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産経新聞前ソウル支局長 名誉毀損は“有罪”? 違法性阻却 産経新聞の責任

2015-12-30 06:16:26 | 評論
産経前ソウル支局長 名誉毀損は成立している 「違法性の阻却」は適用されず メディアの責任
~検証 産経新聞記事朴大統領名誉毀損事件~


無罪判決 産経前ソウル支局長
 12月17日、ソウル中央地裁は韓国の朴槿恵(パククネ)大統領の名誉を記事で傷つけたとして罪に問われた産経新聞の加藤達也前ソウル支局長(49)に対し、無罪判決(求刑懲役1年6カ月)を言い渡した。李東根(イドングン)裁判長は判決公判の冒頭、韓国外交省が文書を提出し、日本側が善処を求めていることに配慮してほしいと要請してきたことを明らかにした。
判決では 「わが国が民主主義制度をとっている以上、言論の自由を重視せねばならないのは明らかだ」と述べている。
また公人である朴氏に対する名誉毀損罪の成立は認めなかったが、前支局長のコラムを「虚偽だった」と断じ、さらに私人としての朴氏の名誉が傷つけられたことを認定している。
「言論の自由」を認めた当然の結論だろう。しかし、名誉毀損については、完全に“無罪”ではなかったのである。

  問題になったのは前支局長が執筆し、昨年8月3日の産経新聞の電子版に掲載された「朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?」という見出しの記事だ。
  客船セウォル号沈没事故に関連するコラムで、朴大統領が事故直後に姿を見せなかった「空白の7時間」に関するさまざまな「うわさ」があるとして、韓国紙・朝鮮日報のコラムを引用して「朴大統領と男性の関係に関するもの」というコメントを付け加えた。
 この記事に対し、大統領府は「責任を追及する」と公然と反発し、市民団体の告発を受ける形でソウル中央地検が捜査し、2014年10月、「朴大統領を誹謗(ひぼう)する目的で虚偽事実を広めた」として、情報通信網法における名誉毀損(7年以下の懲役または5千万ウォン以下の罰金)で在宅起訴した。
起訴された前支局長は長らく出国を禁じられた。
報道を巡る名誉毀損については、日本は勿論、世界の先進国では、民事上の損害賠償で解決を図るのが通例で、刑事事件として訴追するのは極めて異例である。
 韓国の名誉毀損罪は被害者以外でも告発できる。今回は市民団体による告発だった。韓国の法律では、被害者の意思に反して起訴はできないと定めているので、朴大統領が早い段階で処罰を望まないと表明すれば、前支局長は起訴されなかった。起訴は朴大統領の了解のもとに進められたと考えても合理性はある。
今回の判決で、裁判長は判決の言い渡しを始める前、外交省から検察側を通じて、裁判所に提出された文書を読み上げた。極めて異例の展開である。
日本政府は、韓国側による訴訟取り下げなど、今後の日韓関係への影響を考慮し、善処を強く求めてきた。
 これに対し、韓国外交省当局者は韓国法務省に文書を提出して、日韓関係に配慮するよう異例の要請を行ったことを明らかにした。この要請は、法務省から検察当局、裁判所に渡った。外交省当局者は「韓日関係を担当する機関として、日本側からの要請を法務省に伝えるのは業務の一部だ」と説明した。
緊張化している日韓関係を反映して揺れ動いたまさに政治的な裁判であった。
 
12月22日、ソウル中央地検は、判決を受け入れ、控訴しないとする文書を同地裁に提出し、無罪判決が確定した。
この“無罪判決”の直ぐ後に、従軍慰安婦問題で、「最終的かつ不可逆的に」解決が確認され、日韓関係の改善の歴史的な進展が実現された。
政治的には極めて意義のある“無罪判決”だったが、名誉毀損についてメディアの責任問題は放置されたままだ。


名誉毀損は“成立”している?
 12月18日、産経新聞は、「前支局長に無罪 言論自由守る妥当判決だ 普遍的価値を共有する契機に」という見出しで「改めて、この裁判の意味を問いたい。公判の焦点は何だったか。それはひとえに、民主主義の根幹を成す言論、報道の自由が韓国に存在するか、にあった。裁かれたのは、韓国である」と「主張」で掲載した。
民主主義社会の根幹である言論を守り、批判、論評の自由を確保するのは鉄則だろう。その点では筆者はまったく異論はない。
しかし、加藤前支局長のコラムを読むと、掲載された内容については大いに疑念がある。今回の判決では、韓国の法律に基づけば、名誉棄損は成立しないという判決だったというういだけで、仮に日本の刑法に基づけば名誉棄損は成立していると考えるのが合理的だろう。産経新聞のコラムは日本語で掲載され、日本国内で報道された。メディアとしての責任は、日本の国内の法体系や倫理で検証されなければならない。
産経新聞は、「言論の自由は守られた」と胸を張るのには、筆者は相当違和感を覚える。メディアとして責任は本当に果たされていたのだろうか。≪韓国検察に猛省求める≫としているが、産経新聞も「猛省」する必要があるのではなかろうか。


加藤前ソウル支局長の記事は?
 産経新聞の記事(12月17日)の表現を引用すると「304人の死者・行方不明者を出したセウォル号沈没事故当日の昨年4月16日、(1)朴大統領の所在が分からなかったとされる7時間がある(2)その間に、朴大統領が元側近の鄭(チョン)ユンフェ氏と会っていたとの噂がある(3)そのような真偽不明の噂が取り沙汰されるほど、朴政権のレームダック(死に体)化は進んでいるようだ-というのが内容」である。

 以下にその要旨を記載しよう。

 「朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?」(要旨)
 旅客船事故当日の4月16日、朴大統領が7時間にわたって所在不明となっていたとする「ファクト」が飛び出し、政権の混迷ぶりが際立つ事態となっている。
 7月7日の国会運営委員会に、大統領府秘書室長の姿があった。政府が国会で大惨事当日の大統領の所在や行動を尋ねられて答えられないとは…。韓国の権力中枢とはかくも不透明なのか。
 こうしたことに対する不満は、あるウワサの拡散へとつながっていった。朝鮮日報の記者コラムである。「大統領をめぐるウワサ」と題され、7月18日に掲載された。
 証券街の関係筋によれば、それは朴大統領と男性の関係に関するものだ。
 ウワサの真偽の追及は現在途上だが、コラムは背景を分析している。『大統領個人への信頼が崩れ、あらゆるウワサが出てきているのである』
 朴政権のレームダック(死に体)化は、着実に進んでいるようだ。」
 (2014年8月3日に産経新聞ウェブサイトに掲載  出典 朝日新聞 2015年12月18日)

日本の裁判所では「名誉毀損」をどう考えているか?
 日本の刑法では、「第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する」と定められている。
 刑法で定められている犯罪なので、逮捕される可能性もあるし、懲役刑を科せられる可能もある。
 また民法でも定められていて、名誉毀損が成立した場合は損害賠償請求の対象となる。
 但し現実には、名誉毀損を巡る争いは日本も含めて世界の先進国では、民事上の損害賠償で解決を図るのが主流で、刑事罰が適用されることはほとんど無い。

 その一方で、憲法が保障する基本的人権の主要な一部である「表現の自由」や民主主義の基礎である「国民の知る権利」をどう担保するかも極めて重要である。
 名誉毀損の法体系でも、「表現の自由」や「国民の知る権利」については十分配慮している。
「公共の利害に関する場合の特例」である。

「(公共の利害に関する場合の特例)
第二百三十条の二 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。

