細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『抱擁*ジョーカー・イズ・ワイルド』は、ひとつの人生岐路となった作品。

2021年07月11日 | Weblog
●7月10日(土)21-00 ニコタマ・サンセット傑作座<自宅>
0V-76-31『抱擁』"The Joker is Wild" (1957) Paramount Pictures
監督・チャールズ・ヴィダー 主演・フランク・シナトラ、ジーン・クレイン <ヴィスタサイズ・112分> VHS
この作品を最初に見たのは、1958年頃に、大学生の時代に、有楽町の朝日新聞ビルの7階にあった、パラマウント映画の試写室だった。
わたしは多摩美の学生だったが、当時のハリウッド映画に狂って、ほとんど上野毛の校舎よりも、パラマウント映画ファンクラブの幹事をして、
新作の団体チケットを丸の内の有名会社の人事厚生課に、新作映画のロードショー団体優待券を社内販売してもらう為に、チケットを配っていたものだ。
この作品の邦題は、揉めに揉めて、シナトラの人気などは、一部のボーカル・ファンだけのもので、結局は「旅情」や「慕情」などのようなイメージで「抱擁」と決まった。
まだ原題の「ジョーカー・・」も、トランプ・カードの認知しかなくて、わたしも大不満だったが、宣伝部会議で、この不思議な邦題に決まったのだった、
シカゴのギャング時代の取り締まりが強化された朝鮮戦争の時代か、バンド歌手のシナトラは、同僚の伴奏ピアノのエディ・アルバートと共に、出演クラブを替えた。
そのことでギャングの報復を受けて、喉を切られたシナトラは唄うことは出来なくなり、数年後にはクラブのステージで前座の漫談をして生き延びていたのだ。
そのジョークの中で、「それならば、ミカドにでも出ていろ」という部分があるが、当時シナトラは赤坂のクラブ・ミカドで初来日公演をしていたのだ。
わたしはアルバイトで工面した、当時としては超高額な15,000円の入場料をゲットして、ホンモノのシナトラのステージを見たのは、人生最高の時間だった。
ドラマでは、喉を切られたシナトラが、カスレ声で唄った「オール・ザ・ウェイ」がアカデミー歌曲賞を受賞して、フランク・シナトラは人気の絶頂期を迎えていた。
大富豪の娘のジーン・クレインの愛情と婚約の夢を捨てて、ダンサーのミッチー・ゲイナーとの邪恋の末に、一人きりになって深夜のシカゴの裏町を歩くシナトラに、
ショウウィンドウに反射している自身の影が、「おいおい、お前さんよ、そろそろ自分自身を幸せにしたら、どうだ!!」と声をかけて来る。
「地上より永遠に」でオスカーを受賞したシナトラの、これは本業の歌手としての名演を見せた、いかにもフランク・シナトラらしいアウトローな体臭が最高だ。

■VHSビデオ・テープでの鑑賞。 ★★★★++

●『クライ・ヴェンジェンス(復讐の涯に)』は、B級サスペンスならではの、大傑作!!

