チェロ弾きの哲学ノート

徒然に日々想い浮かんだ断片を書きます。

真水の大循環

2012-07-01 10:55:36 | 哲学

5. 真水の大循環

 空からの雨は、野原や森林をうるおし、川を下って海に流れる。水は重力によって、低きに流れ、海はエントロピー増大の結果として存在する。赤道付近の海水が温度上昇することによって、水蒸気が発生するが、凪ぎの状態では、熱エネルギーは海水に蓄積される。

 水の水蒸気圧は、温度によって、2次関数的に上昇する。水の分子量は、H2O(18)で空気の分子量(29)に比べ軽いために上昇気流を発生させる。さらに周りの水蒸気を集めて、風が発生し、波が生じてさらに水蒸気を発生させるこれが台風である。

 海水の熱エネルギーを燃料として、大波によってさらに水蒸気を発生させ、水蒸気は上昇し中心の気圧は低下し、台風は発達する。水蒸気は上空で冷やされで、雨雲を発生させ、雨を降らせる。

 海水から水蒸気が発生する時、540cal/gのエネルギーを海水から奪うが、大量の海水の熱容量のため、台風として、雨を森林や畑に真水を供給する。海水温と洋上の大気温の差が、大きい時、同様に低気圧が発生し雨や雪を降らせる。

 水は森の木々を育て、川となって田や畑をうるおし、川の魚を育て、海にそそぐ。エジプトのデルタの洪水は、畑の土壌中の塩分を流し、上流からの養分を供給し、豊かな麦の実りをもたらし、この結果エジプト文明は、数千年もの間繁栄した。現在のエジプトではアスワンハイダムの建設と灌漑によって、洪水は発生しなくなった。しかし、塩害のために20~30年で農地は使えなくなっている。

 寒冷地に於いては、水が凍って雪となって降る、雪は体積で数倍もの容積となる。北日本では、冬期間1~2mもの雪が降り積もて、雪の下の土壌は保温され、雪の下の土の中の植物も昆虫も寒さから守られる。冬の間に降り積もった雪は、春から初夏までにゆっくりと融けて、地中に時間をかけてしみてゆく。地中にしみ込んだ水は、湧水となって、春から夏の作物が真水を必要とする時、水が供給される。

 熱帯雨林やモンスーン気候帯では、森林に太陽光があたり、木の葉から水蒸気が発生し、高い山により上昇し上空で冷やされ、麓に雨を降らせる。その森林が伐られるとその気象をも変化させ、時には砂漠化させる。熱帯雨林を切り開いて、農地や牧草地としても、十数年で強い太陽、塩害、土壌流出により、時には荒地となる。これを防ぎ農業生産を続けるには、アグリフォーレストが可能性のある道である。

 河川は、地球の血管として、真水や養分を大地に供給しているが、河川は国境を跨いで流れるため、ダムや灌漑、森林伐採で、下流域の国々にも多大な影響を与える。中国の三峡ダムなども今から、その問題点が懸念され、紛争の原因ともなりかねない。貴重な真水は、大地を常に流れながらも、様々な形で植物や動物を潤し、ゆっくりと海に下るのが本来の姿のように思える。

 真水の大循環のエントロピー逆走エンジンは、暖かい海水(塩分を含む)が蒸発する時、水の成分である水蒸気のみが、気化し水蒸気を多く含んだ空気は軽いため、上昇し上空で冷却される過程である。前者は、塩類の溶け込んだ海水を水分子のみ蒸発分離し、後者は、水蒸気となって、上昇移動し、上空で冷却、過冷却状態から、核となる物質又は宇宙線によって氷の結晶となり、雨や雪となって、真水の大循環は完成する。
(第7回)


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