W杯の熱狂でツール・ド・フランスがすっかり霞んでいた。今年はアームストロングが引退、有力視されたバッソ、ウルリッヒがドーピング疑惑で出場停止となりヒーロー不在の大会で、私もW杯で寝不足の中あえてツールを見たいと思わなかった。
一昨日フロイド・ランディスが事実上優勝を決めたというニュースを見て、ああそうかランディスがいたなと思い出した。今朝のニュースは彼が予定通り初優勝を飾りシャンゼリゼを凱旋したと伝えていた。彼が優勝して良かったと言うのが最初に思ったことである。
ランディスといえば私は今でも一昨年の勝負どころの第17ステージを思い出す。トップ集団を引っ張ったり抑えたりしながらコントロールし、最後の数キロで満を持してアームストロングが前に出た後もズルズル後退せず残り百メーターまでトップを争った強さは驚異的だった。もしかしたらアームストロングより強いのではないかと思わせた。
彼は体力を消耗する献身的なサポートを200km以上続けかつ最後まで勝負にこだわるスピリッツは、ある意味尊敬の念すら抱かせた。それがあったから、昨年アームストロングと袂を分かった時、今度はエースとしてアームストロングの7連覇を阻止すると期待したが泣かず飛ばずで失望した。
報道によると今回2位との差が1分以内という極めて僅差の勝負だったそうだ。ランディスは終盤の16ステージで落車し苦境に立ったが、直後得意の山岳コースとタイムトライアルでライバルを圧倒し優勝を決定付けたと言う。チームはそれほど強くないといわれていたのでこの優勝は彼の実力で取ったものだろう。
ランディスはもう30歳で、大会中普通に歩けないほど臀部を痛め、この後手術をするというので来年も活躍する保証はないそうだ。その意味でもアームストロングの7連覇の影の主役が栄光に輝くツールの歴史に名を刻んだことはとてもよかった。■
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