14.3 ブナ林と昆虫と小鳥とタカ
ブナの葉には、多くの昆虫(幼虫)が葉を食べている。この昆虫を小鳥が食べる。この小鳥をタカが食べるが、タカは、小鳥が雛を育てる時の天敵であるヘビを食べるので、ブナの森は昆虫と小鳥とヘビとタカのバランスによって守られている。
小鳥やタカの糞は、ブナの森の貴重なリン肥料でもある。この頂点捕食者としてのタカの雛が元気に育つには、非常に多くの小鳥やヘビや魚や野ねずみや野うさぎを必要とするため、豊かな森がなければ、タカは雛を育てることは出来ない。
豊かなブナの森には、昆虫がその葉を食べ、ブナの実を小動物が食べ、昆虫(ガの幼虫である毛虫)を小鳥が食べ、その小鳥や野ねずみやヘビをタカが食べる。このキーストーンであるタカやワシがいない森は、その豊かさを維持することが困難となる。
「その地域の種の多様性は、環境の主な要素がひとつの種に独占されるのをキーストンとなる捕食者がうまく防いでいるかどうかで決まる」これはペインの仮説であり、キーストーンとは石造りのアーチを築く際に、最後に頂点に打ち込む楔形の石のことである。
すなわち、森林が水と炭酸ガスと太陽エネルギーから糖類を作り、若葉を茂らせ、若葉を昆虫が食べ、さらに昆虫を小鳥が食べ、ブナの実を野ねずみが食べ、野ねずみをヘビが食べ、それらをタカが食べ、雛を育てる。それらの糞や死骸は、バクテリアによって分解され、菌根菌が窒素やリンをブナの根が吸い上げられるかたちにして、ブナの森を育む。
これらは、エントロピー逆走物語の頂点であり、進化創造された生命体である。オオカミやトラやタカは、食物連鎖によってエントロピーを逆走し続けた生命体であり、彼らの食物は、栄養価が高いため、食物の消化のための胃腸が短くてすみ、食べるための時間が少ない分、群れでの狩り、テリトリーの管理、子育てを行えるため、賢く、俊敏な美しいまでの生命体となる。(第20回)
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