3 前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。」


 新聞や雑誌、テレビなどのメディアが報道する場合に、要件を満たせば「名誉毀損」が「免責」されるという条文である。
 報道や論評、批判などの「言論の自由」を保証しようとするのがその目的である。
 法的な解釈としては、「違法性の阻却」されている。本来は違法性が存在するが、一定の要件を満たせば違法性は阻却され、免責されるという意味である。

◆ 名誉毀損の「違法性の阻却」の3要件
(1) 報道が公共の利害に関する事実を伝えていること=「公共性」
(2) 報道の目的が専ら公益を図るものであること=「公益性」
(3) 報道内容が真実であると証明されること。また、この証明がない場合でも、報道時点で、メディア側にその内容を真実と信じるだけの相当の理由があったこと =「真実性」
 この「違法性の阻却」の3要件から「産経新聞の記事」を検証してみよう。
 今回の裁判は、韓国内で行われたので日本国内は関係ないとは決して言えないだろう。産経新聞は、日本国内で発行される新聞で、記事を読んだのは日本の読者がほとんである。日本国内で名誉毀損がどのように扱われているか、検証することは意味があるだろう。

「公共性」「公益性」は認められるか
 セウォル号沈没事故の対応をきっかけに、「朴政権のレームダック(死に体)化は、着実に進んでいるようだ」とコメントする記事は、単なる政治家の私生活などを伝えるゴシップ記事とは違い、細かな表現はともかく、全体として政治コラムになっているという印象である。「証券街の関係筋によれば、それは朴大統領と男性の関係に関するものだ」という表現は、「公共性」「公益性」があるかどうかは判断が分かれるところだが、「朴政権の混迷ぶり」を伝える記事の中で、ファクトの一つとしてストリーに密接に結びついているので許容に範囲に入ると思える。ソウルの裁判所でも記事の「公共性」「公益性」も認めた。
「真実性」は認められない!
 問題は、「旅客船事故当日の4月16日、朴大統領が7時間にわたって所在不明となっていたとする「ファクト」が飛び出し、政権の混迷ぶりが際立つ事態」にとなったとし、その「ファクト」として、「大統領をめぐるウワサ」と題された朝鮮日報のコラムを引用して、「証券街の関係筋によれば、それは朴大統領と男性の関係に関するものだ」と記述した点である。
 朝鮮日報のコラムを引用したにしても「うわさ」で記事を書いている。
 日本の名誉毀損の「違法性の阻却」の要件に「真実性」の証明が定められていて、「報道内容が真実であると証明されること。また、この証明がない場合でも、報道時点で、メディア側にその内容を真実と信じるだけの相当の理由があったこと」が求められている。
 産経新聞の記事が掲載された当時、記者がその内容を「真実と信じるだけの相当の理由」が存在していたかどうかがポイントである。
 しかし、「相当の理由」は「うわさ」である。「うわさ」は「真実と信じるだけの相当の理由」として認められないのは間違いないだろう。
 「うわさ」と注釈をつけても、「公然と事実を摘示」したことには変わりはない。東亜日報に記事を引用と記載したところで、免責にはならないのは当然だ。
 結論を述べると、「うわさ」で書かれた記事は「真実性」の要件を満たさないので、「違法性の阻却」は認められず、名誉毀損が成立するのである。
 産経新聞の記事は無罪ではなくて、名誉棄損の罪に問われるのである。
 仮に国内の新聞が安倍首相を「うわさ」を元にプラーベートな事柄を批判したらどうなるかを想像して欲しい。
 朴大統領は韓国の元首、外国の元首を「うわさ」で批判するのはメディアの倫理として如何なものか。
 公判でも記事で書かれた「うわさ」が事実かどうか争われている。
 2015年3月、裁判長は公判で、元側近の男性らの証言や大統領府への出入記録などから朴大統領と男性は事故当日には会っていないとの見解を示した。加藤前ソウル支局長も、2015年4月、産経新聞に手記を掲載し、この見解に「異を唱えるつもりはない」として認めている。 つまり「事実」ではなかったことが明らかになっているのである。
 ちなみに、産経新聞の記事の引用元になった朝鮮日報は、名誉毀損に問われていないのは明らかに不公正である。日本のメディアを狙い撃ちにしたと思われても致し方ないだろう。

 新聞や雑誌、テレビなどのメディアの「報道の自由」と「国民の知る権利」を守るために、名誉毀損に関して「違法性の阻却」という“特権”をメディアは与えられている。それだからこそメディアに課せられた責任は重い。その重みをしっかり自覚し、報道の倫理を守らり、国民からの信頼感を維持しなければならない。「報道の自由」を守る責任はメディア側にもある。
産経新聞は検証員会を設置し、この問題の経緯を冷静に検証する必要があると思う。「うわさ」で記事を書いた記者の責任やその記事を掲載したメディアの責任は問われるべきだろう。
民主主義と「報道に自由」はメディア側で守らなければならない。




2015年12月19日
Copyright (C) 2015 IMSSR

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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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安保関連法成立 世論調査 新聞・テレビ・通信社各社比較

2015-09-24 09:44:59 | 評論
安保関連法成立 世論調査

メディア リテラシー “Media Literacy”
新聞・テレビ・雑誌 メディア・ウォッチドック “Media Watchdog”
~“真実”と“正義”はどこに~


 集団的自衛権の行使を可能にすることなどを盛り込んだ安全保障関連法が、19日未明の参議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党と次世代の党などの賛成多数で可決され、成立した。戦後日本の安全保障政策は、歴史的な大転換をした。

 新聞、テレビ各社は、この安全保障関連法の成立を世論はどう受け止めたか、安倍内閣の支持率がどうなったのか、19日、20日で世論調査を行い、21日に紙面やTVニュースで、いずれも速報した。
 NHKニュースでは、世論調査を実施せず、安全保障関連法の成立に関する世論の動向を伝えていない。

 9月21日のNHKニュースの“看板”、「ニュース7」の項目を見よう。
 「ニュース7」は、NHKのニュースに中でも“特別”な地位を与えられているNHKを代表するニュースだ。
 「ニュース7」の“見出し”は、「この夏の猛暑」、熱中症になる人が相次ぎ、「認知症」の高齢者の搬送が相次いだというニュースである。
 続いて下記のようなニュース項目を伝えている。

▼ 「埼玉・熊谷 6人殺人事件」 
    逮捕状の男 前橋から電車で移動
▼ 「電動車いす 介護ベッド 高齢者の使う介護用品」
     5年間で49人死亡
▼ 「熱中症で搬送 49万8千人(全国)」
     その半数が65歳以上の高齢者
▼ 「関東・東北豪雨」
     復旧に向けた動き進む
▼ 「枯れ木も山のにぎわい」
     文化庁の行った国語調査 誤って理解している人 半数近く
▼ 「原発運転の未経験者」
     川内原発で約40% 安全のために人材確保課題に
▼  フラッシュ・ニュース
「難民10万人受け入れ アメリカ拡大を表明」
「フォルクスワーゲン謝罪 米の排ガス規制で不正指摘」
「佳子さま慰霊碑に献花」
「宮沢賢治をしのぶ会」
▼ スポーツ
「ラグビー・ワールドカップ 日本代表練習」
「大相撲結果」
「プロ野球」
▼ 天気情報

