保津川下りの船頭さん

うわさの船頭「はっちん」が保津川下りの最新情報や、京都・亀岡の観光案内など、とっておきの情報をお届けします。

川は怖くて危ないところ?・・・川とふれあう、ということ。

2010-05-31 23:48:59 | 船頭
やっと風薫る季節らしくなってきた今日この頃。

汗ばむほどの暖かい日差しに夏を感じさせる嵐山では、なんと、川で泳ぐ人まで登場!

しかも、この人、ただ、川に浮かんでいるというのではなく、真剣に泳いでいます!

岩場から飛び込んだと思ったら、クロールでぐんぐん川を上っていきます。

その勢いは私達の舟にまで迫ってくるほどの速さ、まるで河童のようです!

夏になると嵐山で泳ぐ人をたまに見かけますが(一応、嵐山は遊泳禁止区域です)
こんなに真剣に泳いでいる人を見るのは私も初めてでした。

舟の横を泳ぎぬけると、その河童が顔を上げました。

大堰川(保津川)を縦横無尽に泳いでいた河童の正体は…異人さんでした。

夏になると保津川には、遊泳を楽しむ人がよくやって来ます。
6年前にはひと夏で9人もの人が流されて犠牲になった年もありました。
その殆どが日本人の若者です。外国人の方もたくさん遊泳に来ているようですが、
彼らはあまり溺れるということはないようです。

近年、日本の川では、子ども達が「川で泳ぐ」という習慣がないようです。
大人たちが「川は危ないから、絶対に近づいてはいけない!」と注意するのが原因といわれます。
安全なプールで泳ぎをおぼえた最近の子ども達は、その技術と知識で川も泳げるものと勘違いする様です。

日頃、川を見る機会もなく、街からやって来ても今の川の状態を正しく判断することはできないでしょう。
前日の夕立で川の水嵩が増水気味でも、彼らには「泳げる範囲内なのか?」全く判断できなのです。

また、表面は穏やかな水面に見えても、川の水中や底には想像を超える強い渦が巻いています。
思わぬ‘引力’に足を引きずられ、あわてる遊泳者は、パニックを起こし、水を飲み溺れるのです。
これは泳ぎができる人も例外ではありません。一度溺れるといくら泳ごうとしても足は渦に絡まり
まったく思うようには泳げないのです。

昔は、子どもの頃から親や年齢が上の子に知識として教えて貰い実体験で学んで身に付けた川での泳ぎ。
今は川で遊んだこと、泳いだことのない親が増え、子どもに川の知識と経験を伝えることなく、
川とのふれあいを遮断しているのです。

そのことが、川での事故を増やす原因のひとつと思われています。

その点、先ほどの河童外人さんなどは、川で泳ぐ術を知っているのでしょう。

美しい自然とふれあいたい!と思うのは誰しも思うことですが、自然とのふれあいには
必ず‘リスク’もある!ということは知っておく必要があると思います。

自然の中で何か事故が起こると、すぐに「責任の所在」をどこかに求める傾向が強い日本人ですが、
そんなものは自然界にはありもしないし、人間の想像の域を超える力があるのが自然というもの。

日本人は早く、そんな幻想から目覚めなければいけません。

自然の前では自分が自然の条件に合わしていかねばならないのです。
この謙虚な姿勢と体験から、自然とのふれあい方を学んでいくことが大切です。

最近、子どもを対象にした「川遊びイベント」が多く見られるようになりました。
それは自然を知り、体験できるという点ではとてもよいことですが、
本当に川で遊ばないといけないのは、我々大人から、ではないでしょうか?
大人も川で遊び、川を知り、正しく子どもたちに川とのふれあい方を教えていく。
それが自然を知る最も理想的な伝承の仕方だと私は思うのです。