第71期王座戦第4局(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)が11日に行われ、藤井聡太竜王・名人が永瀬拓矢王座を破り、将棋界史上初の八冠王に輝いた。
では、ときを戻して激闘の模様を振り返ってみよう。
京都市で午前9時から行われた本局、角を変わったあと、永瀬王座が単騎の桂跳ねをし、早くも決戦になった。
永瀬王座はその考慮時間(短考)から、研究量十分。いっぽうの藤井竜王・名人も対策は講じてきたはずだが、単騎の桂跳ねまで視野に入れていたかどうか。
藤井竜王・名人、銀と桂を刺し違えて中央の角打ちに期待したが、隅の香を取っただけでその馬も消された。さらに数手後桂損し、結果的には銀香交換の駒損となった。時間も大量に消費したのに成果が乏しく、もどかしい思いだったのではなかろうか。
対して永瀬王座は順調に戦いを進める。一時は考慮時間に3時間の差が出て、しかもさらに駒得を重ねた永瀬王座が指しよい。これは相当なアドバンテージに思われた。
ただ、相手は藤井竜王・名人である。彼以外の棋士なら九分九厘永瀬王座が勝つが、藤井竜王・名人だとどうなのか。しかも藤井竜王・名人は今期の王座戦、勝利の女神に微笑みまくられており、相当に勝ち運がある。まだまだ予断は許さなかった。
夜戦になり、果たして藤井竜王・名人に形勢の針が振れる。ところがそこから永瀬王座が踏ん張り、再び形勢を我が物にした。
永瀬王座、藤井竜王・名人の竜を徹底的に責め、ついに召し取った。さらに5筋にと金を作り、それを引いた手が金取り。持ち時間も、藤井竜王・名人が1分将棋なのに対し、永瀬王座は少し時間を残している。形勢バーは「永瀬90:10藤井」くらいになり、私には寄せの構想は見えぬが、永瀬王座の勝ちになったと思った。
ここでAIの予想は玉の早逃げだったが、藤井竜王・名人はそのと金を取る。永瀬王座はその金を取る。ここでは永瀬王座、自身の勝勢を意識したのではないだろうか。
藤井竜王・名人が中央に銀を据え、これで「永瀬98:2藤井」となった。これはどう考えても最終局である。
永瀬王座は馬で王手。フッと形勢バーを見たら、「永瀬9:91藤井」になったので、私はひっくり返った。ええー、こんな展開、ある!? 私はキツネにつままれたように、呆けてしまった。
永瀬王座、腰をひねり、髪をかきむしる。永瀬王座も、おのが敗勢に気が付いたのだ。
藤井竜王・名人、歩の王手。この1歩は、先ほど入手したと金だ。勝ち将棋鬼のごとし。藤井竜王・名人においては、たとえ1歩といえども、鬼の働きをするのだ。
永瀬王座、ここで投げたら自身の名誉王座が当分はなくなるばかりか、自身は無冠、相手は全冠という屈辱を味わうことになる。というかそもそも、急転直下の敗勢に心の準備もできておらず、とても投げられないのだ。
しかし、ついに即詰みが生じ、永瀬王座も投了せざるを得なくなった。時に20時59分。藤井竜王・名人、前人未到の八冠なる!! テレビ画面には、臨時ニュースが流れた。
藤井八冠の会見は見なかったが、「実力がまだまだ足りない」と述べたようだ。藤井八冠特有の謙遜はおなじみだが、こと王座戦に関しては、相当な本音だったと思う。本戦全勝、五番勝負3勝1敗だから盤石の結果にも見えるが、内容は厳しいものが多かった。
ただ、藤井八冠が勝って兜の緒を締めた以上、これから藤井八冠はどんどん伸びていく。もちろんほかの棋士も、十分すぎるくらい打倒藤井の炎を燃やしているが、それでも勝てない。よってこれからは、当分藤井八冠の独走が続くだろう。藤井八冠は21歳2ヶ月。これが八冠の最年少記録だが、これから1日ごとに、最年長記録を書き換えることになる。
