鶴岡地区医師会だより

三原一郎目線で鶴岡地区医師会の活動を配信しています。

年頭のあいさつ(「めでぃかるとる」掲載)

2016-01-01 11:16:58 | 日記
年頭のあいさつ ~2015年を振り返り今後を展望する~

新年あけましておめでとうございます。皆様におかれましては、決意を新たに良き新年をお迎えのことと思います。

昨年は医師会長として4年目の年でした。鶴岡地区医師会の活動は医師会長だよりで報告している通りですが、役員、会員また職員の皆様の温かいご支援とご指導のおかげで、なんとか大過なく新年を迎えることができました。この場を借りて御礼申し上げます。

・悲しい出来事
 一方で、昨年は今野拓先生がトライアスロン競技中に亡くなるという痛ましい事故があり、さらには、五十嵐裕先生が病に倒れ閉院という不測の事態となってしまいました。お二人とも、将来を嘱望された優秀な内科医でしたので、当地区の医療体制にとって大変な痛手となりました。今野先生のご冥福をお祈りするとともに、五十嵐先生の早期の復帰を祈念したいと思います。また、両院に通院しておられた患者さんについては、内科系の先生方に引き継いで頂きました。ご支援、ご協力に深く感謝申し上げるとともに、会員・職員の皆様には、健康に十分留意されるようお願い致します。

・湯田川温泉リハビリテーション病院の今後
 各種事業の運営は、多少苦戦している事業体もありますが、全体として概ね順調に推移していると評価しています。湯田川温泉リハビリテーション病院については、老朽化、狭隘化が喫緊の課題となっていますが、昨年末に鶴岡市から今後の方向性についての回答がありました。既存建物の大規模改修、病院が要望している施設整備などを市が実施し、少なくとも今後15年間は施設運営を継続していくとの内容でした。整備計画を平成28年度中に作成し、改修は次年度以降早期に実施するとのことです。

・医療連携に関する組織のあり方の検討
昨年のめでぃかるとる新年号の年頭のあいさつにも書かせていただきましたが、緩和ケア推進協議会と地域連携パス推進協議会との統合など、地域全体としての組織のあり方を検討する場として「医療連携に関する組織のあり方検討準備委員会」を立ち上げました。メンバーは、鶴岡市、荘内病院、医師会から10名程を募り、計6回の話し合いを行いました。結論から述べると、少なくとも来年度は統合せず、現状維持という結果となりました。マンネリ化しつつあるとはいえ、両協議会共に順調に運営されていること、それぞれの協議会の経済的な基盤が異なること、さらには、これまでさまざまな努力を積み重ね、築いてきた庄内プロジェクトという活動を縮小させたくないという関係者の思いも強かったのだと思います。現状を変えることの難しさを思い知りましたが、今後とも現状に甘んじることなく、より良い方向を目指した提言を行っていきたいと思っています。

一方、6回の話し合いは決して無駄ではありませんでした。地域にとっての課題は何なのか、それを解決するためにはどんな組織がふさわしいのか、じっくりと議論する時間を持つことができました。話し合いのなかで、これからの超高齢社会において地域に求められるのは「地域包括ケアシステム」の確立であり、それを検討する場としての組織が必要ではないかとのことで概ね意見が一致しました。これら議論を踏まえ、来年度は今までの枠組みとは異なったかたちでの体制になる可能性があります。今後のことは、市の予算のこともあり、未確定ですが、少なくとも委員会での率直な意見交換を通して、当地区に必要とされる組織への共通の認識が醸成されたのではないかと考えています。コミュニケーションはすべての出発点であることを再認識しました。

・庄内脳卒中地域連携パス
鶴岡市民が日本海総合病院を受診する機会が増え、鶴岡地域の医療機関と日本海総合病院とのより密な連携が求められる時代となりました。現在、脳卒中地域連携パスは、酒田、鶴岡それぞれで運用されていますが、今後は庄内全域での統一した連携パスの運用が期待されています。そのような状況のなか、昨年よりは脳卒中の酒田・鶴岡統一連携パスの検討が始まりました。今年度は、数回の合同検討会議を重ね、本年4月には、IT化された新たなパスの運用が開始できそうです。刷新された庄内脳卒中地域連携パスのデビューを楽しみにしたいと思います。

・地域医療構想
地域医療構想は、高齢者人口がピークを迎える2025年を目処に、病床の機能分化・連携を進めるために、医療需要と病床の必要量を推計し、病棟単位で病床の再編を進めるというものです。山形県においても、県保健医療推進協議会の下に、「地域医療構想病床機能検討部会(県全体)」と「地域医療構想地域検討部会(村山、最上、置賜、庄内)」が設置され昨年から検討が始まりました。2025年における庄内医療圏における必要な病床数は、高度急性期が現在の稼働病床665から208床へ、急性期が1052から613床へ、回復期が316から709床へ、慢性期が627から594床へと推計されております。しかし、必要病床数が示されたとして、それをどう実現していくのか、地域で利害を超えた調整ができるのか、行政主導ではなく、現場(地域)主導での率直な話し合いの場が不可欠と思われます。

・医療事故調査報告制度
昨年10月から医療事故調査報告制度の運用が始まりました。制度の目的は、予期しなかった医療に起因する死亡または死産が生じた場合、医療事故の第三者機関(医療事故支援センター)への報告を義務化することで医療事故を集積・分析し、再発を防止することで医療の安全性を確保することにあるとされています。本制度は、個人の責任を追及するものではないとされていますが、報告することで、むしろ病院や個人の責任が追及されるのではないかという危惧が払拭されておらず、病院側には慎重な姿勢が伺えます。この制度が機能するには、報告はあくまで医療事故に起因する予期しない死亡・死産に限定され、過誤の有無に関わらず責任は追及されないことが保証される必要があると思います。

以上、昨年の当地区医師会や地域医療を取り巻くトピックを紹介し、年頭のあいさつとします。本年も、どうぞよろしくお願いします。

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