中国語学習者のブログ

これって中国語でどう言うの?様々な中国語表現を紹介します。読者の皆さんと一緒に勉強しましょう。

中国の民間玩具、風車(かざぐるま)

2021年09月14日 | 中国文化

北京の春節の廟会で売られる「大風車」

 

「風車」fēngchēは広く普及した伝統的な民間玩具で、一般には紙、竹、コウリャン殻で車輪を作り、風の力を借りて休みなく回転させます。容易く作れてすぐ遊べるので、子供たちにたいへん人気があります。中国の風車の歴史は古く、唐代や宋代の絵画の中に既にしばしばおもちゃの風車を見つけることができます。例えば南宋の画家、李蒿の筆による『貨郎図』(「貨郎」とは行商人の意味です)の中に小さな風車が描かれていて、行商人の帽子の後ろに描かれています。

李蒿『貨郎図』(部分)

 

この風車の構造はたいへん簡単で、三本の細い棒を交差させて六角形にし、棒のひとつひとつの先端に長方形の小旗を貼り付け、中心に軸を取り付け、軸と柄がつながり、小さく精巧で簡単な造りです。こうした風車は宋代に流行したものです。元代の有名な画家、王振鵬も『貨郎図』とよく似た絵を残しており、題名は『乾坤一担図』と言い、ひとりの老人がおもちゃを満載した荷物籠を担ぎ、老人の帽子の後ろにも小さな風車が挿してあります。

王振鵬『乾坤一担図』

 

構造は宋代の絵の風車と基本的に同じで、ただ風車本体の六角形が八角形になり、柄の上に三角形の小旗が取り付けられています。これから見て、古代のこうした小旗を立てた風車は長い間流行し、宋代以降、特に大きな変化は無かったようです。

 

現在、各地で作られている風車はおおよそ三種類に分けられ、「簡易風車」、「多角風車」と「大風車」があります。「簡易風車」は一本の竹か木の横棒の両端に互い違いに二枚の四角の紙を貼ったもので、横棒の中央に軸が設けてあり、軸は柄につながっていて、風を受けて回転します。

左は簡易風車、右は瓜形風車(後述)

 

『帝京景物略』に明末の風車の記述があります。

「すなわちコウリャン殻を二寸に裂いて、互い違いに四角い紙を貼り、紙の色は各々赤と緑で、真ん中に穴が空いており、細い竹でコウリャンの竿に横向きに取り付けられ、風を受けて動き出し、回転して輪のようになり、赤と緑が混じって目が回るようだ。これを風車と言う。」

 

こうした風車の構造の原理は、上記の宋や元の時代の風車と基本は同じで、現在にまで続き、依然として農村で幅広く作られています。

 

「多角風車」は中国の風車の中で最も代表的なもので、通常は一枚の正方形の色紙から作られ、四角形を中心に向け半分以上ハサミを入れ、順番に各々の角を中心に向けて折り曲げ、中央を小さい丸い紙片で貼りつけて軸を取り付ければ、四角の風車となり、二、三個の風車を一組として柄に取り付けると、風を受けて全てが回転します。二枚の正方形の色紙を互い違いに重ねると八角形の風車になり、三枚の色紙を互い違いに重ねると十二角形となります。色紙の色をそれぞれ変えると、風車の角がひとつひとつ規則的に色が変わるようになり、色彩の変化にリズムがあって美しいものです。

八角風車

 

しかし注意すべきは、八角形以上の風車はそれぞれの色紙の切り方が異なり、あらかじめ切り口の角度を決めておくことで、それぞれ入り混じった角度を揃えることができるのです。

八角風車の作り方(二枚の色紙の切り方を変えて角度を揃える)

 

 

「多角風車」と似たものに、「瓜形風車」があり、色紙を折り曲げてかぼちゃ形にし、中空で外側は瓜のひとかけらひとかけらが何層にも重なっていて、風が吹くとくるくる回ります。瓜形の風車は山東省南部の蒼山県、郯山tánshān県などで盛んに作られています。

蒼山県と郯山県(山東省臨沂市)

 

「大風車」は北京市の太鼓付き風車のことで、昔北京の春節(旧正月)の間に開かれた「廠甸」(和平門外瑠璃廠に、お正月の人出を見込んで大きな縁日が立った。この土地は、宮廷の瑠璃瓦を焼く瑠璃窯があったところで、瑠璃窯の前に広い空き地があり、この空き地に市が立ったので、「廠甸」と呼ばれた。)では必ずこのような風車が市場に並び、北京の春節の風物詩でした。

北京の春節、廟会の風景

 

「大風車」の構造はこれまで述べた風車より複雑で、風車の車輪はコウリャン殻を薄く矧いだ細片を湾曲させて作り、直径は20センチくらいでした。竹ひごやコウリャン殻の棒を用いて軸を作り、軸を中心に放射状に紙の帯を括りつけ、紙の帯のもう一方の端は輪っかに糊付けし、車輪としました。車輪の紙の帯には色が染め付けらました。

大風車

 

軸の延伸部分には互い違いに「はじき爪」を取り付け、軸の下には更に糸で縛り付けた二本の撥(ばち)を並べます。一番下には粘土で作った小さな太鼓を取り付けます。風車が回転すると軸の上の「はじき爪」が動いて撥を動かし、太鼓が打たれて音を鳴らす仕組みです。ポンポン、シャンシャンと良い音がしました。

大風車の太鼓を鳴らす仕掛け

 

「大風車」は風車ひとつ毎に太鼓がひとつ付いていて、少なくとも二つの風車が上下に配されました。風車が三つ、四つ、五つ、ひいては三四十個あるものまであり、全ての風車はコウリャン殻をつないで作った骨組みの上に取り付けられ、骨組みは風車の数に合わせて異なった形に組み立てられました。よく見かけたのは「日」の字形や「甲」の字形、「申」の字形の骨組みでした。

大風車

 

一台の「大風車」に何個風車があるかで、その数だけ太鼓が取り付けられたので、風が吹けば音が鳴って、たいへん面白いものでした。北京の人は買って帰った「大風車」をしばしば家の軒下に取り付けたので、それによって家中がお正月のお祝いの気分に染まることとなりました。

北京の四合院の家屋の軒に取り付けられた大風車

 

おもちゃの風車の種類はたいへん多く、その中には凧や走馬灯のアクセサリーとして使われたものもありました。例えば銅鑼を付けた凧で、銅鑼を付けた枠と「大風車」の構造は全く同じでしたし、連凧の龍の頭の眼を回すのも、実際はふたつの風車でした。走馬灯の真ん中の軸の上には、風車の車輪を取り付けておく必要があり、それにより、上昇気流を受けて走馬灯が回るのです。

走馬灯