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割れても末に

2007-01-06 17:55:51 | 音楽

 正月といえば、「百人一首」。だが、ぼくには心に深い傷を負った思い出があって、未だに目を背けたくなる。それは…。

 高校1年の夏休み、古文の宿題が出た。

「百人一首を全て暗記せよ」

それも、新学期早々に試験があり、もし満点を取れなければ、罰として、誤答の数の冊数分の大学ノートに、1ページまるごと一首として計百ページ、歌を自筆で書き込まなければいけない、というとてつもないものだった。

 ご想像のとおり、ぼくは満点を取れず、ノートと格闘する秋になった。その時だ、日本人を止め、イタリア人になろうと決意したのは。

 それは長い道のりだったが、このトラウマ、アレルギーから脱却できたのは、他でもない、枝雀さんの落語、「崇徳院」のおかげである。

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 熊五郎が本家に呼びつけられたのは、若旦那が突然の急病で、しかも、原因不明で、症状は重いという、その訳を探れというのが大旦那の依頼である。若旦那から訳を尋ねると、どうにも恋わずらいのようなのだ。

 なんでも、高津神社参詣後の茶店で、十七、八の綺麗なお嬢さんと遭遇し、瞬間にお互いが惹かれあうものの、名も名乗らず、行き過ぎようとしたのだが、お嬢さん緋塩瀬(ひしおぜ)の茶袱紗(ちゃぶくさ)を忘れている。慌てて若旦那が追いかけ手渡すと、お嬢さんがお礼を言うのはもちろん、茶店で料紙(りょうし、紙に筆・硯を添えて出すこと)を借り、

“瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の”

という歌を書いて、若旦那に手渡した。

 こうして始まる抱腹絶倒の顛末。大阪言葉の豊かさ、柔らかさ、面白さと、当時の人の高い教養度がうかがえ、実に楽しい噺なのだ。

 端緒となる短歌、この崇徳院さんの下の句が「割れても末に 逢わんとぞ思ふ」。つまり、今日は本意ないお別れを致しますが、末にはまた、めでとうお会いできますようにとの意味かいなあと思うと、それから頭が上がらん病気になったという若旦那の初心さ。何度聴いても、若旦那と熊はんの掛け合いは可笑しい。さらに、熊はんの涙ぐましい努力と大活躍で無事ハッピーエンドを迎える。

 暗記するより何より、歌の真髄が沁みこんでくる。

本意ないお別れ
末にはまためでとうお会いできますように

日本人って素晴らしい。日本語は豊かだ。

 今もこのシーンは空で言えるほどまる暗記し、焼きついている。学校は先ず「マインド」を教えるべき場所だ。

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