《内容》
湯治旅の帰途、若夫婦が雨で足止めになった老女との相部屋を引き受けた。不機嫌な若妻をよそに、世話を焼く婿養子の夫に老女が語り出したのは、五十年前の忌まわしい出来事だった…。表題作「ばんば憑き」のほか、『日暮らし』の政五郎親分とおでこが謎を解き明かす「お文の影」、『あんじゅう』の青野利一郎と悪童三人組が奮闘する「討債鬼」など、宮部みゆきの江戸物を縦断する傑作全六編。 (紹介文より)
―――それは確かに、金は使いようで生き金にも死に金にもなりますからな。
―――人を舐めきった甲高い笑い声が、耳をふさいだ指の隙間をするりと通り抜けて、心の奥に突き刺さった。
―――分かれるけれど、消え失せはしない。亡き人びとはこの世を離れて、だからこそ永遠のものとなるのだから。