6月13日のLPSA麹町サロンin DISに、上川香織女流二段の回のキャンセルが出た。その日私はヒマな日だったので、申し込みをした。私は上川女流二段のファンではあるが、事前に予約をするほど熱心ではない。キャンセルと私の予定が合致したときのみ、申し込みをするのである。
当日、銀座のOKスーパーに行くべく有楽町で降りたら、テレビのアンケートに捕まった。オリンピックで印象に残った名場面はというお題で、私は地元のヒーローを答えておいた。放送日は7月18日で、「ニンチドショー」というタイトルだった。
麹町サロンに行くと、先客が2名いた。1名は常連っぽく、もう1名は初参戦っぽい。
常連氏は平手、初参戦氏は四枚落ち。私も平手だが、振駒になった。上川女流二段に振っていただき、私の先手となった。
初手からの指し手。▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩▲4八銀△5二飛▲5六歩△6二玉▲6六歩△5五歩▲同歩(第1図)
私の居飛車明示に、上川女流二段は△5四歩。ゴキゲン中飛車の予定だが、「大沢さん急戦上手だからな」とつぶやく。いや私はそんなに急戦はうまくない。適当に指しているだけである。
ここで▲4八銀が工夫で、ここ▲2五歩だと、△5二飛▲4八銀に△5五歩と位を取られて面白くない。中飛車に5筋の位を取らせるのは居飛車の大損だと思う。
本譜△5二飛に▲5六歩とし、5筋の均衡を保った。
△6二玉に▲6六歩も消極的だが作戦で、上手に△8八角成から捌かれるのを防ぐ意味である。
上川女流二段は5筋の歩交換にきた。
第1図以下の指し手。△5五同角▲6八玉△3三角▲5八金右△4二銀▲7八玉△7二玉▲6八銀△6四歩▲6七銀△8二玉▲5七銀△5三銀(第2図)
上川女流二段は△5五同角と、角で取った。ここはもちろん飛車もある。角で取ったのは△3三角と引いて1手得する意味。これで済んだらこちらも面白くないので、5筋の歩はなるべく打ちたくない。粛々と駒組を進めるが、角道を止めて▲6七銀―▲5七銀の形はいかにもダサい。これを払拭する意味で、次の手は絶対である。
第2図以下の指し手。▲7五歩△7二銀▲7六銀△5四銀▲6七金△9四歩▲9六歩△4四歩▲8六歩△4五歩▲7七角(第3図)
▲7五歩は当然。もちろん玉頭位取りの意味ではあるが、この手で金銀4枚がのびのびできる。▲7六銀と立って、容易に負けない形。「(指し手が)本格的よね」と上川女流二段が唸った。私はふつうに指しているだけだが、さっきから妙にホメられるので、どうも指しにくい。
以下▲7七角までと進んで、次の手が注目された。
第3図以下の指し手。△5五歩▲2五歩△3五歩▲8八玉△3二飛▲7八金△5二金左▲1六歩△6三金▲8五歩△5一角▲2六飛△3四飛▲1五歩△6二角▲6八銀△3三桂▲8六角△4四角▲7七銀(第4図)
開始から30分くらい経って、4人目の客が現れた。満席になるのはいいことである。
上川女流二段は「弱気ですかね」とつぶやいて△5五歩と打った。確かに、飛角銀の進出路を自ら塞いでので、良し悪し。私は若干ほっとした。
上川女流二段は△3二飛と振り直し、高美濃囲いを構築した。「何かキレイな形になった」と、△5一角と引いた。
私の▲7七角は、この筋にいても活躍できそうにないので、8六に上がって新たな活躍の場を求めた。
△4四角に▲7七銀と上がり、金銀4枚ガチガチの形。私としては、珍しい指し方である。だが上川女流二段は「固いわネ」とウンザリしたふうだった。
第4図以下の指し手。△1四歩▲同歩△同香▲1五歩△3六歩▲同飛△同飛▲同歩△3九飛▲3四飛△4三銀▲1四飛△2九飛成(第5図)
どこから戦端が開かれるのかと見ていると、上川女流二段は△1四歩とした。▲同歩△同香▲1五歩に、上川女流二段は切り札の△3六歩を決行した。
しかし私は▲1五歩に△同香は▲同香でなく▲1六歩を予定していたので、こう指せば1歩違っていた。
△3九飛に、▲3四飛が疑問。ここはたんに▲1四歩と香を補充しておくべきで、取りになっている香を取るのに飛車を投入する必要はなかった。
△2九飛成に、次の手は。
第5図以下の指し手。▲7四歩△同歩▲7五歩△1九竜▲7四歩△6二桂▲7五香△7四桂▲同香△同金▲7五歩△7三金▲7四桂△同金▲同歩△6二香(第6図)
