(1)ゲノム編集技術を用いた食品の開発が活発になっている。すでに市場化された作物は、
(a)除草剤耐性ナタネ・・・・ベンチャー企業「サイバス」社(米国カルフォニア州)が開発した。スルホニルウレア系除草剤に耐性を持たせたもので、同社は穀物メジャー「カーギル」社と組んで、売り込みを図っている。
(b)マーガリンなどに加工した際にトランス脂肪酸を含まない大豆・・・・ベンチャー企業「ケイリクスト」社(米国ミネソタ州)が開発した。
(c)変色しないマッシュルーム・・・・ペンシルベニア大学の研究チームが開発した。
(d)芽に含まれる有害物質のソラニンを減らしたり、加熱した際に生じる発癌物質アクリルアミドを低減させたジャガイモ・・・・理化学研究所など。
(2)ゲノム編集技術とは、制限酵素を用いてピンポイントで目的とする位置でDNAを切断し、遺伝子の働きを壊す技術のことだ。制限酵素とは、DNAを切断する酵素のことで、目的とする場所に誘導する技術と、その制限酵素の組み合わせで成り立っている。
ゲノム編集技術を応用して種子独占を狙っているのが、モンサント、デュポンなど。開発合戦が展開されている。特にデュポンは、最新技術の「クリスパー・キャスナイン(CRISPR Cas9)」の特許独占を狙っている。すでに対乾燥トウモロコシ、収量増小麦を試験栽培中だとみられている。
動物での開発も盛んだ。特に進んでいるのが、ミオスタチン遺伝子(筋肉量を制御)を壊す操作だ。筋肉量を制御できなくなった動物は、筋肉質になるとともに、成長が早く巨大化していく。その結果、筋肉量の多い牛や、成長の早いトラフグなどが誕生している。耐病性の豚、角のない乳牛、卵アレルギーを引き起こさない鶏なども開発されている。
(3)政府内閣府も、「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の中で、「次世代農林水産業創造技術(アグリイノベーション創出)」の取り組みを進めている。その柱となる「新たな育種技術の確立」として進めているのが、ゲノム編集技術などの新技術開発だ。
そのうち特に力を入れて取り組むテーマとして、高機能稲、高機能トマト、おとなしいマグロの3つのモデルを設定している。高機能作物とは、トマトを例にとると、日持ちして栄養価が高いなど、複数の機能を併せ持つ作物をさす。
(4)一方、多くの科学者がゲノム編集技術の危険性を指摘し、慎重さを求めている。
〈例〉この技術では「安全神話」がふりまかれているが、それは神話にすぎず、特に問題なのは間違いを起こしてターゲットでない箇所でDNAを切断してしまうことだ。【注1】
〈例〉遺伝子の働きは複雑で、この操作が他の遺伝子の働きや、遺伝子間の相互作用に影響を及ぼす可能性は高い。そのことが毒性を増幅するなど、食の安全性に悪影響をもたらしたり、栄養分を低下させたり、新たなアレルゲンをもたらす可能性がある。【注2】
〈例〉痕跡が残らないことへの懸念、軍事技術への転用の容易さ。【注3】
【注1】2016年4月25日付け「インデペンデント・サイエンス・ニュース」
【注2】2016年1月13日付け「エコロジスト」
【注3】米国アカデミー、2016年6月8日
□天笠啓祐「ゲノム編集技術を使い、食品の開発が進む/食の安全は大丈夫なのか?」(「週刊金曜日」2016年9月23日号)
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(a)除草剤耐性ナタネ・・・・ベンチャー企業「サイバス」社(米国カルフォニア州)が開発した。スルホニルウレア系除草剤に耐性を持たせたもので、同社は穀物メジャー「カーギル」社と組んで、売り込みを図っている。
(b)マーガリンなどに加工した際にトランス脂肪酸を含まない大豆・・・・ベンチャー企業「ケイリクスト」社(米国ミネソタ州)が開発した。
(c)変色しないマッシュルーム・・・・ペンシルベニア大学の研究チームが開発した。
(d)芽に含まれる有害物質のソラニンを減らしたり、加熱した際に生じる発癌物質アクリルアミドを低減させたジャガイモ・・・・理化学研究所など。
(2)ゲノム編集技術とは、制限酵素を用いてピンポイントで目的とする位置でDNAを切断し、遺伝子の働きを壊す技術のことだ。制限酵素とは、DNAを切断する酵素のことで、目的とする場所に誘導する技術と、その制限酵素の組み合わせで成り立っている。
ゲノム編集技術を応用して種子独占を狙っているのが、モンサント、デュポンなど。開発合戦が展開されている。特にデュポンは、最新技術の「クリスパー・キャスナイン(CRISPR Cas9)」の特許独占を狙っている。すでに対乾燥トウモロコシ、収量増小麦を試験栽培中だとみられている。
動物での開発も盛んだ。特に進んでいるのが、ミオスタチン遺伝子(筋肉量を制御)を壊す操作だ。筋肉量を制御できなくなった動物は、筋肉質になるとともに、成長が早く巨大化していく。その結果、筋肉量の多い牛や、成長の早いトラフグなどが誕生している。耐病性の豚、角のない乳牛、卵アレルギーを引き起こさない鶏なども開発されている。
(3)政府内閣府も、「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の中で、「次世代農林水産業創造技術(アグリイノベーション創出)」の取り組みを進めている。その柱となる「新たな育種技術の確立」として進めているのが、ゲノム編集技術などの新技術開発だ。
そのうち特に力を入れて取り組むテーマとして、高機能稲、高機能トマト、おとなしいマグロの3つのモデルを設定している。高機能作物とは、トマトを例にとると、日持ちして栄養価が高いなど、複数の機能を併せ持つ作物をさす。
(4)一方、多くの科学者がゲノム編集技術の危険性を指摘し、慎重さを求めている。
〈例〉この技術では「安全神話」がふりまかれているが、それは神話にすぎず、特に問題なのは間違いを起こしてターゲットでない箇所でDNAを切断してしまうことだ。【注1】
〈例〉遺伝子の働きは複雑で、この操作が他の遺伝子の働きや、遺伝子間の相互作用に影響を及ぼす可能性は高い。そのことが毒性を増幅するなど、食の安全性に悪影響をもたらしたり、栄養分を低下させたり、新たなアレルゲンをもたらす可能性がある。【注2】
〈例〉痕跡が残らないことへの懸念、軍事技術への転用の容易さ。【注3】
【注1】2016年4月25日付け「インデペンデント・サイエンス・ニュース」
【注2】2016年1月13日付け「エコロジスト」
【注3】米国アカデミー、2016年6月8日
□天笠啓祐「ゲノム編集技術を使い、食品の開発が進む/食の安全は大丈夫なのか?」(「週刊金曜日」2016年9月23日号)
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