「ニュース7」では安全保障関連法関連のニュースは何も伝えていない。
一方、「ニュースウオッチ9」では安全保障関連法案関連ニュースを取り上げている。
安保関連法は、日本の安全保障政策の歴史的な大転換という認識には異論はないだろう。その安保関連法成立にあたって、世論がどう受け止めたかは、最も重要な情報である。週末に世論調査を実施して、安全保障関連法の成立を世論はどう受け止めたか、安倍内閣の支持率がどうなったのか、月曜日の21日に結果を速報するのがメディアの“責務”だろう。とりわけ安倍内閣の支持率がどうなったか、政治家だけではなく、国民全体が注視していた。安倍政権に厳しい評価が出るのを勘案して、世論調査を実施するのを見送ったのではないかという疑念さえ生まれる。
NHKは9月14日の安全保障関連法の採決がヤマ場を迎えた時に、世論調査を実施している。結果は、「安倍内閣への支持率は6ポイント上昇して43%」、三か月ぶり“支持しない”を上回ったと報道している。参議院の“強硬採決”後、安倍内閣の支持率がどうなったかは重要な情報ではないと思ったのだろうか。定例で実施している世論調査で報道すれば充分というニュース判断だったのだろう。お粗末な編集判断だ。
「日本の安全保障政策の歴史的な大転換」の“節目”なのである。
「この夏の猛暑」が「ニュース7」の“見出し”ではない。「枯れ木も山のにぎわい」のニュースに方がニュース・バリューがあるのか? ニュース7の“看板”が泣いている。
国民が知りたがっている情報に答えようとしない報道機関はジャーナリズムとして“資格”がない。
NHKは、5月26日に始まった安全保障関連法案の衆院本会議での代表質問などを中継しなかった。「必ず中継するのは施政方針演説などの政府演説とそれに関する代表質問というのが原則」と説明する。さらに7月15日の衆院平和安全法制特別委員会の締めくくり質疑を生中継せず、視聴者から抗議や問い合わせが相次いだ。そして、また“失態”を犯した。

 これに対して、新聞各社は、いずれも週末の19日と20日に世論調査を実施して、安保関連法成立にあたって、世論がどう受け止めたか、安倍内閣の支持率はどうなったのかを、21日の紙面で速報している。

▼ 朝日新聞
  「安保法、反対51%・賛成30%」
安保関連法に「賛成」は30%、「反対」は51%で、法律が成立してもなお反対が半数を占めた。国会での議論が「尽くされていない」は75%、安倍政権が国民の理解を得ようとする努力を「十分にしてこなかった」は74%に上った。
 内閣支持率は35%(9月12、13両日の前回調査は36%)で、第2次安倍内閣の発足以降、最も低かった。不支持率は45%(同42%)だった。

▼ 毎日新聞
「安保成立『評価せず』57% 強行「問題だ」65%」
成立を「評価しない」との回答は57%で、「評価する」の33%を上回った。参院平和安全法制特別委員会で与党が強行採決したことに関しては「問題だ」が65%を占めた。安倍内閣の支持率は8月の前回調査より3ポイント増の35%、不支持率は同1ポイント増の50%。不支持が支持を上回る傾向は変わっていない。

▼ 読売新聞
「内閣支持41%、再び不支持を下回る…」
安倍内閣の支持率は41%で、前回調査(8月15~16日)から4ポイント下落し、不支持率は51%(前回45%)に上昇した。安保関連法の衆院通過後の7月調査で、内閣支持率は2012年12月の第2次安倍内閣発足以降、初めて不支持率を下回った。前回調査では支持率と不支持率が並んでいたが、今回は再び逆転した。
 安保関連法の成立を「評価しない」人は58%、「評価する」は31%だった。安保関連法の内容について、政府・与党の説明が不十分だと思う人は82%に達した。内閣支持率の低下は、安保関連法への理解が進んでいないためとみられ、政府には法成立後も、丁寧な説明が求められている。
 安保関連法の成立で、抑止力が高まると答えた人は34%で、「そうは思わない」は51%だった。

そして内閣支持率が4%と小幅な下落にとどまったことについて、記事では「政府・与党内には安堵感も広がった。安倍首相周辺は『支持率の下げ幅は想定の範囲内だ。経済対策で反転攻勢に出る』と語った。首相も20日、周辺に『次は経済だ』と述べた」としている。
 また「民主党の岡田代表は秋田市で安保関連法について、「『廃止にすべきだ』という民意がはっきりした」と記者団に述べ、政府・与党批判を続ける考えを示した。党幹部は「支持率は10ポイントくらい下がるとみていた。意外だ」と語った。党内には「反対論に終始し、対案を出せなかった。国民の支持が広がらなかった」(保守系議員)との危機感もある」と伝えている。

▼ 産経新聞・FNN
「安保法制整備は7割が『必要』でも、安保法案成立『評価しない』が6割」
産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が19、20両日に実施した合同世論調査によると、集団的自衛権の行使を限定的に可能にする安全保障関連法の成立について、56・7%が「評価しない」と答えた。「評価する」は38・3%だった。一方、日本の安全と平和を維持するための安保法制整備については、69・4%が「必要」と答え、「必要ではない」は24・5%にとどまった。
  安倍内閣の支持率は42・6%で、前回調査(12、13両日実施)より0・9ポイント低下。不支持率は47・8%で3・3ポイント上昇した。
 記事の“見出し”は、「安保法案成立『評価しない』が6割」が後ろにきて、「安保法制整備は7割が『必要』」が前面に出しているのが、いかにも安保関連法を支持している産経新聞らしい書き方である。
 世論調査には、設問の仕方によって、回答の内容が著しく変わるので、回答結果の数字だけでなく、「設問」を検証することも必須である。
 「安保法制整備は7割が『必要』」の調査項目の設問は、「あなたは、日本の安全と平和を維持するために、安全保障法制を整備することは、必要だと思いますか、思いませんか」であある。今回の安保関連法案について聞いているのではなく、“一般論”として「安全保障法制の整備」の必要性について聞いているのである。次元が違う設問の設定である。筆者は、やや“公正”な姿勢を欠いた世論調査と思うが……。

▼ 日本経済新聞
「内閣支持40%に低下、安保法54%評価せず」
 安倍内閣の支持率は40%と、8月末の前回調査を6ポイント下回った。不支持率は47%で7ポイント上昇し、再び支持、不支持が逆転した。安保関連法の今国会成立を「評価しない」は54%で「評価する」は31%にとどまった。

▼ 共同通信
 「安保法の審議不十分79%」
 共同通信社が19、20両日に実施した全国緊急電話世論調査によると、安全保障関連法に「国会での審議が尽くされたとは思わない」の回答は79・0%、「尽くされたと思う」は14・1%だった。安保法への安倍政権の姿勢に関し「十分に説明しているとは思わない」は81・6%、「十分に説明していると思う」は13・0%で、政府への根強い不満が浮き彫りになった。内閣支持率は38・9%で8月の前回調査から4・3ポイント下落、不支持率は50・2%。
 安保法成立で自衛隊が戦争に巻き込まれるリスクが「高くなる」は68・0%。「変わらない」は27・1%、「低くなる」は2・5%だった。

また関連記事で「安倍政権は『内閣支持率の30%台後半への下落は想定内だ』(幹部)と冷静に受け止める一方、強い反対世論が持続すれば、来年夏の参院選に影響しかねないと警戒」と伝えている。

 テレビ放送各社の対応はどうだったのだろうか。
 9月21日、テレビ各社は各局とも、週末に世論調査を実施し、ニュースで安全保障関連法案成立後の世論の動向について速報している。

▼ 日テレニュース24
「緊急世論調査 安保成立『評価せず』58%」
 
日本テレビと読売新聞が19・20日に行った緊急世論調査で、安保関連法が成立したことに「評価する」が31%だったのに対して、「評価しない」が58%に上った。また82%の人が政府・与党が安保関連法の内容を国民に十分説明したと思わないと答えた。

