昨日は仕事を終えてから、この後の3週間ご無沙汰になりそうなので、ほぼひと月ぶりに夜のリラックスヨガのクラスに参加した。ゆっくり身体を伸ばし、心地よく汗をかいて文字通りリラックス出来た。ケア帽子にも大分抜け毛がつかなくなったが、やはりシャンプーをするとまだ抜ける。シャワーでさっぱりして夫と駅前のレストランで合流し、夕食を摂ったあと病院最寄り駅に近いホテルに向かった。予報ではもう少し暖かい筈だったが、結構寒かった。地元の桜はまだまだ1分咲きといったところ。
行きの電車で中村幸司さんの「知らないと恥をかく最新科学の話」(角川新書)を読み始めた。折り紙付きの文系の私でもそれほどの苦も無く、読みやすい。ホテルにチェックインした後はゆっくり浴槽で温まって眠りについた。
夜中に一度お手洗いで目覚めたが、すんなり寝直し、モーニングコールをかけた30分ほど前に自然に目覚めた。夫からもLINEが入る。浴槽足湯をして身支度を整えてレストランへ。これまでなかったかつらの装着があるので、ちょっと時間がかかる。新聞片手に今朝は和食の朝食を済ませ、朝の連続テレビ小説を視てからチェックアウト。
外はいいお天気。気温は20度近くまで上がるという。今月3回目の通院である。到着後はすんなりIDカードを通して受付を終え、採血へ。待合い椅子は一杯で溢れている。20人近く待っており待ち時間は15分と出ている。スプリングコートやストール等一式をエコバッグに詰め、態勢を整えて待つ。途中で20分待ちになる。それでもほぼ時間どおりに採血室に入れた。今日は初めてお目にかかる看護師のIさん。マーカー等の測定も含みフル検査なので5本。針刺しはごくごく普通にチクリとして抜く時はそれほど痛まず無事終了。止血したまま腫瘍内科へ移動する。
腫瘍内科の受付も列が出来ている。ひとまず大荷物を置いて席を確保してから列の最後尾につき、順番で受付終了。
本日のお伴、1冊目は昨日の続きから。帯には「科学はどこまで『未来』に近づいた?NHK解説委員がとことん解説!」池上彰さんが「読めば世界が広がる1冊です」と書いておられる。
話題は感染症・インフルエンザ、再生医療、がんゲノム医療、GPS、地震国、リニア高速鉄道、渋滞、絶滅危惧生物、宇宙誕生の謎と極めて多岐にわたっていたが、どれもわかりやすかった。恥ずかしながらこれまでリニアモーターカーの仕組み等知らなかったのだけれど、なるほど、と納得。
渋滞の先頭は?という疑問もスルリと解けた。先日、勤務する大学で、或る教授の最終講義で宇宙関連の話を聴く機会があったのだが、そのことも相まって、ダークマターの話には興味をそそられた。サイエンスの世界、興味深い。高校時代、物理はとんでもなく苦手だったけれど、こういう話は純粋に面白い。食わず嫌いをしているととても損をしそうである。
読み終えたところで、採血してから1時間ほど経っていたので血圧測定。123-71、脈拍は70と血圧が私にしてはやや高め。測定後20分ほど待つと、中待合に入れた。そして20分ほどで先生から声がかかった。病院到着から2時間ほど経過している。いつものタイムスケジュールだ。
「2週間お休みして、どうでしたか?」と訊かれ、2週間の状況をかいつまんでご報告する。「翌日からも1週間以上酷いだるさが続きました。好中球は底ではなかったように思います。お腹は相変わらず壊しやすく、朝は腹痛で目覚め、少し食べるとすぐに下痢をしました。匂いにも敏感で、きつい匂いがきっかけとなっての吐き気もありました。2週間ほどで脱毛も始まりました。それでも間違いなく咳は減っていますし、ロキソニンを3度3度飲んでいることもあり、痛みは大分落ち着いてコデインのお世話にはならずにすみました。」と。
「そうですか、採血の結果はほぼ問題なしです」と、チラとPCの数値を見せてくださる。好中球は1,690とある。先週から1,000以上アップはしているものの、3週間前の半分以下である。そして、グラフを見ると、マーカーも3割弱下がっている。もっとガクンと下がるかと期待していたので(図々しい)「少しですかね」と言うと、「いやいや、まだ投与は1回ポッキリですからね」と先生。確かに、欲張りすぎてはいけない。
「今日は8割に減量します。また吐き気止めも強化します。ドンペリドンも1日3回、7日分出しますので、吐き気が収まったら切り上げて次回に回してください。次回は白血球のみチェックしましょう。」と仰る。「吐き気止めはアロキシ(遅発性の制吐剤)ですか。」と訊くと、「そうです。」とのこと。
