淡河川・山田川疏水(淡山疏水)シリーズも
小説タウンハウス 9 ポンプ池と神出発電所 淡河川・山田川疏水(淡山疏水) (2018.3.9)
小説タウンハウス 10 消えた溜池 淡河川・山田川疏水(淡山疏水)2(2018.4.27)に続いて3回目となります。
そしてそれは小説タウンハウス 5 再録タウンハウス 第4回 岩岡観光ぶどう園(2017.8.28)で予告した
仮題「岩岡の地図では池だらけなのに池のない不思議な風景」の謎解きであります。
見えない溜池
地図はポンプ池と神出発電所と同じく「いなみ野台地を潤す水の路 淡河川山田川疏水」からお借りしています。
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緑 淡山疏水開通前に築造され受水している溜池 濃い青 淡山疏水の開通後に築造された溜池
薄い青 その他の溜池 数字 淡山疏水の開通後に廃止された溜池
赤い矢印が「タウンハウス岩岡」となります。このあたりを走ってみてもそんなに池は見当たりません。
印籠池
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印籠池は番号で呼ばれていない、山田川疏水が出来る前から有る古い池です。細長い谷を西側で堰き止めた池でおそらく岩岡
で一番有名な池であり、池の周辺には学校や民家があり我々の池のイメージに合った池です。印籠池はよく見える溜池です。
6号池(ポンプ池)
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小説タウンハウス 9 ポンプ池と神出発電所 で紹介しましたが、岩岡の頂上に有る配水池のような溜池です。周りを一周し
てもまるで巨大古墳、ポンプ池の看板が無ければ池とは気が付きません。右の建物は池に水を揚げるためのポンプ室です。
7号池(甲7号下池)
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岩岡ではポンプアップして水を貯める池はポンプ池だけで、他の池は自然流入式ですので何処かの地点からは水面を見ること
が出来ますが、幹線道路を走っている限り看板が無いと池が有ることに気付きません。
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7号池の水面です。おそらく岩岡では一番大きな池です。遠くに雌岡山が見えます。対岸に白いガードレールが見えます。東
側の細い道から見ることが出来ます。後方のネットは甲七号上池跡のサッカー場です。
8号池(8号上池)
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堰堤は少し低くなりますが幹線道路からは見えません。道路の右側は8号下池跡の野球練習場です。
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水面は水上発電所となっています。すごいケーブルの数です。
5号池(竜が池)
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竜が池とも呼ばれて、元禄5年の築造になります。当初は小さな池でしたが山田川疏水の受け入れにより拡張されました。道
路からは堰堤しか見えません。
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岩岡神社の隣にあり龍神様がお祀りされています。岩岡の人々には親しまれた池です。
2号池
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池そのものが目立たないところにあります。
4号池
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5号池に接してありますが人家からは離れています。
3号池
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集落から見れば巨大な堰堤となります。
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3号池の上から見た雌岡山です。
3号池改修記念碑 碑文
淡河川・山田川疏水のため池として明治末期より大正初期の間に築造された。工事は難航し一時中止の状態になりしも工事は
再開され上村の高所に水が流れる様になり当時綿畑であったのが水田になった。
池の築造に当り責任者は心身共に休む事なく心労が身にしみたと聞かされている。
池の老朽化で改修を願い出てようやく昭和59年より着工し平成元年に完成する。上村水利第1期工事として平成2年3月に
竣工式を行なう。
山田川疏水の着工が明治44年2月、大正4年に幹線が完成していますので、ポンプ池の大正3年4月着工・5年4月竣功に
比べて早いようです。写真で見ても堰堤が高い気がします。工事が難航した理由でしょうか。
1号池
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岩岡5号サイフォンで県道377号(野村明石線)くぐって岩岡で最初に受水する池です(小説タウンハウス 9)ので道路
からはよく見えます。写真の手前が1号上池、奥が1号下池となります。西側が堰堤となります。どういう訳か1号池だけ看板
