語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【保健】茶カテキンによる肝障害でノルウェーがサプリメント含有量規制へ

2016年08月27日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)茶カテキンの健康食品は、「体脂肪を減らす」「悪玉コレステロールを減らす」などの効能で販売されている。
 一方、海外では、茶カテキンによる肝臓障害の副作用が問題になっている。

 (2)2016年3月、ノルウェー国立公衆衛生研究所が、世界でも初めてサプリメントとしての茶カテキンの基準値を発表した。その値は、体重60kgの大人の場合1日24mgに相当する量だ。普通のお茶に含まれる量は、1杯当たり約68mgだ。この基準値によれば、お茶1杯さえ飲めない。
 どう考えればよいか。
 日本のようにお茶を日常的に飲む習慣のないノルウェーでは、茶カテキンをサプリメントとして摂取した場合の安全性だけを評価している。具体的には、動物実験で毒性が出なかった最大量から、100分の1の安全係数をかけて導きだされたものだ。農薬や食品添加物の安全摂取量を評価する場合に使われるやり方だ。
 しかし、食品に含まれる成分に適用すると、普通に食品に含まれる量でも安全とは言い切れないということになる場合がある。その結果、その基準ではお茶1杯さえ飲めないということになったようだ。ノルウェーの評価書の中でも「サプリメントとして1日当たり一度に摂取した場合の有害影響を起こす可能性がある量」と記載されている。規制の対象は、あくまでもサプリメントとして上乗せされる量ということのようだ。

 (3)実は日本でも、食品成分の健康食品への利用について、上限値がつけられたケースがある。大豆に含まれるイソラボンがそれで、食品安全委員会が2006年5月に発表している。
 日本人が慣れ親しんでいるお茶についても、従来の飲料としてお茶として飲む分の範囲であれば安全性は担保されると考えてよかろうが、その安全な摂取量の範囲は意外と狭い可能性がある。体脂肪を減らすなど特別な効果を期待させてサプリメントや健康食品に使用される場合、上限値の設定などの評価は必要だ。

 (4)動物実験では、空腹時に一度大量に飲むことで、食事と一緒に少しずつ飲む場合と比べて毒性が10倍以上も強くなることが報告されている。血中濃度が急激に上がることで肝臓に負担を与えると考えられる。
 日本では1日10杯以上のお茶を毎日飲む人たちがいるが、空腹時に一度に10杯立て続けに飲むケースはまれだろう。通常、食事時や、何か食べながら飲む場合が圧倒的に多いだろう。

 (5)日本の茶カテキン商品には、「食事と一緒でなくても構いません」「いつ飲んでも大丈夫」と強調しているが、せめて「空腹時には避けたほうがよい」という注意喚起は必要だ。
 ノルウェーの摂取基準に照らし合わせると、市販の茶カテキンサプリメントは、軒並み10倍以上超過している。花王「ヘルシア」などの飲料は、お茶の代わりに飲むことになるのでまだマシだが、サプリメントの場合、日常のお茶に加えて摂取量が上乗せされることになるので、より注意が必要だ。 

□植田武智(科学ジャーナリスト)「茶カテキンによる肝障害でノルウェーがサプリメント含有量規制へ」(「週刊金曜日」2016年7月22日号)
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