私の▲7四歩は待望の一手で、こう指さないと玉頭位取りをした意味がない。△同歩に▲7五歩の継ぎ歩が継続の攻めで、△同歩なら▲同銀△7四歩▲6四銀△同銀▲同角△7三桂に▲4二角成(参考図)を見て、まずまずだと思った。
上川女流二段は、相手にしては面倒と見て△1九竜と香を補充したが、私は一本△7五同歩と取られるのがイヤだった。仮に参考図まで進んだとしても、上手は△7五桂の反撃もあり、それなりに難しい戦いだった。
本譜▲7四歩に上川女流二段は△6二桂と必死の防戦だが、私は7△の位を譲らない。
しかし次の手はしくじった。
第6図以下の指し手。▲5四金△同銀▲4四飛△6三銀引▲4一飛成△1八竜▲4三角△5一金打▲6一角成△同金(第7図)
私は▲5四金と打ったが、いかにもダサかった。上川女流二段は「うん」と納得したふうに△5四同銀と取ったが、ここは△1三歩もあったと思う。以下▲4四金△1四歩▲4三金で1枚得するが、△2九飛と下ろされたら自陣に1枚入れねばならない。意外と大変だったと思う。
本譜、上川女流二段は△6三銀引と引き締めて満足のようだったが、私も▲4一飛成として、前途に希望を持った。
そこで上川女流二段は△5六歩と指しかけたが、「あッ……!!」と王手竜の筋を気にし、△1八竜と1回休んだ。
だがここは、やはり△5六歩と伸ばされるイヤだった。
私は▲4三角と打ったが、△5一金打の強防をうっかりした。だがここは、△5二香で下手の指し手も難しかったと思う。
本譜はいきおい▲6一角成と切り、△同金(△4一金は▲6二馬)。さて、次の手は。
第7図以下の指し手。▲5四歩△5二銀▲4二竜△7五歩▲同銀△6九角▲6八金打△4七角成▲5三歩成△同銀▲同竜△6三香打(第8図)
私は▲5四歩と打った。これに△同銀ならそこで▲5二歩と打つ。よって上川女流二段は△5二銀と引いたが、私は▲4二竜と張り付き、▲5三歩成を確定した。
上川女流二段は△6九角と待望の反撃。私は惜しげなく▲6八金と打つ。銀の入手が見込まれているので、ここではケチらない。
対して上川女流二段は「切りたくないですね。切る気満々で打ってるんですけど」と、△4七角成とした。しかしここは、△7八角成と1枚剥がされるのがイヤだった。
上川女流二段の△6三香打に、私の次の手は、もうお分かりであろう。
(つづく)
当日、銀座のOKスーパーに行くべく有楽町で降りたら、テレビのアンケートに捕まった。オリンピックで印象に残った名場面はというお題で、私は地元のヒーローを答えておいた。放送日は7月18日で、「ニンチドショー」というタイトルだった。
麹町サロンに行くと、先客が2名いた。1名は常連っぽく、もう1名は初参戦っぽい。
常連氏は平手、初参戦氏は四枚落ち。私も平手だが、振駒になった。上川女流二段に振っていただき、私の先手となった。
初手からの指し手。▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩▲4八銀△5二飛▲5六歩△6二玉▲6六歩△5五歩▲同歩(第1図)
私の居飛車明示に、上川女流二段は△5四歩。ゴキゲン中飛車の予定だが、「大沢さん急戦上手だからな」とつぶやく。いや私はそんなに急戦はうまくない。適当に指しているだけである。
ここで▲4八銀が工夫で、ここ▲2五歩だと、△5二飛▲4八銀に△5五歩と位を取られて面白くない。中飛車に5筋の位を取らせるのは居飛車の大損だと思う。
本譜△5二飛に▲5六歩とし、5筋の均衡を保った。
△6二玉に▲6六歩も消極的だが作戦で、上手に△8八角成から捌かれるのを防ぐ意味である。
上川女流二段は5筋の歩交換にきた。
第1図以下の指し手。△5五同角▲6八玉△3三角▲5八金右△4二銀▲7八玉△7二玉▲6八銀△6四歩▲6七銀△8二玉▲5七銀△5三銀(第2図)
上川女流二段は△5五同角と、角で取った。ここはもちろん飛車もある。角で取ったのは△3三角と引いて1手得する意味。これで済んだらこちらも面白くないので、5筋の歩はなるべく打ちたくない。粛々と駒組を進めるが、角道を止めて▲6七銀―▲5七銀の形はいかにもダサい。これを払拭する意味で、次の手は絶対である。
第2図以下の指し手。▲7五歩△7二銀▲7六銀△5四銀▲6七金△9四歩▲9六歩△4四歩▲8六歩△4五歩▲7七角(第3図)