▼TBSニュース(JNNニュース)
「安全保障関連法、76%が『審議不十分』 JNN緊急世論調査」

集団的自衛権の行使を可能にすることなどを柱とする安全保障関連法が19日成立しましたが、国会での審議について、76%の人が「不十分」と考えていることが、JNNの緊急世論調査でわかりました。
安保関連法が、19日、成立したことを受けて、JNNは緊急世論調査をこの土日に行いました。
 それによりますと、安保関連法が成立するまでの国会での審議について、「十分だった」と答えた人が16%、「不十分だった」と答えた人が76%でした。また、安保関連法が成立したことについて、「評価する」と答えた人が33%、「評価しない」と答えた人が53%でした。
 安倍内閣の「支持率」は2週間前の前回調査より0.8ポイント下がって46.3%、「不支持率」は前回より0.7ポイント上がって52.5%でした。

▼テレビ朝日ニュース(ANNニュース)
内閣支持率が低下 約8割が「安保法の説明不十分」
(2015/09/21 11:46)

安倍内閣の不支持率が支持率を再び上回りました。安全保障関連法の成立を受けて行ったANNの緊急世論調査で、安倍内閣の支持率は3ポイント近く下げ、37.1%でした。一方、不支持率は7ポイント近く上昇し、45.4%でした。第2次安倍内閣が発足してからこれまでに支持率と不支持率が逆転したのは、衆議院で安保関連法が可決された7月以来で、先月、いったん持ち直した支持率は再び過去最低の水準になっています。

 安保関連法に賛成の人は先週に比べて2ポイント上回って27%で、反対の人は4ポイント下がって50%でした。また、安保関連法について、依然として8割近くの人が「安倍内閣の説明は不十分だ」としています。一方、民主党など法案に反対した野党が2日半余りにわたって採決の引き延ばしを図ったことについては、6割近くの人が「評価しない」としています。また、政党支持率では自民党が7ポイント余り下げて、第2次安倍内閣発足以来、初めて4割を切りました。

▼フジテレビニュース(FNNニュース)
安保関連法の整備「必要」と考える人はほぼ7割に
09/21 11:57

FNNがこの週末に行った世論調査で、安全保障関連法の整備が「必要」と考える人は、ほぼ7割に達する一方で、審議が尽くされたと思わない人が、8割近くにのぼることが明らかになった。
調査は、9月19日と20日に、電話調査(RDD)で行われ、全国の有権者1,000人が回答した。
安倍内閣を支持する人は42.6%、支持しない人は47.8%で、先週の調査に比べて、不支持率がやや増えた。
焦点の安全保障関連法が、この国会で成立したことについて、「評価しない」と答えた人は56.7%と、6割近くに及ぶ一方、「評価する」と答えた人も38.3%と、4割近くに達した。
また、安全保障法制の必要性については、ほぼ7割にあたる69.4%の人が「必要」と答え、「必要ではない」と答えた人(24.5%)を大きく上回った。
国会での審議について、十分に尽くされたと「思わない」と答えた人が、ほぼ8割の78.4%に達し、一方で、野党は、役割を果たしたと思うかとの質問に、ほぼ8割の人が「思わない」と答えた(76.1%)。
また、委員会採決の混乱の責任について、6割近い人が「与党・野党両方にある」と答えた(57.2%)。
安保への反対集会やデモについて、「共感しない」と答えた人が50.2%で、「共感する」と答えた人(43.1%)をやや上回る結果となった。


 民放各社の主要ニュース番組も、安全保障関連法成立後の世論の動向等についていずれも取り上げている。
 
▼ 日本テレビ 「情報ライブ ミヤネ屋」
「拍手と怒号の中 国民・世界はどう見た?」
週末の緊急世論調査の結果を報道

▼ フジテレビ「みんなのニュース」
「国会不信さらに “暴行疑惑”も浮上 国会混乱の余波」
山梨でゴルフを楽しむ安倍総理 61回目の誕生日
国会前の雑感
FNN世論調査の結果も報道

▼ テレビ朝日「報道ステーション」
“選挙権18才”で高校生は 安保法成立後も続くデモ
山梨でゴルフを楽しむ安倍総理
野党の動き
緊急世論調査の結果
元陸軍通信兵の思い
コメンテーター 木村草太氏

▼ TBS「ニュース23」
国会審議「不十分」が76%
国会前の反対派のデモ
週末に各地で開かれた安保関連法案反対のデモや集会
世論調査の結果

▼ 日本テレビ「NEWS ZERO」
政権発足1000日=誕生日に 節目にゴルフ 安倍首相
世論調査の結果
今後の政治日程


 “世界に冠たる「ニュース7」”と自負しているNHK、その“看板”はどこにいったのか?
 視聴者が知りたがっているニュース情報に目をつぶっては決してならない。
 安保関連法が成立したからといって、日本の安全保障を巡る課題は決して終結していない。共同通信の世論調査では、安全保障関連法に「国会での審議が尽くされたとは思わない」の回答は79・0%、安保法への安倍政権の姿勢に関し「十分に説明しているとは思わない」は81・6%、安保法成立で自衛隊が戦争に巻き込まれるリスクが「高くなる」は68・0%と、国民はこの法案に納得していない。NHKは実施していないが、各社の世論調査でもほぼ同様の結果が出ている。
 こうした国民の声に、NHKはどう答えるのか。安全保障関連法成立後のフォローに真摯に取り組む姿勢をどう示すのか? ジャーナリズムとしての真価がまさに問われている。





2015年9月21日
Copyright (C) 2015 IMSSR

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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
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大阪都構想 住民投票 出口調査 各社比較

2015-05-21 18:28:27 | 評論
大阪都構想 住民投票 出口調査 各社比較
 
■ 出口調査
 出口調査とは、選挙結果を予測するため、投票所の出口で、投票した人に直接投票行動を聞く調査の手法である。
選挙情勢調査とは違って、実際に投票した人に、“投票結果”を聞くので、選挙結果を予測する場合に、確度の高いデータとして、放送局の開票速報番組などで、利用される。
最近の開票速報番組では、NHK、民放ともに、投票終了時間を過ぎると、開票がほとんど進んでいない段階で、出口調査の結果から、一斉に“獲得議席”予想を競って出す。
選挙情勢調査の最大の問題点は、有権者がどんな意識をもっていることは把握可能だが、調査対象になった人が、実際に“投票所”に行くかどうかが分からないことである。最近の選挙結果を左右する「支持政党なし」のいわゆる無党派層の投票率は、毎回、大きく変動する。事前の選挙区情勢で“優勢”というデータが出ても、その人が棄権する可能もある。一方で、投票率が予想以上に上がると、事前の情勢では、“苦戦”とされた候補者が、当選する場合もある。
 そこで、出口調査の結果は、“信頼”できるとして、重要視されているのである。
 その一方で、出口調査を行う投票所のサンプリングのやり方や投票所で面接をして投票結果を聞くという調査手法が調査対象者にプレッシャーを与えることで、調査結果はバイアスをかけて評価しなければならいという意見もある。
 また、期日前投票や不在者投票がカウントされないという欠点もある。特にここ数年増加している不在者投票は、接戦になった場合には、投票結果を左右する場合も生じるだろう。大阪の住民投票の場合、投票総数の約26%、約37万票が、出口調査の対象外であった。
“誤差”の幅も相当考慮する必要があるだろう。
 しかし、これまでの総選挙や、参議院選挙では、出口調査を元にした当落予想は、概ね、“好結果”を獲得していた。
 今回の「大阪都構想住民投票」の場合は、出口調査はどうだったのだろうか。


■ NHKの出口調査
 賛成・反対 ほぼ同数
(投票所40カ所で投票を終えた4400人余から出口調査を行い、約67%に当たる2991人から回答)
  2015年5月17日 NHKニュース


