11月23日、東京商工会議所 東商ホールで行われた第9回目となる在宅医療推進フォーラムに参加してきました。先日、鶴岡で開催した東北在宅推進フォーラムを報告せよとの依頼に応じて、参加してきたものです。
在宅推進フォーラムは、勇美記念財団の助成により運営されています。勇美財団は、株式会社オートバックスセブン創業者のひとりである住野勇氏が株式上場で得た資産を社会に還元するために設立された財団法人です。総助成金額は約9億7700万(2013年9月末現在)で、在宅医療を始め医療・福祉・介護に関する各種地域サービスの提供を推進するため、先駆的かつモデル的な在宅医療に関する事業に対して助成等を全国規模で行っています。なお、財団名の「勇美」は、住野勇氏の「勇」、妻美代子氏の「美」に由来するそうです。住野夫妻は、最前列で、最初から最後まで熱心に聴講しておられました。
なお、11月23日を在宅医療の日と定め、毎年この日にフォーラムを開催しています。今年で9回目となります。
フォーラムはおもに一般市民へ向けたもので、600名を越える参加者がありました。
第一部は、あいさつの後、日本医師会作製の「かかりつけ医が行う在宅医療」というDVDが上映されました。在宅医療に無関心だったかかりつけ医が患者家族の要望もあり在宅医療を始めるが、在宅医療を実践する中でその必要性に目覚めるという内容で、在宅医療はかかりつけ医機能の延長にあること、在宅医療を行う際のポイントなどが分かりやすく解説されています。
そのあとは、全国11のブロックからの活動報告がありました。各ブロックともさまざまな切り口で在宅医療の普及に取り組んでいるようです。東北の代表として私が、先日鶴岡で行った東北在宅医療推進フォーラムの内容についてプレゼンしてきました。
私の報告ファイル(PDF)
私の報告ファイル(パワーポイント)
昼食をはさんでの第二部では、まず、厚労省の神田氏から「在宅医療の制度面の課題について」という基調講演があり、次いで 「在宅医療の今後の進め方」 ~各職種はどのように取り組むのか~という座談会がありました。内容は、医師会、歯科医師会、看護協会、、薬剤師会介護専門医協会からの在宅医療への取り組みの現状報告とその後のディスカッションでした。
特筆すべきは、在宅推進フォーラムの9年間の歴史の中、日本医師会の代表が初めて登壇したことです。歴史的な出来事だと言っていましたが、私は、遅すぎるのではないかなという感覚を持ちました。遅すぎたとしても、日本医師会が在宅医療はかかりつけ医機能の必須の要件だと公言したことは、在宅医療の推進にとって大きな出来事だと思います。
そのあとに、「かかりつけ医とともに在宅医療を進めるには?」というタイトルでのシンポジウムがありました。まず、国立長寿医療センター 三浦氏からの在宅医療連携拠点事業の現状分析という基調講演があり、地区医師会から3題、在宅療養支援診療所から2題の報告がありました。三浦氏の話は、在宅医療連携拠点事業の総括でしたが、本事業で地域での顔の見える関係は進んだが、医師会や市町村のかかわりが大きな課題であるとの指摘がありました。また、東京都北区医師会、粕屋医師会、柏市医師会からは、在宅ネットワークの構築、包括支援センターの医療面でバックアップシステム、在宅での医療や介護情報をかかりつけ医や病院間で共有するしくみの構築など、さまざまな工夫をして取り組んでいる様子が報告されました。
在宅療養支援診療所からの報告では、神経難病などの希少疾患を在宅で診ている専門医集団による在宅療養支援診療所と医師ひとりでやっている在宅療養診療所からそれぞれの講演がありました。「できることをできるだけ」、「在宅見取り、必要なのは心配り(支援)」、「ミッションからアクションへ」などのフレーズが心に残りました。
閉会の辞として、大島伸一国立長寿医療研究センター総長から、人と人との触れ合いは、病院ではつくりにくい。在宅にはそれがある。それこそが地域を変える力である。これからは、医療ががらりと変わる。今はその転換期にある。来年度は名古屋で開催予定であるという話があり、閉会となりました。
今回のテーマは、「新しい地域社会の創造へ向けて」
プログラム
第一部
開会の辞
在宅医療助成勇美記念財団 住野 勇 氏
全国在宅療養支援診療所連絡会 会長 新田國夫氏
上映会
かかりつけ医が行う在宅医療
11ブロックからの活動報告
第二部
基調講演
「在宅医療の制度面の課題について」
神田 祐二 氏 (厚生労働省)
座談会
「在宅医療の今後の進め方」
~各職種はどのように取り組むのか~
座長:大島伸一、辻哲夫
演者
・日本医師会 介護保険担当 高杉氏
・日本歯科医師会 常務理事 佐藤氏
・日本看護協会 常任理事 斎藤氏
・日本薬剤師会 常務理事 安部氏
・日本介護支援癬も人協会会長 鷲見氏
シンポジウム
「かかりつけ医とともに在宅医療を進めるには?」
座長:新田國男氏 (北多摩 医師会)
1、在宅医療連携拠点事業の現状分析
国立長寿医療センター 三浦久幸氏
2、地区医師会から、
東京都北区医師会
粕屋医師会
柏市医師
3、在宅療養支援診療所
専門医集団による在宅療養支援診療所
秦平会 理事長 石垣氏
医師ひとりの在宅療養診療所
東京都大田区鈴木内科医院 鈴木氏
閉会の辞 国立長寿医療研究センター総長 大島氏