かぶれの世界(新)

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G20は期待外れ?

2009-04-05 22:16:32 | 国際・政治

良くも悪くもG20

先週2日に英国ロンドンで開催されたG20は、来年末までに総額500兆円の財政出動、IMFの途上国への支援を110兆円に拡大、金融監督と規制の強化し、2010年の世界経済の成長率を2%に回復させると宣言した。更に、保護主義を防ぐことで各国は一致したと報じられた。事前に伝えられたアジェンダをみると、良くも悪くもこんなものだろうというのが私の印象だ。

私が不思議に思ったのは、主要各紙の報道に妙に‘あっさりした’印象があったことだ。「100年に一度の危機」に対処する為、主要国の全ての指導者が集まった会議という扱いにしては何か地味だ。例によって私流の皮肉な見方をすると、国際会議には記者クラブが無いからだろうか。それよりも国内政局や高速道路値下げ、定額給付金のほうが重要だからだろうか。 

オバマの顔見世効果、米欧の対立点、中国と日本の存在感の変化など、事前に議論されていた内容で奥行きに欠け平板な洞察に留まっているように感じる。記者クラブが無いとお仕着せのコンセンサス確認が出来ないし、変なことを書いて恥をかきたくないからかもしれない。ということで私流のG20報道批評をやってみる。

課題は保護主義の阻止

メディアが共通する指摘として、財政出動や金融規制もさることながら、保護主義を防ぐ努力がもっと必要だったと指摘しているのは的確だと思う。前回のG20でも保護主義の阻止をうたったが、実際のところ各国で保護主義の疑いのある措置が次々ととられている。保護主義を阻止するもっと強力な枠組み(日経)、今度こそ順守しなければならない(読売)と社説で説いている。

この保護主義の議論がグローバル化された今日の世界を象徴的に表しているように私は感じる。現代は「経済がグローバル化しながらも、政治は国の枠内に留まったままの世界」(御立直資氏)である。即ち、「企業が国境を越えて最大利益を追求する活動を、国境で輪切りして、政治がこの切り口を見て自国の利益を如何にして守るか」の世界である。

G20の限界

思うに、これがG20の現実であり限界でもある。20カ国もの首脳が集まって総論以外のコンセンサスを得ることは、最初から期待することは至難である。オバマ大統領が言うように、財政出動・金融規制・途上国支援の総論で各国が合意したことは前例の無い協調的な結果で、今回のサミットが、今後各国が個別の政策を打つ重要な土台になったとの認識は正しいと思う。

4月3日の読売新聞の社説はこの状況を、「昨年11月のG20後も危機は深まるばかりで、今年の世界経済はマイナス成長に陥る見通しである。G20が危機感を共有し、悪循環を断ち切る決意を示したのは当然であり、協調を最優先し、不協和音を封印した跡がみえる。」と報じた。

G20批判は的外れ

従って、今回のG20は具体的な目標設定や施策に欠けるとの批判は、現在G20が出来ることはこの程度だという状況認識に欠けた批判と考える。又、新興国の発言力が高まり存在感を増したと各紙は伝えている一方で、それを説明する具体的な事実も伝えていないのも気になる。

今回、米国の影響力低下とはしゃぐ報道はさすがに陰を潜めていた様に感じた。その理由は、G20が伝えたメッセージは、好むと好まざるに関らず結局のところ世界は米国の復元力(景気回復)、自己修正力(自浄能力)に頼らざるを得ない事実が明らかになったからだと思う。

オバマ大統領は米国の考えを押しつけるより、総論でG20の合意を得る選択をした。だが、修正が米国の没落とか弱さではなく、寧ろ他国なら出来ない強みであると見做すべきだ。欧州や新興国の主張をバランスさせた修正米国の景気回復が、世界が最も望み米国の国益にもかなうと理解した為ではないだろうか。

市場は前向きに評価

具体的な政策が無いと指摘された割には、市場の評価は前向きだった。彼等は常に相対的だ。直後のNY証券市場は先月からの上昇基調を維持して8000ドル台を回復した。特に金融関係が好調だ。しかし、雇用環境が歴史的な悪化を見せ、GM・クライスラーが破産もありという展開の中での株価上昇は、私にはいささか意外に感じた。前向き評価の「心」を以下のように解釈する。

金融機関の収益性回復に加え、雇用環境悪化や自動車メーカーの破綻などは既に織り込み済みとなり、悪材料は出尽くしたというセンチメントがあったようだ。その上でG20は景気回復の総論で合意され、金融活動を著しく制限する厳しい規制はなく、少なくとも後ろ向きの材料は無かったという消極的な前向きに評価されたというのが、私の見方だ。この風向きはいずれ変わる。■

コメント
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