徒然なるままに…建築家のボヤキ。。。

I・N設計スタジオ ブログ

最高の二世帯住宅を創るための鉄則-バリアフリー

2016-10-27 08:27:04 | 建築家と酒田・鶴岡・庄内地方に家を建てる
 親世帯と一緒に住む二世帯住宅。とりわけ親世帯の設計は、高齢者の最低限の行動を妨げないようなバリアフリーの観点が必要となる。下記にいくつかの例をあげてみる。

 

 1.玄関
 高齢になると靴を履く・脱ぐという動作が一苦労。座って楽に行為が行われるようにベンチを設けたい。手すりは上り框(玄関と玄関ホールの境の段差のある箇所)部に縦型の手すりがあると土間からホールへの移動動作がし易くなる。鍵はかざすだけのカードキーなどの使いやすいものが良い。記憶に頼る暗証番号は使用しないこと。

 2.浴室
 足を伸ばせる長い浴槽は、入浴中滑って溺れる恐れがあるので危険。長さは1m20cmぐらいあれば充分であろう。手すりは多くて困ることはないので、動線にしたがってできるだけつけたほうが良い。洗面所の洗面台の下部は、車椅子でも足が入るようオープンなものがいい。介護もし易い。浴槽の立上り高さは椅子と同じぐらいの40cmぐらいが好ましい。

 3.トイレ
 トイレの巾を広めに取る。介護者が一緒にトイレ内に入れるので、介護が楽になるし掃除もし易い。介護が必要になるのはかなり高齢になってからと思われるので、いつでもどこにでも手すりが設置できるように壁下地はベニヤにしておくことが肝心。

 親世帯に介護が必要になると、近くにいてあげたいもの。特に完全分離型の二世帯住宅にはナースコールや、インターホン等で常時連絡が取れるようにしておきたいものだ。子世帯の夫婦のどちらかが親世帯に行って一緒に寝ることも必要であろう。リビングの一角に多目的に使える和室や客間を設置しておき、介護が必要になったらその部屋にベッドを置いて一緒に生活するケースも多く見受けられる。

 家の中での死因はヒートショックによるものが断然多く、家中を同じ温度にムラ無く暖める断熱構造と暖房システムも検討する必要がある。

 二世帯住宅とはいえ、親と一緒に住むというのは他人の目線で考えないといけない部分が結構あるのだ…。


 ~つづく~

 関連ブログ
 ・最高の二世帯住宅を創るための鉄則-各々の理由とその背景
 ・最高の二世帯住宅を創るための鉄則-70年スパン
 ・最高の二世帯住宅を創るための鉄則-どちらの親と住むのか
 ・最高の二世帯住宅を創るための鉄則-同居プログラム
 ・最高の二世帯住宅を創るための鉄則-共用空間
 ・最高の二世帯住宅を創るための鉄則-完全分離プラン
 ・最高の二世帯住宅を創るための鉄則-コストメリット


 
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最高の二世帯住宅を創るための鉄則-完全分離プラン

2016-10-25 08:39:54 | 建築家と酒田・鶴岡・庄内地方に家を建てる
 二世帯住宅には各々の世帯が暮らす上で、玄関を含めた必要な設備を独自に持つ二世帯住宅がある。これを完全分離型という。

 この完全分離型は二世帯同士が出会う場所は門廻りとアプローチ空間のみで、出会う空間が限られ、干渉も少なくトラブルや喧嘩が生じにくいという利点がある。

 通常の2階建てでは親世帯を1階、子世帯を2階にすることが多い。やはり階段による移動を不安視する親世帯を1階におくというのがオーソドックスである。

 上下階の音のことを考えて親世帯を2階にするケースも見受けられるが、かなりレアケースといっていい。

 完全分離型の場合、層の上下で分離する「上下割り」と左右で分ける「縦割り」の二種類があり、縦割りは階段が二つ必要となるなど、建設費がほぼ二倍かかるため上下割りが圧倒的に多く見受けられる。

 

 完全分離型では親世帯に介護が必要になったとき、親世帯に「通う」形で介護を行うこととなる。これが寝たきりとなると、子世帯の夫や妻が親世帯のほうに泊り込みで対応することが必要。

 それでも完全分離型のほうが、気分転換や休息のために一時的にでも離れられるので助かるとの声をよく聞く。

 また、それほど例は多くないが、完全分離型は将来的に空いた一方の世帯を賃貸にできるという利点も。賃貸を考慮する場合は、縦割り型の方が独立性が高く、音の問題も解決しやすいのでメリットが多いといえよう。

 住宅という建築は生産性をもたないので、お金を生むことはないがルームシェアが重宝されている昨今、「利益を生む」という視点は斬新かもしれない…。


 ~つづく~

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最高の二世帯住宅を創るための鉄則-共用空間

2016-10-20 08:45:31 | 建築家と酒田・鶴岡・庄内地方に家を建てる
 二世帯住宅は各世帯が共用する空間を持つことになる。どこを共用空間とするかは入念に検討する必要がある。