2021年07月08日 | Weblog
●7月7日(水)21-30 ニコタマ・サンセット傑作座(自宅)<ベータマックス輸入ビデオ>
OV:74-29『復讐の涯に』"Cry Vengeance" (1954) Republic Pictures Corporations 12636 Beatrice St. L.A.
監督・主演・マーク・スティーブンス、マーサ・ハイアー <83分・B&W・スタンダード>配給・リパブリック・ピクチャーズ
映画館はもちろん、いまでは試写も少なくなって、試写状はかなり残っているものの、実際には、この<コロナ時世>で消滅している、という<外出自粛令>時代。
こうなったら、むかしの旧作ビデオ・コレクションから、<自宅名画座>を強行するしかない、・・という現実なのだが、・・そのVTRにも不具合連発だ。
わたしのようなオールド・ファンは、ベータマックスのVTRから集めていたのだが、ここにきて、そのBETAのテープが劣化してか、映像が乱れて困るのだ。
むかしからの特注電気屋さんに聞いても、<電化製品の劣化>も、ここ当面の多発トラブルで、とくにVHSはともかく<ベータマックス>は、ご高齢で手当も不可能。
たしか70年代の辺りに、よくハリウッドのハイランド横丁などにあったビデオ・ショップには、珍しい本邦未公開映画の傑作が出ていたのでコレクションしたもの。
結局、レーザーディスクとか、DVDでも発売されることもない、当時の二本立て興行の添え物B級映画には傑作も多くて、電通にいた石上三登志くんなどと買いに行った。
その傑作コレクションのなかの一本が、この作品で、テレビ連続ドラマの「サンセット77」のエフレム・ジンバリスト・Jrなどと共に人気のあったのが、このマークだ。
彼が主演で監督もしたリパブリック映画の傑作がこれで、そのビデオ・ショップのオーナーの推薦で<トラッシュ・バット・テイスティ!!>というおすすめで買った貴重品。
たしか監督・主演のマーク・スティーブンスは、70年代頃にはテレビでも連続探偵もののシリーズも手がけていた才人で、いつもスーツにハットを被る、という当時のスタンダード。
ジャン=リュック・ゴダール監督も憧れて、65年には「アルファビル」という、ハードボイルド私立探偵ものをコミック趣味で撮っていたが、これはマジなリベンジもの。
組織の策略で3年もの間、ムショで臭いメシを食っていたマークが出所して、その<ヴェンジェンス>で、組織のトップを探してアラスカの港町まで行くというハードボイルド。
余計な御託は抜きにして、一路復讐街道!!というのがいいが、あのシナトラの「走り来る人々」に出ていたご贔屓<マーサ・ハイアー>が出演しているのが、何とも嬉しいのだ。

■左中間に深々の、ゴロのツーベース。 ★★★☆☆++
●リパブリック・ピクチャーズ・ホームビデオ VHS・0780

●M−015・IMAX/3D『ゴジラVSコング』は、破壊怪獣の対決で大混乱だ。

2021年07月07日 | Weblog
●7月7日(水)11-05 <二子玉川109シネマズ・シアター7スクリーン>
M-015『ゴジラVSコング』"Godzilla VS. Kong" IMAX-3D Legendary, Warner Brothers Water Tower , Toho Studio  
監督・アダム・ウィンガード 主演・アレクサンダー・スカルスガルド、レベッカ・ホール、小栗 旬 <3D/アイマックス・114分>
あのマンハッタンのエンパイアーステイト・ビルの鉄塔の、アンテナ・タワーのてっぺんで、複葉機の飛行機から機関銃の掃射を浴びて、哀れ転落死。
キングコングは、戦前からの怪獣モンスターとして、ひとりの少女の命を救って、ある種の<愛すべき怪獣>としての人気があって、つい近年も映画化された。
という歴史的にも、愛すべきキャラクターとして、ファンの記憶に残っている異色のヒーローだが、ゴジラは都市破壊の巨大怪獣として、東宝映画のスターだった。
2、3年前には、その<ゴジラ>も輸出キャラクターとして、海外でも人気と知名度を上げて、ハリウッド・メジャーでも、数年前には映画化されていた。
なぜか、その怪獣キャラがスクリーンで対決するというので、ま、コロナ渦でマスク着用で、気分も塞ぎがちの折の、気晴らしスペクタキュラーとして愉しんだが。
しかし、どうも、この巨大怪獣を対決させるにしては、その設定がやっかいで、地球のセンター部分には、まったく別の自然空間があり、壮大な科学施設もある。
その地下施設の科学工場はいいとして、まったく地上に匹敵するような自然空間があり、壮大な大自然と、科学施設があり、そこでキングコングは飼育されていたらしい。
という辺りの設定から、どうも創造力がフォローしきれなきなり、ラストでは、ホンコン市街での怪獣対決となると、さっぱりワケが判らなくなる。
とにかく、この巨大怪獣同士の激闘で、スクリーンは大音響で、もうこちらの思考能力も粉砕するような状況となってしまって、アタマも大混乱のままに終わる。
地底都市での怪獣対決はいいものの、それから、あのホンコン大破壊となると、ただの少女救済のオリジナルも粉砕されるような、前編大音響と破壊映像の連続だ。