■ 産経新聞 関西テレビ
 出口調査は「賛成51・7%」…せめぎ合う賛否、最終盤に賛成派追い上げ
賛成 51.7% 反対 48.3%
「これまでの世論調査では、反対が賛成を上回る結果が出ており、午後9時から始まる開票作業では、賛否は拮抗(きっこう)するとみられる。
 調査結果などからは、橋下徹大阪市長率いる大阪維新の会を中心とする賛成派が最終盤に激しく追い上げていることがわかり、有権者の約17%が投票した期日前・不在者投票の結果も加えると、賛否が競り合うと予想され、大勢判明はずれ込む可能性もある」
(調査は共同通信社、毎日新聞社、毎日放送、関西テレビと協力して行われ、投票を終えた有権者2781人から回答)
2015年5月17日 産経新聞


■ 朝日新聞・ABC調査
 20・30代は6割賛成 都構想 朝日・ABC出口調査
「今回の住民投票で、朝日新聞社と朝日放送(ABC)は17日、投票を済ませた有権者を対象に出口調査を実施した。賛成は20~30代にとりわけ多く、反対は70歳以上に多かった。全体では男性の59%が賛成だった(女性については記述がないので不明 筆者)。賛否の理由として最も多かったのは、賛成が「行政の無駄減らし」、反対が「住民サービス」だった。
(大阪市内60カ所の投票所で実施した。有効回答は2625人)」
2015年5月17日 朝日新聞


■ 日本テレビ・読売新聞調査
「大阪都構想」出口調査 賛成と反対きっ抗
 「いわゆる『大阪都構想』の賛否を問う住民投票は17日午後8時に締め切られた。出口調査の結果、「賛成」と「反対」が激しく競り合っている。
 読売テレビの出口調査によると、期日前投票では反対が優勢の一方、17日の調査では一転、賛成が優勢とねじれていて、賛否は極めて拮抗(きっこう)している」
 (2015年5月17日 日本テレビNEWS24)
 民主、公明、共産各党の支持層は反対が大半を占めた一方、自民党支持層では賛成と反対が割れたことがわかった。
 国政の支持政党別でみると、橋下徹大阪市長が最高顧問を務める維新の党支持層は94%が賛成。一方、民主、公明、共産各党の支持層は反対がいずれも8割近くだった。これらに対し、自民党支持層では賛成45%、反対52%、無党派層は賛成51%、反対47%とそれぞれ賛否が分かれた
(2015年5月17日 読売新聞)


■ TBS・JNN調査
大阪都構想」住民投票、出口調査は賛否がきっ抗
「大阪市を廃止・分割し、大阪府と再編するいわゆる「大阪都構想」の是非を問う住民投票が行われ、JNNの出口調査では賛成・反対がきっ抗しています。JNNが行った当日の出口調査では、賛成が反対を3ポイントほど上回っています(賛成51.7% 反対48.3%)。支持政党別では、維新の党の支持層では賛成が97%と反対を圧倒していますが、都構想に反対する自民党の支持層でもおよそ42%が賛成しています。民主党、公明党、共産党支持層では、いずれも反対が賛成を大きく上回っています」
(2015年5月17日 TBSニュース)

■ 事前の情勢と世論調査
 投票日前の事前の世論調査では、“反対派”が圧倒的に“優勢”だった。
 2015年3月の世論調査では、“賛成派”が43.1%、“反対派”が41.2%で、“賛成派”が上回っていたが、4月の世論調査では、“反対派”が47.5%、“賛成派”が36.7%と10%以上の差をつけて逆転した。5月の世論調査でも“反対派”47・8%、“賛成派”39.5%と8%の差がついていた。大阪の自民党が、民主党や共産党と、“前代未聞”の“共闘体制”を組み、5月10日には3党合同街頭演説会を開き注目を集めた。
 しかし、政治生命をかけた橋下市長の激しい巻き返しで、一気に差がつまったと言われている。 維新の会は運動費を5億円も投入したといわれている。最終盤になって、“賛成派”の勢いが増しているのを見て、各メディアや政治評論家は賛成派”が“逆転”したのではないかという見方をしていたようである。


■ 予想を超えた投票率
 焦点の投票率は66.83%と、大阪市長・府知事のダブル選挙の投票率60.02%を大きく上回り、予想以上の関心の高さがあったのも衝撃的だった。投票率を嵩上げしたのは、夕方から8時までの締め切り時間間際の投票者の急増で、とりわけ無党派層の多い若い層が列をなしていたという。事前の世論調査では、年齢別に見ると、20台や30台の若い層では、“賛成派”がかなり優勢であった。
 こうした状況の中で、開票日の夜に「Mr.サンデー」の開票速報番組に出演していた田崎史郎時事通信解説員は、「維新の会や政府関係者は何とかいけたのではないかと今の段階では見ている」とコメントしている。
 とにかく、大差で“反対派”が優勢だった情勢が、終盤で一気に変わったようだ。



■ 各社の出口調査をどう見る
 各社の出口調査では、産経新聞・関西テレビでは、「“賛成派”僅差で優勢」、朝日新聞・ABCでは、集計した数字は不明だが、「“賛成派”逆転の可能性」、NHKは、「ほぼ互角」、また、日本テレビ・読売テレビでは、「“賛成派”激しく追い上げ 賛否は拮抗」、TBS・JNNは、「“賛成派”僅差で上回る」と読めた。
 いずれにしても、ニュアンスの違いは多少あるが、各社とも、大激戦で最後まで勝敗はもつれるとい見方であった。


■ 期日前投票が重要に
 出口調査は、期日前投票や不在者投票は対象外である。今回は、期日前投票が35万9203票、不在者投票が9014票、合わせて約37万票、投票総数の26.4%という膨大な票の行方が分からないのである。
 読売テレビでは、期日前投票の出口調査も実施していたとしているが、調査の内容や結果の詳細は不明である。
 結局、出口調査だけでなく、事前の世論調査や情勢取材を丹念に分析して、投票結果を予想しないとミスリードが起きる懸念が大きい。
 今回の住民投票のように、情勢が投票日の当日までも激しく動いている場合は、“票読み”が極めて難しい。


■ 開票状況とメディアの報道
 開票は午後8時から大阪市内24の開票所で行われた。開票率80%の段階では、約1万票の差をつけて“賛成派”が“反対派”を上回っていて、やや“有利”であった。しかし、開票率89%では、僅差で“反対派”が逆転し、90%になると“反対派”が“賛成派”に3000票の差をつけてリード、差は少しずつ広がり始めていた。
 結果は、反対 70万5585人(50.38%)、賛成69万4844人(49.62%)、僅差で反対が賛成を上回った。
NHKは、午後10時34分に「反対多数確実」を伝えたが、「この時点で開票率81%。賛成は57万1395票、反対は56万5093票で、賛成票が6302票上回っていた」(朝日新聞 2015年5月17日)という。
大接戦の中で、まだ“賛成派”が“反対派”をリードしている段階で、見事な“票読み”である
 一方、フジテレビは、「Mr サンデー」内で、否決のテロップを流したのは、午後10時35分で、NHKの1分後だった。


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2015年5月18日
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廣谷  徹
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憲法改正 世論調査 各社比較 メディアリテラシー

2015-05-20 10:40:26 | 評論
「憲法改正」 世論調査の“読み方”

