イエズス会の歴史 上下/ウイリアム・バンガート/上智大学中世思想研究所 監修/中公文庫/2018
何かとベールに包まれ、実体がよく掴みにくい、イエズス会。歴史上の大事件の黒幕だと決めつける人もいる。私は必ずしもそうは思わないが、王権並の権勢と財力を有していたことからその疑いは多いにある。 しかし、残念ながら、そのことを裏付ける歴史書レベルの本は少ない。 本書は、その手がかりとなる一冊である。 日本語訳はイエズス会の日本支部がある、上智大学が担当。ただし、翻訳に使われる日本語は、あまりに無味乾燥。抽象語の羅列が目立つ。この辺が翻訳者の能力の限界なのか、原文が難解すぎてそうなのかはわからない。 参考文献リストは一応整っている。 入門者に対しては、訳者による解説があれば道しるべとなるような気がする。 この分野を専門に研究する気はなくても、日本と係わりがあった聖職者、イエズス会とアジアとの係わりについては、関心がある。それは、イエズス会聖職者が遺した記録に、キリスト教が植民地支配の尖兵だったか否かを示す証拠があると考えるからである。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます