石造美術紀行

石造美術の探訪記

奈良県山辺郡 山添村峰寺 六所神社宝塔

2007-01-13 00:19:04 | 奈良県

奈良県山辺郡 山添村峰寺 六所神社宝塔

Dscf1011 峰寺の集落を見下ろす高所に六所神社があり、神社の境内には建武年銘を持つ不動明王の磨崖仏がある。神社の向かって右手に峰寺会所がある。元は薬王寺という寺の跡といわれている。会所の建物の右端に石塔類が寄せてある。目立つのは層塔で、現在4層を残すのみだが、花崗岩製で元は7重と推定され、低く安定感のある基礎、塔身に大きく月輪を陰刻し雄渾に薬研彫された金剛界四仏種子や笠石の軒反の力強さから鎌倉時代のものと推定される。(※)この層塔のすぐそばに小さい宝塔がある。花崗岩製。笠と塔身と基礎をあわせた高さ約70cm。相輪を失っており、背の高い複弁反花座は大きさが合わないので別物である。基礎は幅に比して高さが高Dscf1006_1 く、4面とも薄めの輪郭を巻いて格狭間を入れる。塔身軸部は浅い彫りで扉型を表現し、首部は細めで無地、匂欄表現はない。笠石は裏に円形軸受と垂木型を削りだし、降棟の表現はないが、上部に薄い路盤を作っている。銘文は確認できない。欠損している相輪を除けば保存状態は悪くない。全体としてバランスがとれて瀟洒な感じで、総じて彫りが浅く、格狭間の表現も退化が進んでいるもので、室町中期ごろの造立だろうか。奈良県の宝塔は数が少なく、特に室町時代の基準となる遺品は少なく、管見では永正5年(1508年)銘の長谷寺宝塔があるに過ぎない。少し場所も離れており、長谷寺宝塔の方は実見していないが、写真を見る限り造形意匠は格段に優れるものの作風に異質な感じがする。したがって本塔の造形意匠が長谷寺宝塔に比較して拙劣であっても、単純に時代が降るとは言いきれないように思う。しかし、永正5年はひとつのヒントにはなる。

参考

※ 清水俊明『奈良県史』第7巻 石造美術 338ページ


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