▲7五歩は当然。もちろん玉頭位取りの意味ではあるが、この手で金銀4枚がのびのびできる。▲7六銀と立って、容易に負けない形。「(指し手が)本格的よね」と上川女流二段が唸った。私はふつうに指しているだけだが、さっきから妙にホメられるので、どうも指しにくい。
以下▲7七角までと進んで、次の手が注目された。
第3図以下の指し手。△5五歩▲2五歩△3五歩▲8八玉△3二飛▲7八金△5二金左▲1六歩△6三金▲8五歩△5一角▲2六飛△3四飛▲1五歩△6二角▲6八銀△3三桂▲8六角△4四角▲7七銀(第4図)
開始から30分くらい経って、4人目の客が現れた。満席になるのはいいことである。
上川女流二段は「弱気ですかね」とつぶやいて△5五歩と打った。確かに、飛角銀の進出路を自ら塞いでので、良し悪し。私は若干ほっとした。
上川女流二段は△3二飛と振り直し、高美濃囲いを構築した。「何かキレイな形になった」と、△5一角と引いた。
私の▲7七角は、この筋にいても活躍できそうにないので、8六に上がって新たな活躍の場を求めた。
△4四角に▲7七銀と上がり、金銀4枚ガチガチの形。私としては、珍しい指し方である。だが上川女流二段は「固いわネ」とウンザリしたふうだった。
第4図以下の指し手。△1四歩▲同歩△同香▲1五歩△3六歩▲同飛△同飛▲同歩△3九飛▲3四飛△4三銀▲1四飛△2九飛成(第5図)
どこから戦端が開かれるのかと見ていると、上川女流二段は△1四歩とした。▲同歩△同香▲1五歩に、上川女流二段は切り札の△3六歩を決行した。
しかし私は▲1五歩に△同香は▲同香でなく▲1六歩を予定していたので、こう指せば1歩違っていた。
△3九飛に、▲3四飛が疑問。ここはたんに▲1四歩と香を補充しておくべきで、取りになっている香を取るのに飛車を投入する必要はなかった。
△2九飛成に、次の手は。
第5図以下の指し手。▲7四歩△同歩▲7五歩△1九竜▲7四歩△6二桂▲7五香△7四桂▲同香△同金▲7五歩△7三金▲7四桂△同金▲同歩△6二香(第6図)
私の▲7四歩は待望の一手で、こう指さないと玉頭位取りをした意味がない。△同歩に▲7五歩の継ぎ歩が継続の攻めで、△同歩なら▲同銀△7四歩▲6四銀△同銀▲同角△7三桂に▲4二角成(参考図)を見て、まずまずだと思った。
上川女流二段は、相手にしては面倒と見て△1九竜と香を補充したが、私は一本△7五同歩と取られるのがイヤだった。仮に参考図まで進んだとしても、上手は△7五桂の反撃もあり、それなりに難しい戦いだった。
本譜▲7四歩に上川女流二段は△6二桂と必死の防戦だが、私は7△の位を譲らない。
しかし次の手はしくじった。
第6図以下の指し手。▲5四金△同銀▲4四飛△6三銀引▲4一飛成△1八竜▲4三角△5一金打▲6一角成△同金(第7図)
私は▲5四金と打ったが、いかにもダサかった。上川女流二段は「うん」と納得したふうに△5四同銀と取ったが、ここは△1三歩もあったと思う。以下▲4四金△1四歩▲4三金で1枚得するが、△2九飛と下ろされたら自陣に1枚入れねばならない。意外と大変だったと思う。
本譜、上川女流二段は△6三銀引と引き締めて満足のようだったが、私も▲4一飛成として、前途に希望を持った。
そこで上川女流二段は△5六歩と指しかけたが、「あッ……!!」と王手竜の筋を気にし、△1八竜と1回休んだ。
だがここは、やはり△5六歩と伸ばされるイヤだった。
私は▲4三角と打ったが、△5一金打の強防をうっかりした。だがここは、△5二香で下手の指し手も難しかったと思う。
本譜はいきおい▲6一角成と切り、△同金(△4一金は▲6二馬)。さて、次の手は。
第7図以下の指し手。▲5四歩△5二銀▲4二竜△7五歩▲同銀△6九角▲6八金打△4七角成▲5三歩成△同銀▲同竜△6三香打(第8図)
私は▲5四歩と打った。これに△同銀ならそこで▲5二歩と打つ。よって上川女流二段は△5二銀と引いたが、私は▲4二竜と張り付き、▲5三歩成を確定した。
上川女流二段は△6九角と待望の反撃。私は惜しげなく▲6八金と打つ。銀の入手が見込まれているので、ここではケチらない。
対して上川女流二段は「切りたくないですね。切る気満々で打ってるんですけど」と、△4七角成とした。しかしここは、△7八角成と1枚剥がされるのがイヤだった。
上川女流二段の△6三香打に、私の次の手は、もうお分かりであろう。
(つづく)