オバマ大統領の高支持率はまだ続いている。大統領就任以来、国民の間に楽観的な見方が広がっていると、7日NYタイムズは先週行われた最新の世論調査結果を伝えた。Pew Research CenterやPollstar.comなど他の世論調査も支持率の高止まり傾向を報じている。
就任後2.5ヶ月経った今、どの調査も60%前後かそれ以上の高支持率だと報じている。注目すべきは、経済が良い方向に向っていると、将来を楽観的に見ている人々が短期間に増えていることだ。経済が悪化していると答えた人は54%から34%に減少、逆によくなっていると考える人たちの比率が7%から20%に増加した。
記事は続けて、共和党員の言を引用して「これは実態よりも心理的な結果、オバマ大統領はルーズベルトのように国民を高揚させている。何かが良くなっている、それが何かはそのうち分かるだろう」といい、別の無党派の言を引用して「株価が戻れば経済回復に向かい雇用が増え、人々は又車を買う」だろうと、示唆的に「何か」を報じている。
確かに先月シティバンクの好業績が伝えられて以降ダウ平均は上昇を続け、昨日はウェルズファーゴーの大幅黒字決算を受けて、ついに8000㌦台を回復したことが今朝方報じられた。このまま一本調子に株価上昇が続くとは思えないが、投資家のリスク許容度が戻りつつあるように感じる。
悲観論が溢れる日本とは対照的な楽観的な見方はどこから来るのだろうか。
今年に入りテレビの政治経済番組等で、米国を訪問時に会った人々が一様に楽観的なのに驚いたと、帰国直後に語るコメンテーターが一人ならずいるのを何度か見た事がある。米国とは極めて対照的に日本では悲観論が蔓延している。何故そういうことになるのか、日本のメディアの過剰に悲観的な報道姿勢が一因と考えていた。だが、それだけではなさそうだ。
いつも能天気な程に前向きな米国国民性に加え、米国人すらオバマ大統領自身が主要な理由の一つと思っているようだ。国民に希望を与える特別な才能をオバマ氏は持っていると、米国人も考えている。国民は盲目的にオバマを信じているのではなく、争点となっている事柄の深刻さを具体的に理解した上で支持しているとPewの調査結果は伝えている。
議会や大統領コメント等の一連のパフォーマンスを経て、あれほど反対が多かった大銀行の救済を容認する比率が高まり、いまや賛成と反対が拮抗する程になってきた。オバマ大統領は対立するアジェンダを、議会やメディアを通じた世論の論争の中で収束させ、多数が納得できる意思決定を導く巧妙なプロセスで世論と政策の折り合いをつけているように見える。
意図したかどうか分からないが、このオバマスタイルは高い支持率を背景にして難局を乗り越えるためのやり方として、今のところ成功しているように感じる。だが、下手をするとポピュリズムの暴走に足を引っ張られる危険な賭けの様に感じる。米国のメディアは日本よりよほどマシだと思うが、議会は日本のように拘束をかけられない。
GMやクライスラーを破産させる選択肢が徐々に現実味を帯びてきた。政策決定段階でいくら支持を受けたとしても、良くも悪くも必ず結果が出る。何時か希望では無く結果を求められる。自動車産業の救済は、オバマ大統領にとって良くも悪くも転換点になる可能性が高い。(参考 http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20090409/191454/)
オバマ大統領に期待し希望に満ちた国民が、彼の意思決定が招く期待はずれの現実とどう向き合うか。そういう事態になる恐れが無いとは言えない。彼の怜悧でカリスマ的な指導力で乗りこなせると期待したい。まだ先は長い。しかし100日の猶予期間は程なく終わろうとしている。■