藤井先生、八冠王、おめでとうございます。
では、ときを戻して激闘の模様を振り返ってみよう。
京都市で午前9時から行われた本局、角を変わったあと、永瀬王座が単騎の桂跳ねをし、早くも決戦になった。
永瀬王座はその考慮時間(短考)から、研究量十分。いっぽうの藤井竜王・名人も対策は講じてきたはずだが、単騎の桂跳ねまで視野に入れていたかどうか。
藤井竜王・名人、銀と桂を刺し違えて中央の角打ちに期待したが、隅の香を取っただけでその馬も消された。さらに数手後桂損し、結果的には銀香交換の駒損となった。時間も大量に消費したのに成果が乏しく、もどかしい思いだったのではなかろうか。
対して永瀬王座は順調に戦いを進める。一時は考慮時間に3時間の差が出て、しかもさらに駒得を重ねた永瀬王座が指しよい。これは相当なアドバンテージに思われた。
ただ、相手は藤井竜王・名人である。彼以外の棋士なら九分九厘永瀬王座が勝つが、藤井竜王・名人だとどうなのか。しかも藤井竜王・名人は今期の王座戦、勝利の女神に微笑みまくられており、相当に勝ち運がある。まだまだ予断は許さなかった。
夜戦になり、果たして藤井竜王・名人に形勢の針が振れる。ところがそこから永瀬王座が踏ん張り、再び形勢を我が物にした。
永瀬王座、藤井竜王・名人の竜を徹底的に責め、ついに召し取った。さらに5筋にと金を作り、それを引いた手が金取り。持ち時間も、藤井竜王・名人が1分将棋なのに対し、永瀬王座は少し時間を残している。形勢バーは「永瀬90:10藤井」くらいになり、私には寄せの構想は見えぬが、永瀬王座の勝ちになったと思った。
ここでAIの予想は玉の早逃げだったが、藤井竜王・名人はそのと金を取る。永瀬王座はその金を取る。ここでは永瀬王座、自身の勝勢を意識したのではないだろうか。
藤井竜王・名人が中央に銀を据え、これで「永瀬98:2藤井」となった。これはどう考えても最終局である。
永瀬王座は馬で王手。フッと形勢バーを見たら、「永瀬9:91藤井」になったので、私はひっくり返った。ええー、こんな展開、ある!? 私はキツネにつままれたように、呆けてしまった。
永瀬王座、腰をひねり、髪をかきむしる。永瀬王座も、おのが敗勢に気が付いたのだ。
藤井竜王・名人、歩の王手。この1歩は、先ほど入手したと金だ。勝ち将棋鬼のごとし。藤井竜王・名人においては、たとえ1歩といえども、鬼の働きをするのだ。
永瀬王座、ここで投げたら自身の名誉王座が当分はなくなるばかりか、自身は無冠、相手は全冠という屈辱を味わうことになる。というかそもそも、急転直下の敗勢に心の準備もできておらず、とても投げられないのだ。
しかし、ついに即詰みが生じ、永瀬王座も投了せざるを得なくなった。時に20時59分。藤井竜王・名人、前人未到の八冠なる!! テレビ画面には、臨時ニュースが流れた。
藤井八冠の会見は見なかったが、「実力がまだまだ足りない」と述べたようだ。藤井八冠特有の謙遜はおなじみだが、こと王座戦に関しては、相当な本音だったと思う。本戦全勝、五番勝負3勝1敗だから盤石の結果にも見えるが、内容は厳しいものが多かった。
ただ、藤井八冠が勝って兜の緒を締めた以上、これから藤井八冠はどんどん伸びていく。もちろんほかの棋士も、十分すぎるくらい打倒藤井の炎を燃やしているが、それでも勝てない。よってこれからは、当分藤井八冠の独走が続くだろう。藤井八冠は21歳2ヶ月。これが八冠の最年少記録だが、これから1日ごとに、最年長記録を書き換えることになる。
藤井先生、八冠王、おめでとうございます。