毎年公開されるヒーロー大集合映画、ついつい釣られて毎回観に行ってしまうが、毎回非道いモノだ、そしてその非道さはどうやらプロデューサーである白倉氏が勧善懲悪を嫌っていることに起因するらしい……といったことを、毎年書いてきました*。
そうした今までの作に比べ、本作はかなりよかったかと思います。
あちこちで言われていますが、これは恐らく、監督さんが交代した効果かと思われます。
が、しかし、とは言え、かなり楽しんだ本作ではありますが、やはり根本が間違っている、という感が強い。監督はいいが、プロデューサーがそのままじゃな、といった印象を持ちました。
今までの作品をプロデューサーの「マイナス10000点」の企画を監督がそのまま「マイナス10000点」の作として仕上げたとするならば、本作はプロデューサーの「マイナス10000点」の企画を監督が頑張って「マイナス1000点」の作にまで持ってきた、という感じでしょうか。
*「仮面ライダー×スーパー戦隊×宇宙刑事 スーパーヒーロー大戦Z」
「仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦」
「ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199ヒーロー大決戦」
さて、ここから作品評を始めたいところですが、その前に本作では公開前より「平成ライダーと昭和ライダーとの対決」が目玉として上げられていました。
「この種のVS物はタイトルだけがVSで実際には共闘する作品が大半だが、本作は違う」というのがプロデューサー・白倉氏の言です。実際には白倉氏は今までも飽きもせず正義の味方同士の同士討ちを延々延々とバカの一つ覚えで繰り返してきたのですが。
しかし白倉氏は「本作こそをその決定打とする」といった発言をし、予告ムービーでは仮面ライダー1号、本郷猛が現役のライダー、鎧武に対して「お前たち平成ライダーなどを仮面ライダーとは認めぬ!」と一喝していました。
「今度こそ決定的な展開があるのでは」との予感と共に、この平成ライダーを否定する本郷は、穿った見方をすれば「平成ライダーを否定する昭和ライダーファン、ロートル特撮マニア」を揶揄して描いた存在のようにも見えました。
映画の結末はファンの投票で決定するとアナウンスされ、昭和ライダーを勝たせたいか、平成ライダーを勝たせたいか、オフィシャルサイトで投票が行われました。映画の結末は二種用意し、投票で勝った方の勝利するラストを上映する、というわけです。
投票は映画公開の直前まで昭和の圧倒的有利で進んでいました。それが公開日が近づくにつれ、平成ライダーの俳優さんが「平成に投票してくれ!」と呼びかける動画が追加され、極めて不自然な動きで平成票が伸び、そしてネットの投票自体は昭和の辛勝で終わったのですが……そこに劇場での票が加えられ(劇場で投じられた票も追加されること自体は当初からアナウンスはされていたのですが)結果的に平成が勝ったと発表され、劇場版では平成勝利のストーリーが上映されることに。
真相は不明とは言え、正直、「東映側が票を操作していたのでは」と思わずにはおれない流れでした。
さて、映画本編です。
以下、ネタバレなどしますので、知りたくない方は読まれませんよう。
前述した通りに、基本、それなりにいいストーリーが展開されました。
が、昭和ライダーVS平成ライダーの対立という誰得な意味のわからないシークエンスが、いちいち盛り上がりに水を差します。それも昭和が一方的にケンカを売ってきて、平成が困惑という、何だかイヤ~な展開。
クライマックス、1号が今回の敵であるバダンに言い放ちます。
「お前たちを騙すため、対立していたフリをしていたのだ!!」
おい、お前、そのネタこれで何回目だ?
何やかんやで(いきなり沸いて出てきた戦隊が)バダンを倒すのですが、その後、また1号が平成ライダーに戦いを挑みます。「今回の事件はお前たちの甘さが引き起こしたことだ」というのが1号の弁ですが、あんたが最初に平成側にちゃんと話をしていれば、戦う理由はなかったのではないだろうか。
鎧武にライダーキックを放つ1号。しかしそこで鎧武は、自分が避けては花が散ってしまうと気づき、自らの身体を盾にキックを受けます。鎧武が花を守ったことを知った1号は「私の負けだ」と認めます。
え~と、要するにですね、「花一輪を守ろうとする鎧武の心意気に負けた」ということらしいです。
あれだけ「決着をつける決着をつける」と煽っておいて、何なんでしょう、それは。
そもそもあれだけ売りにされていた藤岡弘の出番は冒頭で「平成ライダーなどライダーと認めん!」と一喝する部分、他はバダンを倒した後の昭和VS平成の部分だけです。時間にして5分あるのかなあ……。
終始平成にケンカを売っている、イヤな言い方ですが「老害」的な描かれ方であると共に、「勝手な論理でケンカを売って勝手な論理で負けて去っていく」という自己完結ぶりは、これも穿った見方ですが「白倉の目から見た藤岡弘像」といった感じもまた、しないではありません。
「花を守るために犠牲になる」。
それはそれでベタながら美しい話で、悪くはないと思います。
そこへ持ってくるまでの過程が圧倒的に茶番ではあったのですが。
が、ちょっと皆さん、疑問に思わないでしょうか。
今回は平成が勝ちましたが、作り手の申告通りなら、昭和が勝つバージョンも撮影はされていたはずです。
それは一体、いかなるモノだったのでしょうか。
「1号と鎧武のポジションが逆になるだけでは」と推測するファンもいました。
しかしぼくは、それは違うと思います。
繰り返す通り白倉は勧善懲悪を嫌っています。本作のインタビューに答え、(以下は記憶に頼って書きますが)「昭和ライダーは秩序を守るために個を殺す存在、平成ライダーは個の権利を守る存在」といった発言をしていたのです。ニュアンスとしてはもう少し柔らかかったと思いますが、それでも昭和に対する悪意と憎悪が、少なくともぼくには感じられる発言をしていたのです。
ならば、そんな昭和ライダーが花を守ろうとし、平成側が花を散らそうとするのはあり得ない話ではないでしょうか。
白倉の中では平成こそが肯定されるべきとの結論が最初からあるのですから、昭和が肯定されるような描き方での「昭和勝利バージョン」は作りたがらないではないか、とぼくは思います。「正義」を否定する相対主義者はただ一人の例外もなく、自分の価値観が肯定されることが絶対なのだとの信念を頑として譲らないものですからな。
以下はあくまでぼく個人の妄想です。
恐らくですが、元から票は操作され、「平成の勝ち」は最初から決まっていたのではないでしょうか。
そして、本作のDVD版、BD版には「劇場では明らかにならなかった昭和ライダー勝利バージョン」も収録される。しかしその内容は例えばですが「容赦なく花を散らし、鎧武を倒した1号が『甘ったれるな! その甘さが今回の事件を引き起こしたのだ!!』的発言をして勝利宣言をする」といったものなのではないでしょうか。
最初から平成の勝利は約束されていた。が、オマケ映像として昭和の勝利を垣間見せ、「どうだ、昭和が勝たなくてよかったろう」と勝ち誇る。
これこそが、最初から予定されていたことだったのではないでしょうか。
昭和ライダーを悪者として描写し、地上から葬り去る。
これこそが、「昭和が勝つか、平成が勝つか投票だ!」と煽ったことの、真の目的だったのではないでしょうか。
最後に。
上に挙げた画像は劇場で売られていたパンフレットです。
このシリーズは通常のパンフに加え、ちょっとしたメイキング画像のDVDをつけた特別パンフを売る、というボロい商売をしているのですが、ぼくはまんまと高いDVD付きの方を買ってしまいました。
が、そこにも藤岡弘の姿は一切なし。
詐欺じゃん!!
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