草莽隊日記

混濁の世を憂いて一言

最高裁判決はノモス(道徳的理念)の支配を無視した暴挙だ

2023年07月13日 | 憲法
 トランスジェンダーについての今回の最高裁の判決は、世界の趨勢なるものを根拠としたとんでもない暴挙であり、我が国の根幹を揺るがすような決定であった。
 尾高朝雄が主張していたように、法の支配はノモス(道徳的理念)を無視してはならず、時流に媚びることのない歯止めがなければならないのである。
 しかし、判決文を読んでみると、一定程度の留保を付けながらも、混乱を引き起こしかねない文章からなっている。あくまでも限定的だとかいう見方は、あまりにも楽観的過ぎる。蟻の一穴というよりも、あっという間に音を立てて堤防が崩れ落ちている感じすらある。
 戸籍上も男性であり、健康上の理由から手術もできない経産省の50代職員が、自由に女子トイレを使ってよいことが認められたわけだから、各公共施設もそれにそった動きをすることになるだろう。
 ノモスは同時に日本の国柄を意味する。万世一系としての天皇陛下は、無私としての立場を貫かれ、それによって日本国民が目指すべき理念をお示しになっておられるのだ。それが何であるかを念頭の置きながら、法は整備され解釈されなければならないのである。
 尾高は戦後の憲法においても、ノモスの主権は変わりがないという立場を貫いた。だからこそ、尾高は「国民の総意をもって統治の基準としつつ、君主を持って国民共同体としての国家の統合性の象徴とすることは可能であり、君主制の伝統を有する国家の説く特殊性をば、民主主義という普遍的な政治原理の中に生かして行くゆえんともなるからでである」(『法哲学』)と書いたのである。
 そうした尾高の考え方を踏みにじり、日本の司法は取り返しがつかない汚点を残してしまったのだ。まともな方向に軌道修正するにはとんでもない時間がかかる。それまでは混迷の世を生き抜くしかないのである。

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