【祿太】
ん~~気持ちよく寝た~
目が覚めると、僕たんはこの家の家族として【祿太】と名付けられていた
サマンサ♪母たんには一目で七宝兄たんの生まれ変わりだと解ってもらえた
同じ柄と色(少し薄いけど)がポイントです
目標達成
僕たんの名前は.....
七宝兄たんの次にサマンサ家に迎えられたのだから七の次は
八がつきそうな感じだが、吉字の末広がりより
”うっかり者の八兵衛さん”になってはいけないと言う事で、
一つ数字を戻し【六】になった。
七宝の名前の基となる七福神からロクの付く名前を捜すと~【福祿寿】とある。
その一文字の祿を頂戴し【祿】、
そしてこんどは太く生きる様にと【祿太】と名付けられたのだ
僕たんは七宝兄たんの生き残した寿命を取り戻すかの様に命を繋いだ。
食べれる物は何でも食べ、水もカプカプ食べ....
変な飲みかただけど気にしない
だって七宝兄たんの分もいっぱい飲まないといけないので忙しいんだ~
家に連れて帰られた時は700㌘の小さい身体だったけど、
大事に大事に育てられ5ヶ月の頃は2.5㌔を越え
しっかりした身体になったんだ~
毎日毎日イチローおじちゃんと遊び、男子はこうあるべきと
七ヶ条を伝授され七宝兄たんの事も聞いた。
珊瑚姉ちゃんからは撫子ママ(人の言葉が理解出来るすご~い先代ママ猫)
の話や家族のルール、外回りのルールを聞き僕はちょっと大人になった
でも何となく寂しい時がある
そんな時はオッパイ吸うみたいに”じゅっじゅ”する
僕たんには七宝兄たんには無かった長~い尻尾がある
その先端をちょっとだけ口にくわえると
幸せ満点直ぐ眠くなっちゃいます
サマンサ♪母たんはその”じゅっじゅ”した尻尾を見ると
筆みたいとかハゲるかも....と言う
確かに自分でもそう思う...。やだ~~尻尾ハゲやだ~~。
大人になったら”じゅっじゅっ”しないもんね~
小さい頃
苺の箱が僕たんの部屋だった頃.......
七宝兄たんが大好きだったキャットタワーで毎日遊んだ。
ケージが僕たんの部屋になった頃.....
急な階段の上り下りで足腰を鍛え歩伏前進で上半身を鍛えた。
更にベランダの柵を飛び越え庭へ行ける様になった頃には
サマンサ♪母たんの部屋が僕たんの部屋になった。
そして更に更に珊瑚姉たんに付き添われ
家の周りのパトロールまで出来る様になった頃.....
満月の夜、僕たんは本能に目覚め一人でパトロールに出た
そしたら怪我をした
何が起きたのかまったく記憶に無い
まるで狭い猫道にいた時の様に何故か怪我をして家に辿りつくそれまでの記憶が....無い
ただ、帰らなきゃ家に帰らなきゃ
と必死に走った....
正確に言うと走ったつもりだった.....
でも僕たんの後ろ脚は動いて無かったのである.....。
でもでも残った前脚で必死で走った....。
月は沈み、夜が明け、太陽が見える頃、僕は家の近くに辿りついた。
そこにはいつもひとっ跳びで越えられるはずの壁が立ちはだかる。
この壁を越えればサマンサ♪母たんの待つ家だ
母たん(ニャァー)サマンサ♪母たん
(ニャァー)必死に叫んだ
......駄目だ聞こえて無い。
イチローおじちゃんにも届かない
家は目の前なのに....僕たんには跳び越えられない.....
時間だけが過ぎ太陽が真上に来た。
ああ~疲れた....寒いし.....お腹すいたな.....眠いな.....
このまま眠ったら七宝兄たんみたいに虹の国に逝っちゃうのかな.....
そう思いながら空を見上げた
その時一晩中僕たんを捜し歩きまわり、クタクタになってベランダに佇む
サマンサ♪母たんと目が合った(感動的なBGMが流れる....)
ろくーーろくたーーん
サマンサ♪母たんの声だ
しっかりと目が合った
でも直ぐに視界から消え、あ~夢か~と思い俯いた。
ザッザッザッザッ近付く足音がする
声がする
ろくたぁーー
あ~あの時と同じ七宝兄たんを見送った時と同じサマンサ♪母たんの悲しい声。
僕たんは力を振り絞り振り向いた。
そして鳴いた。
ニャァー(サマンサ母た~ん...)
ニャァー(ただいま)....
ニャァー(遅くなっちゃった)
ニャァー(ごめんなさい)
あのね...なんか....眠い....フゥ
あ~七宝兄たんに叱られちゃうな~
僕たんまでサマンサ♪母たんを泣かせてしまった~
フゥ....
泣いてる....母さんが.....泣いてる....
ニャァー(泣かないで...)
フゥ....
「僕はサマンサ♪母さんに”泣かないで”って言いたくて帰ってきたんだ...
祿太は僕が必ず母さんのそばに居られる様にするから....
だから泣かないで....」
また僕たんの奥から声がする.....
ニャァ...(サマンサ♪母たん...)
ニャァ...(お家に帰りたい)
フゥ...
第二話【祿太】