今月7日、五ヶ山ダム建設によってダム湖に水没する町道の付替え工事が完了し、新倉谷七曲線が供用開始となった。五ヶ山ダム試験湛水がはじまって約1ヶ月、その状況も気になるところ、早速、現地へ向かった。
南畑ダム入口(グリーンピア那珂川)からしばらく上ると、大きくカーブした桑河内大橋が見えてくる。そこから開通したばかりの新倉谷七曲線へと向かう。まず見えてくるのは、那珂川町(平成30年10月市制施行)が進める「五ヶ山水源地域公園事業」のひとつ、「桑河内ふれあい公園」予定地。山を大きく切り開いてつくられた巨大なスペースは、オートキャンプ場になる。広い法面には植栽が施される予定となっているが、今年6月の豪雨では、ここで土砂崩れが起きた。いかにも軟弱そうな地盤だが、大丈夫だろうか。
そこを通り過ぎ、新品の「五ヶ山ダムトンネル」を抜けると、突如、五ヶ山ダムが現れる。見ると、水は予想以上に貯まっていた。あたりは所々で紅葉が見られた。以前は、山一面が赤や黄色に染まっていたが悲しいかな、今はその姿はない。少し先に眺望の良いところがあるが、そこに展望所(倉谷展望公園)ができる。ダムの反対側に目を向けると、辛うじて難を逃れた山が迫っている。そこにはいくつもの杉が折り重なるように横たわっていた。これから山はもっと荒れていくのではと、心配になる。
少し進むと、原石山が見える。ここの原石を使ってコンクリートが造られたわけだが、五ヶ山ダムに使用されたコンクリートの総量は92万5千m3。確かに山は原形を留めていない。自然をぼろぼろにしておきながら、自然を大事にしなくてはと福岡県。ダム湖の奥まったところにいくつかビオトープをつくるという。本末転倒だろうに。
新倉谷七曲線には、いくつもの橋が架けられている。5個目の橋を渡ったところで急カーブし、そこを通り過ぎると、ふたたび五ヶ山ダムが姿を現す。水は割と早いペースで貯まっているように感じるが、ダム湖内では、まだあちこちで作業が行われていた。写真を撮っていると、背後から水の流れる音が聞こえた。見ると、山の奥から水が流れている。近くの斜面には養生シートが張られ、土嚢が置かれていた。ここでも土砂崩れが起きていた。
五ヶ山は脊振山系の端に位置し、東側には九千部山がある。福岡管区気象台によると、那珂川流域の年平均降雨量は約2000㎜、九千部観測所では約2400㎜と多い。山は水が豊富だ。しかし、ダム建設のために山は削られ、多くの木が伐採された。そのため、行き場を失った水があちこちで溢れている。何と無残なことか。
この日、新倉谷七曲線(ダム周回道路)をひとまわりしてみたが、車は殆ど走っていなかった。今後、ダムの観光化を目指す、那珂川町(一部、福岡県)によって、道路周辺の整備が進む。 果たして、どれだけの人がここを訪れるのだろうか。(この後、「小川内の杉」へ)
撮影日:2016年11月16日、11月20日
桑河内大橋 新倉谷七曲線入口
広大な法面 ここに植栽が施される
ここにオートキャンプ場ができる
桑河内ふれあい公園予定地 手前に大芝生広場、向こうにオートキャンプ場ができる 見えているのは「せせらぎ水路」
ここを抜けると
突如、現れる
選択取水設備(中央)をコンクリートで覆う作業中
展望所予定地から見る
ダム湖の様子 橋の向こうに背振山
まだ川筋がわかる かつての村道も
まだ工事中
一番奥まったところにビオトープができる 横に林道倉谷線
荒れ果てて
この先を右に曲がると
ふたたび現れる
保護材に覆われた原石山(写真中央) ここにもビオトープ(写真手前)
土砂崩れ
異常な光景
いつもの風景(写真右にダム堤体)
《関連資料》