「好中球が当初3週間前に比べて半分からスタートで、次週また(1,000に)達しなかったら、次は?」と訊くと「さらに8割に減量します。概ね当初の半分ちょっとになりますね。それでもだめなら3週間に1度のハーセプチン、パージェタと合わせて1投2休に・・・」とのこと。まあ、先のことばかり案じても仕方ない。今回8割に減量して吐き気止めをパワーアップして来週までどう過ごせるか、である。ロキソニンとタケプロンも3週間分処方して頂いた。
ご挨拶をして診察室を後にし、化学療法室へ入る。数人がお待ちである。いつものように夫やお友達にLINEで報告し、お手洗いを済ませ、呼んで頂くのを待つ。15分ほどして看護助手さんから内側のリクライニング椅子に案内される。
身支度を整えていると看護師のMさんがいらして刺針。今日は殆ど痛まずラッキー。「大分気持ち悪かったんですか。」と言われ、「そうなんです。だるいしお腹を壊すし・・・」と答える。「(かつらは)前回のものですか。」と訊かれ「そうです。新しく準備する時間的な余裕がなかったので・・・」、「何年振りですか。ずいぶん綺麗になっていましたね。」、「5年半ですが、仕舞う時にシャンプートリートメントに出して、今回も陰干しして整えました。」と答える。
その後ほどなくしてKrさんから薬が届く。Krさんは昨春私が勤務する大学のがん化学療法看護師のコースを修了された。学位授与式でご挨拶されてから1年が経った。「今年も月曜日に行ってきましたよ。」と報告し、「早いですね、1年なんて・・・」とお互いにしみじみ。こうしてパージェタ、ハーセプチン、8割に減量したハラヴェンの3剤併用の治療2クール目スタートである。
点滴棒に5本の薬がぶら下がる。前回同様パージェタ、ハーセプチン、吐き気止めのデキサートに今回はアロキシもミックスされて、ハラヴェン、生理食塩水である。
前回はパージェタと組むのが初だったので、発熱を避けるために1時間半かけたハーセプチンも今日は1時間で。吐き気止め2剤混合は15分、ハラヴェンは5分、ラストの生理食塩水は15分。ということで合計2時間半強の予定だったが、結局3時間近くかかった。
吐き気止めあたりでOkさんがお見えになる。またお喋りのタガが外れてしまい、あれこれ吐き出す。「『顔色が悪いから、(案内するのは)ベッドの方が良かったんじゃないかな』と(他の看護師と)言ってたのだけれど、大丈夫?やっぱり辛かったみたいですね。」と。血圧も特段の異常はなし。せっかくなので、息子の卒業式のツーショットをお見せする。「ちゃーんと母もやってるのね~」と褒めて頂く。抜針もOkさん。ちょっぴり衝撃はあったが、お喋りしていたので気が紛れてノープロブレム。
2冊目は重松清さんの「ニワトリは一度だけ飛べる」(朝日文庫)。帯には「働くとは、人生とは。いきなり文庫化!名手が送る、笑って泣ける長編小説」とあり、3月30日発行だったので、迷わず手に取った。実際には2002年から3年にかけて週刊誌に連載されたものを今回加筆修正した作品というが、平成の最後に平成の半ば、21世紀が始まって間もなくのお語を読むことになった。
どこか懐かしい感じで、全然古びていない。「オズの魔法使い」の登場人物になぞらえて物語は進む。“臆病なライオン”の主人公は「仕事はたいせつだけど、好きなわけじゃない」。“知恵のないカカシ”が主人公同期の出世頭、“心を失くしたブリキの木こり”は「仕事なんかどうでもいいけど、嫌いというわけではない」という謎の若手社員。この3人に上司とその秘書と・・・会社員の悲哀と家族を抱えた父として夫としてのもろもろ、うーん、さすがに巧い。それで、それで、とあっという間に読み終えた。私は病と出来る限り長く共存して、自分のために家族のために生きることを選んだから、その段階で、仕事で一旗揚げようという出世欲からは離れたけれど、実際、主人公と同じスタンスなのか、若手社員と同じなのかよくわからなくなって、唸ってしまった。
化学療法室に滞在した時間は3時間半弱。途中薬剤師さんも来てくださって、前回からの状況をお話しした。 ハーセプチンやパージェタは吐き気が「殆どない」の最軽度、「ややある」の軽度、「ある」の中度、「かなりある」の高度、の中では殆どないの最軽度で、ハラヴェンは軽度に該当する。軽度の場合、一般にはデキサートだけで大丈夫ということになっているので、前回はそのとおりにしましたが、吐き気が長く続いて吐き気止めを飲んだたということでしたので(今回は遅発性制吐剤の)アロキシを加えています。これは5日以上1週間程度作用が持続するので、これにドンペリドンも加えればまず大丈夫だと思います。これでだめだと、高度用のイメンドがありますが・・・、とのこと。
