一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第12回 世田谷花みず木女流オープン戦・2

2019-05-14 00:27:27 | 将棋イベント
ここで中村アナウンサーから告知があった。この7月から玉川高島屋S・Cにて、島朗九段の将棋サロンが開講されるという。毎月第3水曜日で、各コマ生徒3人の少人数制。実戦や解説、講座など盛りだくさんのようだ。
さて、昼食である。私の行く場所は決まっていて、ここからやや離れたところにある「龍園」だ。だが昨年は休みだった。今年も休みだと、ちょっとほかを考えなければならない。
龍園は幸い、開いていた。私は定跡通り、タンメンを頼む(750円)。いつもの味で、美味かった。
いつもは行きと同じ道を帰るのだが、今日は緑道公園のようなところを通ってみた。これが高島屋への近道で、ビンゴ。こんなルートがあるのなら、早くに利用するべきだった。
6階に戻ると、小学生竜王戦高学年の部の決勝戦をやっていた。解説は島九段、聞き手は中村真梨花女流三段である。対局者でない中村女流三段の登場は珍しいが、友情出演というところか。ただ、鈴木環那女流二段の御尊顔も拝したいところであった。
島九段によると、今回の竜王戦も多くの応募者があったが、何かの時、いつもはじゃんけんで決着をつけていたのが、今年は詰将棋の早解きにしたという。なるほどこれは実力第一主義で、うらみっこなしだ。
「藤井聡太さんの影響もあって、詰将棋が知られてきましたからね」
世田谷区はますます発展を遂げている。
決勝戦は相居飛車になった。「最先端ですね」と島九段。島九段は基本、なんでも褒める。「名人戦で見たのと同じ内容ですね」。
まだこのあたりはいいが、内容に褒めるべきところがないと、投了の作法を褒めたりする。もし島九段がサラリーマンだったら、優秀な営業マンになっていたことだろう。
いやしかし小学生の指し手が早い。こんな序盤は考えて指してられない、というところか。たしかに、一手一手20秒すぎまで考える余裕があったら、それは小学生ではない。

将棋は、図の▲2四歩△同歩▲同飛が軽率で、後手君が△8六歩▲同歩△8八歩で一本取った。以下▲8八同銀に△3三角が痛打。以下▲3四飛△2三銀に▲3三飛成と行かねばならず、△同桂に▲3八金と後手を引いては、先手君が不利になった。
だが両者とも自身満々の手つきで、島九段は「その自信が羨ましいです」とため息をつく。
局面は、数手後▲2二歩と垂らした手が悪手で、△2四飛に▲2七歩とできない。先手君は▲1八角と受けたが、これでは非勢がハッキリしてしまった。
しかしその後後手君がグズり、先手君は1三に馬を作って、むしろ優勢になった。以下は的確な寄せで、先手君が優勝した。ちょっとの形勢の差ではすぐにひっくり返ってしまうのが、小学生戦の恐ろしさである。
いや訂正。この程度の逆転は、私も社団戦でしょっちゅう喰らっていた。
局後の大盤解説は、図で△3三角、を島九段が指摘した。▲3四飛なら△2八歩。▲2八飛ならそこで△8八歩だ。将棋は序盤にこそ、いろいろ手がある。

続いて中学生竜王戦の決勝戦である。今回は中2と中1の戦いだ。
中2君「ここまで来られてうれしいです。昨年は負けてしまったので、今年は勝ちたい」
中1君「ここまでの勝ちを無駄にしないようにがんばりたい」
島九段は、「決勝戦まで来たのがすでに親孝行です」と語る。
対局開始。「(両対局者のお辞儀が)きちんとしてますね」と島九段が感心する。島九段だったら、私をどう褒めてくれるのだろう。
将棋は後手中1君の角換わり向かい飛車になった。中2君は▲4八金型に構える。
「角換わりは人気がありますね。▲4八金も最先端です」
中2君は早くも角を手放したが、指し手は落ち着いている。
「打った角がいいのか、手持ちの角がいいのか……」
「神経を遣いますね」
とは、中村女流三段。
将棋は以降も難しい手が続いたが、終盤▲7四銀と打ちたいところを、▲7四歩と桂を取りにいった手が、島九段がマジで感心する妙手順で、中2君の制勝となった。
「決勝の3局とも、終盤優勢なほうが押し切りました。これは落ち着いているということです」
と、島九段が総括した。
実行委員長・佐川氏らによる表彰式が行われ、飯野健二八段による講評である。
「ご覧の皆様、決勝戦はいかがでしたでしょうか。
小学生の決勝戦は目にも止まらぬ速さで、言葉が出ないくらいのスピードで、激戦でした。
中学生は、落ち着きのある、平成最後の決勝戦にふさわしい熱戦だったと思います。
新しい世代に向けて、皆様が将棋を通してさらなる飛躍の時代になるように、祈念しております。
この小中学生竜王戦は、世田谷区議会議員の鈴木昌二先生のお力で始まりました。今は天国で、みんな頑張っているなと、ほほ笑んでいると思います。
小中学生の皆さん、来年も参加してください」
飯野八段がわざわざこう述べるということは、鈴木先生は最近お亡くなりになったのだろうか。
さらに世田谷区生活文化部長・松本公平氏からも講評があった。

時刻は2時45分である。決勝戦は50分からだが、キッカリ予定を合わせるものである。
定刻になり、対局者の頼本奈菜女流初段、和田あき女流初段、さらに中村修九段、森下卓九段が登場した。
両対局者は、鈴乃屋提供の振袖を着ている。中村アナウンサーは、きものでの対局の心境を聞く。
和田女流初段「きものを着て対局できるのはうれしい。ワクワクします」
頼本女流初段「きものは意識せず、将棋のことを考えます」
ちなみに同じ質問を中村女流三段にしたところ、「ワクワクする」との回答だったらしい。
両対局者とも、精一杯がんばる、と異口同音に決意を表明した。
ここで恒例の撮影タイムである。私はスマホしかないが、何枚か撮らせていただいた。
「今日は各地で贅沢なイベントをやってます。まず本局はネットで中継されています。四ッ谷では『棋才 平成の歩』、愛知県岡崎でも将棋まつりをやっています」
と、森下九段が言う。「平成の始まりの時、私は22歳でした。それから平成生まれの人が棋士になるなんて考えられませんでしたが、21世紀生まれが棋士になってしまいました」
「歳の話はやめましょう」
と、中村修九段。「平成最後のイベントですね」
対局の準備が整った。持ち時間は10分、秒読みは30秒である。頼本女流初段の先手で対局が始まった。
(つづく)
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