「逐チク」「遂スイ」「墜ツイ」は紛らわしい漢字だが、この3つに共通しているのは「豕シ」である。豕シは、イノシシまたは家畜のブタを表す。そして、イノシシを追いかけて捕らえる形が「㒸スイ」だ。最後の「墜ツイ」は、仲立ちとなる漢字の「隊ツイ・タイ」がカギとなる。「隊ツイ・タイ」は、ツイの発音で「おちる」という意味で同音代替され、タイの発音で軍隊の意味になるから注意が必要だ。
豕 シ <いのしし・ぶた>
豕 シ・い・いのこ 豕部いのこ
解字 いのしし、または、家畜のぶたの姿を描いた象形。部首「いのこ」「いのこへん」となる。音符として使われることはなく、会意として、いのしし・ぶたなどの意を表わす。亥ガイと似ているが、亥は豚などの骨格を、豕は動物のイノシシや豚(ぶた)を示す。
意味 い(豕)。いのこ(豕)。いのしし。ブタ類の総称。「亥豕ガイシの誤り」(文字の書き誤りのこと)
イメージ 「いのしし・ぶた」(豕・豚・逐)
音の変化 シ:豕 チク:逐 トン:豚
いのしし・ぶた
豚 トン・ぶた 豕部
解字 「月(にく)+豕(ぶた)」の会意。ぶたの肉の意で、肉をとるための豚を表わす。
意味 (1)ぶた(豚)。こぶた。いのこ。「豚児トンジ」(不出来な息子) (2)「河豚カトン」とは、ふぐのこと。ずんぐりとした形が似ているから。
逐 チク・おう 辶部
解字 甲骨文はイノシシの下に足(止)の形を描き、いのししを人が追っているさま。金文は彳(ゆく)と足を描く。この部分が篆文でしんにょうの原形(辵)に変化している。現代字は、「辶(ゆく)+豕(いのしし)」の会意で、いのししを追ってゆくこと。
意味 (1)おう(逐う)。おい払う。「駆逐クチク」(おいはらうこと)「放逐ホウチク」(おいやる・おいはらう) (2)順を追う。「逐一チクイチ」(ひとつひとつ)「逐次チクジ」(次々に)「逐語チクゴ」(一語一語) (3)きそう。争う。「角逐カクチク」
㒸 スイ <やりとげる>
㒸 スイ・ズイ ハ部
解字 甲骨文は「ハ+豕シ(いのしし)」の会意。狩猟法の一種として用いられており、イノシシをあい路(ハ)に追い込んで捕らえる様子であろう[甲骨文字辞典]。篆文以降、遂と同じく、とげる意で用いられており、イノシシを追い込んで捕らえたので「とげる」意になったと思われる。この字は単独で用いられることは稀で、遂と同字として用いられる。
意味 (1)甲骨文字で、獣をとらえる狩猟法のひとつ。 (2)とげる。=遂スイ。 (3)したがう。
イメージ 「やりとげる」(遂)
音の変化 スイ:遂
やりとげる
遂 スイ・ズイ・とげる・ついに 辶部
解字 「辶(ゆく)+㒸(やりとげる)」の会意形声。㒸スイの意味(やりとげる)を之(すすむ)をつけて強調した字。新字体になると、豕の上がハ⇒ソになった遂になる
意味 (1)とげる(遂げる)。やりとげる。なしとげる。「遂行スイコウ」(なしとげる。やりとげる)「完遂カンスイ」(完全にやりとげる)「未遂ミスイ」(未だなし遂げていない)「未遂罪ミスイザイ」(犯罪は未遂であるが罪になること)「既遂キスイ」(既になし遂げたこと) (2)ついに(遂に)。とうとう。おわりに。
隊 ツイ・タイ <おちる>
隊 ツイ・タイ 阝部
解字 甲骨文は「阝(はしご)+逆さになった人」の会意で、人がおちる意。篆文で、逆さになった人⇒発音を表す㒸スイ(⇒ツイに変化)に置き換えた「隊ツイ」となった。一方、もう一つの発音であるタイは𠂤タイ(師シの原字。軍隊の象徴)に通じ、軍の部隊の意で使われ、のちこの意味が主流となった。おちる意味の隊ツイは、のちに土をつけた墜ツイで表すようになった。
意味 (1)兵の集まり。「軍隊グンタイ」「部隊ブタイ」「隊長タイチョウ」 (2)くみ。むれ。統一された集合体。「隊商タイショウ」「隊列タイレツ」 (3)おちる。=墜ツイ。
イメージ
「同音代替」(隊)
「おちる」(墜)
音の変化 タイ・ツイ:隊 ツイ:墜
おちる
墜 ツイ・おちる 土部
解字 「土(つち)+隊(おちる)」の会意形声。隊ツイ・タイは、もともとおちる意だが、軍隊の意に使われたので、土をつけ土の上におちる意とした。
