JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

ルイス・サッカー 幸田敦子・訳 「穴 (HOLES)」

2007-01-11 | BOOK
マルケスに続いて翻訳本を読んだ。珍しい事です。
こちらは書店に単行本が並んだ時から気になっていた。あらすじを聞いただけで面白そう。大人も充分楽しめる児童文学だと言う。ついこの間も文庫になりそうにないので単行本がBOOK-OFFにないか探していた。そんな折、忽然と書店に置かれた文庫本を見つけて即買い。

いやぁ、面白かった。児童文学なのでやや活字も大きいけれど、止まらなくなってファミレスに篭城、一気に読んでしまった。

代々、イェルナッツ家の人々は運に見放され辛酸をなめてきた。スタンリー(Stanley Yelnats:回文になっている)も無実の罪で、更正施設グリーンレイク・キャンプに送られる。これも皆、「あんぽんたんのへっぽこりんの豚泥棒のひいひいじいさんのせいだ」イェルナッツ家代々伝わるジョークだ。人格形成と称してくる日もくる日も“穴”を掘る毎日。ここはガールスカウトとはわけが違う。ところがこのキャンプ、何やら裏がありそう。五代にわたる不運をみごとに大逆転する少年。

昔の話とグリーンレイク・キャンプとの話が入り混じって語られ、やがてそれらの事柄が一つの方向に絡め取られて行く、実に計算されて良く出来た物語です。
数々の伏線がピタピタピタっと嵌っていく感覚は爽快。

単なる伏線というだけでなく、美人教師と黒人たまねぎ売りとの悲しい恋の物語があったり、「あなたにキッスのケイト・バーロウ」のサスペンスが楽しめたり・・・

本筋のスタンリーの物語も楽しい。キャンプのちょっと危なっかしい仲間達。スタンリー自身の成長物語。そこは児童文学らしく、友情と勇気と冒険が溢れている。そして勧善懲悪も。
自分が人より劣っているとか、運に恵まれていない、間が悪いなんていう環境に甘んじて諦めてしまって常に受身になりがち、しかも、身体的外見にも恵まれていない。そんな子供って少なくは無い。イェルナッツがそれを克服できたのは穴を掘り続けただけでは無く、仲間との友情があったれば。それに元々嫌な奴じゃないんですよね、お人良しなんだけど。

「物語の穴」を探せば、穴を掘ってたくましくなったとはいえ、いくらなんでも水分も取れずあの過酷な道行に耐えられる訳はないだろ!何て事はここではどうでも良いのです。「不可能なんて無い!」で良いんですね。
シャベルを持って穴を掘る。次は友人の墓穴を掘るのか、ぼくの墓は誰が掘ってくれるのかなんて思いを巡らす「穴(HOLES)」
でもね、一番の穴は悪人所長が自分達の悪事をごまかそうと仕組んだ工作だったりして。

児童文学と言っても大人が読んでも充分楽しい。対象年齢は小学校高学年以上だと思うけど、大人になってもう一度読み返しても新しい発見があるんじゃないかしら。
分りやすいけれど構造は複雑。
読み終わって感心したものの、「あれれ、そうだっけ」とページを逆戻りして読み返して確認する必要がありました。

子供が本好きになってくれていたら是非、紹介したい作品ですね。一緒に読んであげてもいいかも。
英語で読んでも難しくなく、高校程度の英語力でも読めるそうですから、洋書にチャレンジしてみたい人にはお勧めみたいです。え、私はもちろん無理ですよ。翻訳でいいです。

それと、カブ・スカウトの青い制服に憧れる場面があります。我が子もカブ、ボーイに入隊させたくなります。私も実に不真面目な隊員で、何一つ身に付けず除隊しましたが、それでもあれは良かったもの。


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