■ただのゴロのヒットなのだが、野手がトンネルの間にサードを狙い併殺。 ★★
●全国でロードショー中

●『過去のない男』の失われた現実は、いったい幸福なのか。

2021年07月03日 | Weblog
●7月2日(金)21-30 <ニコタマ・サンセット傑作座>
0V-124-50『過去のない男』"The Man Without the Past (2002) Spootnik Pro, Finland.
監督・アキ・カウリスマキ 主演・マルク・ベルトラ <モノクローム・ビスタサイズ・103分>スプートニク・フィルム、フィンランド
夜の港のベンチにいた中年のマルクは、突然、数人の暴漢たちに襲われて、現金や時計などを奪われて、数日後に病室で意識は戻ったが記憶は失われていた。
退院させられた彼は、生活保護のサルヴェーションの中年女性に介抱されて、港の浮浪者たちと過ごすが、自分が何者で、どうしてそこにいるのかも、わからない。
あのロナルド・コールマン主演の「心の旅路」は、戦争で記憶を失った男の帰郷後の回復を描いた感動作だったが、このヘルシンキの男も、同様に記憶がない。
港の工場跡で寝泊まりして、日常の食事は炊き出しで補っていたが、親切な老人と役所の女性の介護で,少しずつ人間らしい生活を取り戻して行く日々。
悲惨な現実なのだが、そこはカウリスマキのセンスの良さで、暗さとか深刻さはなくて、どこかあの「人生模様」のチャールズ・ロートンのようなユーモアもある。
ドラマは彼を襲った暴漢たちの逮捕や、現実への復帰などは描かないで、そのサイアクの現実を、ユーモアと友情で、少しずつ人間らしい生活を取り戻していく様子を追うのだ。
日常的に悪事を繰り返していた悪党たちは摘発されたが、マルクは自分の生活を取り戻して行く日々で、とうとう、過去の自分の生活空間を突き止めて行く。
しかし、やっと現実を探し当てた我が家は、立派な屋敷だが、妻には愛人がいて、もうまったく別の世界になっていた・・・という、現実の冷酷さ。
彼は、それでも救済を続ける、サルヴェーションの女性とのささやかな時間に、相変わらずに寡黙ながらも、人間として生きる幸福を、少しずつだが、取り戻して行く。
「レニングラード・カウボーイズ」で、いかにも北欧出身の冷ややかなユーモアを見せた監督の、このオフ・ビートなユーモアと<絶妙の間>が、実に心地いい。
終始、表情を変えないマルクの人間味が、このサイアクの人生シナリオにも、生きて行く勇気と味わいはあるのだ、という、懐の深みを感じさせるドラマだ。