「これまでも前回も、一つ上のランクで乗り切ってきたので、今回これで大丈夫だと思います。イメンドまで力を借りなくても」とお答えする。
「下痢についてはアロキシの副作用で便秘になるので、もしかするとこれでうまくバランスがとれるかもしれません。」と言われたが、前回もなかなかうまくいかなかったと応えると、「下痢止めや下剤をうまく組み合わせるといいかもしれません。」とのこと。「既にマグラックスやロペミンも若干手持ちがあるので、調整してみます。」とお答えする。
「いずれにせよ、吐き気で食事がとれないと体力も落ちるので、これでだめなら我慢せずにまた調整しましょう。」とのこと。デキサートにアロキシを足してもまずいことはない、ということは先生も仰っていたとおり。
沢山水分を入れたので、針を抜いて頂いてすぐ、慌ててお手洗いへ。やはり点滴棒を引きずってお手洗いに行くのはちょっとしんどいので、出来るだけ我慢してしまう。
ご挨拶して部屋を後にする。会計へ移動して受付。待合い椅子はかなり混んでいる。ここで、前回気になっていたチラシをゲット。「院外調剤薬局利用の方は病院内から受付が出来ます! 直接調剤薬局へ処方箋を持っていくよりも早くお薬の準備を始めてもらえます」とのこと。薬剤部の該当コーナーでマニュアル通り画面をタッチして各種選んで処方箋を送信すると無事完了した。乞うご期待である。
30分ほど待って、会計番号が出る。今日はハラヴェン8割になってどのくらい下がるかな、と思っていたが、点滴代だけで50万円相当の点数。支払いは15万弱だった。考えていたより大分安い。8割にしたことでハラヴェンのアンプルの廃棄量がそれほどなく無駄がなかったということか。とはいえ、高額であることには変わりないのだけれど、すっかり感覚がマヒしていることは否めない。
病院を出ると、暖かい風が吹いている。病院前の桜並木はちらほらと花が咲き出している程度。来週は満開を過ぎてしまっているだろうか。それでも楽しみだ。
薬局へ到着して、「病院内から処方箋を送りました。」と言うと、ちゃんとその旨受付に届いていた。そして、なんともう薬の準備が出来ていた。待合い椅子には複数の方たちが待っているというのに、びっくりだ。
顔なじみの薬剤師さんに呼ばれて「すごいですね、このシステムの威力!」と言うと、「いえ、これを使ってもお待ち頂くことは多いんです、今日は本当に珍しくラッキーで・・・」とのこと。
薬局では2,000円弱で現金支払い。
本日の病院と薬局の滞在時間は合計で6時間半弱。薬局での、いつもだと小一時間が、15分で済んだのが大きい。駅ビルのランチタイムにぎりぎりで間に合って、焼肉屋さんの冷麺を頂いた。たっぷり過ぎるほどのお酢もかけて。既に味覚異常が始まっているのかもしれない。
夫の好きな駅弁と道明寺桜餅を購入して、JRに乗る。まだ早めだったのか、席も確保。本は読み終わってしまったし、やはり疲れていて、ウトウト。
帰宅後、生協から配達された食品を運び入れ、一通り収納を済ませる。昨夜、夫が洗濯してくれた洗濯物を取り込んで、畳み、ようやくリビングで横になろうとしたら夫が帰宅。しばらく休息。
強力な吐き気止めのおかげでまだ気持ち悪さがない。食べられるうちに、ということでインスタントのお吸い物とお弁当を7割がた頂いた。
明日は会議があるが、出張はない。週末までなんとか踏ん張りたい。
記録のために。月曜日に届いた今月2回目のお花は、ピンクと黄色のチューリップが合わせて5本、紫のお星さまリューココリーネが3本、コデマリが1本。花言葉はそれぞれ「恋の宣言」、「温かい心」、「伸び行く姿」だという。春爛漫、可愛らしいアレンジメントになった。
さて、息子のこと。今日は4月1日入社予定の会社へ制服受取や事務手続きに行ったという。総合職とはいえ、制服が支給されるそうだ。それら夏冬一式を頂くのにスーツケースを携えて出かけたらしい。帰宅後、試着した自撮り写真を送ってもらった。やけに制帽が大きいが、なんだか可愛かった(親馬鹿)。
息子はチビの頃から筋金入りの鉄ちゃんである。どこかの鉄道会社のイベントに行けば、嬉しそうに借り物の帽子を被り、ジャケットを着て、敬礼をして写真を撮ったこと数知れず。夫は目を細めて「これはもう借り物の写真撮影用のものじゃないんだものな、嬉しいだろうな」と。本当にそう。頑張ってほしい、と思う。