意味 (1)おちる(墜ちる)。おとす。「墜落ツイラク」(墜も落もおちる意)「撃墜ゲキツイ」(撃ち落とす)「墜死ツイシ」(墜落して死ぬ) (2)うしなう。「失墜シッツイ」(失も墜もうしなう意)
<紫色は常用漢字>
豕 シ <いのしし・ぶた>
豕 シ・い・いのこ 豕部いのこ
解字 いのしし、または、家畜のぶたの姿を描いた象形。部首「いのこ」「いのこへん」となる。音符として使われることはなく、会意として、いのしし・ぶたなどの意を表わす。亥ガイと似ているが、亥は豚などの骨格を、豕は動物のイノシシや豚(ぶた)を示す。
意味 い(豕)。いのこ(豕)。いのしし。ブタ類の総称。「亥豕ガイシの誤り」(文字の書き誤りのこと)
イメージ 「いのしし・ぶた」(豕・豚・逐)
音の変化 シ:豕 チク:逐 トン:豚
いのしし・ぶた
豚 トン・ぶた 豕部
解字 「月(にく)+豕(ぶた)」の会意。ぶたの肉の意で、肉をとるための豚を表わす。
意味 (1)ぶた(豚)。こぶた。いのこ。「豚児トンジ」(不出来な息子) (2)「河豚カトン」とは、ふぐのこと。ずんぐりとした形が似ているから。
逐 チク・おう 辶部
解字 甲骨文はイノシシの下に足(止)の形を描き、いのししを人が追っているさま。金文は彳(ゆく)と足を描く。この部分が篆文でしんにょうの原形(辵)に変化している。現代字は、「辶(ゆく)+豕(いのしし)」の会意で、いのししを追ってゆくこと。
意味 (1)おう(逐う)。おい払う。「駆逐クチク」(おいはらうこと)「放逐ホウチク」(おいやる・おいはらう) (2)順を追う。「逐一チクイチ」(ひとつひとつ)「逐次チクジ」(次々に)「逐語チクゴ」(一語一語) (3)きそう。争う。「角逐カクチク」
㒸 スイ <やりとげる>
㒸 スイ・ズイ ハ部
解字 甲骨文は「ハ+豕シ(いのしし)」の会意。狩猟法の一種として用いられており、イノシシをあい路(ハ)に追い込んで捕らえる様子であろう[甲骨文字辞典]。篆文以降、遂と同じく、とげる意で用いられており、イノシシを追い込んで捕らえたので「とげる」意になったと思われる。この字は単独で用いられることは稀で、遂と同字として用いられる。
意味 (1)甲骨文字で、獣をとらえる狩猟法のひとつ。 (2)とげる。=遂スイ。 (3)したがう。
イメージ 「やりとげる」(遂)
音の変化 スイ:遂
やりとげる
遂 スイ・ズイ・とげる・ついに 辶部
解字 「辶(ゆく)+㒸(やりとげる)」の会意形声。㒸スイの意味(やりとげる)を之(すすむ)をつけて強調した字。新字体になると、豕の上がハ⇒ソになった遂になる
意味 (1)とげる(遂げる)。やりとげる。なしとげる。「遂行スイコウ」(なしとげる。やりとげる)「完遂カンスイ」(完全にやりとげる)「未遂ミスイ」(未だなし遂げていない)「未遂罪ミスイザイ」(犯罪は未遂であるが罪になること)「既遂キスイ」(既になし遂げたこと) (2)ついに(遂に)。とうとう。おわりに。
隊 ツイ・タイ <おちる>
隊 ツイ・タイ 阝部
解字 甲骨文は「阝(はしご)+逆さになった人」の会意で、人がおちる意。篆文で、逆さになった人⇒発音を表す㒸スイ(⇒ツイに変化)に置き換えた「隊ツイ」となった。一方、もう一つの発音であるタイは𠂤タイ(師シの原字。軍隊の象徴)に通じ、軍の部隊の意で使われ、のちこの意味が主流となった。おちる意味の隊ツイは、のちに土をつけた墜ツイで表すようになった。
意味 (1)兵の集まり。「軍隊グンタイ」「部隊ブタイ」「隊長タイチョウ」 (2)くみ。むれ。統一された集合体。「隊商タイショウ」「隊列タイレツ」 (3)おちる。=墜ツイ。
イメージ
「同音代替」(隊)
「おちる」(墜)
音の変化 タイ・ツイ:隊 ツイ:墜
おちる
墜 ツイ・おちる 土部
解字 「土(つち)+隊(おちる)」の会意形声。隊ツイ・タイは、もともとおちる意だが、軍隊の意に使われたので、土をつけ土の上におちる意とした。
意味 (1)おちる(墜ちる)。おとす。「墜落ツイラク」(墜も落もおちる意)「撃墜ゲキツイ」(撃ち落とす)「墜死ツイシ」(墜落して死ぬ) (2)うしなう。「失墜シッツイ」(失も墜もうしなう意)
<紫色は常用漢字>
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