 具体的には玄関→浴室→トイレの順に共用するか否かを考えるといい。浴室を共用する場合は親世帯の近くに浴室を設置するのがベターだが、音の伝播から親世帯の寝室には隣接しないことが望ましい。

 

 キッチンを共用とすることはあまりお勧めできない。キッチンを共用するということは、おのずとダイニングも共用するということ。

 食事の好み、使用時間の違う二世帯がキッチンとダイニングを共用するということはもはや「二世帯住宅」ではなく単なる「同居」であるからだ。

 使用頻度が低いゲストルーム、趣味室は共用空間としてはお勧め。ゲストルームなどはたまに二世帯間での食事にも使えると尚いいだろう。

 共用室については、基本料金を含めた光熱費の支払い分担をどうするかを前もって決めておくことが大切。

 外部では庭を共用するケースが多い。お互いのつかず離れずの距離感を保ち、気配を感じる為にも中庭は効果的だが、いつでも中庭に向かって生活を閉じる方法をハード面で考慮しておくことも必要。

 またソフト面では親世帯も一緒に参加させるような庭の使用方法でないと使用頻度が低下し、数年後には使わない庭になりかねないので注意。

 例えば子世帯が友人たちを招いてバーベキューなどやるときには、親世帯が寝室にこもると居心地が悪いし、子世帯や来客もそれを感じ取って興ざめになることもある。 

 さて、あなたはどこを共用しますか?


 ~つづく~

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丸子の平屋現場日記 161017

2016-10-18 08:30:01 | 今日の現場
 さあ引渡しまで1ヶ月強となった丸子の平屋。

 

 外壁、屋根工事は終了し本体の外装工事はほぼ終了。内部の大工工事も壁・天井のボード下地も7~8割ぐらいは終了し残すところが少なくなってきた。

 

 前回のクライアントとの打合せでも、内装仕上の色彩計画も了解を得ていよいよ仕上工事にこれから入る。

 

 外部工事はこれから井戸工事に入る。今回の計画は井戸を新しく掘って、地下水を汲み上げる。その地下水をコンクリート舗装の下に配管で通すことによって融雪を図る計画。

 この地域は昔から水の郷と呼ばれる地域。この敷地も以前は地下水が自噴していたという。解体した旧母屋も井戸水を飲料水で使用していた。

 しかし、飲料水と融雪で使用する水の量はまったく桁が違う。今回の融雪用の水量は1分間に70~80リットルの量が必要。

 旧母屋で使用していた井戸の水量では全然足りないので、新たに井戸を掘ることになった。

 どのぐらいの深さまで掘れば計画通りの水量が出るのか。できるだけ予定より浅く済めばと思ってる次第である…。


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最高の二世帯住宅を創るための鉄則-同居プログラム

2016-10-14 08:52:46 | 建築家と酒田・鶴岡・庄内地方に家を建てる
 親世帯と子世帯には文化の違い、生活の違いがあり、価値観など最初から合わないものと考えるべき。

 同居型で失敗するのが、親世帯と子世帯が一日中同じ空間で過ごし、一人になれる空間が少ない家ほどお互いを疎ましく感じるようになる。

 

 二世帯住宅を建てて親と一緒に住もうとした理由はそもそも何だったのか。自己の欲求と、他者への敬愛がそこにはあったはず。

 連携しながらも独立でいたい、つながりながらも離れていたい。これを満足させるのが設計の役割ともいえる。

 当事者同士では言えないことも多々あるはず。話せば話すほど喧嘩になるというケースも。それを避けて、住み始めれば何とかなるというのは間違いのもとである。

 必ず両世帯の間に設計者が入り、十分ヒアリングを行うことで両者の「合わない事」をあぶりだす作業が必要である。その上で二世帯住宅のプログラムを構築していくことが、成功の鍵であると言ってもいい。

 プログラムの構築は、ハード面とソフト面の両方から考慮する。ハード面とは建築物としてどんな設計にするかということ。ソフト面は一緒に住む世帯間で暮らし方のルールを決めること。

 設計で気をつけることは、テレビ、ピアノ、洗濯機の音、子供の走り回る音、排水管の音等々の生活音の伝播。これらの音対策をどう処理するか。

 さらには各世帯間で干渉されたくない領域をどこにどのように設けるかの検討が必須になる。

 この2つを怠ると心理的にリラックスできない生活が続き、先に述べたように失敗する同居となってしまう。

 家族間のルール作りは、光熱費の支払い分担はもちろんのこと、掃除の分担、洗面所やお風呂の利用時間のルールも必要。ドアのノックという簡単なものも意外に重要だったりするのだ。

 同居する為のプログラム構築が上手くいけば、二世帯住宅はほぼ成功といってもいいだろう。あなたの家族には同居プログラムというものがありますか?


 ~つづく~

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