薄明かりの土地風土を、いかにもそこに住む人間達の、寝不足で不眠症なイレギュラーな精神感情をベースにした、殺人捜査ドラマにしている。
若い女性のレイプ殺人事件には手を焼いていた警察は、ロスの古参刑事とアシスタントを呼んで、この迷宮入りしかけた難事件の解決の糸口を掴もうという派遣捜査だ。
地元の中年作家のロビン・ウィリアムズが、もともとのコメディアン感覚を活かして、いかにも優柔不断な性格と表情で、ベテラン・パチーノ刑事の感性をフォギーにしていく。
被害者に親しい学生の容疑者も尋問したが、この殺人の異常さは若者の単純な痴情殺人事件ではなくて、もっとサイコな異常心理が背景にあるだろうと、現場などを検証したのだが・・。
霧の深いホワイトアウトした現場近くで、張り込み中で容疑者を見かけるが、ワーニング・ショットが同僚の若い刑事に当たって、その場で死亡する最悪の事態となった。
パチーノ刑事には、地元の婦人刑事のヒラリー・スワンクがフォローにつくのだが、容疑者としてマークした作家のロビン・ウィリアムズはクールな対応で尻尾を出さない。
この終日のようにホワイトアウトしている気象条件で、次第に古参のパチーノ刑事の推理力と行動力も、この霧の中のように白濁して焦燥感だけが、お先真っ暗な状況なのだ。
オールロケによる、アラスカ地方の気象条件が、前出のマーク・スティーブンス監督主演の「クライ・ヴェンジェンス(復讐の涯に)」のように先が霞んで行くのだ。

■高く上がったライトフライで、野手が目測を誤りスリーベース。 ★★★★
●ヘラルド+ポニーキャニオン、2002年DVD

●『インソムニア』(オリジナル)の白日夢のような痴情迷宮殺人事件の真相

2021年06月08日 | Weblog
●6月7日(月)21-30 ニコタマ・サンセット傑作座
0V-111-47『インソムニア・オリジナル』" Insomnia " (1997) Norway Film Productions
監督・脚本・エリク・スクジョルベアルグ 主演・ステラン・スカルスガロ <113分・カラー・スタンダード・サイズ>
北欧ノルウェイのサスペンス・スリラーだが、公開当時は世界的に大ヒットしたミステリーサスペンスで、2002年にはハリウッドでリメイクされた。
白夜の続く北部海岸地帯には、氷山のかけらが流れ着き、夏とはいえ終日のように太陽は地平線に沈まない<白夜>の日々が続き、人々は<白日夢>の中にいるようだ。
海岸の工業地区も、業務不審や流氷の被害で、ほとんどの工場は倒産閉鎖されて、まるでSF映画の世界のような、海中に沈みそうな傾いたコンクリート空間から逃避している。
1992年のアルゼンチンの映画「ラテン・アメリ*光と影の詩」でも、閉鎖された居住ビル街が、微塵に爆破されて海底に沈み行く異様な光景が見られたが、あの風景。
その倒壊された廃墟から、若い女性のレイプ殺人死体が発見されて、オスロの中年敏腕刑事のステランが、補佐官の刑事と二人で空路、その捜査に協力することになった。
とにかく、ホテルのカーテンを締めても、夜中も明るくて不眠症になってしまうという日々での、レイプ猟奇殺人事件の捜査というので、まさに<アタマも真っ白>状態。
ハリウッドのエンタメ・サスペンスのテンポとは違って、終日の白夜で白濁された時間での、この迷宮殺人の解明には、単純な学生犯罪などではない酸えた匂いがする。
霧の中での捜査で、容疑者らしい男の影があったので、ステランが銃撃すると、銃弾に倒れた男は、本部から同行した同僚の刑事だった・・・という、最悪の展開となるのだ。
完全に近い犯罪の背景から、ステラン刑事は地元の中年の作家がクサい、と睨んで、ウラを取ってから男の行動や日常を探り、どんどんと事件に真相に迫って行く。
あまりにも執念を見せる殺人捜査は、あの松本清張の「砂の器」や、内田吐夢の「飢餓海峡」のような、根深いその地方ならではの気風とか、空気官が背景にあるようだ。
傑作はハリウッドでも評価されて、ジョージ・クルーニーとスティーブン・ソダーバーグの製作、クリストファー・ノーラン監督、アル・パチーノの主演で02年リメイクされた。

■左中間深々への痛打でスリーベース。 ★★★★☆
●放映時のVHSコピーでの鑑賞

●5月のサンセット傑作座ベストは『トンプソンの逃亡』のジェントルマン魂。

2021年06月02日 | Weblog
●5月に見た<オーディオ・ヴィジュアル>自宅ベスト
★ブログにアップした優秀作品と、それ以外の作品乱列。

5-01『ザ・ビーチ』00(ダニー・ボイル)レオナルド・ディカプリオ<VHS>
5-02『シーラ号の謎』73(ハーバート・ロス)ジェームズ・コバーン<DVD>
5-03『素晴らしき休日・HORIDAY』38(ジョージ・キューカー)キャサリン・ヘプバーン<VHS>
5-04『ストレイト・ストーリー』99(デヴィッド・リンチ)リチャード・ファーンズワース<VHS>
5-06『暗闇に響く銃声』51(ジョン・スタージェス)スペンサー・トレイシー<DVD>
5-08『偶然の旅行者』88(ローレンス・カスダン)ウィリアム・ハート<DVD>
5-09『エンジェル・フェイス』53(オットー・プレミンジャー)ロバート・ミッチャム<DVD>
5-13『脱出』44(ハワード・ホークス)ハンフリー・ボガート<DVD>
5-16『地獄の対決』53(ロイ・ウォード・ベイカー)ロバート・ライアン<DVD>
5-18『トンプソンの逃亡』86(ジェラルド・フリードマン)ロバート・ミッチャム<VHS>
5-20『ビクトール』51(クロード・エイマン)ジャン・ギャバン<DVD>
5-22『密輸空路』46(ジョン・ファーロウ)アラン・ラッド<DVD>
5-22『大いなる陰謀』08(ロバート・レッドフォード)トム・クルーズ<DVD>
5-23『殺人容疑者』50(アーヴィング・ビシャル)スーザン・ヘイワード<DVD>
5-24『最後の夜』53(ジョルジュ・ラコンブ)ジャン・ギャバン<DVD>
5-29『シカゴ・コーリング』51(ジョン・ラインハルト)ダン・デュリエ<DVD>
5-30『ザ・ラケット(夜勤刑事)』54(ジョン・クロムウェル)ロバート・ミッチャム<DVD>・・・でした。