●左中間をゴロで抜ける、絶妙なヒット。 ★★★★
■録画VHSでの鑑賞●
●7月2日(金)21-30 <ニコタマ・サンセット傑作座>
0V-124-50『過去のない男』"The Man Without the Past (2002) Spootnik Pro, Finland.
監督・アキ・カウリスマキ 主演・マルク・ベルトラ <モノクローム・ビスタサイズ・103分>スプートニク・フィルム、フィンランド
夜の港のベンチにいた中年のマルクは、突然、数人の暴漢たちに襲われて、現金や時計などを奪われて、数日後に病室で意識は戻ったが記憶は失われていた。
退院させられた彼は、生活保護のサルヴェーションの中年女性に介抱されて、港の浮浪者たちと過ごすが、自分が何者で、どうしてそこにいるのかも、わからない。
あのロナルド・コールマン主演の「心の旅路」は、戦争で記憶を失った男の帰郷後の回復を描いた感動作だったが、このヘルシンキの男も、同様に記憶がない。
港の工場跡で寝泊まりして、日常の食事は炊き出しで補っていたが、親切な老人と役所の女性の介護で,少しずつ人間らしい生活を取り戻して行く日々。
悲惨な現実なのだが、そこはカウリスマキのセンスの良さで、暗さとか深刻さはなくて、どこかあの「人生模様」のチャールズ・ロートンのようなユーモアもある。
ドラマは彼を襲った暴漢たちの逮捕や、現実への復帰などは描かないで、そのサイアクの現実を、ユーモアと友情で、少しずつ人間らしい生活を取り戻していく様子を追うのだ。
日常的に悪事を繰り返していた悪党たちは摘発されたが、マルクは自分の生活を取り戻して行く日々で、とうとう、過去の自分の生活空間を突き止めて行く。
しかし、やっと現実を探し当てた我が家は、立派な屋敷だが、妻には愛人がいて、もうまったく別の世界になっていた・・・という、現実の冷酷さ。
彼は、それでも救済を続ける、サルヴェーションの女性とのささやかな時間に、相変わらずに寡黙ながらも、人間として生きる幸福を、少しずつだが、取り戻して行く。
「レニングラード・カウボーイズ」で、いかにも北欧出身の冷ややかなユーモアを見せた監督の、このオフ・ビートなユーモアと<絶妙の間>が、実に心地いい。
終始、表情を変えないマルクの人間味が、このサイアクの人生シナリオにも、生きて行く勇気と味わいはあるのだ、という、懐の深みを感じさせるドラマだ。

●左中間をゴロで抜ける、絶妙なヒット。 ★★★★
■録画VHSでの鑑賞●

●『過去のない男』の失われた記憶への旅。

2021年07月03日 | Weblog
●7月2日(金)21−30 <ニコタマ・サンセット傑作座>
OV-124-50『過去のない男』"The Man Who Lost His Life"(2002) Spootnik Films.Finland <モノクローム・ビスタサイズ・102分>
監督・アキ・カウリスマキ 主演・マルク・ペルトラ
ヘルシンキの港の桟橋近くで、夜中に暴漢たちに襲われた男は、瀕死の重傷で病院に担ぎ込まれて、意識不明のままに数週間後に退院させられた。
自分が何者かも判らず、無職浮浪者の世話で、埠頭の工場跡に寝泊まりして、そこに住むことにして、どうにかサルヴェーションの看護婦に世話になり、古着を着て、日常生活をするうちに、自分の過去を少しずつ取り戻していく。、    


●『永遠と一日』が、ニコタマ・サンセット座6月ベスト。

2021年07月01日 | Weblog
●6月の、ニコタマ・サンセット座ベスト
★1・『永遠と一日』98(テオ・アンゲロプロス)ブルーノ・ガンツ
★2・『インソムニア』97(エリク・スクジョルベアルグ)ステラン・スカルスガロ
★3・『インソムニア』02(クリストファー・ノーラン)ジョージ・クルーニー
★4『サタンバグ』58(ジョン・スタージェス)ジョージ・マハリス
★5『サン・フィアクル殺人事件59(ジャン・ドランノワ)ジャン・ギャバン
★6『蜃気楼』65(エドワード・ドミトリク)グレゴリー・ペック
★7『過去のない男』02(アキ・カウリスマキ)マルク・ベルトラ
★8『ボヘミアン・ラプソディ』20(ブライアン・シンガー)クイーン
★9『舞踏会の手帖』37(ジュリアン・デュヴィヴィエ)マリー・ベル
★10『フル・ティルト・ブギ』21(サラ・ケリー)ジョージ・クルーニー