がありません。
岩岡の地は南西方向に緩やかな傾斜を持っています。淡河川・山田川疏水も北東から北西に横切ります。この間にわずかな谷
地形を利用して溜池を作ります。従って堰堤部分は、池の周囲の3分の1から3分の2程度となります。堰堤の下から見れば
池は見えず、その他の部分から見ると池は見えるわけですが、どういう訳か主な道路は堰堤の下を通ので看板がなければ気が付
かない「池の少ない風景」となってしまうのです。
この現象は、稲美町でも見ることが出来ます。昔からの溜池が道路からでもよく見えるのに対して淡河川・山田川疏水の受け
入れのために新しく築造した池は、堰堤の上に溜池の看板だけが見えています。高度を落とさないように延々と遠いところから
水を引いてきた先人の知恵と努力が作った風景です。
パイプライン
岩岡でもう一つの不思議な風景は田に用水路が無い風景です。用水路がなくなったのは淡河川・山田川疏水の完成のずっと後
の昭和47年から始まった岩岡地区緑農住区土地基盤整備事業と昭和61年から始まった県営岩岡上圃場整備によるものですが
実に24年の歳月をかけ用水路のない不思議な風景を創り出しました。
といっても「普通の田圃」を知らない方も多いと思いますので、まず「普通の田圃」の一例です。
普通の田圃の一例
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溜池の取水ゲートのハンドルを回すと池の底の止水壁が開いて下の用水路に水が流れてきます。(決して勝手に試してはい
けません。)
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色々な用水路を流れて目的の田圃までやって来ます。肥料の空きビニール袋で作った土嚢を置いて田圃に水を入れたり、止
めたり、排水したりを調整します。用水路と排水路は原則として同じです。用水路だけがあり排水は次の田圃に水を送り排水
する場合もあります。
岩岡の田圃 圃場整備とパイプライン潅漑
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池の水はポンプ小屋で加圧されて地下のパイプラインを通って流れていきます。(図面は岩岡地区緑農住区開発関連土地基盤
整備事業の概要 神戸市岩岡土地改良区編 からお借りしています。以下同じ)
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田の一枚毎にバルブがあります。ステンレスの頭が75mmのパイプで田植え等で一度に大量の水を入れるときに使用しま
す。写真左がその使用時です。小さなバルブは40mmで少しの注水や、畑作時にホースをつないで水やりに使用します。写
真は右は40mmのバルブを利用して自動潅水設備を作ったものです。
排水路
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岩岡では排水路は排水のみを担当し農道の反対側の背中合わせになった田の中央にあります。
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40年が経過して田圃の排水口の形は様々になっていますが、コンクリート製の排水口が有りヒューム管で排水路の下まで
導いているのが当初の形だと思われます。排水路に集められた水は下流の池に集まります。写真は3号池に注ぐ排水路です。
標準区画割
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一枚の田の単位(耕区)は30m×70m=2100平方メートル(21アール)です。道路側にバルブがあります。
10枚の田(耕区)が集まり1ほ区となります。21a×10=2.1㏊
1ほ区×2=農区となります。2.1㏊×2=4.2㏊ ほ区とほ区のに排水路があります。
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写真 左 道路側からの写真 幹線道路 7m 支線道路 5mです。道路側にパイプラインが走りバルブがあります。
写真 右 農区の中央を走る、排水路です。
圃場整備とパイプライン潅漑が岩岡の田園風景のもう一つの特徴となります。
パイプライン潅漑の利点
〇汚濁水の流入防止
〇用水調節等管理の合理化
従来は、田植えは全体の配水計画に合わせてする必要がありましたが、各耕区(1筆の田)毎に自由に田植えが出来ま
す。また稲は水を張ったり、干したりを繰り返しながら成長しますがこれも各耕区毎に自由に設定できます。兼業農家の
多い岩岡では大変なメリットです。
〇畑作潅漑の簡便化
例えば裏作にキャベツに作るとします。まず池から畑までの水路の水門を開けたり、閉じたりして水路を設定します。
その後、水を送ることになりますが、パイプラインなら水道と同じくバルブを開けば水が出ます。ホースも繋ぐことが
出来ます。
料金
普通の用水路方式による水利用でも、分担金や役務があります。まして便利なパイプラインでは当然料金が必要です。
現在は東播用水が運営しています。料金は「基本料金+使用量」で計算され使用量は「過去5年間の実績」で課せられる
そうで土地によって料金は異なります。一反(1000㎡)当り数千円だそうです。
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