 憲法記念日を迎えると新聞各社は相次いで世論調査を実施し、その結果を記事にする。今年の世論調査の最大のテーマは勿論、「憲法改正」だ。

▼ 朝日新聞  改憲不要40% 必要 43%
▼ 読売新聞  改正する方がよい51% 改正しない方がよい46%
▼ 毎日新聞  改正すべきだと思わない55% 改正すべきだと思う27%
▼ 産経新聞  憲法改正賛成40.8% 反対47.8%
▼ 日経新聞  現状のままでよい44% 改正すべきだ42%
▼ NHK    改正する必要があると思う」は28%
          改正する必要はないと思う」は25
「憲法改正」支持が上回ったとしているのが、読売新聞とNHK、「護憲」が上回ったのが、朝日新聞、毎日新聞、日経新聞だった。
世論調査の場合、“設問の文言”や“設問の仕方”が違うと、データに“差”が生じるのは、経験的に解っているおり、今回の調査でも各紙、表現などが微妙に違っているので“差”がでるのは当然かもしれない。
 しかし記事にする場合は、数字の意味をしっかり読み解いて、読者に伝えなければならない。
また、ここ1年、「集団的自衛権」論議や「憲法改正」論議が焦点になって、かつてないほど「憲法」に関心が集まっている。
 各社の記事から世論調査の“伝え方”を検証してみよう。


■ 朝日新聞
改憲不要48%、必要43% 9条改正、反対63% 

 憲法記念日を前に朝日新聞社は憲法に関する全国郵送世論調査を実施し、有権者の意識を探った。憲法改正の是非を尋ねたところ、「変える必要はない」が48%(昨年2月の調査は50%)で、「変える必要がある」43%(同44%)をやや上回った。
  調査手法や質問文が異なり単純に比較できないが、憲法改正の是非は、中曽根内閣時代の1980年代の調査では、反対が賛成を上回っていた。次に改憲の是非を聞いた97年の調査以降は賛成が反対を上回ってきたが、安倍政権が憲法解釈を変えて集団的自衛権を使えるようにする議論を進めていた昨年の調査から再び逆転していた。
 また、憲法9条については「変えない方がよい」が63%(昨年2月は64%)で、「変える方がよい」の29%(同29%)を大きく上回った。女性は「変えない方がよい」が69%に及んだ。
<調査方法> 全国の有権者から3千人を選び、郵送法で実施した。対象者の選び方は層化無作為2段抽出法。全国の縮図になるように338の投票区を選び、各投票区の選挙人名簿から平均9人を選んだ。3月18日に調査票を発送し、4月27日までに届いた返送総数は2115。無記入の多いものや対象者以外の人が回答したと明記されたものを除いた有効回答は2052で、回答率は68
(2015年5月2日)

改憲不要48%、必要43% 9条改正、反対63% 朝日新聞社世論調査

 設問の表現は、「変える必要がある」、「変える必要がない」で、回答者にとっては“柔らか”表現である。結果は、「変える必要がない」が「わずかに」上回った。
97年以降は「改憲派」が反対を上回っていたが、安倍政権になって、憲法解釈を変えて集団的自衛権を使えるようにする議論を始めたり、憲法改正を唱え始めたりした昨年からは、「護憲派」が「改憲派」を逆転し始めたという。
このポイントは、憲法改正に対する民意をはかる上で、見逃せない重要なポイントであると思う。重要な指摘だ。


■ 読売新聞
憲法「改正する方がよい」51%…読売調査

 読売新聞社は、憲法に関する全国世論調査(郵送方式)を実施した。憲法を「改正する方がよい」と思う人は51%で、「改正しない方がよい」の46%を上回った。
政府が昨年7月に憲法解釈を見直す閣議決定を行い、集団的自衛権を必要最小限の範囲で行使できるようにしたことを「評価する」は53%で、「評価しない」は45%。 
昨年の閣議決定直後の緊急調査(電話方式)では、「評価する」は36%だった。調査方法が違うため単純に比較はできないが、その後の国会の議論などを通じ、理解が進んでいるとみられる。
戦争放棄などを定めた憲法9条については、「これまで通り、解釈や運用で対応する」が40%で最多。「解釈や運用で対応するのは限界なので、9条を改正する」は35%、「9条を厳密に守り、解釈や運用では対応しない」は20%だった。
(2015年3月22日)
憲法「改正する方がよい」51%…読売調査

 読売新聞の設問も、「改正する方がよい」、「改正しない方がよい」で、朝日新聞同様、“柔らか”な聞き方である。しかし、結果、「改憲派」51%と「護憲派」を上回り朝日新聞とは逆の結果となった。
 さらに、集団的自衛権を必要最小限の範囲で行使できるようにしたことを、「評価する」と答えた人が53%だったことを、「その後の国会の議論などを通じ、理解が進んでいるとみられる」としている。
 しかし、憲法9条については、「これまで通り、解釈や運用で対応する」、つまり「改正しなくて良い」とした人が40%と最多となったとしている。
 戦後70年、憲法制定から69年、確かに“時代”は大きく変わった。憲法が“時代”の変化に合わなくなった条文も随所に出始めている。憲法は「全文」、「天皇制」、「戦争の放棄」、「国民の権利及び義務」、「国会」、「内閣」、「司法」、「財政」、「地方自治」で条文が構成されている。
 戦争放棄だけが焦点をあてられているが、実は、戦争放棄以外の条文を見直すことは意義があると筆者は考える。
 「改正する方がよい」と答えた人は、戦争放棄以外の条文についての憲法改正を支持したのであろう。一方で、戦争放棄については、「改正しなくてよい」(これまで通り、解釈や運用で対応する)と答えた人が「最多」となっているのは、昨今の憲法9条改正論議が巻き起こっている中で、注目すべきだと思う。
 「憲法改正」、「集団的自衛権」、「戦争放棄」、3つの要素についての世論調査の結果についてのより丁寧な分析と解説が欲しかった。


■ 毎日新聞
毎日新聞世論調査:9条改正、反対55% 昨年より4ポイント増

 毎日新聞が憲法記念日を前に実施した全国世論調査によると、憲法9条を「改正すべきだと思わない」が55%で、「思う」の27%を大きく上回った。昨年4月の調査では「改正すべきだと思わない」51%、「思う」36%だった。政府・与党が集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案の準備を進める中、9条改正慎重派は増えている。(2面に質問と回答)
 一方、憲法を「改正すべきだと思う」は45%、「思わない」は43%でほぼ拮抗(きっこう)した。
 ◇調査の方法
4月18、19日の2日間、コンピューターで無作為に数字を組み合わせて作った電話番号に、調査員が電話をかけるRDS法で調査した。福島第1原発事故で帰還困難区域などに指定されている市町村の電話番号は除いた。有権者のいる1704世帯から、1015人の回答を得た。回答率は60%。
(2015年5月4日)
毎日新聞世論調査:9条改正、反対55% 昨年より4ポイント増

 毎日新聞の設問は、他の各社とは違って、「憲法改正」ではなく、「第9条戦争放棄」について具体的に絞って設問を設定した。表現は「改正すべきだと思わない」、「思う」で、“きつい”表現となっている。結果は、「思わない」支持55%で、「思う」の27%で、「護憲派」が大きく上回っている。毎日新聞も、朝日新聞と同様に「政府・与党が集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案の準備を進める中、9条改正慎重派は増えている」と分析している。
 「第9条戦争放棄」に絞っているので、「改憲派」の数字が、朝日新聞や読売新聞に比べてかなり少なくなっている。
 また「来年の参院選で改憲を争点として重視するかどうかという問いでは、「重視する」が56%、「重視しない」が33%だった。憲法を「改正すべきだと思う」層と「思わない」層のいずれも「重視する」が60%を占めており、改憲への賛否が選挙結果にどう影響するかは現時点で見通せない」としている」とし、来年の参院選が注目される点を指摘した。


