長崎からやってきたニザダイ科・テングハギ属の大型種。ヒメテングハギ。
「テングハギ属」というと、頭部に巨大なツノをつけたニザダイ科の魚を思い浮かべる。英語名でもこの仲間を「Unicornfish」というが、実際にこの「つの」を有するのはテングハギ、ツマリテングハギ、オニテングハギの雄、そしてこのヒメテングハギくらいである。しかもこれらの魚種でも、小型の個体ではツノは発達しない。
このぶろぐではテングハギ属を何度か紹介してきた。しかし、多くの場合「ツノのない個体」であった。ヒメテングハギも2012年ごろに少し紹介していたのだが、その時も幼魚でツノはなかった。しかし今回ようやく立派なツノをもつヒメテングハギに巡り合うことができた。
ツマリテングハギ
ヒメテングハギとテングハギ、ツマリテングハギの3種の成魚では、ヒメテングハギの成魚は体がもっとも細長いように見える。次いでツマリテングハギ。テングハギはこの3種では最も体高が高い。テングハギの成魚はよい画像を持っていない。各自ググられたし。
ヒメテングハギの尾鰭
ツマリテングハギ尾鰭
一方尾鰭はヒメテングハギは白い明瞭な縁取りがありほかの2種と見分けることができる。ツマリテングハギは尾が白っぽく、尾に太い帯がある感じである。またテングハギは尾の端がよく伸長しているが、ヒメテングハギもテングハギほどではないが少し伸びている。一方ツマリテングハギはほとんど伸びていない。しかし成魚はこれほど違いがあるのに対し、幼魚は3種とも似通っているのでとても厄介である。わからないなら水槽で育てて同定すればいいじゃない、なんていう人もいるが、この仲間は全長70cmになり、しかもよく泳ぐため、残念ながら家庭の水槽での飼育にはまったく向いていない魚である。成魚は水族館レベルの水槽でないとうまく飼いこなせないかもしれない。ただし幼魚は比較的観賞魚店で見ることがあるため、手を出す人がいるのが怖いところである。もっとも巨大化する前に白点病などで殺してしまうことも多いのであろうが。
分布域はインドー太平洋でハワイ諸島にも分布している。日本では琉球列島のほか、関東以南の太平洋岸、日本海岸でも広範囲にぼちぼち見られる。成魚は遊泳性が強いためかなり広い範囲を泳ぐことができるよう。
沖縄では「ばしょーかー」と呼ばれ、この仲間としては高級魚であるテングハギ(ちぬまん)と区別されている。味の方は皮や内臓に近いところに臭みがあるため、これを除くと美味しく食べられる。揚げ物や刺身、カルパッチョなどで食した。
今回のヒメテングハギも長崎県の石田拓治さんより。いつもありがとうございます。