散日拾遺

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『朝の道しるべ』から ~ 悟り

2017-07-28 12:53:09 | 日記

2017年7月27日(木)

 人間は栄華のうちに悟りを得ることはない。(詩篇49:21)

 אדם ביקר ולא יבין נמשל כבהמות נדמו׃

 成功、栄達、繁栄。自信、満足、おごり。高い所に立てば何もかもが見渡せます。人がみな小さく見えます。なるほど、世の中こういうものかと思います。爽快です。

 しかし、そのとき、彼には何も見えていないのです。真実は何ひとつ見えていません。目が眩んでいるからです。砕かれて、低くされて初めて見えるもの、それが真実です。目の曇りが取れて。

『朝の道しるべ』 P.220

***

 サタンは誘惑のクライマックスにおいて、イエスを高所に連れて行った。ここに記された、心の高みのことだったのだ。

 更に、悪魔はイエスを非常に高い山に連れて行き、世のすべての国々とその繁栄ぶりを見せて、「もし、ひれ伏してわたしを拝むなら、これをみんな与えよう」と言った。
 すると、イエスは言われた。「退け、サタン。『あなたの神である主を拝み、/ただ主に仕えよ』/と書いてある。」(マタイ 4:8-10)

***

 もう一つ、小島先生は詩篇49:21の前半だけを取り、後半を省略なさった。省略された部分には「屠られる獣に等しい」とある。きつい表現である。この部分の翻訳を並べてみる。

 「人間は栄華のうちに悟りを得ることはない。屠られる獣に等しい。」(新共同訳)

 「人は栄華のうちに長くとどまることはできない。滅びうせる獣に等しい。」(口語訳)

 「尊貴なかにありて暁(さと)らざる人は、ほろびうする獣のごとし。」(文語訳)

 旧約ヘブライ語の難しさが端的に察せられる。かつてドン・ハウランド牧師が「考えるな、感じよ」とブルース・リーみたいなことを言った所以であろう。選んで良いものなら、ここは新共同訳を取りたい。同訳による詩篇49全体を転記する。

***

 【指揮者によって。コラの子の詩。賛歌。】
諸国の民よ、これを聞け/この世に住む者は皆、耳を傾けよ
人の子らはすべて/豊かな人も貧しい人も。
わたしの口は知恵を語り/わたしの心は英知を思う。
わたしは格言に耳を傾け/竪琴を奏でて謎を解く。
災いのふりかかる日/わたしを追う者の悪意に囲まれるときにも/
どうして恐れることがあろうか 財宝を頼みとし、富の力を誇る者を。
神に対して、人は兄弟をも贖いえない。神に身代金を払うことはできない。
魂を贖う値は高く/とこしえに、払い終えることはない。
人は永遠に生きようか。墓穴を見ずにすむであろうか。
人が見ることは/知恵ある者も死に/無知な者、愚かな者と共に滅び/財宝を他人に遺さねばならないということ。
自分の名を付けた地所を持っていても/その土の底だけが彼らのとこしえの家/代々に、彼らが住まう所。
人間は栄華のうちにとどまることはできない。屠られる獣に等しい。

これが自分の力に頼る者の道/自分の口の言葉に満足する者の行く末。
陰府に置かれた羊の群れ/死が彼らを飼う。朝になれば正しい人がその上を踏んで行き/誇り高かったその姿を陰府がむしばむ。
しかし、神はわたしの魂を贖い/陰府の手から取り上げてくださる。
人に富が増し、その家に名誉が加わるときも/あなたは恐れることはない。
死ぬときは、何ひとつ携えて行くことができず/名誉が彼の後を追って墓に下るわけでもない。
命のある間に、その魂が祝福され/幸福を人がたたえても
彼は父祖の列に帰り/永遠に光を見ることはない。
人間は栄華のうちに悟りを得ることはない。屠られる獣に等しい。

Ω


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