■ 産経新聞
【本誌・FNN合同世論調査】
未来志向の戦後70年談話を60%が「評価」


 憲法改正の賛否をたずねたところ、賛成は40・8%で、反対は47・8%。集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法案の今国会成立については、賛成が36・2%と前回3月の調査よりも5・1ポイントアップした。反対は49・5%だった。政府が目指す米軍普天間飛行場(宜(ぎ)野(の)湾(わん)市)の名護市辺野古移設については、反対が44・7%で賛成の39・9%を上回った。
(2015年4月27日)
未来志向の戦後70年談話を60%が「評価

 産経新聞は、世論調査の結果を伝える記事の見出しは、「未来志向の戦後70年談話を60%が『評価』」である。
「安倍晋三首相が今年夏に発表する戦後70年談話に「植民地支配と侵略」などの文言を盛り込むことにはこだわらず、未来志向の談話を出したいとの考えを示していることについて、60・1%が「評価する」と答えた。「評価しない」が29・8%だった」という今回の世論調査の結果を伝えている。
あれ! 「戦後70年談話」が記事のリード?
この時期のタイミングの世論調査のターゲットは、憲法問題、憲法問題に関する結果と分析を記事にするのが“常識”だろう。
 後半に、憲法改正の賛否について、「賛成」40・8%、「反対」47・8%、集団的自衛権については、「賛成」36.2%、「反対」49.5%、辺野古移設問題については、「反対」44.7%、「賛成」39.9%という世論調査の結果を伝えている。
産経新聞の掲げる主張は、社説や論評記事から察するに、「憲法改正」、「集団的自衛権」、「辺野古移設」、いずれも“賛成”と見られている。
自らの主張と相反する“民意”が示されたことをどう見るのか? 結果に目をつぶらないで、丁寧に分析し、解説するのが新聞の責務だろう。


■ 日本経済新聞
憲法「現状維持」44%、改憲賛成を上回る 日経調査

 日本経済新聞社とテレビ東京が3日の憲法記念日を前に共同で実施した世論調査で、憲法について「現在のままでよい」が44%、「改正すべきだ」が42%だった。同様の方法で調査している2004年以降、わずかな差ながら初めて現状維持が改憲賛成を上回った。
改憲賛成は昨年より2ポイント低く過去最低。現状維持は昨年と並んで過去最高だった。
 「現在のままでよい」と答えた人に理由を複数回答で聞くと「平和主義が変質するおそれがある」が57%(昨年は48%)で最も多かった。「よほどのことがない限り改正すべきでない」が46%(同47%)、「現在のままで特に問題はない」が30%(同27%)で続いた。
 「改正すべきだ」と答えた人に「どのようにすべきか」を複数回答で尋ねると「二院制など国会のあり方を見直すべきだ」が47%(同58%)と最多。今回、新たに加えた「大災害時の政府や国会の対応を定めるべきだ」が42%で続いた。「戦争の放棄を定めた9条を見直すべきだ」(同34%)と「改正の要件を緩和すべきだ」(同28%)はともに29%だった。


(出典 日本経済新聞電子版 5月3日)

 集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更などを受け、大型連休明けには新たな安全保障法制の審議が始まる。自民党内では来年夏の参院選後に、改憲を発議(提案)する機運も出てきている。調査結果には、改憲を巡る一連の動きが影響した可能性がある。
 調査は日経リサーチが4月17~19日に全国の成人男女を対象に乱数番号(RDD方式)で電話で実施。有権者のいる1552世帯から1026件の回答を得た。回答率は66.1%
(2015年5月3日)
憲法「現状維持」44%、改憲賛成を上回る 日経調査

 日本経済新聞は、設問は、「現在のままでよい」、「改正すべきだ」と、「改正」のほうが“きつい”表現となっており、両者のバランスはあまり良くない。結果は、「護憲派」44%、「改憲派」42%と「護憲派」がわずかに上回った。
 この記事のポイントは、「(今年は)2004年以降、わずかな差ながら初めて現状維持が改憲賛成を上回った。改憲賛成は昨年より2ポイント低く過去最低。現状維持は昨年と並んで過去最高だった」と伝えた点だ。
 また、紙面掲載した図表がここ1年の変化の民意を見事に表現している。評価したい。
 また「改正すべきだ」と答えた人について、その内容を聞いたところ、「二院制など国会のあり方を見直すべきだ」が47%(同58%)と最多。「大災害時の政府や国会の対応を定めるべきだ」が42%。「戦争の放棄を定めた9条を見直すべきだ」(同34%)と「改正の要件を緩和すべきだ」(同28%)はともに29%」としている。
 「憲法改正」の民意が、戦争放棄より、「国会」や「災害」に寄せられていることが分かり、的確に分析した記事になっているのは評価したい。


■ NHKニュース
憲法改正 必要28% 必要ない25%

 3日は憲法記念日です。NHKの世論調査によりますと、今の憲法を改正する必要があると思うか聞いたところ、「改正する必要があると思う」は28%、「改正する必要はないと思う」は25%で「どちらともいえない」は43%でした。一方、憲法9条については「改正する必要があると思う」は22%、「改正する必要はないと思う」は38%で「どちらともいえない」は34%でした。
調査の概要
NHKは、先月17日から3日間、全国の18歳以上の男女に対し、コンピューターで無作為に発生させた番号に電話をかけるRDDという方法で世論調査を行い、2528人のうち、61%に当たる1551人から回答を得ました。
改憲への賛否
今の憲法を改正する必要があると思うか聞きました。
「改正する必要があると思う」が28%、「改正する必要はないと思う」が25%、「どちらともいえない」が43%でした。
NHKがおととしと去年のそれぞれ同じ時期に行った調査と比べると、おととしは「改正する必要がある」が「改正する必要はない」を大きく上回っていましたが、去年はふたつの回答がほぼ同じ割合となり、ことしもほぼ同じ結果となりました。

 憲法を「改正する必要があると思う」と答えた人に理由を聞いたところ、「時代が変わって対応できない問題が出てきたから」が79%と最も多く、「国際社会での役割を果たすために必要だから」が12%、「アメリカに押しつけられた憲法だから」が6%などでした。

 憲法を「改正する必要はないと思う」と答えた人に理由を聞いたところ、「戦争の放棄を定めた憲法9条を守りたいから」が67%と最も多く「多少問題はあるが、改正するほどのことはないから」が20%、「今の憲法がいい憲法だと思うから」が9%などでした。
憲法9条改正への賛否
「憲法9条」について改正する必要があると思うか聞きました。「改正する必要があると思う」が22%、「改正する必要はないと思う」が38%、「どちらともいえない」が34%で、「必要はない」という人が「必要」という人を上回りました。
 NHKがおととしの同じ時期に行った調査では、憲法9条の改正が「必要」と「必要はない」という人の割合はほぼ同じでしたが、去年の調査では、「必要はない」という回答が「必要」という回答を上回り、ことしもほぼ同じ結果となりました。

 憲法9条を「改正する必要があると思う」と答えた人に理由を聞いたところ、「自衛力を持てることを憲法にはっきりと書くべきだから」が44%、「国連を中心とする軍事活動にも参加できるようにすべきだから」が25%、「自衛隊も含めた軍事力を放棄することを明確にすべきだから」が15%、「海外で武力行使ができるようにすべきだから」が8%などでした。

 憲法9条を「改正する必要はないと思う」と答えた人に理由を聞いたところ、「平和憲法としての最も大事な条文だから」が65%、「海外での武力行使の歯止めがなくなるから」と「改正しなくても、憲法解釈の変更で対応できるから」がいずれも13%、「アジア各国などとの国際関係を損なうから」が6%などでした。
(NHKニュース 2015年5月3日)
憲法改正 必要28% 必要ない25%

