6. 炭素の大循環
有機物の酸化分解や、化石燃料が燃えることによって、CO2と水蒸気が排出される。大気中にCO2が放出拡散するため、あらゆる場所にCO2は供給される。空気中のCO2は、太陽光と水を原料として、植物の葉の中の葉緑体に於いて、糖類を生産する。この時、酸素を排出し、酸素の大循環エントロピー逆走エンジンでもある。
この植物が生産する糖類を動物は食物として利用し、糖類はATPに変換され、動物の運動エネルギーとして利用される。植物のセルロース分が、地下での堆積によって化石燃料となる。すべての生物が枯死すると微生物の力によって、土壌成分とCO2と水、メタン等に分解され、土壌と空気中に炭素は放出される。これらは、陸上に於ける炭素の大循環である。
海水の表層は、空気中の炭酸ガスを吸収している。CO2は他の気体と異なり、水に溶けると解離して、弱酸性になる。このため表層水の中では、酸素の5~10倍のCO2が溶解しているが、溶存炭酸ガスの大部分は、乖離イオンとなり、CO2として存在するのは僅か1%以下である。このため、魚は水中に於いて、生存できる。
植物性海洋生物の量は、陸上と比較して、0.2%の過ぎないが、有機物の年間生産量で比較するとほとんど変わらない。それは、陸上植物は、2倍に増えるためには、数ヶ月~数年かかるのに対して、海洋の植物プランクトンは僅か数日で、倍増する。つまり、海洋生物のライフサイクルの回転が速いという特徴がある。
海洋生物の一部は、無機炭素として、深層部へ沈殿する。このため深層水の過剰の無機炭素は、海洋の大循環で1千年ほどのサイクルで、表層に浮かび上がって、植物プランクトンを発生させ良い漁場となる。海水のCO2はサンゴや貝類によって、炭酸カルシウム(CaCO3)として海水から沈殿する。これが、海洋に於ける炭素の大循環である。
炭素の大循環のエントロピー逆走エンジンは、葉緑体での糖類の生成であり、酸素の大循環のエントロピー逆走エンジンでもある。(第8回)
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