 NHKニュースでは、「改正する必要があると思う」、「改正する必要はないと思う」、「どちらともいえない」という設問の設定だ。表現は“柔らか”で、「どちらともいえない」を入れているのが特徴だ。
 「どちらともいえない」という選択肢を入れると、どうしてもこの選択肢に回答が集中する場合が多く、民意を探りにくくなるという欠点がある。選択肢を「ある」と「ない」に限定すると、なかば“強制的”に“仕分け”するので記事の見出しは書きやすいというメリットがある。
 結果、「改憲派」28%、「護憲派」25%とわずかに、「改憲派」が上回る。
 「どちらともいえない」が43%もあるので、両者に余り有意差があるとは思えない。
しかし、おととしと去年の調査と比較すると、おととしは「改憲派」が「護憲派」を大きく上回っていたが、去年はほぼ同じ割合となり、ことしもほぼ同じ結果となったという。
 去年から「護憲派」が着実に“勢力”を保ち始め、去年と今年の変化はあまり無かったということだ。ここ1年の安倍政権の姿勢はあまり影響していないということを示唆しており、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞の分析と違っているのはなぜか?
このポイントは今年の世論調査報道には、かなり重要な視点である。民意は、ここ1年の安倍政権の姿勢をどう見てきたかを探る一つのヒントになるからである。
 NHKの調査から見えてくる憲法改正に対する国民の意識は、約半数がまだ現実のものとして受け止めていないであまり関心を寄せていないか、内容がはっきりしないので“決めかねている”と“読む”のがふさわしいだろう。
 一方、第9条「戦争放棄」については、「改正する必要があると思う」22%、「改正する必要はないと思う」38%、「どちらともいえない」34%で、「護憲派」が大きく上回っている。第9条「戦争放棄」の国民の支持は固いと見た。
 憲法全体に係る「憲法改正」についての民意と、「第9条戦争放棄」に対する民意を分けてニュースにしていた。
 全体として、“公共放送”NHKらしいバランスのとれた丁寧な伝え方であった。


 戦後70年、日本はまさに“転換点”にいる。安倍政権の掲げる「積極的平和主義」の元で、「集団的自衛権」の行使を閣議決定で容認し、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を改訂することに日米で合意した。安倍首相は、日米首脳会談や米議会演説で、「日米同盟」強化の意義を強調した。
 連休明けから、国会を舞台に論戦が再開し、政府与党は、今国会で安全保障関連法案の成立を目指している。また憲法改正に向けての動きも加速している。
 国民にとって、日本の憲法と安全保障を巡る議論は、必ずしも、理解しやすいテーマではないだろう。また、新聞やニュースで報道しても、読者や視聴者から、かならずしも“興味”と“感心”を寄せてもらえるテーマではないかもしれないという懸念がある。しかし、新聞やテレビは、けっして目をそむけてはならない。繰り返し、丁寧に、執拗に、多角的に、この問題を追いかけて報道して欲しい。それが“ジャーナリズム”なのである。


■ 参考
朝日新聞社説   安倍政権と憲法 上からの改憲をはね返す
読売新聞社説  憲法記念日 まず改正テーマを絞り込もう
毎日新聞社説 社説:憲法をどう論じる 国民が主導権を握ろう
産経新聞主張 憲法施行68年 独立と繁栄守る改正論を 世論喚起し具体案作りを急げ 
日本経済新聞社説 憲法のどこが不備かもっと説明せよ


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2015年5月4日
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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
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報道の自由度2015フリーダムハウス

2015-05-08 12:52:19 | 評論
世界の“報道の自由”、この10年で最悪に転落
日本は41位 “Freedom of the Press 2015”



 国際的な人権団体、“Freedom House”は、世界の“報道の自由”について独自に調査した報告書、“Freedom of the Press 2015”を公表した。
報告書によると、世界の“報道の自由”は2014年、急激に悪化し、この10年で最悪になり、世界各国のジャーナリストは、生命の危険にさらされるなど、深刻な危機に直面しているとしている。
 また、報道の自由が確保されている世界の人々はわずか14%に(人口比率)過ぎない。この地域だけが政治ニュースが自由に報道され、ジャーナリスの安全が確保され、政府のメディアへの介入や法的な規制、経済的な圧力がほとんどないとしている。
 2014年、世界の“報道の自由”のスコアは、この10年で最も急激に下落した。199ヵ国の国と地域の内、63ヵ国(32%)が“自由”、71ヵ国(36%)が“部分的に自由”、65ヵ国(32%)が“自由ではない”という結果が出た。
 “報道の自由”がこの5年間で顕著に悪化した国と地域は、タイ、エクアドル、トルコ、香港、ホンジュラス、ハンガリーであるとしている。
 最悪に転落した原因として、「政府のメディア規制の増大」、「ジャーナリストへのテロ攻撃や取材拒否エリアの増加」、「メディアの経営者への圧力」、「プロパガンダの氾濫」などを上げている。
 2015年の“報道の自由”のランクのベスト10は、第一位がノルウェイ、スエーデン、以下ベルギー、フィンランド、オランダ、デンマーク、ルクセンブルグ、アンドラ、スイス、リヒテンシュタインで、ワースト10は、最悪が北朝鮮、以下ウズベキスタン、トルクメニスタン、エリトリア、クリミア、ベラルーシ、キューバ、シリア、イラン、赤道ギニア。
 ちなみにドイツは22位、米国は31位、英国は38位、中国は186位、そして日本は41位(昨年は42位)だった。


■ フリーダムハウス(Freedom House)
フリーダムハウスは“報道の自由”を1980年から監視している組織である。報道の自由は民主主義の維持を通して、政治や経済の健全な発展に重要な役割を果たしている。最も重要なポイントは、メディアへの規制は世界の民主主義国家への侵略につながる懸念があることだ。
(“Freedom House”ホームページ)

■ Rank 2015

(Best 10)
1 Norway
  Sweden
3 Belgium
  Finland
  Netherlands
6 Denmark
  Luxembourg
8 Andorra
  Switzerland
10 Liechtenstein

(注目国・地域)
22 Canada
 Germany
  Portugal
26 New Zealand
31 Australia
Austria
USA
35 France
38 Slovakia
 UK
  Uruguay
41 Cyprus
 Dominica
 Japan
 Slovenia
 Lithunia
 Vanuatu
48 Taiwan
52 Spain
64 Italy
67 South Korea
80 India
83 Hong Kong
97 Indonesia

(Worst)
186 China
  Vietnam
188 Azerbaijan
  Bahrain

190 Equatorial Guinea
   Iran
   Syria
193 Cuba
194 Belarus
195 Crimea
   Eritrea
197 Turkmenistan
   Uzbekistan
199 North Korea


Freedom of the Press


■ 参考
報道の自由「世界で悪化」 日本、二つ下げ61位 国際NGO

 国際NGO「国境なき記者団」(本部・パリ)は12日、「報道の自由度ランキング」を発表し、世界中で状況が悪化していると強調した。対テロの名のもとに進む盗聴などにも警鐘を鳴らした。上位はフィンランド、ノルウェー、デンマークの順。下位は北朝鮮(179位)、シリア(177位)、中国(176位)など。
 過激派組織「イスラム国」をめぐっては、米国人ジャーナリストの殺害などを例に挙げ、「敵とみなした記者らを容赦なく排除する」と批判した。一方で、対テロの名のもとにフランスが個人の監視手続きを簡単にしたり、英国が記者らの個人情報を収集したりしたことにも懸念を示した。
 日本は二つ順位を下げて61位。昨年12月に施行された「特定秘密保護法」をとりあげ、「『不当に』情報を得た記者らも懲役刑の対象となった」と指摘した。
(出典 朝日新聞 2015年2月13日)


2015年5月8日
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廣谷  徹
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